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シリーズ一覧
しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」
【メレメレ島編】【アーカラ島編】【ウラウラ島編】【エーテルパラダイス編】【ポニ島編】
【ウルトラスペース編 前編】【ウルトラスペース編 後編】【大大試練編】【エピローグ】



883: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:12:42.03 ID:hqUZpqG30
【ウルトラスペース編】

ポニの大峡谷 入口前

リーリエ「しんちゃん……! いやぁぁっ……!」

みさえ「あなた……っ」ギュッ

ひろし「みさえ……」

ハウ「ど、どうしよー! しんのすけがルザミーネさんに連れ去られちゃったよー!」オロオロ

ククイ博士「ハウ、まずは落ち着くんだ」

ハウ「お、落ち着けって言われたってー!」

シロ「クーン……」

ハプウ「ん……?」

ハプウはシロが加えてきたしんのすけのズボンと手持ち、そして笛の残骸を拾った。

ハプウ(しんのすけの身に危機が迫っているのを、そなたらもなんとなくわかっておるのじゃな……)

――ルザミーネ「……!」ニヤッ

ハプウ(あやつめ……! しんのすけがリーリエを守ることを分かっててわざと襲ったのじゃな! 許せん!)ワナワナ

ズズンッ!

884: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:15:25.89 ID:hqUZpqG30
全員「!」

みさえ「今度は何っ?!」

再び地面が揺れて、しんのすけが消えた地点に、再び空間の歪みと供に光が出現する!

ハウ「またウルトラホールだー!」

ひろし「もしかして、しんのすけか?!」

再び全員の前に現れたウルトラホール。
ひょっとしてルザミーネの拘束を抜け出してしんのすけが帰ってきたのでは――。その場にいる全員が、期待を抱いた。
だが、ウルトラホールから現れたモノは、その儚い期待を簡単に打ち砕いてしまった。

???「オォォォォオォッ!!」

咆哮と供に現れたのは、全身が口と呼ぶような巨大なウルトラビースト――アクジキングだった。それがウルトラホールから飛び出した途端、口から生えている2本の舌を伸ばして、次々と岩や木を口の中へ放り込んでいく!

アクジキング「モォォォッ!!」バグバグッ!

885: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:16:04.33 ID:hqUZpqG30
ひろし「な、なんだよこいつっ! こいつもビーストか!」

ククイ博士「見た目からしてかなりヤバイぜ! ここから逃げるんだ!」

ハウ「リーリエ、逃げよー!」

リーリエ「……」

ハプウ「わしの家に避難するぞ! ついて参れ!」

――カプゥーレ!

カプ・レヒレの声が空に響いたと思うと、ハプウたちとアクジキングの周囲に、見る見る冷たい霧がかかった!

ハウ「なにこれー? またビーストー?」

ハプウ「案ずるな! カプ・レヒレの能力じゃ! わしらをビーストから逃がそうとしてくれておる! このまままっすぐ走れ!」

ハプウ(カプ・レヒレ……感謝します)

リーリエ「……しんちゃん」

886: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:18:04.50 ID:hqUZpqG30
同時刻
~メレメレ島 ハウオリシティ~

イリマ「ハラさん! こちらです!」

ハラ「……これは」

イリマとハラの目の前では、上空のウルトラホールから現れた、竹を模した一対の噴射口の腕が目印の巨大ウルトラビースト――3匹のテッカグヤが建物を破壊していた。人々は、パニックに陥りながら、四方八方へ逃げ回る。

テッカグヤ「……!」

テッカグヤは腕を振り下ろすと、役所の建物がいとも簡単に潰れ、空いたもう一つの腕で炎の弾を放つと、警察署が吹き飛んだ。

ハラ「イリマ……あなたは街の人たちの避難を誘導をお願いしますぞ。あの不埒なお客は、このハラが抑えます」

イリマ「はい! 分かりました!」

887: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:18:45.82 ID:hqUZpqG30
~アーカラ島 カンタイシティ~

マオ「アママイコ! マジカルリーフ!」

スイレン「オニシズクモ! バブルこうせんです!」

2人のキャプテンの命令で放たれた魔法の葉っぱと、勢いよく発射された泡がビーストに直撃する。
しかし、目の前にいる、鋭い口吻と巨大な筋肉が特徴的なウルトラビースト、マッシブーンは、「それがどうした」と言わんばかりに耐え切った。

マッシブーン「……!」ダブルバイセップス!

マオ「なんなのよ、このポケモン! むちゃくちゃすぎる!」

スイレン「この前現れたポケモンとは、また別の強さです……!」

888: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:19:24.56 ID:hqUZpqG30
~ウラウラ島 ホラクニ岳 天文台~

マーレイン「『穴』の反応はやはり前回同様、他の島にも現れているようだね」カタカタカタ

マーマネ「マーさん……マリエシティに反応が2つ……発電所に3つある……」カタカタカタ

マーレイン「他にも範囲が広がりそうだ。すぐに『穴』の反応を探知するための……」ピタッ

マーレイン「……どうやらこの近くにも、『穴』が出てきそうだ」

マーマネ「戦う準備……できてる!」

2人は天文台から飛び出すと同時に駐車場にウルトラホールが開いた。
その中から這い出るように飛び出したのは、先端に導線らしきものがあらわになった黒くしなやかな身体と、顔にあたる部分が光るトゲトゲになっているウルトラビースト、デンジュモクだ。

デンジュモク「デンジュジュ……!!」バチバチバチ

マーマネ「ターゲット確認……!」スッ

マーレイン「ウルトラホールから現れた異次元のポケモン、存分に分析させてもらう」スッ

889: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:55:29.58 ID:hqUZpqG30
ポニ島 ハプウの家

ガンッ!

ひろし「くそっ! どうして……どうしてこうなっちまったんだ……!」ワナワナ

みさえ「あいつはいったいなんなのよ! どうしてしんのすけが……!」

ひまわり「ふぇっ……えっ……えっ!」

ひろし「だいたいお前がしんのすけを島巡りさせるからだろ!」

みさえ「それを言うなら、あなただって積極的だったくせに!」

ひろし「なんだとっ!」

みさえ「なによ!」

ククイ博士「奥さん、落ち着いて……」

ハウ「おじさんもー……」

みさえ「なに? 元はといえばアンタがしんのすけを……!」

ハプウ「や め ん か っ ! !」

890: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:56:48.34 ID:hqUZpqG30
ひろし&みさえ「!」ビクッ!

ハプウ「今は責任の擦りつけあいをしてる場合ではなかろう!」

ひまわり「ふええん! ふええん!!」

ひろし&みさえ「ひまわり……」

ハプウ「おお、びっくりしたじゃろう。大丈夫じゃ、きっと兄は無事に帰ってくる。あやつは強いからの」ユサユサ

ひろし「……すまん、みさえ。怒鳴っちまって」

みさえ「私も、ついカッとなって……ごめんなさい」

ひろし「しんのすけが奪われたって言うなら、オレ達の手で取り返しに行けばいい。ただそれだけだ」

みさえ「ひまわりがさらわれた時も私たち、そうしたものね」

ひろし「愛してるぜ、みさえ。必ずしんのすけを取り戻そうな」ダキッ

みさえ「私も……」ギュッ

ククイ博士&ハウ「…………」

ハプウ「……お前の家族は面白いのう、ひまわり」

ひまわり「……たい」

891: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 18:59:07.61 ID:hqUZpqG30
ハプウ「リーリエも、しゃきっとせんか。あれは決してお前のせいではない。そう自分を責めるな」

リーリエ「……」

リーリエはほしぐもちゃんの入ったリュックを抱きしめながら、しんのすけが連れ去られた光景を思い返していた。

――ふう、やっと捕まえた。もう逃がさないわ
――ぬううっ! 離せ離せっ!

リーリエ(しんちゃん……っ!)

892: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:00:10.99 ID:hqUZpqG30
ククイ博士「まずはクリアスモッグのように、1からやり直して状況を整理してみよう」

ひろし「まずは……しんのすけがハプウちゃんとの大試練を達成して、その直後にルザミーネが現れた」

ハウ「それでーウツロイドっていうビーストと合体して、しんのすけをウルトラホールの向こうへ連れ去ったんだよねー」

ハプウ「その直前に笛が壊され、ホールが消えたあとにビーストが現れ、カプ・レヒレの助けを借りながらここに戻ってきた……」

ククイ博士「逃げる途中、空にいくつものウルトラホールが開かれているのを見たんだ。おそらくだけど、前回のように……いやそれ以上に、アローラにウルトラホールが開かれている!」

ハウ「ルザミーネさんはービーストと合体してホールを開けられるようになったって言ってたよー。ひょっとしたら、コスモッグの力なしでホールを開けられちゃうのかもー」

ククイ博士「彼女の言葉が本当なら、今のところビーストが現れているのはアローラだけ……。他の地方に広がってないだけ、不幸中の幸いだね」

893: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:11:20.82 ID:hqUZpqG30
ハウ「ルザミーネさんを止めれば、アローラに来たビーストもいなくなるかなー?」

ハプウ「どうかな……仮に元凶を倒し、ホールを閉じたところで、あやつらが煙のように消えるとは限らん。穴へ戻さねばならんだろう」

みさえ「こっちから穴を開けて、ウルトラホールの向こうへ行く手段はないの?」

ハプウ「ある。……正確には『あった』と言うべきじゃが」つ壊れた月の笛

ひろし「そいつは……グラジオくんがリーリエちゃんにあげた笛そっくりだ」

ハプウ「これなるは月の笛。かつてアローラ王朝が太陽と月、それぞれの笛を用いて伝説のポケモンを呼び出した道具じゃ」

ハプウ「本来の流れでは、しんのすけとリーリエはこの2つの笛を用いて、ポニの大峡谷の先にある月輪の祭壇で笛を吹き、伝説のポケモン『ルナアーラ』を呼び出し、その力でルザミーネを連れ帰ろうとしていたのだ」

リーリエ「……」

ハウ「そのルナアーラっていうポケモン、ウルトラホールを開けられるのー?」

ハプウ「伝承通りならば、ルナアーラもまたウルトラビーストじゃろうな。空間に穴を開け、別世界を行き来する能力……恐らくウルトラホールを自由自在に開けられる力を持っておるのじゃ」

ククイ博士「だけど、その笛が壊れているってことは……」

ハプウ「伝説のポケモンを呼び出すのが不可能になった、ということじゃ」

894: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:12:59.87 ID:hqUZpqG30
みさえ「そんな……直すことはできないの?」

ハプウ「そうしたいのは山々じゃが、わしはあくまで祭壇の番人の末裔でしかない。月の笛も太陽の笛も、作り方はおろか、どんなもので作られているのか、わしには全くもってわからん。そもそもそんな知識を持っている人が今のアローラにいるかどうか……」

ククイ博士「最善の手段がダメなら、次善の手段で挑むしかないね。とにかく、やることが山積みだぜ」

コンコンッ!

ハプウ「む……こんな時に誰じゃ」

895: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:14:05.60 ID:hqUZpqG30
ガチャッ!

グラジオ「……」

ハプウ「お主は……?」

リーリエ「にいさま……?」

ひろし「グラジオくん!」

ハプウ「なんじゃ、知り合いか?」

グラジオ「リーリエ、ハウ、ひろし、ここにいたのか。とりあえず無事で安心した」

リーリエ「にいさま、どうしてここに?」

グラジオ「今、アローラ全域に数え切れない程のビーストで溢れかえっている……。だからオマエらの身に何か起きたと踏んで、海の民から話を聞きながらここに来たんだ」

グラジオ「ところで……しんのすけの姿が見当たらないが。あいつはどこへ行った?」

リーリエ「……」

グラジオ「……何かあったのか?」

ハプウ「グラジオとやら、とにかく家に入れ。わしの口から話そう」

グラジオ「……ああ」

896: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:15:51.77 ID:hqUZpqG30
グラジオ「……そうか、月の笛が壊され、しんのすけが連れ去られた、か」

ククイ博士「グラジオくん、だったね? 君は何のためにここに来たんだい? ただ心配しただけでここに来たわけではないだろう」

グラジオ「ああ、リーリエたちをエーテルパラダイスに連れ戻しに来た。ビーストがアローラに溢れかえっている今、パラダイスが一番の避難場所になるからな」

ひろし「そうだな……ここに全員揃っているより、パラダイスに避難してからこれからのことを考えたほうがいい」

グラジオ「……その前に、ポニのしまクィーンにひとつ聞きたい」

ハプウ「なんじゃ?」

グラジオ「この壊れた月の笛についてだ。これを直すことは本当にできないのか?」

ハプウ「再三言うが、修復はほぼ不可能に近い。それが作り方はおろか、どんな素材で出来ているのかすら、誰にも分からずじまいじゃ」

グラジオ「果たしてそうか? 確かウラウラには、アローラ王家の血を引くというキャプテンがいるはずだが。そいつが笛についてなにか知っているはずだ」

リーリエ「……アセロラさん、ですか?」

897: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:16:51.43 ID:hqUZpqG30
ハプウ「あやつか……確かにアセロラは王家の血筋を引いておる。ひと握りしか知らんアローラの神話をまとめた本を出版したのもあやつの父じゃ。だからと言って、笛の作り方まで関わっているとは限らんぞ」

ひろし「だとしても、知ってる可能性はあるんだろ? だったら、そのアセロラって子から笛の作り方を教えてもらうべきだ」

グラジオ「幸い、エーテルパラダイスにはその手の設備も整っている。素材と製造方法さえ分かれば、修復は可能だろう。壊れた笛もここにあるしな」

ハプウ「……うむ! その通りじゃ! かすかな望みでも、捨ててはいかんな」

ククイ博士「よーし、ならアクアジェットのように急ごう!」

ハウ「よかったねー! おばさんー! リーリエー! しんのすけを助けられるよー!」

みさえ「ええ!」

リーリエ「……」

898: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:17:35.34 ID:hqUZpqG30
ククイ博士「ウラウラ島へはボクが行くよ。あそこはこの中じゃボクが一番詳しいからね! すぐにキャプテンを見つけ出して合流するよ!」

ククイ博士「ハウ、キミは野原さんたちとリーリエが、ビーストたちに襲われないようポケモンとてだすけして守りぬくんだ! 任せたよ」

ハウ「わかったー!」

ハプウ「わしはここに残る。ポニ島のしまクィーンとして、カプ・レヒレと供にここを守らねばならんからの」

ハプウ「リーリエ、前を向け。おぬしが諦めなければきっと全て取り戻せる! がんばリーリエ、じゃぞ!」

リーリエ「……はい」

ハウ&グラジオ「がんばリーリエ……?」

ハプウ「ひまわりも達者でな」ナデナデ

ひまわり「たい!」

ひろし「よし、それじゃあエーテルパラダイスに急ごうぜ!」

みさえ「……ねぇ、誰か忘れている気がするのよね。誰かしら?」

ハウ「誰かー? 誰だっけー?」

全員「???」

899: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:24:27.00 ID:hqUZpqG30
エーテルパラダイス

グラジオの小型船に乗ってポニ島からエーテルパラダイスに来たリーリエたちは、そこでウルトラビーストから逃げてきた人々やポケモンたちの光景を目の当たりにした。
財団の職員たちは避難してきた人達のために食事を作ったり、ポケモンの保護を行っている。

ビッケ「グラジオさま、リーリエさま、ご無事でなによりです」

グラジオ「ビッケ……出迎えて早々すまないが、これの解析を頼む」つ壊れた月の笛

ビッケ「これは……月の笛ですか?」

グラジオ「ああ、だが途中で壊されてしまってな……。可能なら修復を、それが不可ならせめて内部の構造や材質の解析を急ぎたい」

ビッケ「かしこまりました。至急技術部に回して解析、可能なら修復の依頼をします」

グラジオ「頼む。……それから、居住区に空いている部屋があれば、ひろしたちの部屋を用意して欲しい」

ビッケ「はい、とはいえ、避難している人たちのこともありますので……全員一人ひとりの部屋を用意することはできません。誰かと相部屋になりますが、よろしいですか?」

ひろし「俺はみさえたちと一緒で構わないです。なぁみさえ」

みさえ「ええ、私たち相部屋でいいです」

ビッケ「リーリエさまは、お屋敷の方でよろしいですか?」

リーリエ「……」コクン

900: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:25:20.58 ID:hqUZpqG30
ひろし「じゃあ俺は、職員たちの手伝いをしてくる」

ハウ「えー? ゆっくり休めばいいのにー」

ひろし「あんなことがあったとは言え、俺はまだエーテル財団職員の野原ひろしだからな。少しでも避難している人やポケモン手助けをしてやるのが仕事だ」

みさえ「あなた……!」

ハウ「おじさん、かっこいいー」

ビッケ「ひろしさん……ありがとうございます」

ひろし「いえいえ、ビッケさんのためならなんでも朝飯前です」キリッ

ビッケ「は、はぁ……」

みさえ「おい」

ひまわり「……けッ!」

901: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:25:59.61 ID:hqUZpqG30
ひろし「あ……で、では、まずなにをすれば……」

ビッケ「まずはザオボーさんから判断を仰いでください。今はあの方が一応、職員たちに指示を出していますから。2階にいます」

ひろし「じゃあみさえ、ひま、また後でな」

みさえ「永遠に帰ってこなくていいわよー」フリフリ

ひろし「み、みさえ……」トボトボ

ハウ「おじさん、かっこわるいー」ジトー

ビッケ「では、居住区にご案内いたしますね」

グラジオ「リーリエ……オレたちも行こう。今はお前もゆっくり休め」

リーリエ「……はい」

みさえ「……リーリエちゃん」

902: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:29:41.82 ID:hqUZpqG30
エーテルパラダイス1F ルザミーネの屋敷

~BGM しんみリーリエ~

リーリエ「……」

――おわぁぁっ! リーリエちゃんっ! リーリエちゃんっ!
――しんちゃーーーんっ!!

リーリエは屋敷の中のひと部屋に閉じこもり、ベッドの上に座り込みながら、しんのすけがさらわれた時を回想していた。
あの時、自分が母の攻撃に怯まないで、手を離さなければ、彼はここにいたかもしれないのに……。

今までしんのすけがいてくれたおかげで、ルザミーネに暴力を振るわれ、コスモッグが動かなくなっても何とか不安を抑えていられた。
しかし、心の支えが奪われ、堤防が決壊したように、あふれんばかりの悲しみと自責の念がリーリエに押し寄せ、押し潰そうとしている。

リーリエ(わたしが……わたしがわがままを言わなければ……! しんちゃんと一緒に、島巡りなんてしなければ……!)

リーリエ「うっ……ううっ……あああっ!」ポタポタッ

リーリエ「ほしぐもちゃん……わたし、どうすればいいのか……もうわからなくなっちゃった……」

ほしぐもちゃん「……」

リーリエ「わたしの……わたしのせいで……しんちゃんが……! 守るって決めたのに……!」

コンコンッ!

リーリエ「!」

グラジオ「リーリエ、お前に会いたいっていう人がいるが……いいか?」

903: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:31:27.19 ID:hqUZpqG30
ガチャッ

リーリエ「――ッ!」

みさえ「リーリエちゃん……」

ひまわり「や!」

リーリエ「しんちゃんの……お母様」

みさえ「急に押しかけてごめんなさいね、ちょっとあなたの様子が気になっちゃったから……。迷惑だったかしら?」

リーリエ「いっ、いえっ! 大丈夫ですっ」

みさえ「そう? それにしたら、ずいぶん目の周りが真っ赤になってるけど」

リーリエ「え? あ、あの、これは……」アタフタ

みさえ「大丈夫、今はグラジオくんもいないから。……ねぇ、ちょっと2人でお話しない?」

ひまわり「たいっ!」

みさえ「ああ、ごめんね。ひまも入れて3人ね。どうかしら?」

リーリエ「は、はい……上がってください」

みさえ「お邪魔しまーす」

ひまわり「たいやーい!」

904: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:32:32.65 ID:hqUZpqG30
みさえとひまわりが上がると、それぞれテーブルを挟んで向かい合うように座った。みさえは持っていた手提げバッグから魔法瓶と2つの紙コップを取り出すと、魔法瓶の中身であるロズレイティーを注いだ。部屋の中に甘い香りが漂う。

みさえ「さっき、避難所でもらってきたの。こんなこともあろうかと、魔法瓶を持ってきておいてよかったわ~」

リーリエ「そ、そうですか……」

みさえ「……」ズズズッ

リーリエ「……」

リーリエ「あ……あのっ」

みさえ「どうしたの?」

リーリエ「ごめんなさい……! わたしのせいで……しんちゃんが……」ブルブル

みさえ「リーリエちゃん、まずは落ち着いて」

リーリエ「…………」

みさえ「あのね、リーリエちゃん」

リーリエ「……はい」

905: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:33:49.40 ID:hqUZpqG30
みさえ「私はリーリエちゃんのこと、別に怒ったり責めたりするなんてこれっぽっちも思ってないわ。それどころか、あなたには感謝しているくらいだもの」

リーリエ「……え?」

みさえ「だって、しんのすけが島巡りしている間、ハウくんと一緒にあの子の面倒を見てくれたんでしょ?」

リーリエ「そんな……わたしは……一緒になんて。それに……わたしのワガママで、しんちゃんを振り回してました」

みさえ「本当? あの子を振り回せたとしたら、あなた大したものよ? 逆にしんのすけにさんざん振り回されたんじゃないかしら?」

リーリエ「それは……」

みさえ「でしょう? きっとケツだけ星人したり、インドぞうさん出したり、ナンパしたり……びっくりしなかった?」

リーリエ「え、ええ……。メレメレ島ではびっくりしました……ポケファインダーで水着の女性の方たちを撮ったり、花園ではケツだけ星人をしてほしぐもちゃんが喜んだり……わたしが怒っても、またやったり……」

みさえ「やっぱりね! あの子、帰ってきたらおしおきフルコース決定!」

リーリエ「……」

みさえ「……でもね、ああ見えてしんのすけはたくさん辛い思いをしてきたから、人の悲しみや痛みが分かる、優しい子なの」

906: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:36:00.23 ID:hqUZpqG30
リーリエ「……っ!」

みさえ「しんちゃんが身体を張ってリーリエちゃんを守ってくれたってことは、あの子……リーリエちゃんのことが大好きなのよ。口では言わないだけで」

――リーリエちゃんには、指一本触れさせないゾ!
――ッ、リーリエちゃんっ!

リーリエ「しんちゃん……!」ウルッ

みさえ「リーリエちゃん、今は泣いちゃダメ! だって、あの子はウルトラホールの向こうに連れ去られただけでしょ? まだ死んだってわけじゃないでしょ?」

リーリエ「……」

みさえ「リーリエちゃん、しんのすけのことをただの5歳児って侮っちゃダメ。あの子……私も夫も、ひまもそうだけど、リーリエちゃんが想像もつかないような冒険をたくさんしてきたのよ?」

リーリエ「そう、なんですか?」

みさえ「ええ、きっと信じてもらえないでしょうけども……。でもこれだけは言えるわ、しんのすけは、ビーストの母だかなんだかわからないけど、そんなのに捕まったぐらいじゃ絶対に死なないってこと! しんのすけの母親の私が言うんだから、間違いないわ!」

ひまわり「たいっ!」

907: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:36:58.45 ID:hqUZpqG30
みさえ「……だから、リーリエちゃんも諦めちゃダメ。あなたと私たちで、大切な人たちを取り戻しに行くんだから。あなたもグラジオくんも、しんのすけとお母さんをこの世界に連れ戻すんでしょ?」

リーリエ「……はい」

みさえ「下を向かないで。前を向いて、私の目を見て言いなさい」

リーリエ「……はいっ!」

みさえ「うん、その調子。最初に会った時よりも、ずっと良い顔になったじゃない」ニコッ

リーリエ「……あ、ありがとうございます」テレテレ

ひまわり「たやー」

リーリエ「……」

――ほっほーい! どしたのー?
――オラやアセロラちゃんに頼ってばかりですと、将来ロクなオトナになりませんぞ! 方向音痴くらい治しなさい!
――今日はオラが布団になったげるから。いっぱい泣いていいよ
――大切な人をお守りできるような強い男になりたいんだー

リーリエ「……しんちゃんのお母様」

みさえ「みさえでもおばさんでもいいわよ」

リーリエ「では……みさえさん。お話しして、気分が晴れてきました。ありがとうございます」

みさえ「どういたしまして」

908: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:38:56.96 ID:hqUZpqG30
リーリエ「……わたし、改めて分かりました。わたしも、しんちゃんのことが大好きです!」

リーリエ「まるで自分に弟が出来たような気がして、一緒にいると落ち着かないけど、なんだか明るい気持ちになって、とっても楽しいんです」

リーリエ「ですからわたし、取り戻してみせます。かあさまも、しんちゃんも、みんな!」

みさえ「ふふっ、そうね。女の子は欲張りでなきゃ! それで、あなたはこれから何をするの?」

リーリエ「……かあさまや、ビーストさんと戦うための力を養います。もう、みなさんの戦いを見て憧れるだけのわたしとは、さよならです!」

リーリエ「……みさえさん、しんちゃんの手持ちのポケモンさん、お借りしてもよろしいですか?」

みさえ「私はいいけど、あの子達があなたの言うことを聞くかどうか……」

リーリエ「正直、わかりません。ですけど、カザマさんたちもわたしも、しんちゃんを助けたいという気持ちはきっと同じですから、この胸の内の想いを伝えれば、分かり合えると思います!」

みさえ「……そうね! わかったわ、じゃあついてきて。部屋に案内するから!」

リーリエ「はい!」

909: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:51:37.62 ID:hqUZpqG30
1時間後 ルザミーネの屋敷前広場

~BGM おこリーリエ~

みさえの言伝で、広場にハウとグラジオが来ると屋敷前に真摯な面持ちのリーリエが2人を待っていた。

ハウ「リーリエ、どうしたのー?」

グラジオ「なにかあったのか?」

リーリエ「にいさま……ハウさん……」

スゥーッハァーッ

リーリエ「……わたし、今からポケモントレーナーになります!」

グラジオ「……!?」

ハウ「へぇー、そりゃすごいねー」

ハウ「……って、え゛え゛え゛え゛え゛え゛ーっ!?」

グラジオ「……本気で言っているのか」

910: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:58:01.70 ID:hqUZpqG30
グラジオ「……本気で言っているのか」

リーリエ「はい、本気です! わたし、自分に甘すぎました」

リーリエ「ほしぐもちゃんを連れて飛び出しましたけれども、わたしは今日までずっと誰かにばかり頼ってきていました。ゼンリョクの姿になっても、結局口だけでしんちゃんに頼りっぱなしで……」

リーリエ「そのせいで、わたしは何も出来ないまま、ほしぐもちゃんは動かなくなって、しんちゃんはかあさまに拐われてしまいました……」

リーリエ「ですから! 誰かに甘えて見ているだけの自分とは別れを告げたのです。かあさまと、しんちゃんを取り戻すために!」スッ

グラジオ「それは……しんのすけの手持ちか?」

リーリエ「はい! ポケモンはしんちゃんの借り物ですが、今度はわたしも戦います! これが進化したわたしのゼンリョクの姿です!」キッ!

リーリエ「それに、わたしもアローラ防衛隊のひとりです。このアローラ地方を守る隊員なのに、何もしないなんて、隊員失格です」ニコッ

ハウ「……リーリエ」ポカン

グラジオ「……フッ、何を知りたいんだ?」

リーリエ「ポケモンさんとどうやって付き合っていけばいいのか、それに、ポケモン勝負について……学びたいことは、たくさんあります」

ハウ「だけどー、今のリーリエの持っているポケモンはしんのすけがおやでしょー? 人から借りたポケモンはートレーナーが強くないと言うことを聞いてくれないんだよー!」

911: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 19:59:28.39 ID:hqUZpqG30
グラジオ「とはいえ、イチから育てている猶予はない。いかにオマエがしんのすけのポケモンと心を通わせられるか……それがキモだな」

ハウ「それに、しんのすけってポケモンに命令しないからーどんな技使うのか分からないよー。本当に大丈夫ー?」

リーリエ「それが問題なんですよね……」

ハウ「うー……なんか不安」

ズズンッ!

3人「!」

グラジオ「この揺れは……!」

ハウ「グラジオー! 上っー!」

リーリエ「!」

リーリエたちのの頭上――上空に、空間がねじれてウルトラホールが開いた。
その中から現れたのは、筋肉で膨れ上がったウルトラビーストのマッシブーン、そして電気のウルトラビースト、デンジュモクだ。
2匹がリーリエたちの目の前に降り立つ。

マッシブーン「ブーーンッ!」サイドトライセップス!

デンジュモク「デンデンッ!」

912: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:00:14.25 ID:hqUZpqG30
グラジオ「クッ……ビーストが2匹も! ハウ、準備はできてるか?」スッ

ハウ「うんー!」スッ

リーリエ「……!」

突然、リーリエが抱えていたしんのすけのポケモンが入ったボールが光りだすと、次々とボールから飛び出した!

ポンポンポンポンッ!

ジュナイパー「ホーッ!」バサッ!

ヨワシ(群)「ギョオオオオッ!」

キテルグマ「クーーッ!」ブンブンッ

ミミッキュ「ボッ!」

グラジオ「……しんのすけのポケモンが!」

913: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:03:08.74 ID:hqUZpqG30
リーリエ「!」

ボーちゃんとネネが先陣を切ると、マッシブーンが拳を振り上げてネネに襲いかかり、デンジュモクが10まんボルトを、ボーちゃんに放つ。

マッシブーン「ブーンッ!」ブンッ

キテルグマ「クーーっ!」ガシッ!!

デンジュモク「デンンンッ!」バチチチチッ!

ミミッキュ「ボーッ!」ピカッ!

ネネがマッシブーンのメガトンパンチを両手で受け止め、10まんボルトを光の壁で防ぐと、その後ろで控えていたカザマが2本の矢羽根をかげぬいとしてデンジュモクに放ち、マサオがハイドロポンプをマッシブーンに放った!

ジュナイパー「ホッホーッ!」バシュシュッ!

ヨワシ「ギョオオオッ!」ブシャアアアッ

マッシブーン&デンジュモク「!?」

キテルグマ「クーッ」サッ

ネネが伏せたと同時にマッシブーンはハイドロポンプを真正面から食らってしまい、そのまま外へと押し出されて、オリバーポーズを決めながら海へ落下。
デンジュモクは次々とかげぬいで撃ち抜かれ、爆風で空中に浮かぶとボーちゃんが飛び出し、スパイクを決めるように鼻水状の影で殴ると、一直線に海へ落ちてしまった。

ドボンッ!
ザブンッ!

3人「……」

914: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:04:56.35 ID:hqUZpqG30
3人が唖然としていると、カザマたちはリーリエのもとへと歩み寄り、彼女に何かを試すように視線を集中させた。

リーリエ「……」

リーリエ「……カザマさん、マサオさん、ネネちゃんさん、ボーちゃんさん」

ジュナイパー「……」

リーリエ「あなたたちの大事なお友だちが、かあさまにさらわれたこと、もう既にご存知かもしれません」

ヨワシ「……」

リーリエ「今回の出来事は、わたしがしんちゃんを巻き込んだせいです。あなたがたからそのことで責められても仕方ありません……」

キテルグマ「……」

リーリエ「ですが、わたしは……しんちゃんとかあさまを助けたいです! 弱い自分と決別するために! 全て元通りにするために!」

ミミッキュ「……」

リーリエ「図々しいことはわかっています。お願いします……わたしに、大切な人を助けるための力を、大切な人を守る力を、どうぞ貸してください! わたしと一緒に、戦ってくださいっ!」

915: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:08:45.32 ID:hqUZpqG30
ジュナイパー「……ホー」

リーリエの言葉を聞いたカザマたちは示し合わせたようにそれぞれの顔を見合わせ、互いに頷く。

ジュナイパー「……」スッ

最初にカザマが片翼を前に出した、続いて単独の姿に戻ったマサオがヒレを翼の上に重ね、その上にネネが黒い大きな手を、ボーちゃんが影の手をそれぞれ重ねてリーリエを見据える。

リーリエ「……!」スッ

リーリエが最後に手を重ねると、カザマたちは自らボールに戻り、リーリエの胸へ飛び込んだ!

ハウ「これって……」

グラジオ「リーリエを認めたのか……」

リーリエ「……カザマさん……みなさん……ありがとうございます!」ギュッ

リーリエ「必ず、みんなでしんちゃんを助けましょう!」

ハウ「じゃーリーリエ! さっそくおれと戦ってみよーよ! でさ、カザマたちがどんな技使うのか分析してみよーね!」

リーリエ「はい!」

916: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:10:26.64 ID:hqUZpqG30
数時間後
エーテルパラダイス 1F 会議室

ビッケから「ククイ博士が帰ってきた」という連絡を受けたグラジオたちは、1階の会議室に集まった。
会議室には、ククイ博士とアセロラの姿があった。

ククイ博士「みんな来たね!」

アセロラ「はーい、古代のプリンセス、アセロラちゃんです!」フリフリ

リーリエ「お久しぶりです! アセロラさん!」

アセロラ「おーリーリエちゃん? なんかスッキリしたね!」

リーリエ「はい! 進化したゼンリョクの姿です!」

ヤングース「ぎゃうぎゃう!」ガブッ

ハウ「やっぱりこうなるのかー」ダラー

みさえ「ハウくん、頭から血ぃ出てるわよ!」

ハウ「もう慣れちゃったー。むしろ癒されちゃうくらいー」

917: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:12:59.08 ID:hqUZpqG30
アセロラ「えーっと、あなたたちはしんちゃんのご両親?」

みさえ「え?」

ひろし「ああ、俺はしんのすけの父の野原ひろし、こっちは母の野原みさえだ」

アセロラ「やっぱりね! なんとなく雰囲気が似てたもん。ウラウラ島のキャプテンのアセロラです! しんちゃんには大変お世話になりました!」

ひろし「お世話になった?」

アセロラ「スカル団にさらわれたこのヤンちゃんを助けてもらったの」

ヤングース「きゅう!」

みさえ「す、スカル団? スカル団って確か、アローラの人たちに迷惑かけてるっていう、あの……?」

アセロラ「うん、実はある事情でこの子がさらわれちゃって、しんちゃんが一人で助けに行ってくれたんだ」

ひろし「そ、そうだったのか……(ずいぶん派手にやってるなぁしんのすけ……こっちの心配もよそにして)」

アセロラ「あの時はちょっと慌ただしかったから、キチンとお礼も言えなかったからね。せめてこういう形で恩返しできればいいなって、アセロラ思ってるの」

グラジオ「オマエがアローラ王家の末裔だったのか……」

アセロラ「意外だった? 話は博士から聞いてるから分かってるよ。しんちゃんとリーリエちゃんのお母さんがいる、ビーストの世界に行くために月の笛を修理するんでしょ?」

リーリエ「はい! ですので、なにか少しでもいいので、笛のことについて知っていれば……!」

918: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:14:51.54 ID:hqUZpqG30
アセロラ「うん、アセロラも博士の話を聞いてね、お父さんが持っていた古い本を片っ端から調べてきたよ。そうしたら、笛のことについて書かれた本を見つけたの!」

グラジオ「どんな内容なんだ? 出来れば手短に頼む」

アセロラ「ちょっと待っててね!」

アセロラは古ぼけた本を取り出すと、それを長机に置いて、丁寧にページをめくっていく。

みさえ「見たことのない文字……本当にこれに書いてあるの?」

アセロラ「アローラ王朝で昔使われていた古代文字なの。それも、王家とか、神官しか読めない特別なものだよ」

ハウ「アセロラは読めるのー?」

アセロラ「ちょっとだけ。お父さんも少ししか読めないの」

ひろし「まさに王家秘蔵の本ってところか……」

みんなが注目する中、アセロラがページを次々とめくっていくと、ある1ページで止めてリーリエたちに見せるように一歩引いた。

リーリエ「このページに、笛の作り方が書いてあるんですか?」

アセロラ「んー、以前、リーリエちゃんに伝説のポケモンの事について書いた本を読ませていたでしょ? それの、もっと細かいところが書かれた本って思えばいいよ!」

ククイ博士「これは……島の守り神たちかな?」

ククイ博士は、カプ・コケコたちとちがみポケモンの絵が描かれた箇所を指で示した。とちがみポケモンたちのそばには、パートナーと思わしき人間の姿もある。

919: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:18:01.46 ID:hqUZpqG30
ハウ「この人たちって、しまキングとしまクイーン?」

アセロラ「……の、原型だね!守り神とアローラの王様に仕え、アローラの島を司ってる4人の神官たちなの。カプたちのメッセージを王様や人々に伝えたり、島の様子を王様や他の島の神官とやりとりしていたみたいだよ!」

ククイ博士「ますます今で言うしまキングとしまクイーンの立場にそっくりだね」

グラジオ「その神官が笛の制作に関わっているのか?」

アセロラ「うん、神官たち4人が力を合わせて、太陽と月、二つの笛を作ってアローラの王様に献上して、儀式で王様に選ばれた2人の人間が祭壇に立って笛を吹いてルナアーラに感謝を捧げてた……っていうのがこのページに書かれていることだよ」

ひろし「しまキングたちの原型である神官たちが力を合わせて太陽と月の笛を作っていた……」

ククイ博士「神官とカプが深いつながりにあるということは、カプも笛作りに関わっていることになるね」

グラジオ「神官とカプが関わって笛を作る……。この情報だけではなんとも、な」

アセロラ「きっと笛を作るための素材とか、道具とか何かを与えてたと思うんだ。カプが直接作るっていうより、きっかけを与えてたのかも」

リーリエ「きっかけ……ですか」

ハウ「あー! おれわかったかもー!」

グラジオ「なにがだ?」

ハウ「笛がなにで出来ているのかー!」

みさえ「なにで出来ているの?!」

920: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:19:25.25 ID:hqUZpqG30
ハウ「かがやく石ー! たぶん、Zリングと同じかがやく石で出来てるんだよー!」

全員「!!」

ハウ「当たってるー?」

ククイ博士「そうか! Zリングを加工するようにカプから石をもらって神官たちが笛を作っていたのだろう! 神官とカプが協力して作ったっていう事も間違っていない!」

ビッケ「失礼ながら……よろしいでしょうか」

今までドアのそばで控えていたビッケが一歩前に出て口を開く。

ビッケ「ハウさんのおっしゃるとおり、壊れた月の笛の素材は、財団のデータベースに記録されているZリングの素材とほぼ合致していることが判明しました。ですので、かがやく石を用いれば、修復が可能かと」

ククイ博士「スピードスターの命中率と同じくらい大当たりだよ! ハウ! よく思いついたね!」

アセロラ「うん、盲点だったかも!」

ハウ「じーちゃんがかがやく石をZリングに加工してるの、何度も見てたからねー」

リーリエ「……カプさんたちは、しまキングの資質がある人に必ずかがやく石を渡すのがほとんどでした。ハプウさんがしまクィーンになられた際も、カプ・レヒレさんから渡されたのを見ました!」

みさえ「それじゃあかがやく石を手に入れれば……」

ひろし「月の笛を修復できるってことだな!」

921: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:20:54.83 ID:hqUZpqG30
グラジオ「……だが、カプはおろか、しまキングたちは島を離れることができない。住民を避難させたり、ビーストから島を守らなきゃいけないからな」

ククイ博士「そのうえ、今は連絡を取ることも困難だろうね」

みさえ「どうしてですか?」

グラジオ「一般回線は混雑して……ほとんど繋がらない状態だからだ」

ひろし「だとすると、誰かがしまキングたちに、直接このことを伝えに行かなきゃいけないってことか……」

ハウ「じゃあおれ、じーちゃんに月の笛のことを伝えに行くよー!」

ひろし「ハウくんは船、運転できないだろ? 俺も一緒にメレメレに行くぜ」

みさえ「あなた……平気なの?」

ひろし「大丈夫だ、俺がヘマする男に見えるか?」

みさえ「見える」

ひろし「」ガクッ

ククイ博士「そうだ、ならもうひとつ、僕の研究所のポケモンたちのことも頼む。みんなボールに入れてあるとは言え、研究所がビーストに襲われるかもしれないからね」

ハウ「わかったー!」

922: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:23:01.48 ID:hqUZpqG30
ククイ博士「それじゃあ僕はアーカラに行ってライチさんに会ってくるよ! 空間研究所のこともあるしね」

グラジオ「ならば……オレはウラウラのクチナシさんに会いにいくとしよう」

アセロラ「エー! アセロラがクチナシおじさんに話すよ! それに、ウラウラのキャプテンだもん」

グラジオ「アセロラ、お前はここに残って笛の修復を手伝ってもらいたい。ついでにもう一つ、リーリエのこともあるしな」

アセロラ「リーリエのこと?」

グラジオ「リーリエは、ポケモントレーナーになったんだ。……といっても、手持ちは全てしんのすけから預かったものだがな」

アセロラ「アセロラちゃん、またまたお口あんぐり! ほんとなの?」

リーリエ「はい! しんちゃんのポケモンさんたちと一緒に、ビーストさんの世界に行ってかあさまとしんちゃんを取り戻すのです!」

グラジオ「だからキャプテンのお前が、リーリエにトレーナーのことを色々教えてやってくれ。お前がウラウラを離れることについてはオレからクチナシさんたちに話しておく」

アセロラ「わかった! アセロラ、気合入れてリーリエちゃんを鍛えるからね! 覚悟してよ!」ビシッ

リーリエ「どんとこい、です!」

ククイ博士「後はポニ島のハプウだね。誰が行くんだい?」

ハウ「じゃあおれとおじさんで行くー! メレメレとポニは隣同士だしー。おじさん、いいよねー?」

ひろし「ああ、わかった。しんのすけを助けられるのなら、どこへでも連れてってやるさ」

924: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:26:12.33 ID:hqUZpqG30
グラジオ「決まりだな。後でそれぞれに財団専用の回線を使っている通信端末を渡しておく。連絡手段はそれで取ってくれ」

ククイ博士「それともう一つ。これも渡しておこうと思う」

ひろし「それは?」

ククイ博士「ウルトラホールみっけマーク3(※命名マーマネ)。ウルトラホールの発するエネルギーを探知できる機械で、もしビーストに近づいたり、ホールが開きそうになったら音と振動で伝えてくれるそうだ」

グラジオ「よくそんなものを……まだ各島に穴が開いてそう日は経っていないはずだが」

ククイ博士「ホラクニ岳の天文台所長で発明好きの親友と、カンタイにある空間研究所の所長の妻がいるからね。僕がパイプになって、ウルトラホールの情報や天文台の技術を交換しあっているから出来たことなのさ!」

みさえ「博士って……思ったよりすごい人なんですね……」

ククイ博士「あはは、これを機に見直してくれると嬉しいですよ、奥さん」

ハウ「それじゃあ早くしまキングたちのところに行こうよー!」ピョンピョン!

グラジオ「ああ」

925: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:26:59.88 ID:hqUZpqG30
ひろしたちは会議室を出て行くと、非常階段を下って船着場へ出た。船着場には、財団のが使用する小型船、グラジオの小型船、ククイ博士のクラシックヨットが並んでいた。
各々がそれぞれの船に乗ると、エンジンを起動させた。

最初にひろしとハウの乗った小型船が、次にグラジオの船、最後にククイ博士のヨットが、ビーストたちの蔓延るアローラの島へ向けて大海原を走り出した。

みさえ「あなた……」

リーリエ「みなさん……気をつけて」

アセロラ「頑張ってねー!」

ひまわりを抱えたみさえとリーリエが4人の身を案じるように、アセロラと彼女の連れてきた子供たちは4人を応援するように手を振って見送った。

926: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:28:39.72 ID:hqUZpqG30
――時間は遡って、しんのすけがルザミーネに攫われる直後

しんのすけ「おわぁぁっ! リーリエちゃんっ! リーリエちゃんっ!」ズズズッ

リーリエ「しんちゃーーーんっ!!」

みさえ&ひろし「しんのすけーーーっ!」

しんのすけ「とーちゃん! 『やんちゃDEブリーダー』録画しといてぇぇぇぇ!!」

ルザミーネの触手に引っ張られて、ウルトラホールの中に引きずり込まれるしんのすけ。ひろしとみさえ、そしてリーリエの姿も一瞬のうちに見えなくなってしまった。
一瞬全身がひねるような感覚がしたかと思うと、今度はしんのすけのZリングが熱くなるのがわかった。

そして気が付くと、しんのすけたちはポニの大峡谷から奇妙な植物の生えた、洞窟の中へと場所が変化していた。

しんのすけ「なに? ここ……」

ルザミーネ「ようこそ、わたくしとビーストちゃんだけの甘くて美しい真実のパラダイス、『ウルトラスペース』へ……!」

しんのすけ「えぇ? ここのどこがパラダイス? 甘いならお菓子とか用意してよね」

ルザミーネ「そういう意味での甘い、じゃないのよ」

しんのすけ「てゆうか、そろそろ離してよ。苦しいってば」

ルザミーネ「離すものですか。あなたは、何をしでかすか分かったものじゃないですからね……フフ、アクジキングの餌にでもすれば、喜ぶかしらね」

しんのすけ「あ……オラ、おしっこしたくなっちゃった」ブルッ

927: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:31:36.70 ID:hqUZpqG30
ルザミーネ「そんなつまらない脅しで、わたくしに揺さぶりをかけても――」

ジョボボボ

しんのすけ「おおう……おう」ブルブルッ

ルザミーネ「汚らわしいっ!!」ブンッ!

ルザミーネは用を足しているしんのすけを、勢いよく地面に投げつけた!

しんのすけ「いぢぢぢぢ! なにすんの! オラのきんのたま潰れるところだったじゃないか!」

ルザミーネ「よくも……よくもわたくしとビーストの世界にそのような汚物を!」ワナワナ

しんのすけ「汚物なんて……そんな放送禁止用語、使っちゃいけません」

ルザミーネ「下半身を丸出しにしているあなたに言われたくありません!」ブンッ!

しんのすけ「!」サッ

ルザミーネは怒りに身を任せるように触手をしんのすけの脳天めがけて振り下ろした。すかさずしんのすけが横に回避すると同時に、地面が揺れて砂煙があがる。

ドゴォッ!

ルザミーネ「あああうっ!!」ドンドンドンッ!!

ルザミーネがパワージェムをしんのすけに向けて放つ!

ドカンドカンドカンッ!

928: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:32:17.66 ID:hqUZpqG30
ルザミーネ「ちょこまかと……おいでなさい! ビーストちゃん!」ヒョイッ

ウツロイド「じぇるるっぷ……」ポンッ!

デンジュモク「デンデンッ!」ポンッ!

テッカグヤ「フー……!」ポンッ!

しんのすけ「ぬー! こっちだって、カザマくん、レッツラ……」

ボールを出そうと腰に手を触れるが、肝心のボールそのものは、向こうのズボンのベルトにくっついていることを、しんのすけは忘れていた。

しんのすけ「やべ……みんな忘れてきちゃった」

ルザミーネ「しんのすけ君を始末なさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」

ウツロイドとデンジュモクがしんのすけに接近し、テッカグヤが腕の先をしんのすけへと向ける!

しんのすけ「ど、どうしよ~きゅうすがバンジーしてなんて言うんだっけ~!」

929: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 20:35:34.06 ID:hqUZpqG30
『……!』ダッ!

しんのすけ「うぉ、なんだ?」フッ

その時、しんのすけの身体が何者かに掴まれ、一瞬のうちに姿を消してしまった!

ウツロイド「じぇる……!」ドカッ!

デンジュモク「デンッ……!?」バキッ!

すると、次の瞬間ウツロイドたちに強烈な打撃が入り、その身体をふらつかせた。

ルザミーネ「!?」

ルザミーネ「今のは野生のビースト? でも、なぜしんのすけ君を助ける真似を……?」

ルザミーネ「……ともかく、しんのすけ君を早急に始末しなくてはいけませんね! ホールを開けつつ、消えたしんのすけ君を探さないと」

しかし、ルザミーネはふと足を止めて、考え込んだ。

ルザミーネ「……でも、しんのすけ君のあの身体能力……それに5歳ながら島巡りで大試練をこなしたものね。Zリングも持っている……」

すると、ルザミーネの頭の中に、悪魔のような発想が生まれた。このままあの幼くて強い子供を始末するのは非常に惜しい。だったら……。
そう考えると、かえってしんのすけの存在が愛おしく思えてきた。彼をどうにか掌中に収めることができれば、ビーストも……。

ルザミーネ「フフフッ……あはははっ!! しんのすけくん……あなたは殺さないであげる。たくさんたくさん、溢れるほどの深い愛をあなたに注いであげるわ」

ルザミーネ「愛に満たされて、わたくしのことしか考えられないくらいに、ね……」

2: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/12(月) 21:22:55.02 ID:hqUZpqG30
『……!』ダッ!

しんのすけ「うぉ、なんだ?」フッ

その時、しんのすけの身体が何者かに掴まれ、一瞬のうちに姿を消してしまった!

ウツロイド「じぇる……!」ドカッ!

デンジュモク「デンッ……!?」バキッ!

すると、次の瞬間ウツロイドたちに強烈な打撃が入り、その身体をふらつかせた。

ルザミーネ「!?」

ルザミーネ「今のは野生のビースト? でも、なぜしんのすけ君を助ける真似を……?」

ルザミーネ「……ともかく、しんのすけ君を早急に始末しなくてはいけませんね! ホールを開けつつ、消えたしんのすけ君を探さないと」

しかし、ルザミーネはふと足を止めて、考え込んだ。

ルザミーネ「……でも、しんのすけ君のあの身体能力……それに5歳ながら島巡りで大試練をこなしたものね。Zリングも持っている……」

すると、ルザミーネの頭の中に、悪魔のような発想が生まれた。このままあの幼くて強い子供を始末するのは非常に惜しい。だったら……。
そう考えると、かえってしんのすけの存在が愛おしく思えてきた。彼をどうにか掌中に収めることができれば、ビーストも……。

ルザミーネ「フフフッ……あはははっ!! しんのすけくん……あなたは殺さないであげる。たくさんたくさん、溢れるほどの深い愛をあなたに注いであげるわ」

ルザミーネ「愛に満たされて、わたくしのことしか考えられないくらいに、ね……」

6: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:15:23.11 ID:31e3ztue0
メレメレ島(ひろし&ハウ)

ひろしとハウがメレメレ島に近付いてまず気がついたのは、島のあちらこちらから黒煙が上がっていることだった。接近するにつれて、ハウオリシティの建物から火の手が出ている事実を2人に突きつけた。
船着場に着いたところで、2人は街の惨状と事態の重さを改めて実感した。

ハウ「これ……みんなビーストがやったのー……?」

ひろし「ひでぇ……最初に来た時とはえらい違いだ……」

ハウ「うんー……みんな、無事だといいけどー」

すると、遠くからハウの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

???「ハウくん!」

ひろし&ハウ「!」

ハウ「イリマさんー!」

現れたイリマは、相変わらずの爽やかな表情ではあるものの、鮮やかなピンク色の髪やトレーナーズスクールの制服が、ところどころ煤で汚れていたり、破れている。

イリマ「はい! キャプテンのイリマです! あなたがたが船でやってくるのが見えたので、駆けつけてきました! どうなさったんですか?」

7: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:27:46.43 ID:31e3ztue0
ハウ「おれたちーじーちゃんを探しに来たんだー。今、じーちゃんはどこにいるのー?」

イリマ「ハラさんですか? ハラさんはリリィタウンで、巨大ポケモンから逃げてきた人たちの保護に当たっています。なにかあったのですか?」

ハウ「実は月の笛を直すのに、カプのかがやく石が必要でー……」

…… …… ……
ハウとひろしはイリマにこれまでのことを説明した。
…… …… ……

イリマ「なるほど……あれはビーストと言うのですね。では僕がハラさんのところまでご案内いたします!」

ひろし「その前に、俺たちは博士の研究所に行って、ポケモンを保護しに行かなくっちゃいけないんだ。一番道路のところで待ち合わせ……ということには出来ないかな?」

イリマ「そうですね……今はビーストの攻撃も収まっていますし。分かりました。では1番道路に向かうよう、ハラさんに伝えておきますね!」

ひろし「よし、なら俺たちも急いで研究所に向かおう。研究所のポケモンを、急いで保護しなくっちゃな!」

ハウ「うんー、イリマさん、お願いー!」

イリマ「任せてください!」

8: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:30:12.47 ID:31e3ztue0
1番道路 博士の研究所前

ひろし「くそっ、ビーストの奴ら、俺たちの新しい家まで……!」

ひろしは、ハウオリシティはずれにある自宅の焼かれていた姿を思い出して、ビーストとルザミーネに対して怒りに震えていた。

ハウ「おじさん……」

ひろし「……ああ、ごめんなハウくん。今は怒ってる場合じゃないな。早いとこ博士のポケモンを見つけなきゃ」

ハウ「そうだねー……とりあえず、研究所は無事みたいだけどー」

ガチャ

ひろし「博士のポケモンはみんなボールの中に入ってるって言ってたよな」

ハウ「うんー博士が留守にするときは水槽の中のポケモン以外はボールに入れてあるんだー。じゃないと脱走しちゃったりするしー」

ひろしは水槽を覗くと、サニーゴやラブカスと目を合わせた。どちらとも、今何が起きているのか、本能で分かっているのか不安そうな視線を送っている。

ラブカス「ラブゥ……」

サニーゴ「サニーゴ……」

9: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:31:01.42 ID:31e3ztue0
ハウ「よしよしーみんなボールに戻って博士のところにいこー!」

ひろし「俺は地下の方を探してみるよ」

ひろしは水槽のすぐそばにある階段を降りて、地下室へと降りていった。電気は止められているのか、あたりは真っ暗で、持っていたスマートフォンのライト機能を明かりにして探し回る。

ひろし「……あった!」

博士の机の上にいくつものモンスターボールが置かれているのをひろしは見つけた。それらを回収しようと手を伸ばした時だった。

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ひろし「!」

10: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:45:24.62 ID:31e3ztue0
ハウ「おじさんっ! ビーストが近くに来てるよー!」

ひろし「ああ、わかってる!」

ひろしは急いでモンスターボールを回収すると階段を駆け上って、ハウと研究所を飛び出した。

ドカァァァン!!

ひろし&ハウ「!」

ハウ「研究所がー!」

何者かの攻撃を受けて炎上する研究所。
炎の向こうに、巨大な影が現れたことにハウとひろしは気付いて身構える。

テッカグヤ「フゥー……」ゴゴゴ

ひろし「でけぇ……! ポニ島で見たやつより倍はあるぞ!」

ハウ「おじさん離れててー!」スッ!

ハウ「行くよー! ガオガエン!」ヒョイッ

ガオガエン「ガオォォォッ!」ポンッ

ハウ「ガオガエン、DDラリアットー!」

ガオガエン「オオオッ!」ギュルルンッ!

11: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:47:34.49 ID:31e3ztue0
ガオガエンは両手に闇の力が宿った炎を纏うと、両腕を広げてテッカグヤに突進した! テッカグヤは2つの噴射口から銀色に輝く弾丸を発射するが、ひるまずテッカグヤにタックルを食らわせた。

ガオガエン「ガォオォォッ!」

ズズンッ!

テッカグヤ「フゥー……?!」グラリ

ひろし「効いたか?」

ハウ「……」

テッカグヤは傾いた身体を持ち直すと、なんと身体の下部と両腕の噴射口が点火して空へ飛び始めた。その衝撃と熱で、ガオガエンはおろか、ひろしとハウが吹っ飛ばされる。

ハウ「うわっ……!」

ひろし「ハウくん、大丈夫か?!」

ハウ「平気ー!」

ハウは吹っ飛ばされてもなお、テッカグヤへと視線を向けていた。テッカグヤは空高く上昇していた。そのままどこかへ飛び去っていくのかと思いきや、大きく旋回して身体の先端をこっちに向けて落下し始めた。

12: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:49:17.84 ID:31e3ztue0
キィィィィン!

ひろし「おいおいおい! こっちに落ちてくるぞ!」

ハウ「ガオガエン! 逃げてー!」

ガオガエン「ガォォォッ!」ダッ

2人と1匹が草むらの中を走り出してきた頃、上空からテッカグヤの落下音が轟いた。そして大音量の破壊音と衝撃が背中を襲い、再びひろしとハウ、そしてガオガエンは吹き飛ばされた。

ゴゴゴゴ……

ハウ「ガオガエン、おじさん、だいじょーぶ?」

ひろし「く、ううっ……今のはヘビーボンバーか……?! あんな巨体が落ちてくるなんて……」

ガオガエン「ガオオ……」

テッカグヤ「フー……」

落下地点とおぼしきクレーターから、テッカグヤが起き上がって、こちらへ顔を覗かせてていた。

13: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:50:26.66 ID:31e3ztue0
ひろし「ハウくん……悔しいが今は逃げよう! こいつとまともにやりあって勝つのは無理だ……!」

ハウ「ううー……。ガオガエン戻ってー」

ハウがガオガエンをボールに戻そうとした時だった。テッカグヤが噴射口をこちらへと向けてきた。

ひろし&ハウ「!」

テッカグヤ「フー……」キィィン

ひろし「やばっ……!」

ハウ「おじさん……!」

噴射口が熱を帯びて光りだす! それが何を意味するのか、2人はすぐに理解したと同時に死を覚悟した。その時だった。

「カ プ ゥ ー コ ッ コ ォ ー ッ ! !」

14: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:52:00.75 ID:31e3ztue0
バチチチッ!!

テッカグヤ「フー……!??」

ひろし&ハウ「!?」

テッカグヤに雷が落ちてきたかと思うと、電気を帯びながらそのままぐらりと再び傾き、今度こそ倒れてしまった。噴射口から、爆炎が出る気配もない。

ズシンッ

テッカグヤ「……」

ひろし「今のは……?」

ハウ「この声……!」

「カプゥー!」ギュンッ!

バチバチと電気を帯びながらふたりの前に現れたのはメレメレの守り神、カプ・コケコだった。外殻を外して、ひろしとハウを静かに見つめている。

ハウ「わー! カプ・コケコだー!」

ひろし「このポケモンが、カプ・コケコなのか!」

ドタドタドタッ

ケンタロス「モォォォッ!」

???「お二人方! ご無事ですかな?」

15: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:53:03.56 ID:31e3ztue0
ハウ「じーちゃん!」

ひろし「ハラさん!」

ハラ「カプ・コケコを追って来てみれば、ハウとひろしさん……危ないところでしたな」

ひろし「ハラさん、ありがとうございます」

ハラ「礼なら私よりカプ・コケコに……」

ハウ「じーちゃん、実は……」

ハラ「うむ、話はイリマより聞いております。……ですが、かがやく石はそれぞれのカプがしまキングに渡す特別なもの。まずはカプ・コケコに判断を委ねましょうぞ」

ハウ「お願い、じーちゃんー……」

ハラ「ハウ、いつもの元気はどうしましたかな?」

ハウ「じーちゃん……。ごめん、おれ、ビーストに壊された街を見て、すごいショックを受けちゃってー……。こんなことになるなんて、思わなかったからー……」

ハラ「……しまキングの孫のハウよ。気を強く持ちなさい。お前は島巡りを経て心も身体も強くなったはずですぞ」

ハラ「街のことは心配めさるな。事態が収まったあとで、みなで復興すればいいのですから。ですが、ハウが折れてしまってはそれすら出来なくなってしまいますぞ!」

ハウ「うん、じーちゃん……」

16: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:53:54.93 ID:31e3ztue0
ハラはハウの頭をなでると、カプ・コケコへと近づいた。

ハラ「今の話……お聞きになりましたかな?」

カプ・コケコ「……」

ハラ「カプ・コケコよ。お頼み申します。これは、アローラにとっても未曾有の危機なのです。どうぞ、孫たちに未来を与えてくだされ……!」

ハウ「お願いー! カプ・コケコー!」

ひろし「俺からも、頼む!」

カプ・コケコ「……」

カプ・コケコは燃える博士の研究所をバックに、ひろしとハウ、そしてハラを試すように見つめている……。

17: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:55:53.76 ID:31e3ztue0
カプ・コケコ「カプゥー! コッコォー!」バチチチッ!!

カプ・コケコは電気を再びまとい始めると、ハウオリシティの方角へと飛んでいってしまった。

ひろし「……ダメだったか」ガックリ

終わった。自分たちの願いは、カプに届かなかったのか。落胆するひろしだが、ハラは首を横に振った。

ハラ「いえ……カプ・コケコは、『後は任せたぞ』とおっしゃられてました。その証拠に――」

そう言って、ハラは草むらに落ちている、かがやく石をひろしたちに見せた。

ハウ「それってー……!」

ひろし「かがやく石だ!」

ハラ「……持って行きなされ。そして頼みましたぞ! アローラの存亡は、あなた方にかかっています!」つ かがやく石

ハウ「うんー! ありがとーじーちゃん! カプ・コケコー!」

ひろし「よし、それじゃあ次はハプウちゃんのところだ!」

18: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:57:39.46 ID:31e3ztue0
カンタイシティに着いたククイ博士は、ビーストとの戦いで疲弊したマオとスイレンの代わりに、ウルトラビーストたちの相手をしていた。

ククイ博士の相手をしているのは、マッシブーンとは逆に華奢で細身の身体付きをし、髪のように伸びた羽を持つ白いウルトラビースト、フェローチェ。それが3匹、ククイ博士の前に立ちふさがっている。

対するククイ博士は、まひるのすがたのルガルガン1匹のみ。数の差で不利と思われたが……。

ククイ博士「よーしルガルガン! いわなだれだ!」

ルガルガン「ウォーーンッ!」

ルガルガンはジャンプし、フェローチェたちに向けて粉々にした岩を雨あられのごとく投げつけた!

フェローチェたち「フェロッ……!?」

ククイ博士「そして、ビーストたちにアクセルロックだ!」

ルガルガンは高速で飛び出すと、いわなだれで怯んだフェローチェたちに突っ込み、次々と跳ね飛ばしていく! そのままフェローチェたちはバタバタと道路に倒れ伏していった。

ククイ博士「ジャスト4ターン。予言通りだったろ?」

19: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 18:58:32.30 ID:31e3ztue0
スイレン「いわなだれで敵を怯ませつつ、アクセルロックで素早く仕留める……さすがです!」

カキ「さすがバトルロイヤルの伝道師、ロイヤルマスク! 不謹慎だが、燃える戦いだ!」

バーネット「えっ? ククイ君がロイヤルマスクなの?」

ククイ博士「日夜技の研究をしているからね。もちろん複数の相手を倒せる技も把握しているから、このくらいお手の物さ!」

ククイ博士「そしてカキ、僕はククイ博士であって、ロイヤルマスクではない!」

バーネット「あぁ、びっくりした。そうよね、体格も戦い方もロイヤルマスクに似ているけれども、ククイ君の方が魅力的だもの」

ククイ博士「う、うーん……なんか微妙な気分」

ククイ博士「ところでバーネット、ウルトラホールの状況はどうだい?」

バーネット「今のところ、カンタイ周辺にウルトラホールが開く気配はないみたい。空間も安定しているし、ここの住民を安全な場所へ避難させるなら、今が一番かもね」

ククイ博士「わかった! それじゃあカキ! スイレン! 君たちは引き続きアーカラ各地にいる、避難している人たちの保護を頼むよ!」

カキ「わかった、おれはロイヤルアベニュー周辺に向かう。スイレンはオハナタウンを頼む」

スイレン「はい!」

20: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:00:26.95 ID:31e3ztue0
カキはライドポケモンのリザードンに乗って空を飛んでロイヤルアベニューへ、スイレンはケンタロスにまたがってオハナタウンへと向かっていった。

バーネット「後はライチさんとマオがうまくやってくれるといいのだけれども……」

ククイ博士「うまく行くさ。さっきハウとしんのすけのお父さんから、メレメレでかがやく石を手に入れたっていう連絡が来たよ。今2人はポニ島に向かってるそうだ」

バーネット「カプ・コケコは協力的ってことね。残りのかがやく石はここを含めて3つ……。でも、きっと他のカプも手を貸してくれるわよね」

ククイ博士「ああ!」

ライチ&マオ「博士!」

ククイ博士「!」

ディグダトンネルから、ライチとマオが出てきてククイ博士たちに手を振った。ククイ博士が二人のもとへ走り寄る。

ククイ博士「どうだったかな? カプ・テテフは……」

21: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:03:00.51 ID:31e3ztue0
ライチとマオは顔を合わせると、示し合わせたように頷いた。

ライチ「カプ・テテフもできる限り協力すると言っていたよ。もともと、カプ・テテフもビーストが襲来してきたとき、怪我した人とポケモンたちを積極的に治していったからね。……やり過ぎないよう注意しているけどさ」

マオ「これがカプ・テテフからいただいたかがやく石でっす!」

マオの手には、かがやく石が握られていた。それをククイ博士へと手渡す。

ククイ博士「よし、これでかがやく石は残り2つだ!」

ライチ「ん、メレメレかウラウラのどちらかが石を貰えたのかい?」

ククイ博士「ああ、メレメレでカプ・コケコから石を貰えたって連絡が入ってきてね。今、ハウとしんのすけのお父さんがポニ島に向かっているよ」

ライチ「となると、ウラウラとポニか。クチナシとしまキングの孫のハプウ……だったね。2人がうまくカプに取り計らってくれるといいけれども」

ククイ博士「大丈夫。きっとうまくいくさ!」

ライチ「それにしても、財団の代表……ルザミーネだっけねぇ。このアローラにビーストを解き放つだけじゃなくて、大試練を終えて疲弊したしんのすけに手を出して、ビーストの世界にさらうなんて、許せないね」

マオ(初対面でしんのすけ君をお持ち帰りしようとしたのにそれ言うんですか……)

ライチ「リーリエは、しんのすけと母親を取り戻しにビーストの行く世界に行くつもりなんだろ? なにか母に対して深い事情でもあるんだろうね。できることなら、手伝ってやりたいけどさ」

ククイ博士「それはリーリエ自身が解決しなきゃいけない問題だよ。僕らが深入りしていいことじゃない。僕らがするのは、この世界を守ることだよ」

ライチ「そうだね……」

22: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:03:47.29 ID:31e3ztue0
ククイ博士「……ライチさん。いや、マオにも訊いてみようかな」

マオ「はい?」

ククイ博士「君たちはビーストと戦ってみて、他のポケモンと比べてなにか感じるものはあったかい?」

ライチ「ビーストと戦って感じるもの、ねぇ」

マオ「あたしは正直、早く街の人たちを避難させなきゃって思っていたので……そういうことを考えている余裕がありませんでした。強いて言うなら……なんとなくですけど、ぬしポケモンのラランテスと同じオーラをまとっていたのを見たくらいです」

ライチ「そうだね……あたしは特に何も感じなかった、かな」

マオ「えっ……?」

ライチ「確かにビーストたちと一戦交えてみると、そこらのポケモンとは比べ物にならない戦闘力を持っているよ。ひょっとしたら、1匹1匹が伝説のポケモンに肉薄するくらい強いかもね」

ライチ「だけど、それ以上だね。ビーストたちは強いポケモンだけど、後は草むらから飛び出してくる野生のポケモンとそう変わらない気がする」

23: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:04:43.18 ID:31e3ztue0
ククイ博士「僕も同じ感情を抱いたんだ。さっき、白いビースト3匹と戦ってみたけれどもね……繰り出してくる技は、僕が知っているかくとうやむしタイプの技ばかりだったんだ」

ククイ博士「戦闘力は桁違いだし、その凶暴性もさることながら……だけど、ビーストもまた、ポケモンということかもね」

ライチ「そうだね……ビースト自身もひょっとすれば、他のポケモンと同じように心が通じ合えるかもしれないね」

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

全員「……!!」

ククイ博士「ビーストの反応……!」

バーネット「周りの空間に歪みは見られないから、どこか近くにビーストがいるっていうことかしら?」

マオ「ライチさん! あそこです!」

マオが空を指すと、遠くにマッシブーンとフェローチェの群れがこちらに向かって飛んできたではないか!
数え切れないほどのマッシブーンとフェローチェが羽音を立ててククイ博士たちの上空を通り過ぎていくが、そのうちの数匹がククイ博士たちの存在に気付いて、降り立ってきた!

マッシブーンたち「ブゥーーンッ!」フロントダブルセップス!

フェローチェたち「ローッ……!」ビシッ

24: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:05:42.45 ID:31e3ztue0
ライチ「行くよ、マオ!」スッ

マオ「はい、ライチさん!」スッ

ククイ博士「僕も加勢する――」

ライチ「博士、あんたは船に乗ってエーテルパラダイスに戻るんだ! この島を守るより、やるべきことがあるんだろ!」

ククイ博士「!」

ライチ「さ、ここはあたしらに任せて、早く行きな。それで、絶対にしんのすけのこと、取り戻すんだよ。あの子はライチさんを初めてナンパしてくれたからねえ。その想いに応えてあげないと」ニヤッ

マオ「ライチさん……」ジローッ

ライチ「ふふふ……ジョークはともかくとして、アローラのこと、アンタたちに託したからね」

ククイ博士「ああ、任せてくれ! バーネット、行くよ!」

バーネット「ええ!」

2人が船着場へと走り出したところで、ライチとマオは一斉に各々のボールを投げつける。

ライチ「頼んだよ、ダイノーズ!」ヒョイッ

マオ「行くよ! アママイコ!」ヒョイッ

ダイノーズ「ダノノー!!」ポンッ

アママイコ「アッマーイ!!」ポンッ

25: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:06:36.35 ID:31e3ztue0
ライチ「ダイノーズ、いわなだれ!」

マオ「アママイコ、ふみつけ!」

ダイノーズ「ノズズッ!」ズズズッ

アママイコ「アマッ!」ダッ

ダイノーズが無数の岩をマッシブーンとフェローチェに向かって落としていき、アママイコは1匹のフェローチェに向けて頭上へジャンプし、踏み潰すように足を勢いよく振り下ろした!

マッシブーンA「ブーンッ!」グッ!

フェローチェA「フェロッ!」フッ!

しかしフェローチェは一瞬にして姿を消して回避し、マッシブーンはいわおとしを両手で受け止める。
更に、着地したアママイコを狙いすましたように、別のフェローチェがとびひざげりを放ち、ダイノーズにフェローチェと同様別個体のマッシブーンがアームハンマーを繰り出した!

ドゴッ!

ドガッ!

ダイノーズ「ダノッ!?」

アママイコ「アマィッ!」

マオ「アママイコ!」

ライチ「ダメだ、数が多いね!」

26: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:10:52.32 ID:31e3ztue0
更にダメ押し、と次々とマッシブーンとフェローチェたちがダイノーズとアママイコ、更にはトレーナーのライチとマオに襲いかかってくる!

マッシブーンたち「ブゥゥゥンッ!」ドドドド!!

フェローチェたち「フェロォォッ!」ドドドド!!

ライチ「くっ……!」

マオ「ライチさん!」

???「ゴルバット! エアスラッシュ!」

???「ラランテス! ソーラーブレード!」

ゴルバット「ゴルルッ!」バサバサッ!

ラランテス「ラランッ!」ブンッ!

マッシブーンB&フェローチェB「!」

27: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:11:46.26 ID:31e3ztue0
ゴルバットの空気の刃がマッシブーンたちの筋肉の身体を次々と切り裂いてその身を怯ませ、太陽の力を得た光の刃が、フェローチェたちを吹き飛ばしていく!

マッシブーンB「ブ、ブンッ!」ザクザクッ

フェローチェB「フェローッ!?」ザンッ

マオ「い、今のは……?」

ザッ

???「ビーストにダメージを与えたよスッチー!」

???「やったねスカりん!」

スッチー&スカりん「ふたりの愛の力は、ビーストにだって負けない!」

ライチ「……あんたたちは!」

マオ「スカル団?!」

マッシブーンB「ブンブーンッ!」グワッ!

フェローチェB「フェロォォ!」フシューッ!

スッチーとスカりんに倒されたマッシブーンとフェローチェが起き上がり、4人に襲いかかる!

スッチー「ひええ! こっちに来たーっ!」

スカりん「やっぱ戦わなきゃよかった怖いよスッチー!」

28: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:15:21.10 ID:31e3ztue0
ライチ「くっ……!」

助けに行こうとも、ダイノーズは傷ついて動けない。このままじゃ大変なことになる――。その時だった。

「カ プ ゥ ー フ フ ! !」

カッ!!
ドンドンドンッ!!

マッシブーンたち「ブッ……!?」ドッ!

フェローチェたち「ロォッ?!」ドッ!

ライチ「……!」

咆哮と供に不思議な光弾がマッシブーンとフェローチェたちへ落下したかと思うと、次々とビーストたちが倒れていく!
その直後、今度はキラキラと光る鱗粉がライチたちの前に降り注ぎ、傷ついたダイノーズとアママイコの傷が塞がっていく。

29: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:15:58.13 ID:31e3ztue0
ダイノーズ「ノズズッ!」ギラッ

アママイコ「アッマーイ!」シャキーン!

マオ「ムーンフォースに鱗粉……ライチさん、これって!」

ライチ「ああ……」

空を見上げると、桃色の光がコニコシティの方角に向かって消えていくのが見えた。

ライチ(……ありがとう、カプ・テテフ)

スカりん「なんだか知らないけど助かったよスッチー!」ギュッ

スッチー「私たちの愛の力ね、スカりん!」ギュッ

ライチ「……」イラッ

30: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:30:19.29 ID:31e3ztue0
その頃、ウルトラスペースでは――。

気が付くと、ルザミーネや彼女の手持ちのウルトラビーストの姿が消えており、しんのすけは優しく地面に下ろされた。
しんのすけはきょとんとしていると、他の個体より小さなフェローチェが、しんのすけの顔を覗いていた。

フェローチェ『お怪我はありませんでしたか? しんのすけ様……いえ、しん様』

しんのすけ「あんた誰? なんでオラの名前知ってんの?」

フェローチェ『覚えていませんの……。でも、わたくしはあなたに助けられたこと、忘れていませんわん』

しんのすけ「そうだっけ? てゆうか、どっかで聞いたことあると思ったら、あいちゃんみたいな声してるね」

フェローチェ『あいちゃん……とは存じませんが、どなたでしょうか?』

しんのすけ「カスカベ地方にいる、オラのお知り合いの1人。とってもお金持ちで、いつもオラに付きまとってマサオくんをこき使ってるの」

フェローチェ『それに似ていると?』

しんのすけ「そーそー、声もカザマくんたちのように似てるし、しん様って呼ぶの、まんまあいちゃんだし」

フェローチェ『まぁ、しん様のお知り合いに似ているなんて、光栄ですわ。なんなら、そのままあいと呼んでくださいませ。なにせ、人間に呼ばれる名前が無いので』

しんのすけ「じゃああいちゃん、なんでオラのこと知ってるの?」

フェローチェ(酢乙女あい)『以前、あなた方に助けていただいたからです。あなた方がアローラ地方と呼ぶ世界のアーカラ島で……』

しんのすけ「あーっ!」

31: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:31:46.22 ID:31e3ztue0
フェローチェ『思い出していただけましたか?』

しんのすけ「……なんだっけ?」

フェローチェ「」ガクッ

しんのすけ「オラ、アーカラ島っていうと、ライチおねいさんとカキくんの乳○しか印象に残ってないからー」

フェローチェ『は、はぁ……』

フェローチェ(なんてマイペースで変わった子なのかしら……初めて見るタイプの人間ですわ)

突然、しんのすけのリュックがもぞもぞと揺れ始めた。

ゴソゴソ

しんのすけ「お?」

ロトム図鑑「ふぅーっ、やっと起動できた」

ロトム図鑑「まったく……変なエネルギーが身体中に流れ込んで強制的にシャットダウンしたかと思ったら、ここはどこだ?」

しんのすけ「あれ? ぶりぶりざえもん、いつのまに?」

32: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:35:22.30 ID:31e3ztue0
フェローチェ『あなたは確か……?』

ロトム図鑑『ふん、忘れたのか。ならもう一度名乗ってやる。その耳かっぽじってよく聞くがよい』

ロトム図鑑「私はアローラ地方のアイドルにしてもりのようかんのゆるキャラ! その名もレオナルド・ロトブリオ。もしくはアレッサンドロトム・フランチェスカ・デ・ニコラと呼ぶが良い」

しんのすけ「ぶりぶりざえもんっていうの」

フェローチェ『まぁ、変わったお名前。ぶりぶりざえもんさん。わたくしはあいですわん』

ロトム図鑑「おいっ! 間違って覚えられたじゃねぇか! どーしてくれる!」

しんのすけ「だって事実だし」

しんのすけ「ねぇ、ひょっとしてあいちゃんってウルトラビーストなの?」

フェローチェ『ウルトラビースト……? そういえば、あの生き物と合体していた人間の女は、あい達をそんなふうに呼んでいましたわん』

ロトム図鑑「なに? お前がウルトラビーストなのか?」

フェローチェ『それより、しん様には確か、カザマくんとマサオくんという方が一緒にいたような気がしたのですが……』

33: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:38:21.87 ID:31e3ztue0
しんのすけ「あーカザマくんもマサオくんも、みんな向こうの世界にはぐれちゃったみたいで。いやぁ全く参りましたな、もう」

フェローチェ『むしろ、あなたがこっちに来てしまったと思うのですが……』

しんのすけ「そうともゆー」

しんのすけ「てゆうか、ここってどこなの?」

ロトム図鑑「GPS機能を使っても、表示されないどころかここは電波も通っていないとは。ここはどこか辺境の地かどこかなのか?」

フェローチェ『あいにも、はっきりとは分かりませんわ。ただ、ここはしんのすけくんにもあいにとっても異なる別の世界で、簡単に言うなら世界の狭間のようなものでは……』

しんのすけ「んー……オラにはさっぱりだけど、ここから元の世界に帰ることって出来る?」

フェローチェ「はい! 『穴』が開いていれば、ですけれども」

しんのすけ「穴?」

34: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:39:16.04 ID:31e3ztue0
フェローチェ『この世界には、いろんな世界へ通じる穴が、時折開かれることがありますわ。ですから、あなたがたがウルトラビーストと呼ぶ、様々な世界からやってきた生き物も、多くここに生息していますの』

フェローチェ『ですから、しん様とぶりぶりざえもんさんのいた世界への穴が開いて、それを見つけることができれば、帰れますわ』

ロトム図鑑「ホントか?」

しんのすけ「じゃあ穴探しに行きますか。ほっとくとかーちゃんとリーリエちゃんがうるさいし、お腹もすいたし」テクテク

フェローチェ『ああ、お待ちになって。あいもお伴いたしますわ! 助けてくれたお礼に、しん様達を元の世界へ送り届けますわ!』

しんのすけ「じゃ、ひとつよろしく頼むねー」

ロトム図鑑「ほんとに頼むぞ。こっちは命かかってるんだからな」

35: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:47:20.64 ID:31e3ztue0
ビーストの世界をさまよい歩くしんのすけたち。あたりには野生のウツロイドがたゆたっており、空には時折フェローチェやテッカグヤが飛んでいる。
かと言って地上は安全かと思ったらそうでもなく、マッシブーンたちがポーズを見せて肉体美を自慢していたり、デンジュモクが闊歩しており、中にはアクジキングが岩壁や植物を口の中に放り込んでいた。
ビーストたちの目をかいくぐりながら、しんのすけたちは元の世界へ通じるウルトラホールを探し歩いていた。

しんのすけ「なかなか穴が見つからないね」

フェローチェ『いつ、どこで向こうの世界に通じる穴が開かれるか分かりませんから……』

ロトム図鑑「くそっ、インターネットが接続できる場所なら救難信号なりGPSが使えたものを。まったくルザミーネめ、面倒なところに連れてきおって。今度会ったらたたでは済まないからな!」

しんのすけ「ぶりぶりざえもんが役に立たないのはいつものことだけどね」

ロトム図鑑「やかましい! だいたいお前もポケモンを図鑑登録しないからだろボケ!」

しんのすけ「だってめんどくさいんだもーん」

36: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:47:59.59 ID:31e3ztue0
ロトム図鑑「ケッ! しょせんちっさいインドぞうさん坊主にトレーナーなど務まらんのだ」

しんのすけ「なんだとー! ぶりぶりざえもんにちっさいインドぞうさんなんて言われたくないもん! インドぞうさんないクセに!」

ロトム図鑑「言ったな貴様! 図鑑に入ってるから見えないだけで、私のインドぞうさんこそ最強だ!」

しんのすけ「オラのインドぞうさんの方が最強だもん!」

ロトム図鑑「いいや私のインドぞうさんこそアローラ1だ!」

しんのすけ「なにおー! オラのインドぞうさんの方が宇宙一だもん!」

フェローチェ(インドぞうさんとはどういう意味なのか知りませんが、なんだかすごく恥ずかしくなってきましたわ……)

しんのすけ「フンだ!」プイッ

ロトム図鑑「フンッ!」プイッ

37: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:50:18.49 ID:31e3ztue0
しんのすけとロトム図鑑は互いに目を合わせないように体ごと逸らしながら進んでいくと、前方に、紙人形のような形をした小さなウルトラビースト――カミツルギが舞い降りてきた。

カミツルギ「……」フワフワ

しんのすけ「なにこれ?」

フェローチェ『この方もきっと、しん様のおっしゃっていた、ウルトラビーストでしょう』

ロトム図鑑「こんな紙っペラがウルトラビースト? はっ、紙飛行機にして吹き飛ばしてやるぜ! 喰らえラスターパージ!!」

意気揚々とロトム図鑑が飛び出す!
するとロトム図鑑の敵意に反応したかのように、カミツルギが動き出した。両手であたかも手刀を打つように、ぶりぶりざえもんへと襲いかかった!

カミツルギ「カミッ!!」ブンッ!

ロトム図鑑「ブヒッ!?」サッ

ザンッ!!

ぶりぶりざえもんが文字通り紙一重で回避した瞬間、彼の背後にある岩と植物が唐竹に割れて、粉々に砕け散った!

しんのすけ「すげー」

カミツルギ「カミーッ!」

38: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:52:30.24 ID:31e3ztue0
カミツルギは敵とみなしたぶりぶりざえもんに対して、何度も斬りかかってくる! その度に周りの岩や植物が切断されていく。

ロトム図鑑「わ゛ーっ! 早くなんとかしろー!」

しんのすけ「やれやれ……あいちゃん、お願い」

フェローチェ『お任せ下さいませ!』バッ

しんのすけのそばに立っていたあいが、一瞬で200キロ近くの速度でカミツルギに突っ込むと、とびひざげりを放った!
あいの不意打ちを受けたカミツルギは回避することもできず、そのまま岩壁に叩きつけられる。

ドゴッ!!

カミツルギ「ヅルッ!」ズズンッ!

しんのすけ「おー早い早い!」パチパチ

あいは2歩分後退すると、カミツルギが斬りかかってくるが次の瞬間にはあいが背後に回り込み、トリプルキックを放った!

ドカドカドカッ!!

カミツルギ「か、カミッ!?」

背中から音速のスピードによる蹴りを3発も受け、カミツルギは一度地面に転がると、相手が悪いと察したのか、奥へと引っ込んでいった。

カミツルギ「カ……カミィ~」フラフラ

39: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 19:53:13.83 ID:31e3ztue0
ロトム図鑑「ふぅ、口ほどにもなかったぜ」

しんのすけ「あんた何もやってないでしょ」

フェローチェ『これがあいの実力ですわ。お手伝いする分には差し支えないと思いますが……お気に召したでしょうか』

しんのすけ「すごいスピードだったねえ。鼻にも止まらぬ速さですな」

ロトム図鑑「それを言うなら、目にも止まらぬ速さだ」

フェローチェ『まぁ、そう言ってくだされば、あいも戦った甲斐がありましたわ』

???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」

しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」

40: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:05:36.59 ID:31e3ztue0
ウラウラ島 マリエシティ(グラジオ)

エーテルパラダイスから離れて、マリエシティに降り立ったグラジオは、クチナシを――それでなくても彼の居場所を知っているキャプテンたちの姿を探していた。
マリエシティもまた、他の島同様、ビーストが暴れて目を覆いたくなるような光景へ変わり果ててしまっていた。
ジョウト地方の趣が残っていた建物のほとんどが崩れ、ひどいものでは、潰れてガレキの山と化したものまで様々だ。
名所であるマリエ庭園に至っては整備された草が焼け焦げ、橋は残骸がギャラドス型の池に沈み、茶屋の建物も火事になって煙を上げていた。

グラジオ「…………」

遠くを見ると、金箔の貼られた五重塔が、あたかも巨大な刃物で袈裟斬りにされたように切断されていた。これもまた、ビーストの仕業なのか。

グラジオ(母上……こうすることが、あなたの本当の望みだったのですか)

グラジオはここが危険というを理解しながらも目を閉じた。まぶたの裏には、いなくなってしまった一人の『家族』のために奮闘するルザミーネの姿が、そして次に部屋の一室でウツロイドと対面するルザミーネの光景が蘇る。

グラジオ(あの時から……母上は母上で無くなってたのかもしれない。だが、オレもリーリエも、アンタを――)

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

グラジオ「……!」ピクッ

41: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:06:31.92 ID:31e3ztue0
グラジオの持っているウルトラホールみっけマーク3がシグナルを鳴らし、震えだした。すぐにタイプ:ヌルを出して身構える。

ヌル「オオォォッ!」

グラジオ「どこから……来る!?」

すると、グラジオの眼前、マリエ庭園の中央部にウルトラホールが開き始めた。
ウルトラホールから現れたのは、テッカグヤに次いで巨大な体格と、身体の大半が大きな口を持つウルトラビースト、アクジキングだ。

アクジキング「グモォォォォッ!」

アクジキングが姿を現したとたん、すぐに2枚の舌を動かして、マリエ庭園の地面や建物の残骸、水を口の中に放り込んでいく。

グラジオ「……オレ達は眼中に入ってないと言いたげだな。行くぞ、ヌル! アイアンヘッドだ!」

ヌル「オオォォォッ!」ダッ!

ヌルは走り出すとジャンプし、アクジキングの頭部に向けて鋼鉄の兜を突き出して、頭突きを放つ!

42: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:07:07.09 ID:31e3ztue0
しかしアクジキングは、初めからヌルの攻撃など気にしていないというふうに、ガレキを口に入れて咀嚼する。

グラジオ「こんなことでは動じない……か。ヌル、あのでかい口にトライアタックを撃ちこめ!」

ヌル「オオオォッ……!」ブゥゥゥンッ!

ヌルが念じると、頭上に火・雷・氷の力を秘めた三つのエネルギーの球体が真っ直ぐにアクジキングの規格外な大口の中に放り込まれていく。と、アクジキングの口内に炎が巻き起こり、凍りつき、電撃が走った!

アクジキング「グモォォッ!?」

グラジオ「フッ、さすがにこれには堪え……!?」

アクジキング「グモォォォッ!」ブンッ!

43: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:07:46.21 ID:31e3ztue0
いきなり、アクジキングがその巨体を回転させて、尻尾をグラジオとヌルに向けて振り回した。グラジオはすぐに屈んで伏せることができたが、ヌルがにドラゴンテールが直撃して庭園の木に激突してしまう!

ドゴッ!

グラジオ「ヌル!」

ヌル「オオ……オオオ!」グググッ

アクジキング「グモォォ!」バグバグッ!

アクジキングは知ってか知らずか、ヌルの周りの地面に手を伸ばし、口の中へ入れていく。更にヌルのそばの木を引っこ抜いて口に入れると、その舌をヌルに向けて伸ばし始めた。

ヌル「オォォッ……!」

グラジオ「ヌル! 逃げろ!」

アクジキング「グモォォォッ!」

???「ガバイト! ドラゴンクローだ!」

突然、青い影がヌルの前に飛び出してきた!

ガバイト「グァァァッ!」ブンッ

アクジキング「グモォォォォッ?!」ザクッ!

44: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:10:24.16 ID:31e3ztue0
痛みでじたばた暴れるアクジキングから退避させるように、ビブラーバがやってくると、ヌルを持ち上げてグラジオの前に下ろした。そしてグラジオとヌルの前を、コモルーが守るように仁王立ちする。

ビブラーバ「ガガガッ!」

コモルー「オオオ……」

グラジオ「こいつらは……?」

???「いじっぱりのドラコ!」カーン!

???「れいせいのおキン!」カーン!

???「ひかえめのマミ!」カーン!

3人「三人合わせて、『スカル団黒ガバイト隊』!」バァーーーン!!!

グラジオ「」ポカン

アクジキング「」ムシャムシャ

おキン「……リーダー、あたいらもうスカル団じゃないんですよ。改名したほうがいいんじゃないスか?」

ドラコ「あ、あぁ、言われてみればそうだな……」

マミ「普通に『アローラ黒ガバイト隊』でいいんじゃないスか?」

ドラコ「それじゃベタすぎるだろ! もっとこう、ドカーンとインパクトのある名前をだな……」

プルメリ「……あんたら、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」ザッ

45: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:11:20.63 ID:31e3ztue0
ドラコ「姉御!」

グラジオ「オマエら……なぜここにいる?」

プルメリ「そりゃこっちのセリフだよ。グラジオこそどうしてここにいるんだい?」

ドラコ「あたいらは姉御からの命令でウルトラビーストを追い払ってるんだよ」

おキン「そうだよ、それでたまたま危ない目に遭ってるアンタがいたってわけさ」

グラジオ「よせ……あれはお前たちが勝てる相手じゃない」

マミ「グラジオだって1人で挑んでヌルが食われそうになってたじゃねぇか」

ドラコ「そう、あたいら3人の力を合わせれば奴を倒せる! おキン、マミ、行くぞ!」

おキン&マミ「ウス!」

プルメリ「待ちな! グラジオの言うとおり、うかつに手を出しちゃ――!」

ドラコ「ガバイト! げきりん!」

おキン「ビブラーバ! むしのさざめき!」

マミ「コモルー! りゅうのいぶき!」

46: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:13:06.78 ID:31e3ztue0
ガバイト「ガァァァッ!」ブンッ!

ビブラーバ「ガガガッ!」ザザザザッ!!

コモルー「オォォォッ」ゴウッ!

3体のドラゴンポケモンによる一斉砲火がアクジキングへ向かっていく! ビブラーバのむしのざざめきで動きを止めつつ、コモルーのりゅうのいぶきで援護射撃を受けながら。ガバイトの怒涛の攻撃でアクジキングに多大なダメージを与える。

アクジキング「グモ……グモオォォォ!」ブンッ!

アクジキングがダメージを受けて身を悶えさせながら暴れまわる。しかしガバイトたちはそれを回避しつつ、再び攻撃を繰り返す。
するとアクジキングはガバイトたちに向き直ると、その口を大きく開いて息を吸い込むと……。

アクジキング「ヴ ェ ェ ェ ェ ェ ェ ッ ! !」

ドドドドド!!!

ガバイト&ビブラーバ&コモルー「!?」

グラジオ「なっ!?」

プルメリ「!!」

アクジキングの放った逸脱したゲップが一種の衝撃波となって、ガバイトたちを吹き飛ばしていく!

ドゴォォォッ!!

おキン「な、なにぃ!?」

マミ「コモルー!」

47: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:14:03.74 ID:31e3ztue0
プルメリ「今のはゲップか……。あんな隠し玉、持ってたとはね」

ドラコ「くぅっ! こんなやられ方、屈辱的すぎじゃねぇか! おい!」

ザッ

???「今日は厄日だね……」

5人「!」

クチナシ「……こいつと、こんなところで鉢合わせしちまうとはよ」

グラジオ「クチナシさん!」

プルメリ「おっさん!」

クチナシ「グラジオのあんちゃん、元スカル団のねえちゃんたち、あいつはビーストの中でも相当タフな奴なんだわ。下手に数撃っても、食われちまうのがオチだよ」

グラジオ「クチナシさん……アイツを知っているのか?!」

クチナシ「……ま、昔ね」

クチナシ「誰か、フェアリータイプのポケモンを持ってる奴いるかい」

ドラコ「いや……あたいら全員、ドラゴンタイプのポケモン持つってのが黒ガバイト隊のルールだからよ」

プルメリ「あたいも、今のところどくタイプしかいないね」

48: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:17:43.37 ID:31e3ztue0
クチナシ「そうかい。なら、こうするしかねぇか」

クチナシ「アブソル、あいつにれいとうビームだ」

アブソル「ガウッ!」

そばで控えていたアブソルが飛び出すと、アクジキングの大口にひるまず近づくと、青白い光線を放った!

アブソル「オォォッ!」ズピーーッ!!

アクジキング「グモ……!?」ピキキキッ

アブソルのれいとうビームを受けたアクジキングは見る見るうちに氷に覆われていき、次第に動きが鈍くなっていく。

クチナシ「――プルメリの嬢ちゃん、奴を凍らせるよ」

プルメリ「わかったよおっさん、ドヒドイデ! れいとうビーム!」

ドヒドイデ「ドヒドヒッ!」キィーン!

アブソルに続いて、プルメリのそばで控えていたドヒドイデもれいとうビームを発射する!
すると、さらにアクジキングの動きが緩やかになってゆく。

アクジキング「グ……モ……ッ!」ビキビキッ!

ピキッ!

そして、アクジキングの全身が完全に凍結し、動かなくなった。

49: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:18:36.14 ID:31e3ztue0
おキン「おおっ! 凍らせた!」

マミ「こっから巻き返すんですね!」

クチナシ「いや、あのウルトラホールの中に押し戻すよ」

グラジオ「倒すんじゃないのか?」

クチナシ「さっきも言ったがよ、あいつはとんでもなくタフな奴なんだよ。ここにいる戦力だけだと、あいつを倒せても誰かが犠牲になるのは間違いないぜ」

ドラコ「そんなに恐ろしい相手……なのか?」

プルメリ「見てわかるだろ? もうちょっと慎重さっていうの覚えな」

クチナシ「……それより、早くやらないと目覚めちまうよ。ポケモンたちの力を借りて、あいつを元の場所に戻してやんなきゃな」

グラジオ「わかった。それに、アンタに話もあるしな……」

50: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:23:43.82 ID:31e3ztue0
カプの村 モーテル

クチナシ「なるほど……月の笛、ね。それで、この事件の親玉をどうにかするってわけかい」

プルメリ「そんなことが……まさかあの子が代表に狙われるなんてね……」

グラジオ「ああ、そのためにカプ・ブルルからかがやく石を貰えないだろうか」

クチナシ「……正直なところ、あいつが素直に首を縦に振るとは思えねぇけどな」

グラジオ「なぜだ?」

クチナシ「昔一度、この村の奴らがカプ・ブルルの怒りを買う真似をしたからだよ。それ以降、人間不信とまではいかねぇがよ、人に対して警戒しているっていうのはあるね」

マミ「リーダー、こいつら何話してるんすかね?」ヒソヒソ

おキン「カプのことが話題に出てますけど……」ヒソヒソ

ドラコ「さぁな……」ヒソヒソ

クチナシ「俺もしまキングだけど、あいつの姿……しまキングになったときの一度しか見たことねぇんだわ。なにせ、今回の大量発生前、この島の上空にウルトラホールが開かれた時も、カプ・ブルルは静観してたからな」

グラジオ「今は非常事態だ……。月の笛を完成させなければ、このアローラがビーストによって壊滅してしまう」

クチナシ「それもまた、ひとつの定めって奴じゃないのかい? 永遠に続くもんなんてありゃしないんだよ。アローラもまた、こうやって滅ぶ運命なのかもしれないぜ」

グラジオ「そんなものを受け入れられるほど、オレ達は自分の運命を悟ってなんかない。オレ達は最後までビーストたちに抗って、戦い抜く! ヌルと供に!」

51: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:24:48.83 ID:31e3ztue0
グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」

クチナシ「……まいったねえ」フッ

コンコンッ
ガララッ

グラジオ「!」

マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」

クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」

マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」

ガララッ ピシャッ!

グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したと言ってたが、スカル団はどうなったんだ?」

プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」

53: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:29:27.63 ID:31e3ztue0
グラジオ「なに?」

プルメリ「この島とポニ島でね、まぁ色々あったのさ。グズマのことを、しんのすけとリーリエに頼んで、そのままあたいらはこの島に戻ったんだ」

プルメリ「だけど、その矢先にこれだよ。かわいい部下たちをビーストたちの手にかからせたくなかったし、グズマを探そうなんていうムチャもさせたくなかったからね。そのまま、解散したんだよ」

プルメリ「それでも、まだグズマに未練があるのか……それともこのアローラがやっぱり好きなのか、団員のほとんどが戻ってきてね、「自分たちにできることはないか」ってあたいに相談してきたんだよ」

プルメリ「だからあたいは、『グズマが帰ってきたら、みんなでアローラにしでかしたことを償わなきゃいけない。そのためにこのアローラを守りな』って言ってやったのさ」

プルメリ「それをどこで聞きつけたのか……クチナシとマーレインのおっさんコンビに言いくるめられて、こいつらと一緒にアローラの島を巡って、街の人たちの避難の活動と、ビーストの討伐をしていたのさ」

マーレイン「彼女らに償う意識があるなら、それをもっと多くの人に知ってもらうべきと思っただけだよ。それに、プルメリ自身戦力として申し分ないからね」

プルメリ「ありがとよ。それより……しんのすけが代表に連れ去られて、月の笛を直すために、ここへねぇ」

グラジオ「さっき連絡が入ったが……メレメレとアーカラのカプから、かがやく石は貰えたそうだ。残りはこことポニだけだ」

マーレイン「カプ・ブルルは温厚な分、ものぐさなところがあると聞くからね。Zリングを作る目的以外で、かがやく石を人間に渡すことに抵抗があるかもしれない」

グラジオ「どれかひとつでも石が欠けてしまえば、その時点で月の笛は直すことができない。……ビーストが現れたと同時にウルトラホールに飛び込むという案も考えたが、その先がどこに繋がっているかわからないからな……最悪、戻ってこれなくなるかもしれない」

マーレイン「そうだね……たぶん、月の笛を修復するうえでここが一番の山場だと思うよ」

グラジオ「ともかく今は……クチナシさんを説得して、なんとかカプ・ブルルに会わせてもらわなければ何も始まらないがな」

54: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:31:22.55 ID:31e3ztue0
プルメリ「グラジオ、ちょっといいかい?」

グラジオ「……なんだ?」

プルメリ「もしも、その月の笛とやらを直して、代表のもとへ向かうんなら、あたいも連れて行って欲しいんだ」

グラジオ「……本気か? そもそも、グズマを助けるのはしんのすけとリーリエに任せたんじゃなかったのか?」

プルメリ「最初はそうするつもりだった。弱いあたいらが出しゃばるより、2人に任せちまおうって考えてたよ」

プルメリ「でもね、しんのすけに「一緒に助けに行こう」「弱いなら強くなればいい。大事な人なんでしょ」って言われたよ」

プルメリ「悔しいけどね、あんな小さな子供の言葉でもズシンと来るものがあったよ。素直な気持ちに嘘をつき続ける自分がヤになっちゃうね」

プルメリ「グズマはホントバカ! だからね……あたいが引っ張ってでも、あいつは取り戻さなくちゃいけないんだ」

ドラコ「姉御! だったらあたいらも……」

プルメリ「アンタはここでマーレインとクチナシのおっさんの手伝いをしてな。心配すんな、アンタらの気持ちを背負ってグズマを迎えに行ってくるからさ!」

ドラコ「姉御……わかりました!」

グラジオ「もう一度言うが……本当にいいのか? ビーストの世界に行って、命の保証はないんだぜ。たとえあんたでもな」

プルメリ「くどいよ。女に二言はないってね。あいつはあたいが助けに行かなくちゃ」

55: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:32:28.57 ID:31e3ztue0
ガラララッ

クチナシ「グラジオのあんちゃん、いるかい?」

グラジオ「クチナシさん……」

クチナシ「……来なよ、カプ・ブルルに会いたいんだろ? あいつは今、実りの遺跡にいるみたいだからよ」

グラジオ「会わせてくれるのか?」

クチナシ「ああ……だが、プルメリの嬢ちゃん。そっちもついてきな」

プルメリ「あたいもかい? どうして?」

クチナシ「……案外、説得するのに役に立つかもしれないからな」ニヤッ

グラジオ&プルメリ「????」

56: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:35:34.08 ID:31e3ztue0
実りの遺跡

グラジオ「ここが実りの遺跡……」

プルメリ「カプの遺跡の中に入ったのは生まれて初めてだよ……なんだか重苦しい雰囲気だね」

グラジオ「だが……肝心のカプ・ブルルはどこにいるんだ?」

クチナシ「……」テクテク

クチナシは祭壇に上がると、石像にそっと右手を伸ばして触れた。

クチナシ「……聞こえるかい」

グラジオ&プルメリ「!」

クチナシ「ずいぶん久しぶりだね。……こうして語りかけるのはしまキングになって以来だよな」

グラジオ(カプ・ブルルに語りかけているのか?)

クチナシ「わかってるだろ? 外が今、どうなっているのか」

クチナシ「ビーストがわんさかだよ。これまで見てきたもんとは比べ物になんねぇ程にな」

クチナシ「キャプテンも出ずっぱりさ。アセロラに至っては、月の笛を直しているからねぇ」

クチナシ「……そうさ、月の笛、壊されちまったのよ。ビーストを従えてる奴の仕業さ。おかげで向こうにいる親玉をどうにかしようとしても、肝心の伝説のポケモンが呼べないんだわ」

57: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:37:15.34 ID:31e3ztue0
クチナシ「言いたいこと、わかるだろ? お前さんの力、借りたいんだよ」

プルメリ「……」

クチナシ「月の笛を直すために、かがやく石が必要なんだとよ。お前さんなら知ってるんじゃないのかい」

クチナシ「……お前さんが人間に抱く気持ち、わからんでもねぇんだ」

クチナシ「あそこにいる嬢ちゃん。元スカル団の幹部なんだとよ。今はアローラを救うために、スカル団を解散させて、命懸けでビーストと戦ってるぜ」

プルメリ「!」

クチナシ「別に例の件で許しを請うなんて気持ち、これっぽちもないんだわ。だけどよ、今はアローラの危機なんだ。善も悪も関係なしに、みんなが一丸となってビーストの驚異と戦っているんだ」

クチナシ「それでもお前さんは、ここでじっとしているつもりかい? このまま、滅びの運命を受け入れるつもりかい?」

クチナシ「……言いたいことは、それだけだよ。あとは、お前さんの判断に任せるぜ」

そしてクチナシは石像から手を離すと、祭壇から降りてグラジオたちと向き合った。

58: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:38:28.70 ID:31e3ztue0
グラジオ「……クチナシさん。カプ・ブルルは――」

クチナシは肩をすくめた。

クチナシ「……どうだかね。ただ、向こうには向こうなりの考えってものがあるからさ」

プルメリ「おっさん、あたいは……」

チリンチリン!

グラジオ「なんだ……?」

プルメリ「鈴の音?」

――カ プ ゥ ブ ル ル !

祭壇内にカプ・ブルルの咆哮が轟く! 一瞬、グラジオたちが反射的に身構えるが、クチナシが手を上げてグラジオたちを制する。

クチナシ「……やっと、動いてくれたか」ニッ

グラジオ「?」

59: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:38:56.83 ID:31e3ztue0
再びクチナシは祭壇に上がると、一度身をかがめて立ち上がった。その手には、光り輝く石が握られていた。

グラジオ「それは――!」

プルメリ「カプ・ブルルは……認めてくれたのかね」

クチナシ「どうだかね。だけど、嬢ちゃんたちの活躍、カプ・ブルルはちゃんと見てるみたいだぜ? だからこそ、考えを変えたのかもな」

プルメリ「……!」

クチナシ「ほら、かがやく石だ。持って行きな」つ かがやく石

グラジオ「クチナシさん――すまないな」

クチナシ「……頼んだぜ」

グラジオ&プルメリ「ああ!」

60: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:40:34.14 ID:31e3ztue0
ポニ島 海の民の村(ひろし&ハウ)

メレメレ島でカプ・コケコからかがやく石を貰えたひろしとハウは、カプ・レヒレからかがやく石を貰うために、ポニ島へと船を走らせていた。

遠くから見たポニ島は、メレメレ島と比べてみると被害が少ないように見えた。しかし、島に近づいてみると、ビーストによる被害があらわになった。

桟橋が入り組んでいた海の民の村には、停泊しているほとんどの船が姿を消していた。桟橋もところどころが壊れてしまっていて、そのまま岸に船を止めてしまったほうが安全に降りれるという有様だ。

ひろし「よし、まずはハプウちゃんのところへ行ってみようぜ」

???「待ちや!」

ひろし&ハウ「!」

海の民の団長「君ら、何しに来たん? どこの島も今、ビーストっちゅうのがぎょうさん溢れて危険やぞ」

ハウ「おれたちーハプウさんに会いに来たんだー。カプ・レヒレから、かがやく石を貰うためにー」

61: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:41:28.15 ID:31e3ztue0
団長「ハプウちゃんにか? それに島の守り神にも用があるとは……」

ひろし「ハプウちゃんは今、どこに居るんですか?」

団長「今はたぶん、ポニの古道にある家で休んでるはずや。なんでも、戦闘中に怪我してしもうたとか言ってたが……」

ハウ「怪我ー?! だいじょぶなのかなー?」

ひろし「ともかく、まずはハプウちゃんの家に行こう。俺たちは今かがやく石が必要なことだけは話しておかないと」

団長「気を付けなはれや。この村も安全じゃあないし。島を歩けば、とんでもなく強いビーストに襲われてしまうで」

団長「わしも、この島にいるトレーナーさんたちを全員避難させたら、すぐによそへ逃げるつもりや。お前さんらも長居はせん方がええで!」

ひろし「俺たちも、今は一刻を争っている事態です。教えてくれてありがとうございます」

団長「いやいや、礼には及ばん」

ハウ「じゃー急ごー! ハプウさんの怪我も気になるしー」

ひろし「ああ!」

62: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:42:05.22 ID:31e3ztue0
ポニの古道

ひろし「確か……ここらへんだったよな? 島に家がひとつしかなくって、そこにハプウちゃんが住んでるって聞いたが……」

ハウ「あー! バンバドロだー!」

ハウが呼びかけると、畑の近くにいたバンバドロが2人の存在に気付いて、声を上げるとのっしのっしと重い足取りで近づいてきた。よく見るとあちらこちらに小さな傷跡が残っており、幾重にも渡るビーストとの戦いを乗り越えたことを物語っている。

バンバドロ「ムヒイウン!」

ひろし「このポケモン、確かハプウちゃんが連れていたポケモンだよな。ってことは、あの家がハプウちゃんの家か」

ハウ「そうだねー……」

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ひろし「うおっ!?」

ハウ「わーわー! ビースト?!」アタフタ

63: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:43:16.43 ID:31e3ztue0
ひろし「どこだ? どこに現れるんだ?」

ハプウ「なんじゃ、外が騒がしいのう」ガチャ

家のドアが開くと、頭に包帯を巻いたハプウが出てきた。

ハプウ「おお! ハウとひろしか! 無事でなによりじゃ!」

ハウ「その前にこの近くにビーストがいるよー! 早く見つけて倒さないとー!」

ハプウ「ん? ビースト? ……ああ、あいつのことかもしれんな」

ひろし「あいつ?」

ハプウ「そう慌てるな。まずは家に上がれ。エーテルパラダイスに避難した後の話をゆっくり聞かせてもらおうかの」

64: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:44:21.44 ID:31e3ztue0
ハプウの家

ひろしとハウは、ポニ島から避難してエーテルパラダイスで月の笛の修復にかがやく石が必要なことが判明し、カプ・レヒレから石を貰いに来たことを話した。

ハプウ「なるほどなぁ……決してアセロラを侮っていたわけではないが、王朝の知識は脈々と受け継がれておるということか」

ハウ「ところでその頭はー?」

ハプウ「ん? これのことか? いや、実は情けない話じゃが、ビーストと戦っている時に……」

ひろし「戦いの巻き添えを食っちまったのか……?」

ハプウ「いや、ビーストの猛攻にびっくりしてバンバドロから落馬してのう! そのまま頭をぶつけてしまったんじゃ! いやぁ、わしとしたことが、間抜けなことで怪我してしもうたわ! 頭の皮擦りむいただけで幸いじゃ」

ハウ「……」

ひろし「ま、まぁ、無事でなによりだ……」

ハプウ「それにしても、2人はカプ・コケコから石が貰えてなによりじゃな」

ひろし「家に来る前、博士からカプ・テテフから石が手に入ったって連絡が入った。後はウラウラ島とここだけだ」

ハウ「ウラウラ島は今グラジオが行ってるからーおれたちがここに来たのー」

ハプウ「ふむう……」

65: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:45:00.93 ID:31e3ztue0
ハウ「だからハプウさんからカプ・レヒレに石を頂けるかどうか、お願いできないかなー?」

ハプウ「もちろん、お主たちのすることに協力を惜しまないつもりじゃ。ただ……」

ひろし「ただ……?」

ハプウ「カプ・レヒレはおそらく、お前たち2人――あるいはどちらかに試練を課すじゃろうな」

ハウ「試練ー? キャプテンがするようなヤツのことー?」

ハプウ「ま、そうじゃな。試練達成で手に入るのがZクリスタルではなく、かがやく石と言ったところかの」

ひろし「どうしてカプ・レヒレは俺たちに試練を?」

ハプウ「カプ・レヒレは、心身を癒せる特別な水を作り出せる能力をもっておる。かつてポニ島に住んでいた者は、その恩恵を受けていたのじゃ」

ハプウ「だがな、そのためには、カプ・レヒレが作り上げる霧の試練を受けねばならないのだ。その試練を乗り越えた者だけが、水の恩恵に預かることができるのじゃ」

ひろし「つまり、水を手に入れる人たちと同じように、俺たちがかがやく石を持つに値する人間かどうか、カプ・レヒレは試したいわけだな」

ハプウ「その通りじゃ」

66: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:46:10.52 ID:31e3ztue0
ひろし「しんのすけを取り戻せるなら、どんな試練だってこなしてみせるさ。具体的に、何をすりゃいいんだ?」

ハプウ「それはカプ・レヒレが決めることじゃ。まずば彼岸の遺跡に行かねばな」

コンコンッ

全員「!」

???「マツリカ、ただいま戻りましたー。エンドケイプ周辺は異常なしですよー」

ハプウ「おお、そうか。ご苦労じゃったな」

マツリカ「おー? お客さんですか?」

ひろし「誰だ?」

ハウ「キャプテンの証つけてるー」

ハプウ「このふたりがさっき話した人たちじゃ。こちらが島巡りしているハウ、そしてこちらがしんのすけの父のひろしじゃ」

マツリカ「あー、あたしマツリカ。ポニのキャプテンやってます! といっても、普段は絵を描くためフラフラしてて、あたしの試練はないんだけど……」

ハウ「試練が無いキャプテンってなんか新鮮ー」

67: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:48:52.61 ID:31e3ztue0
ハプウ「こんな性格だが絵とポケモントレーナーとしての腕前は確かじゃ。あのデカいビーストも、マツリカが追い払ったでな」

ひろし「あいつをか!?」

ハウ「すごいキャプテンなんだねー!」

マツリカ「いやーたまたまですよ! 相手がフェアリーに弱かっただけで」

ハウ「フェアリータイプのキャプテンなのかー」

ハプウ「弱点を突くだけで倒せるのなら、苦労はいらん。後はもそっとキャプテンである自覚を持てば言うことはないのだがな」

マツリカ「うーん。ハプウさんの言葉は耳が痛いですねー」

マツリカ「アローラも大変なことになっちゃいましたからねー。みんなの力を1つにして、この危機を乗り越えていきましょう!」

ハウ「うんー!」

68: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:49:30.06 ID:31e3ztue0
マツリカ「あ、そうでした! お近づきの印に、フェアリーZをどうぞ!」つフェアリーZ

ハウ「エー! いいのー?」

ひろし「……普通試練を達成してもらうもんなのに、いいのかな」

ハプウ「貰っておけ。しんのすけが帰ってきた時渡してやれ」

マツリカ「おーゼンリョク! ゼンリョク! 遠慮なくどーぞ。そもそもやる試練ないですしね」

ハプウ「マツリカ、わしはこの者たちを連れて彼岸の遺跡に行ってくる。その間、この家の留守を頼んだぞ」

マツリカ「分かりましたー! みなさんお気をつけてー!」

69: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:50:15.64 ID:31e3ztue0
ポニの古道

ハプウの家を出て歩き出すと、再びウルトラホールみっけマーク3のシグナルが鳴り響いた!

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ハウ「わー! まただー!」

ハプウ「さっきもそれが鳴ってたのう。それはウルトラビーストを見つける装置かなにかなのか?」

ひろし「ああ、ウラウラのキャプテンが作ったらしいけど……ビーストはどこにいるんだ?」

ハプウ「それなら、あそこじゃ」

ハプウはのんびりと自分の畑を指さした。
彼女が耕している畑の上には、ウルトラビースト――カミツルギがふわふわと浮いていた。

ハウ「あれがウルトラビーストー?」

ひろし「今まで見てきた奴らと比べると、ずいぶんちっせぇなぁ」

ハプウ「甘く見るでないぞ。あのビーストの全身は、まさしく魔剣そのものじゃ。なにせ、一太刀でバンバドロの身体に深い切り傷を負わせたからの」

70: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:52:20.13 ID:31e3ztue0
ハウ「ほんとー? しんのすけの群れたマサオのアクアテールも受け止められたのにー?」

ひろし「だったら、早いとこ倒しちまった方が――」

ハプウ「いや、手を出す必要はなかろう。なにせ、あやつはこっち側が仕掛けなければ、攻撃してこないからの。放っておけば大人しくて可愛げのあるやつじゃ」

ハウ「そうなのー? おれ、ビーストってみんな凶暴なものって思ってたからー」

ハプウ「わしもこやつを見るまで同じことを思った。だが、あのビーストのように決して人間と敵対したり破壊活動をするような輩ばかりではないと認識を改めたのじゃ」

ひろし「住む世界が違っても、いろんなビーストがいる――ビーストはそこらのポケモンと変わらないってところか。結局こいつらも、ルザミーネに利用されてるってことだな」

ハウ「おれ……ずっとポケモンって人に使われて変わるものって思ってたー。いい人ならいいポケモンになって、悪い人なら悪いポケモンになるってー……。だけど、ビーストが街を壊しているのを見て、ポケモンってなんなのかわからなくってー……」

ハプウ「その考えも間違っておらん。だが、ポケモンにもビーストにも、人間と同じようにそれぞれ意志があり、性格もあるのじゃ。だからこそ、この世界は成り立ってると言えよう」

ひろし「もしかしたら、ビーストだって、街を壊したいヤツがいるかもしれないし、ただ単にこっちに来て、どうすればいいのか分からないまま慌てているヤツがいるかもしれない」

ハウ「そうかなー? うー……」

71: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:54:57.99 ID:31e3ztue0
ハプウ「ま、どちらにせよ、ビーストは別世界のポケモンだからか、ボールがポケモンと認識してくれないみたいだがの。今は普通のポケモンのように捕まえて意思疎通を図る、というやり方は出来ん」

ひろし「だけどアイツは……」

ハプウ「……うむ、ルザミーネはウツロイドを捕獲しておった。だから近い未来、ビーストとポケモンの境界線が無くなる時が来るかもしれんな」

ハウ「ビーストとも仲良くなれるかなー?」

ひろし「ハウくん自身もビーストと仲良くなれるって思いながら動けば、ひょっとすれば、その心がビーストに届くかもな。あいつらもポケモンなんだからな」

ハウ「……そうだねー! よーし、それじゃあかがやく石を貰って、しんのすけを助けたらビーストたちと友達になってみよー!」

ハプウ「その勢いじゃぞ、ハウ!」

72: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:55:44.89 ID:31e3ztue0
彼岸の遺跡前

ひろしとハウはハプウに連れられて彼岸の遺跡前にやってくると、「まずはそなたらが話したことを、カプ・レヒレに伝えてくる」とハプウ一人だけが遺跡の中へと入っていった。
そして、ハプウが遺跡に入って30分が過ぎた頃、ハプウが遺跡から出てきた。

ハプウ「戻ったぞ」

ハウ「どうだったー?」

ハプウ「案の定というべきか……試練を受けてそれを乗り越えられたら、かがやく石を渡そうとカプ・レヒレは仰っていた」

ハウ「じゃあおれが行くよー! ガオガエンたちと島巡りでたくさん試練をこなしてたから、きっと達成できるってー!」

ハプウ「いや――行くのはお主ではない」

ひろしじゃ、とハプウは指さした。それでもひろしは動じず、むしろ表情に真摯さが出てくる。

ハウ「おじさんがー?」

ひろし「俺が行けばいいんだな?」

ハプウ「カプ・レヒレは、おぬしが試練を達成できたとき、かがやく石を手渡すそうじゃ」

ひろし「試練の内容は?」

ハプウ「遺跡の中を散歩してくればそれでよい。時間で言うなら、10分前後というところかの。そのあいだに、カプ・レヒレはおぬしに石を渡すべきか否か見るそうじゃ」

ハウ「ポケモンとか飛び出してきたりはしないよねー? おじさん、トレーナーじゃないんだよー」

73: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:58:14.74 ID:31e3ztue0
ハプウ「カプの遺跡に野生のポケモンが入るということはないな。その心配は無用じゃ」

ハプウ「ひろしよ、カプ・レヒレがおぬしに課す試練は、霧と幻惑の試練じゃ」

ひろし「霧と幻惑?」

ハプウ「カプ・レヒレは霧を作って幻を作り、相手を自滅させるという戦い方をするのじゃ。その能力を、人を試すためにも使っておるそうじゃ。つまり、どれだけひろしがカプ・レヒレの幻に囚われないか、これが試練の要となるじゃろう」

ひろし「上等だ! 試練を達成して、必ずしんのすけを取り戻してやる!」

ハプウ「では、遺跡の中に入るがよい。一歩足を踏み入れた時点から試練開始じゃ」

ハウ「おじさんー頑張ってー! かがやく石を手に入れて、しんのすけを助けに行こうよー!」

ひろし「ああ、すぐに終わらせてくるぜ!」

74: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:58:54.47 ID:31e3ztue0
彼岸の遺跡

ハプウの言った通り、遺跡の中に一歩足を踏み入れると、奥から青白い霧が立ち込めていた。かろうじて背後にある出入り口に光が差し込んであるのが見えるくらいだ。
遺跡の中は不気味な静寂に包まれており、ハウが不安視していた野生のポケモンが出てくる気配なんて微塵もない。

ひろし「はは……これが試練か。これならお化け屋敷を歩くほうが、よっぽど試練になるぜ」

ひろしは強気な言葉を口に出して不安を紛らわせ、靴が石の床を踏む音を耳にしながらひとまず奥へと進んでいった。
すると、霧の中に、ぼんやりとたくさんの人たちがひろしの前に現れた。

ひろし「こ、これは……?!」

霧が晴れると、ひろしはハウオリシティの砂浜に立っていた。そしてひろしの目の前に立っていた人たちの正体は――。

ビキニのおねえさんA「ひろしさんようこそ、アローラ地方へ!」

ビキニのおねえさんB「お仕事、お疲れでしょう?」

ビキニのおねえさんC「アローラの海、ゆっくり楽しんでいってね!」

「「「アローラー!!!」」」

ひろし「ふおおおおーっ!??」

75: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 20:59:52.04 ID:31e3ztue0
ひろし「な、な、どうなってんだ? 夢でも見ているのか?!」

ビキニのおねえさんD「さぁさぁ、ひろしさん、そんな暑苦しそうな服なんて脱ぎ捨てて!」

ビキニのおねえさんE「海に入って私たちと遊びましょ」

ひろし「き、君たち、やめなさい」デレーッ

ビキニのおねえさんF「なあにデレデレしちゃって、かわいー!」

ひろし「うひひひ! じゃあ脱いじゃおっかなー!」

ひろし「……ハッ!」ピクッ

ひろし(いかんいかん、これはカプ・レヒレの見せている幻なんだ! こんなものに囚われちゃいかん! できるならずっと囚われたいけど)

76: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:00:36.20 ID:31e3ztue0
ひろし「いや、遠慮しておくよ。私は先を急いでいるんで、それじゃ!」

ビキニのおねえさんA「え? ひろしさん、待ってよぉ」

ビキニのおねえさんB「私たちと一緒に遊んでいこうよ!」

ひろし「くぅ~カプ・レヒレめ……結構エグいことするんだな……」

ひろしは目をつぶってビキニのおねえさん達を振り切って歩き出すと、今度は大勢の人たちが練り歩く足音が聞こえた。目を開けると、今度は普段着から背広姿で繁華街に立っていた。

川口「先輩」

後ろから声をかけてきたのは、ひろしが転勤前、フタバカンパニーに勤めていた後輩の川口だった。

ひろし「川口? お前、なんでこんなところに?」

川口「えぇ? なに言ってるんスか。先輩が誘ってきたんでしょう?」

ひろし「え? そうだっけか?」

川口「さ、早く行きましょう。取引先の人、もう先に入ってますよ」

ひろし「先に入ってる……?」

77: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:01:38.32 ID:31e3ztue0
ひろしが顔を上げると、目の前にはかつて取引先と行き慣れたキャバクラの看板が。先に川口が歩き出して、ひろしに手招きする。

川口「先輩、急ぎましょうよ。遅刻すると取引先にも女の子にも怒られちゃいますよ」

ひろし「あ、あぁ」

ひろし(そうだなぁ……ここでうまくいけば、今後もフタバカンパニーとの関係が良くなるし、業績もアップする。それに、この店のマチコちゃんも可愛いんだよなぁ……)デレーッ

ひろし「……ハッ!」ピクッ

ひろし「……いや、俺はいい」

川口「え?」

ひろし「今は取引先とか、女とかに構っている暇がないんだ。お前にもな」ダッ

川口「えっ? ちょっと先輩! せんぱーい!」

川口の呼び声にも一切無視して、道行く人たちをかき分けるように、繁華街のど真ん中を走っていく。

ひろし(こんな下らない幻を見せて俺を試しているっていうのか! こんなものを見せたって俺の気持ちは変わんねぇ! ルザミーネからしんのすけを取り返して、家族を元通りにしなくちゃいけねぇんだ!)

ひろし「いい加減にし――ッ!?」

気が付くと、ひろしは繁華街から見慣れた住宅街へと移動していた。鞄を握った背広姿も変わっていない。繁華街のけたたましさも消えており、時折夜行性のポケモンの鳴き声が聞こえるのみだ。

ひろし「ここは……カスカベ地方か?」

78: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:03:41.36 ID:31e3ztue0
ひろしは鞄を手に、懐かしいアクションタウンの住宅街を歩き出すと、すぐ近くに懐かしささえ感じる、赤い色の屋根と白い壁の一軒家がひろしの前に現れた。
表札には、ひろし以下、家族の名前が書かれている。

ひろし「……!」

1階の家の窓には明かりがついている。中で聴き慣れた楽しげな声が聞こえてくる。ひろしは無視して通り過ぎようとした。
だけど足は、自然と玄関へと向けていた。チャイムを押すと、すぐに玄関に明かりがついて、足音が聞こえる。
そして、鍵が開く音がすると、ドアが開かれた。

みさえ「おかえりなさい、あなた」

ひろし「みさえ……」

79: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:04:26.76 ID:31e3ztue0
みさえ「どうしたの? そんなところでぼーっとつっ立っちゃって。早く入りなさいよ」

ひろし「あ、あぁ」

みさえに促されるまま、家の中へ入るひろし。

ひろし(嘘だ。これは幻だ。俺たちの家は今、アローラのメレメレ島に……それももう燃えちまってるはずだ)

ひまわり「た!」

ひろし「ひまわり……」

ひろしのスーツを引っ張って、抱っこするようせがんでいる。ひろしはひまわりを優しく抱きかかえると、確かにひまわりに触れているような感触がした。

ひまわり「きゃきゃ~い♪」

みさえ「あなた、晩ご飯の準備できてるわよ。早く洗濯機に入れて、みんなでご飯にしましょ」

ひろし「みんなで……?」

みさえ「ところでしんのすけー! パパにおかえり言ったー?」

ひろし「……しんのすけ?!」

すると家の奥から、まだあれから半日と少し過ぎただけなのに、もう長いあいだ聞いていない気さえする声が聞こえてきた。

「あとでねー」

ひろし「――!」

80: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:05:17.02 ID:31e3ztue0
みさえ「今おかえり言いなさい! ひょっとしたら、おみやげがあるかも……」

「えっ? ホントホント!?」

ドタドタドタと聞こえてくる足音、そして廊下にあらわれたのは、

しんのすけ「とーちゃん! おみやげあるってホント?」

ひろし「しんのすけ!」

ひまわりとカバンを下ろすと、なりふり構わずしんのすけに駆け寄って、両肩を掴んだ。

ひろし「大丈夫か? 怪我は? ルザミーネとビーストになにかされなかったか?」

しんのすけ「ルミザーネ? ビースト? なにそれ?」キョトン

ひろし「え……?」

みさえ「やだ、あなたったら。いきなりごっこ遊びしようとしても、しんのすけだってびっくりしちゃうわよ」

しんのすけ「おおっ! アクション仮面LMS! メガルカリオとセットだ! とーちゃんありがとー!」

みさえ「こらっ! パパのカバン勝手に開けちゃダメでしょ!」

しんのすけ「ワッハハハハ! アクション仮面&ルカリオ参上! とおっ!」ドタドタドタ

81: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:06:13.30 ID:31e3ztue0
みさえ「……ったくもう、高かったでしょ?」

ひろし「あ、あぁ……」

みさえ「さ、あなた。服、洗濯機に入れてきて。その間にご飯並べちゃうから」

ひろし「……」

ひろしは言われるがまま、着ていた背広とワイシャツを洗濯機に入れて普段着に着替えると、居間へと向かった。
居間の真ん中にあるテーブルには、みさえの作った肉じゃがや野菜炒めといったオカズ、ひろしの座る位置にはビールと枝豆が置いてあった。

ひろし(そういえば、最近こうやって家族とテーブルを囲んで、飯食ってなかった気がするなぁ)

ひろしがいつも晩御飯を食べるときに座っている位置に腰を下ろすと、しんのすけが顔を紅潮させながら近寄ってきた。

しんのすけ「とーちゃん、お礼に肩揉んだげる」

ひろし「おっ、いいのか?」

しんのすけ「うん、アクション仮面買ってくれたお礼」

ひろし「じゃあ頼むよ」

しんのすけ「うん……」

82: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:06:51.67 ID:31e3ztue0
モミモミ

ひろし「おおっ、こりゃいい……ってどこ揉んでるんだ!」

しんのすけ「男の人はここ揉むと気持ちいいってとーちゃんの本読んで……」

ひろし「ば、バカっ! そんな本お前が読むな!」

げ    ん

こ    つ

しんのすけ&ひろし「」

みさえ「パパの本勝手に見ちゃダメでしょ! あなたもしんのすけの手が届くようなところにふしだらな本を置かないで!」

ひろし「は、はい……」ピクピクッ

ひろし(……この痛みも、幻なのか?)

83: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:07:52.45 ID:31e3ztue0
みさえのげんこつを受けながらも、晩御飯を囲むひろしたち。みさえは今日も家事が忙しかったことと、しんのすけが化粧品で落書きしたことを話していく。

みさえ「まったく、どうしていつもママの化粧品にいたずらするの?」

しんのすけ「だって面白いんだもーん」

ひろし「ダメじゃないか、勝手にかーちゃんのものをいたずらに使っちゃ」

ひまわり「たーい」

何気なく続いていく、家族たちの会話。

ひろし(そうだ……俺は……ここで)

ひろし(これで良いんだ……家族がみんな揃って……これで……)

86: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:11:22.20 ID:31e3ztue0
【おまけ】

~もしもしんのすけがマツリカと出会ったら~

しんのすけ「みーてみたいーなーチラ見するチラーミィー♪」

マツリカ「おー、ナイスモチーフ!」

しんのすけ「ほほー?」

マツリカ「絵に描くとしたら、ポニの小さな旅人、ですねー!」

しんのすけ「おねいさん、誰?」

マツリカ「あーあたし、マツリカ。キャプテンやってます!」

しんのすけ「それはそれは、ご苦労さんですなぁ。その顔の刺青を見る限りカタギの人ではありませんな」

マツリカ「刺青じゃないですよ。ただのペイントですよー」

しんのすけ「てゆうか、キャプテンなら試練とかやるの?」

マツリカ「あー……今は絵を描くため、フラフラしててあたしの試練はないんだよね……」

しんのすけ「ほうほう、ニートですな」

マツリカ「うわぁーっ! マツリカ小さな子供にグサリと刺さるようなこと言われたー!」

87: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:12:29.25 ID:31e3ztue0
しんのすけ「あはあはあは、面白いおねいさんだね」

マツリカ「君はしんのすけくん、ですよねー? イリマくんから聞いてますよー。カスカベ地方から来たんですよね?」

マツリカ「アローラってとっても開放的でワンダーですよね! 特にポニの大峡谷って一層そう思うのですよね」

しんのすけ「おねいさんはとってもヘンダーな人だけどね」

マツリカ「うまいこと言うねーキミ」

マツリカ「あ、そうでしたそうでした! お近づきの印に、フェアリーZ、あげちゃいますね!」

しんのすけは フェアリーZを 手に入れた!

しんのすけ「え? 貰っちゃっていいの? なんかあっさりー」

89: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/13(火) 21:13:34.11 ID:31e3ztue0
マツリカ「フェアリーのZワザは、こうしてこうすればいいですからねー」

バッ! バッ! キューン ピカー!

しんのすけ「ほうほう、こうすればいいのですな」

バッ! バッ! プリプリ ピカー!

マツリカ「……!」ピクッ

しんのすけ「……おねいさん?」

マツリカ「おおっ、これは最高にナイスなモチーフ! 絵に描くとしたらポニのダブルマウンテンってところですね! 観察させてもらいますねー」カキカキサラサラ

しんのすけ「い、いやああああん! オラのおしり描かないでえっちい!! けだもの~!!」ダッ!

マツリカ「わっ、ちょっとストップ! そのお尻のラインだけでもスケッチさせてよー!」ダダダ

92: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:00:42.76 ID:Y7xDIbbj0
???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」

しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」

しんのすけたちが一斉に声のした方向へ振り返ると、奇妙な形の木の枝に、グズマが座っていた。

グズマ「なんにも恐れない、むしろ恐れさせてなんぼのスカル団ボス、いわゆるグズマさまだがよ……言わせてもらうぜ、おまえらバカだな」

しんのすけ「くさやのおじさん、そこにお引越ししたの? 家賃いくら?」

グズマ「グズマだと言ってるだろうが。それに、引っ越したわけじゃねぇ」

グズマは木の枝から降りると、しんのすけたちに心底呆れるような表情で近づいてきた。

フェローチェ『しん様と同じ人間……。お知り合いですの?』

しんのすけ「スケスケおパンツ団のボスのくさやっていうおじさん」

ロトム図鑑「下着ドロ集団のボスだ」

グズマ「また何ぶつくさしゃべってやがる。そこにいるビーストとでも仲良くなったつもりかよ」

しんのすけ「まーね、あいちゃんに似てたもんですから」

93: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:01:49.91 ID:Y7xDIbbj0
グズマ「一体全体どんな手段を使ったのかさっぱり想像つかねえが、こんなところに来やがって……。つーか、なんで下半身丸出しなんだ」

しんのすけ「オラたち、妖怪メノクラゲオババに連れてこられちゃったの。で、あいちゃんに助けてもらいながら、元の世界に帰る道を探してるところー」

グズマ「妖怪メノクラゲオババ? お前……代表に連れてこられたのか?」

しんのすけ「だからそうだって言ってるじゃん」

グズマ「よく生きていられたな。ああ……あの人はもうヤバい、ヤバすぎる!」

グズマ「ウルトラビーストにすっかり夢中……もう誰の言葉も想いも届かねえ!!」

グズマ「俺もあいつを捕まえようとしたんだよ。けど、あいつにとりつかれてよ……」

グズマは宙に浮かんでいるウツロイドの1匹を指さした。

グズマ「するとよお! 体も! 心も! 勝手に目覚めてしまってよ!」

グズマ「自分が自分じゃなくなるようで、怖くなっちまうんだよお……!!」ガタガタ

94: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:02:38.03 ID:Y7xDIbbj0
グズマは目を見開きながら、息を乱し、髪を掻き、身体を震わせた。
自分がウツロイドに襲われて攻撃を受けたときの瞬間、訪れた力強くてどす黒い感覚と、ウツロイドと合体してマザービーストと化し、狂ったように笑いながらビーストに囲まれるルザミーネの姿に、おびえているのだ。

しんのすけ「……で?」

グズマ「は?」

しんのすけ「くさやのおじさんはこれからどうすんの?」

グズマ「どうするって……なにもしようがねえだろうが。こんなどんよりとした……よくわからん、ビーストだけの世界で……なにが出来るって言うんだ」

しんのすけ「じゃあ、オラたちと一緒に元の世界に帰ろうよ。どうせ暇なら」

グズマ「……本当にバカだな、お前」

しんのすけ「いやぁ、照れますなぁ。おバカなんて、しょっちゅう言われてますから」

グズマ「褒めちゃいねえよ」

グズマ「本気でこの世界から帰れると思ってんのか? あんなバケモンみてぇなビーストに、狂っちまった代表! この世界にはそれしかねぇんだ!」

しんのすけ「でもオラ、まだ島巡り終わってないし、かーちゃんもとーちゃんも、リーリエちゃんもみんなオラのこと待ってるだろうし」

グズマ「いいか、代表は既に、多くのビーストを手に入れて、アローラに穴を開ける力を得た! 今頃アローラはビーストで溢れかえって、地獄になっているだろうぜ……」

グズマ「そんな世界に帰ったところでなんになるってんだ。だったらこのまま、何もしねぇでじっとしてるほうがいい。行くも地獄、行かぬも地獄なら、わざわざ帰る意味なんてねぇよ。島巡りなんてする意味もねぇ」

95: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:03:26.11 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「んー困りましたなあ」

――……スカル団にいる奴らみんなそうなんだ。グズマのように、誰にも認められず、島巡りを脱落していった子たちばっかなんだよ
――スカル団のみんなは、人々に認められない辛さっていうものを分かっているのさ。特にグズマは痛いほどにね。だからみんな慕っているのさ。グズマが代表を慕っているように

しんのすけ「……!」

しんのすけ「でもおじさんも、おじさんのこと待ってる人がいるんじゃない?」

グズマ「俺を待ってる人だと? くだらねぇ……」

グズマ「俺にとっちゃ、代表が全てだったんだよ。だけど、代表がああなっちまった以上、もうどこにも行ったって意味ねぇだろ……」

しんのすけ「嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに」

グズマ「……!」

グズマ「……そいつらが、今更なんだって言うんだ。どうせ、まとめてビーストの餌食になっちまってるさ」

グズマ「いいか、この世界から絶対に出られねぇ。このグズマ様が言うんだから間違いねぇ! たとえ出られても、お前が島巡りしてきたアローラも、見知った人間ももういねえんだよ!」

しんのすけ「ぜぇったい出る! オラが無理でも、とーちゃんとかーちゃん、ひまにシロ、ハウくんにリーリエちゃん、ハカセにクジラくん、カザマくんにマサオくん、ネネちゃんボーちゃんがお迎えに来てくれるもん!」

96: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:04:21.00 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!」

グズマ「ビーストにも勝てない連中が、こっちに来れるわけねえだろうが! それこそ、代表が招き入れない限りはな!」

しんのすけ「もー頭きた! おじさんのニートっぷり、もうママ知らないんだから! ずっと下着ドロでもしてなさいよ!」プンプン!

グズマ「ちょっと待て、誰がニートだ! それに下着ドロじゃねぇっつってんだろ!」

しんのすけ「さ、行こ! あいちゃん、ぶりぶりざえもん!」

テクテク

グズマ「……なんなんだ、あのじゃがいも小僧」

97: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:41:14.13 ID:Y7xDIbbj0
その頃――。
ひろしは彼岸の遺跡の中で、偽りの家族たちと供に晩ご飯を食べながら、テレビを眺めていた。

『……タワーにて、ミツル選手がなんと前人未到の100連勝を達成! 期待のホープである彼を止められるものはいないのか!』

みさえ「すごいものねぇ、ミツルくん。ホウエン出身の私からしてみたら誇りよ~」

しんのすけ「そーいや、今日、マサオくんがね、風間くんとのポケモン勝負で負けて泣いちゃったの」

みさえ「あらまぁ、本当? でも風間くん、本当にポケモン強いからねー。将来はカスカベ地方のチャンピオンかしら?」

しんのすけ「ねぇねぇ、とーちゃんも昔トレーナーだったんだよね?」

ひろし「ああ、とーちゃんが11歳の頃、シンオウ地方を旅してたんだ。じーちゃんちに行ったことあるだろ? あそこのすぐ近くがシンオウ地方なんだ。雪なんかいつも積もってるぞぉ」

98: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:42:23.27 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「シンオウ地方って言ったら、やっぱシロナおねいさんだよねー。あの金色に輝く髪、アバンティー感じる黒い衣装! 一度耳掃除されたいなぁ~」

ひろし「それを言うならアダルティーな」

しんのすけ「じーちゃんちにいるあのおさるさん、元気にしてるかな? また行きたいなー」

ひまわり「たい!」

ひろし「しんのすけもひまも、ゴウカザルのことすごい気に入ってたもんなぁ。また会いに行こうな」

みさえ「またトレーナーになってチャンピオン目指してみたら?」

ひろし「よしてくれよぉ、こんな歳でジムなんて挑戦できる余裕なんてないって」

しんのすけ「かーちゃん、オラもポケモン欲しいー! とーちゃんや風間くんみたいにトレーナーなりたい」

ひろし(ポケモン……トレーナー)ピクリ

99: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:43:24.78 ID:Y7xDIbbj0
――オラだって、オラのお友達とゼンリョクでハプウちゃんに勝つ!
――マサオくんっ! ファイヤーーーッ!!

ひろし「……」

みさえ「だーめ。アンタ、シロの世話だってロクにできてないんだから」

しんのすけ「え~んお願いいたしますお母様~」

みさえ「アンタが10歳になったらね」

しんのすけ「……妖怪ケチケチオババ」ボソッ

みさえ「なんですってぇ!」

ひろし「……」スッ

みさえ「あなた?」

しんのすけ「どうしたの? とーちゃん? いぼ痔でも悪化した?」

ひろし「ごめん……しんのすけ、みさえ、ひま、シロ。俺がいるべき場所は、ここじゃないみたいだ」

100: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:44:40.32 ID:Y7xDIbbj0
ひろしはみさえの幻たちに笑いかけると、困惑したようにみさえとしんのすけがひろしの顔を覗く。

みさえ「どういうこと?」

ひろし「俺は、やらなくちゃいけないことがあるんだ。だから、ここに留まってるわけにはいかないんだ」

みさえ「やらなくちゃいけないことって、なに?」

ひろし「いなくなっちまった家族を、取り戻すことだ」

みさえ「 私たちはここにいるじゃない。あなたは何が不満なの?」

しんのすけ「とーちゃん。ひょっとして、オラたちのこと、捨てちゃうの?」

ひまわり「えっ……えっ……!」

みさえとしんのすけの言葉が、ひろしの胸に深々と突き刺さる。ひまわりと外にいるシロも、どこか泣きそうな顔でこっちを見てくる。

みさえ「おかしなこと言わないで。私たちはここにいるじゃない。それとも、別の家族がいるって言うの?」

しんのすけ「おおっ、とーちゃん不倫!」

みさえ「私たち家族とずっと一緒にいる――それが、あなたにとっての望みでしょ? それを捨てちゃうつもり?」

101: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:45:28.96 ID:Y7xDIbbj0
ひろしは少し苦笑いを浮かべた。やっぱり、幻だ。
こんなごく当然のことを、みさえはいちいち口になんて出したりしない。こんなふうに責め立てたりせず、真剣にひろしの言葉を聞いてくれるはずだ。
これは、カプ・レヒレからの問いかけなのだ。

ひろし「ああ、確かに俺が望んでるものさ。だけど、こんな形で手に入れるものじゃない」

ひろし「みさえとひまわり、シロはエーテルパラダイスで俺たちの帰りを待っている! そしてしんのすけは、ウルトラホールの先で俺たちの助けを待っているんだ!」

ひろし「俺は紛い物の幻想が欲しくてここに来たわけじゃない! 俺は、俺たち家族がもう一度揃うためにかがやく石を求めてここに来たんだ!」

ひろし「そして、しんのすけをとりもどして、この幻を現実のものにしてみせる! これが俺の望みだ!」

みさえ「あなた……」

ひまわり「たい……」

しんのすけ「とーちゃん……」

しばらくの沈黙。しんのすけもみさえもひまわりもシロも、じっとひろしを見ている。不安な表情は消え去り、ひたむきな面持ちでひろしを見据えている。

102: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:47:51.53 ID:Y7xDIbbj0
みさえが笑みを浮かべながら、沈黙を破った。

みさえ「……あなたの覚悟と願い、『私』に伝わってきたわ」

しんのすけ「とーちゃんは家族思いなんだね」

しんのすけたちの言葉を聞いて、ひろしも釣られて表情が緩む。

ひろし「ああ、こうやって息子の姿で面向かって言われると、ちょっと照れるけどな」

しんのすけ「ほい、とーちゃん!」

しんのすけが一歩前へ出て、ほんのりと光を放つ、かがやく石を差し出した。

ひろし「これは……!」

みさえ「それで月の笛を直して、ルナアーラを呼びなさい。あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ」

ひろし「星の繭?」

しんのすけ「だいじょーぶ、すぐに分かりますからー」

みさえ「あなた、頑張って! 絶対にしんのすけを取り戻すのよ!」

しんのすけ「『オラ』、手伝ってあげられないけど、応援するからー!」

ひまわり「たい!」

シロ「アンっ!」

103: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:49:03.64 ID:Y7xDIbbj0
ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」

ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。

ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」と満足そうじゃった」

ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」

ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」

ハプウ「うむ!」ニッ

ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」

ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」

105: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:51:09.13 ID:Y7xDIbbj0
エーテルパラダイス ルザミーネの屋敷前 広場

リーリエ「マサオさん! アクアテールです!」

ヨワシ「ギョオオォォッ!」ゴウッ!

群れた姿のマサオの巨大な尾ひれがシロデスナに叩きつけられ、水しぶきと砂が飛び散っていく。
しかし、シロデスナがマサオのアクアテールで砂の身体が固まったことを確認すると、アセロラも負けじとシロデスナに指示を送る。

アセロラ「シロデスナ! シャドーボール!」

シロデスナ「デッスナー!」ドンドンドンッ!

リーリエ「マサオさん! シロデスナさんにハイドロポンプです!」

ヨワシ「……!?」ピクッ

シロデスナの口から次々と影の弾丸が発射される。一方のマサオはリーリエの指示に一瞬動きを止めて、戸惑う様子を見せた。

106: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:52:09.23 ID:Y7xDIbbj0
その隙に、次々とシャドーボールがマサオに当たっていく。

ヨワシ(単)「ヨワーッ!?」ドンッ!

リーリエ「マサオさん!」

シャドーボールが直撃したマサオは単独の姿に戻り、そのまま吹き飛ばされて、壁に激突。戦闘不能になった。

アセロラ「またまたアセロラちゃんの勝ち!」ムフー

リーリエ「大丈夫ですか? マサオさん。今元気にしますからね」

ヨワシ「ヨワー……」

リーリエがバッグからかいふくのくすりを取り出して、アセロラのポケモンと戦って傷ついたカザマを元気にしていく。

アセロラ「またマサオくん、リーリエちゃんの指示無視しちゃったねー」

リーリエ「はい……どうしてなのか、まだわかりません」

アセロラ「でも不思議だよね。見た感じ、マサオくんも他のポケモンも別にリーリエちゃんのことを警戒しているっていう態度じゃないもん」

ヨワシ「ヨワ……」

リーリエ「……」

みさえ「みんなー晩ご飯作ったわよー! そろそろ休憩にしたら?」

リーリエ「あ、はい!」

107: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:54:31.47 ID:Y7xDIbbj0
リーリエたちは居住区の一室に戻ると、みさえがリーリエたちに晩ご飯のシチューとお手製のマラサダを振舞った。

みさえ「さ、どんどん食べて。たくさん作ったから」

リーリエ「わぁ……いただきます!」

アセロラ「うん、とってもおいしい!」モグモグ

みさえ「ごめんなさいね、あり合わせのものでしか作れなかったけれども」

リーリエ「そんなことないです」

みさえ「リーリエちゃん、カザマくんたちはどう? 言うこと、聞いてくれる?」

リーリエ「いいえ……その、やっぱりお願いを無視してしまうことがしばしば……」

みさえ「そうなの……やっぱり、人から預かったポケモンに言うことを聞かせるのって大変なのね」

アセロラ「うーん、どうかなぁ? 本当にリーリエちゃんの言うこと、聞いてないなら指示を無視するだけじゃすまないよ」

108: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:57:37.79 ID:Y7xDIbbj0
リーリエ「たとえば、どういうものでしょうか?」

アセロラ「そうだね、戦ってる最中に寝ちゃったり、なまけちゃったり、最悪自分を攻撃しちゃうこととかがしょっちゅう起きるんだよ」

みさえ「聞いたことあるわ。ポケモンはトレーナーの実力を見ていて、ジムから貰えるバッジの数で言うことを聞く度合いも変わってくるって」

リーリエ「そういうふうなこと、全然ないんですよね。カザマさんたちはあくまでお願いを聞かないだけで、怠けるようなことはしません」

リーリエは、テーブルのそばでポケマメを食べさせているカザマたちをみやった。カザマとボーちゃんは黙々と食べているが、マサオとネネはなにか妙なやりとりをしながらポケマメを食べている。

ジュナイパー&ミミッキュ「…………」

キテルグマ「クーーッ。クゥー!」

ヨワシ「ヨワァ……ヨワヨワシー」

アセロラ「……やっぱり、しんちゃんの戦い方って、普通のトレーナーから見てみると、とっても変わってるってアセロラ思うんだ」

みさえ「そうねぇ、ハプウちゃんと戦っている時も、ほとんど指示してなかったもの」

リーリエ「その戦い方に慣れすぎて……カザマさんたちは指示を受けて行動するということができないのでしょうか」

アセロラ「たぶんそれだね。もらったポケモンは扱いが大変なのは当たり前だけど、ここまで難しいというのはわりと珍しいよ!」

そこでリーリエはふと思った。ライチやハプウとの大大試練と、しんのすけの戦い様を何度も見守ってきた。
しんのすけは命令せずとも、息のあったコンビネーションを繰り出し、会話しているようにポケモンに話しかけていた。

リーリエ(まさか本当にしんちゃんはポケモンさんと……)

109: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 19:58:42.62 ID:Y7xDIbbj0
リーリエ「……でも必ず、しんちゃんのポケモンさんとは、心を通わせてみせます! しんちゃんを助けたいという気持ちは、わたしもポケモンさんとも一緒ですから!」

アセロラ「うん、その意気込みを忘れなきゃ、きっとポケモンも応えてくれるよ!」

アセロラ「それに、リーリエちゃんのあの戦い方、びっくりしちゃったよ。シロデスナはね、みずタイプの攻撃を受けると砂が固まって防御力が高まっちゃう『みずがため』という特性を持っているんだ! だから、みずタイプとは相性が悪いようで実は優位に立てるんだ!」

リーリエ「なるほど……でしたらカザマさんを出すべきでしたね」

みさえ「それにしても……かがやく石を取りに行ったきりなにも連絡はないけれど、みんな無事かしら?」

リーリエ「ここはまだビーストさんがいないだけ安全ですが……島にはビーストさんがたくさんいますから、みなさんのことがとっても心配です」

ククイ博士「心配してくれたのかい? うれしいぜ!」

リーリエ「きゃっ!」ビクッ

みさえ「博士! いつのまに帰ってきたんですか?」

ククイ博士「ええ、どうやら僕らが一番乗りだったようですね」

バーネット「リーリエ、元気にしてた?」

リーリエ「バーネットさん! お久しぶりです!」

110: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:02:33.10 ID:Y7xDIbbj0
バーネット「リーリエ、本当にイメチェンしたのね! 顔つきがとっても引き締まってるし、まるで別人みたい!」

リーリエ「はい! 進化したゼンリョクの姿、です。しんちゃんから預かったのですが……ポケモントレーナーにもなりました!」

みさえ「えーっと、どちら様で……?」

ククイ博士「紹介します。僕の奥さんで、アーカラ島の空間研究所の所長をしているバーネット博士です!

ククイ博士「バーネット、こちらはしんのすけのお母さんの野原みさえさん、そしてメレメレ島のキャプテンのアセロラ。彼女から月の笛の情報を提供してもらったんだ!」

バーネット「バーネットです、よろしくね。ククイから話は聞いています。私たち空間研究所も、事態の解決に協力していくつもりです」

みさえ「あ、どうも……」ペコリ

111: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:03:28.70 ID:Y7xDIbbj0
アセロラ「博士! かがやく石は貰えた?」

ククイ博士「ああ! カプ・テテフはてだすけしてくれたよ。それに、メレメレ島に行ったひろしさんとハウからも、カプ・コケコからかがやく石が貰えたって連絡が来たからね!」つ かがやく石

アセロラ「おー、後はウラウラ島とポニ島だね!」

ククイ博士「ひろしさんたちも、今はポニ島にいるんじゃないかな?」

リーリエ「ハプウさんなら、きっと協力してくれますよね!」

アセロラ「クチナシのおじさんも、きっとわかってくれるよ!」

ククイ博士「そうだね! 3人を信じて待とうよ」

みさえ「さ、博士もバーネットさんもどうぞ。晩ご飯の用意できますので」

ククイ博士「おっ! いいんですか?」

バーネット「では、お言葉に甘えさせていただきますね!」

112: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:05:17.77 ID:Y7xDIbbj0
ククイ博士「リーリエ、ポケモントレーナーになってみて気分はどうだい?」

リーリエ「はい! まだ、しんちゃんのポケモンさんとは上手く連携は取れていませんが……ポケモンさんと一緒に戦っていると、こんなに胸がドキドキするなんて思いませんでした!」

ククイ博士「そうだろ? 君が自分のポケモンを持つようになれば、もっとドキドキするような事が起きるぜ!」

バーネット「リーリエがトレーナーデビュー……なにか感慨深いね」

みさえ「あたしもポケモントレーナーになってみようかしら」

アセロラ「しんちゃんのお母さんはポケモントレーナーじゃないの?」

みさえ「うん、あなたたちくらいの年の頃は家のことを手伝っていたから」

バーネット「どこ出身なんですか?」

みさえ「ホウエン地方のフエンタウンってところです。その後はカントー地方に上京して、その後はカスカベ地方に住んでいました」

ククイ博士「ホウエン地方は暖かいですから、アローラの気候にもすぐ慣れたのでは?」

みさえ「ええ、わりと」

113: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:16:02.66 ID:Y7xDIbbj0
トントン
ウィーン

ビッケ「お食事中、失礼します」

リーリエ「ビッケさん。どうかなさったのですか?」

ビッケ「グラジオさまと、野原ひろしさん、ハウさんの船が戻りました」

ククイ博士「おっ、みんな戻ってきたのか!」

ハウ「戻ってきたよー!」ヒョコッ

ククイ博士「うおっ!」

リーリエ「ハウさん!」

ハウ「美味しそうなニオイに誘われてたらついたー」

グラジオ「博士は先に着いたようだな」

みさえ「みんな、石は貰えたの?」

ひろし「ああ、みんなカプから認めてもらえたぜ!」

ひろし達3人はそれぞれカプから貰ったかがやく石を、リーリエたちに見せた。

アセロラ「みんなカプから認められるなんてすごすぎ! グラジオくんもすっごい苦労したでしょ?」

114: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:20:39.38 ID:Y7xDIbbj0
ハウ「しまキングたちが手伝ってくれたおかげだよー」

グラジオ「そうだな……それに、彼女がいなければ、正直石が手に入ったかどうか分からなかったな」

アセロラ「彼女?」

グラジオが頷くと、「来い」と手で部屋の外へ誰かに向かって合図を送った。すると足音が近付いて、『彼女』が部屋に入ってきた。

プルメリ「……」

リーリエ「プルメリさん?!」

アセロラ「エー! なんでー!?」

みさえ「誰?」

ククイ博士「そうか、君がマーレインの言っていた『思わぬ協力者』か」

ハウ「おれもびっくりしたよー! スカル団の幹部が協力してくれるなんてー」

プルメリ「元、だよ。もうスカル団は解散したんだ」

115: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:21:46.62 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「今、アローラ全域に渡って元スカル団のしたっぱたちが救助活動を行っている……。オレもこの目で見たからな。だからこそ、カプ・ブルルは石をくれたんだ。スカル団が解散して、アローラのために行動していることが、あいつの心を動かしたらしい」

ひろし「にわかには信じられないけどな……」

プルメリ「グズマをビーストの世界から取り戻して、罪を償わせなきゃいけないからね。そのため、あたいもアンタたちと一緒に行動したいのさ。……わがままなのは承知の上だけどね」

リーリエ「プルメリさんも力を貸してくれるなんて頼もしいです! 一緒にグズマさんを助けに行きましょう!」

プルメリ「あぁ、そうだね」

プルメリ「その前に、ひろしとみさえ……だったね。まず、謝らせてくれないか?」

ひろし「え……?」

116: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:23:26.45 ID:Y7xDIbbj0
プルメリ「……あたいがスカル団にいた頃、したっぱたちがしんのすけにちょっかいだしては、返り討ちに遭ってね。その報復に何度もあいつにポケモン勝負をしかけて、倒そうとしていたんだ」

みさえ「……!」

プルメリ「それにウラウラ島では、そこにいるキャプテンの子供たちのヤングースを人質に取って、しんのすけに1人であたいらのところまで来るよう脅したんだよ」

ひろし「お前っ……」

リーリエ「でも、それはかあさまがほしぐもちゃんを狙っていたからで……」

プルメリ「それでもね、しんのすけを危ない目に合わせたことには違いないんだ。だから、アンタたちに今ここで追い出されても、文句を言える立場じゃないんだよ」

アセロラ「……」

プルメリ「だから、そのワビになれるかどうかわからないけど……あんたたちの息子さんを助ける手伝いをさせてくれないか?」

ひろし「……」

みさえ「……」

117: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:25:19.62 ID:Y7xDIbbj0
ひろし「はっきり言って、今の話を聞いて本当のことなら俺たちはお前を許さない。うちのしんのすけをアンタたちのせいで危ない目に遭わせたんだからな」

プルメリ「……」

ひろし「だから、お前もしんのすけを助けるのに協力するんだ。しんのすけを助けられたら、そんときはアンタがしんのすけにしたことを許してやる」

みさえ「そうよね、あなたは元スカル団でも幹部だったんでしょ。私たちの力になってくれるのなら、それで充分」

ひまわり「たい!」

プルメリ「……!」

アセロラ「そうだね、ヤンちゃんのぶんもちゃんと償ってもらわないと!」

ひろし「みんなも、それで文句はないよな?」

リーリエ「はい!」

ハウ「異議なしー!」

アセロラ「異議なーし!」

ククイ博士「ハウとアセロラと同じ意見だぜ! 僕は君を喜んで迎え入れるよ!」

バーネット「スカル団も手を貸してくれるなんて、びっくりだよ。でも私たちにとって心強いよ」

グラジオ「……そうだな。用心棒をしていたオレが言えた身分ではないが」


118: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:26:52.47 ID:Y7xDIbbj0
プルメリ「みんな……すまないね。礼を言うよ。……あたいらは、カプやアローラの人たちに赦される時が来るもんかね」

ククイ博士「赦されるさ。君たちはアローラを守り、自分たちの罪を償おうとがむしゃらに努力しているんだろ? いつかカプもわかってくれるよ」

プルメリ「そう言ってもらえると、あたいらも救われるんだけどねえ」

みさえ「さ、みんな上がって! 疲れたでしょ? 晩ご飯用意できてるわ」

ひろし「おっ、サンキュー!」

プルメリ「あたいもいいのかい?」

みさえ「いいのいいの。プルメリ……ちゃんだっけ? ずっとビーストと戦ってお腹すいてるでしょ?」

ハウ「わーい! おばさんおれ大盛りねー!」

グラジオ「フッ……気が付くと賑やかになったもんだな」

ククイ博士「というか、部屋に入りきらないんじゃないのか?」

119: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:28:34.52 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「ビッケ、石はここに4つ揃った。月の笛の解析状況は?」

ビッケ「はい! アセロラさんの協力もあって、内部構造及び材質の分析が終わりました」

グラジオ「どのくらいの時間を要せば修復できる?」

ビッケ「おそらくですが……財団が総力を上げて取り掛かれば2日――いえ、1日のお時間をいただければ、修復が終わるかと」

グラジオ「なら……頼む」

リーリエ「ビッケさん……よろしくお願いします!」

ビッケ「お任せ下さい!」

120: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:31:35.33 ID:Y7xDIbbj0
エーテルパラダイス 財団職員専用食堂

人数が多くなってしまったことで、居住区から食堂へ移動すると、全員で改めて食事を再開した。さすがに大人数の食事は出来ていないのでバーネットとアセロラも加わって追加の分を作り、それぞれ晩御飯を愉しんだ。

アセロラ「はーいひまちゃーん、あーん」

ひまわり「あーん」ムシャムシャ

バーネット「ふふっ、子供がいるっていうのも、いいかもね」ナデナデ

みさえ「博士はまだお子さんは……?」

ククイ博士「まだいないですね。僕らもこうして会う時間が少ないんですよ」

バーネット「でもそろそろ、夫婦らしく同居するっていうのも悪くないんじゃない?」

ククイ博士「そうだね、ハニー。研究所も潰れてしまったから、これを機に新居を建てるというのも、悪くないかもね」

プルメリ「グラジオ、そういえばあれを渡すの、忘れてないかい?」

グラジオ「ああ、オマエらに渡しておくものがあったな。今アローラにいるウルトラビーストのデータだ。マーレインが作ったそうだ」

アセロラ「マーレインくん、やるじゃん! こんなに早くビーストのタイプも分析しちゃうなんて!」

121: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:32:56.76 ID:Y7xDIbbj0
ハウ「あれー? でもこの『BLASTER』っていうの、たぶんくさ・はがねじゃないと思うよー」

グラジオ「ほう……?」

ハウ「おれとおじさんがメレメレに戻った時にこのビーストと出会って戦ったんだけどー、その時カプ・コケコが助けてくれたんだー。その時放ったかみなりが、抜群に効いていたんだよー。くさタイプだったら、たぶんあの時倒れてないと思うんだー」

ククイ博士「となると、このビーストのタイプはひこう、みずタイプのどれかが入っているってことだね。見た目からして、ひこうタイプなのは間違いないだろう」

ひろし「はがね・ひこうか……。じめんが効かないのはやっかいだな」

ククイ博士「よーし、このミスをさっそくマーレインに送って修正してもらうとするかな。ハウ、お手柄だよ」

ハウ「じゃーご褒美にグラジオの残したマラサダ貰っていいー?」

グラジオ「どうしてオレなんだ……!」

リーリエ「……ふふっ」

リーリエ(みなさんとこうして食事して……本当に明るくて、楽しいです)

そんな楽しげなやり取りをリーリエは目を細くして眺めていると、ふとしんのすけの事を思い出した。
……ここにいるべきあの少年は、いないのだ。

リーリエ(しんちゃん……お腹、すいてないかな。かあさまに、ひどい目に合わされていなければ、いいのですが)チクン

122: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:35:43.86 ID:Y7xDIbbj0
リーリエ「……みなさんは、しんちゃんと出会っているんですよね」

ハウ「んー? それはリーリエも一緒じゃないのー? ここにいる人たちみんなリーリエと会ってるよー?」

リーリエ「でも、もしわたし一人だけだと、こんなに出会えたというのはきっと無かったです。こうして、みなさんと一緒に食事ができることも有り得なかったと思います」

グラジオ「ああ……。元スカル団の幹部にポケモン博士、キャプテン、しまキングの孫、財団の職員、そしてオレら……ごった煮もいいところだ」

ハウ「みんな、しんのすけが引き合わせてくれたんだねー」

リーリエ「だから……しんちゃんも欠けちゃ、いけないですよね」

プルメリ「……リーリエ」

123: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:36:53.84 ID:Y7xDIbbj0
ククイ博士「だったら、取り戻せばいいだけさ! しんのすけを取り返して、またみんなでこうやって晩ご飯を食べようぜ!」

ひろし「そうだな。俺たちも、こっちに来てまだ家族と一緒に晩ご飯を食べることすら出来てないからな」

みさえ「そうね……」

バーネット「次はわたしも本格的に手伝おうかしら?」

アセロラ「アセロラも今度はゼンリョクで腕を振るうからね! みんなで晩御飯作るって約束、まだ果たしてないし」

ハウ「おれー、いっぱいマラサダ買ってきてーみんなに分けてあげたいー」

ククイ博士「と言いつつ、マラサダを独り占めしちゃうんじゃないか?」

ハウ「えー? やだなーそんなことしないよー」

\アッハッハッハッ!/

リーリエ(そうですね……奪われたのなら、取り戻せばいい。それだけです)

リーリエ(しんちゃん、必ず無事でいると信じています)

リーリエ(絶対にかあさまもあなたも、取り戻します。そのために、わたしもゼンリョクで頑張ります)

リーリエ(ビーストの世界から戻ってきたら、みんなでパーティーをしましょう。きっと、今よりもっと明るくて、楽しくて、盛り上がると思います)

リーリエ(待っててくださいね。しんちゃん)

124: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:38:15.02 ID:Y7xDIbbj0
エーテルパラダイス 2階 保護区テラス

賑やかな食事が終わり、リーリエたちは各々の割り当てられた部屋に戻って明日に備えて身体を休めていた。
グラジオはそんな中、テラスで月明かりに照らされた海面を眺めていた。
グラジオはマリエ庭園でのアクジキングとの死闘を思い出し、タイプ:ヌルの入ったモンスターボールを取り出して覗いた。

グラジオ「ヌル……すまないことをした。あの時、オレが驕ってさえいなければ、オマエを危険な目に合わせることもなかった」

ひろし「よう、グラジオくん」

グラジオ「……ひろしか?」

ひろし「こんなところで何してるんだ?」

グラジオ「ああ……ああいう雰囲気の中にいるのは初めてだからな。だから、こうして夜風に当たりながら、一人で頭を落ち着かせていた」

ひろし「そうか。俺達はまぁ、食後の散歩のようなものさ。ここに来れば、たくさんポケモンも見られてひまも喜ぶしな。それでたまたま君を見かけたんだ」

グラジオ「フッ……そうか」

125: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:39:17.47 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「……ひろし、みさえ」

ひろし「ん?」

グラジオ「……オレは、こっちの事情にアンタたちの息子を巻き込んでしまって、申し訳ないと思っている」

みさえ「ううん、あなたが謝ることじゃないわ」

ひろし「なーに、あいつがそう簡単にくたばったりしないさ」

グラジオ「……そうだな。あいつは強い。そこはオレも認める」

ひろし「なにせ、自慢の息子だからな」

みさえ「そうそう、将来は他の地方のチャンピオンを倒せるようなトレーナーなってもらわないと」

ひろし「そのためにも、あいつを助けに行かなくちゃな」

グラジオ「……お前たちもウルトラホールの中へ行くつもりなのか?」

みさえ「当たり前でしょ!」

グラジオ「よせ……。ポケモントレーナーではないお前たちが行って、生きて帰れるような場所じゃないぞ」

ひろし「忠告ありがとよ。でも、俺たちは家族だ。誰か一人が危ない目にあったら、みんなで助けに行くんだ。家族と一緒にいれば、世界の危機だろうが、なんだろうが乗り越えられる」

みさえ「あなたはまだ子供だから分からないけれど、子供のためなら、親はなんだって出来るものなのよ」

グラジオ「……」

126: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:40:37.84 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「まっ、そうだろうな。ひろしはここでリーリエを救出するとき、ためらわずオレたちについてきたからな」

グラジオ「……しんのすけが羨ましく思う。子供の為に命をかけてくれている親が居るとはな」

ひろし「父親はどうしたんだ?」

グラジオ「父は――ウルトラホールとウルトラビーストの存在を初めて発見した人なんだ。だが……父は、ウルトラホールの実験中に消えた。残されたのは、ウルトラビーストの資料と、弱ったコスモッグだけだ」

ひろし「まさか、ルザミーネがウルトラビーストに惹かれたのって――」

グラジオ「もしも、母がウルトラビーストへ向けた理由が、父への想いだとしたらオレとしては救われるがな。オレは、母がウルトラビーストを欲したあの行動がわからんでもない」

みさえ「だからって、子供をないがしろにする理由にはならないわ」

グラジオ「……だが、それでもオレたちにとって、母なんだ」

みさえ「……」

ひろし「なあ、グラジオくん」

グラジオ「なんだ?」

リーリエ(にいさまとしんちゃんのご両親方……なにを話しているのでしょうか?)

127: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:41:32.21 ID:Y7xDIbbj0
たまたまほしぐもちゃんを連れて散歩に来たリーリエがエレベーターを上がると、話し声が聞こえて、彼らの会話に耳を立てる。

ひろし「子供は親を見て成長するもんだけど、親も子供を見て成長していくんだよ。俺もみさえも、しんのすけと一緒にいてたくさん教わったものがあるんだ」

グラジオ「教わった……?」

みさえ「そうね。こっちに来て、あの子が島巡りして――しんのすけがハプウちゃんの大試練をやり遂げた姿を見て、私も教えられたわ。あの子が自分の足であそこまで来たのね、って」

ひろし「だからさ、グラジオ君もリーリエちゃんも、自分たちがあいつから離れて学んだこと、考えたことをルザミーネにガツンと教えてやるんだ」

リーリエ「!」

グラジオ「……」

グラジオ「フッ……そうだな。このまま何も言わず、終わるわけにはいかない。必ず取り戻すぞ。全てを」

ひろし「ああ!」

みさえ「ええ!」

ひまわり「たい!」

シロ「アンッ!」

リーリエ(……!)コクン

ひろし「お前のためにみんながゼンリョクを出しているんだ――だから無事でいろよ、しんのすけ!」

128: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:46:20.20 ID:Y7xDIbbj0
――その頃、しんのすけは……。

しんのすけ「うー、おまたが冷えるとおしっこもすぐ出ちゃいますなぁ」ジョボボボ

しんのすけ「でも、なんかZリングはあったかいのよねぇ」

さっきから熱を帯びているZリングを眺めると、うっすらと赤く煌めかせていた。こんなこと、今までなかったのに。

しんのすけ「まったく、くさやのおじさんには頭にきますな!」

ロトム図鑑「あいつが言い訳並べてでも帰りたくないってことは、ここにはたくさんのスケスケおパンツが……?」

フェローチェ『あの方も、しん様と同じ世界の方なのですね』

しんのすけ「まーね」

しんのすけ「あープンプン怒ってたら腹減っちゃったぁ。とーちゃんからもらったポケマメでも食べるか」

しんのすけ「あいちゃんもたべる?」ポリポリ

フェローチェ『まぁ、しん様が下さる食べものは、なんでも口に入れられますわん!』スッ

フェローチェ『しん様は、向こうの世界でどんなことをしていらしているのですか?』モグモグ

129: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:53:32.31 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「オラたち、島巡りしてるの」

フェローチェ『島巡り?』

ロトム図鑑「オレ達、自分探しの旅をしているのさ」

しんのすけ「ついでにきれいなおねいさんとかも見つかるといいかなーって」

フェローチェ『旅、ですか。それは素晴らしいですわ。先ほどのグズマ……という方はしん様のお仲間ですか?』

しんのすけ「ううん、くさやのおじさんはスケスケおパンツ団っていう、ポケモンとスケスケおパンツを盗るあくどい集団のボスなんだゾ」

フェローチェ『ということは、しん様たちの敵……ということですわね』

ロトム図鑑「だが様子がおかしかったな。心なしか、大人しくなったような気もするぞ」

しんのすけ「どーせ盗んだスケスケおパンツがおばさんのものだったんでしょ」

フェローチェ『しん様は、島巡りをして、どうなさるのですか?』

しんのすけ「オラー? オラはね、島巡りチャンピオンになって、おねいさんたちにモテモテになるのが夢なの。チャンピオンになったら、ゆーめーになるらしいですから」

フェローチェ『島巡りチャンピオンですか……あの、もしよろしければですけど』

しんのすけ「お?」

フェローチェ『あいも、旅の仲間に加えさせてもらえないでしょうか?』テレテレ

130: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 20:58:16.17 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「なんで?」

フェローチェ『もちろん、しん様があいの命を救ってくださったからですわ! それにあいが住んでいた世界はもう飽きてしまいましたし、こっちの世界の人間やポケモンという生き物の暮らしをキチンと見てみたいからですわん』

しんのすけ「そーいえば、あいちゃんってなんで倒れてたの?」

フェローチェ『何度かこの世界に「穴」が開かれたことはお話しましたね。その穴を、あいは好奇心でくぐり抜けて、何度かアローラ地方を訪れたことがありますの』

フェローチェ『ですが……あいのことが珍しいのでしょうか。何度か、真っ白な人間たちが、あいを追いかけてきて――それで、応戦して疲れ果てていたら、しん様が助けてくださったのですわ』

しんのすけ「ふーん」

ロトム図鑑「しんのすけ! 仲間に加えようぜ! こいつを加えれば戦力もアップするだろ?」

ロトム図鑑(ウルトラビーストを持ち帰れば、世界初のウルトラビーストを登録した図鑑として名を馳せるからな!)

しんのすけ「うーん……ま、いいけど。マサオくんとの約束もあるし」

フェローチェ『ありがとうございます、しん様!』

ロトム図鑑「よっしゃあ! ウルトラビーストゲットだぜ! そうと決まれば、さっさとこんな世界を出るぞ!」

――ウフフ、そうは行きません

全員「!?」

131: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:01:25.05 ID:Y7xDIbbj0
声が聞こえたと同時に、しんのすけたちに向かって電気が走ってきた!

ロトム図鑑「危ない! 避けろ!」

しんのすけとあいちゃんはすかさず回避するが、逃げ遅れたぶりぶりざえもんが電撃をモロに喰らいながら、岩に叩きつけられる!

ビリビリビリビリッ!!!

ロトム図鑑「ブヒィィィィ!!」ビリビリッ!

しんのすけ「ぶりぶりざえもん!」

ロトム図鑑「し……しんのす……」バチッ! バチチチッ!

ロトム図鑑「」バチッ! バチッ!

しんのすけ「ぶりぶりざえもんっ!」

しんのすけはロトム図鑑を拾い上げて揺さぶるも、ぶりぶりざえもんの目は閉じられており、画面になにも表示されていない。

ルザミーネ「ウフフ! やっと見つけた……。探しましたよ。しんのすけ君!」

しんのすけ&フェローチェ「!」

顔を上げると、しんのすけたちの前にウツロイドやデンジュモク、マッシブーンといったウルトラビーストと、それを率いるようにルザミーネが笑みを浮かべながら浮かんでいた。

132: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:02:34.19 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネ「ふうん、そこのフェローチェ……あなたがしんのすけ君を助けたのね。なぜその子を助けたのかわかりませんが、わたくしの愛を受けないのなら、ビーストであろうと敵です」

しんのすけ「妖怪メノクラゲオババ!」

ルザミーネ「しんのすけ君……その減らず口もいい加減閉ざすよう、教育してあげるわ」

ルザミーネ「さぁ愛しい子供達、この子を、新しい我が子として迎え入れます。しんのすけ君を捕まえなさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」

デンジュモク「デンデンジュッ!」

マッシブーン「ブーン!」ハルクホーガン!

フェローチェ『しん様、下がってくださいませ!』フッ!

あいが飛び出すと、マッシブーンが拳を振り上げるよりも先に、顔面を蹴り飛ばす!

マッシブーン「ブンッ?!」ドカッ!

ウツロイド「じぇるるっぷ!」バシャッ!

ウツロイドが毒を飛ばして、あいに直撃するが、姿が消えた。あいは空中にとびあがり、ウツロイドを踏みつけるように頭部へ一撃を入れた!

ウツロイド「じぇ、じぇるる……!」

133: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:03:23.75 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネ「あのフェローチェ……目障りね。デンジュモク、フェローチェにさいみんじゅつよ!」

デンジュモク「デンデンッ!」ギィーッ

フェローチェ『うっ……!』クラッ

デンジュモクは両手足と尻尾を地面にくっつけて木のような形状になると、頭部の光をチカチカと点滅させて奇妙な音を立て始めた。光と音を聞いた瞬間、あいの意識が遠くなり始める。しかし――。

しんのすけ「ぶりぶりざえもんの仇! ケツだけアターック!」ドカッ!

デンジュモク「デン!?」

フェローチェ『しん様!』

かろうじて意識を留めたあいは、デンジュモクへ向けて一直線に飛び出し、とびひざげりを放ち、デンジュモクに命中。そのまま倒れた!

フェローチェ『しん様、また助けていただき、ありがとうございます!』

しんのすけ「それほどでも」

ルザミーネ「しんのすけ君……!」

134: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:07:09.86 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネは怒りに任せて一斉に触手を振り下ろすと、衝撃波が走って地面を抉っていく!

ブンッ
ガガガガッ!

しんのすけ&あい「!」ピョンッ!

ルザミーネ「行きなさい! ウツロイドたち!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」キィィン

ドンドンドンッ!!

ルザミーネの命令を受けたウツロイドたちが、次々と眩く光る石を出現させて、そこから光線を放っていく!
しんのすけとあいはウツロイドたちのパワージェムをかわし続けていく。その真っ只中を、ルザミーネがあい目掛けて突っこんできた!

ルザミーネ「消え失せなさいっ!」グワッ!

フェローチェ「!」

触手をあいに向けて振り下ろす瞬間、しんのすけが飛び出して、あいを押しのけた。

しんのすけ「あいちゃん危ない!」ドンッ!

フェローチェ『しん様!』

135: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:08:04.34 ID:Y7xDIbbj0
シュルルルルッ!

しんのすけ「おわっ!?」

ルザミーネ「うふふっ、また捕まえた!」

しんのすけ「また捕まっちゃったあ!!」グググッ

フェローチェ『そんな……しん様! あいを庇って……!』

ルザミーネ「……わたくしの愛を拒絶するモノは、例えビーストであっても許しませんよ。徹底的に痛めつけなさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」バッ!

フェローチェが動き出そうとする直前、ウツロイドたちがパワージェムをフェローチェに向けて一斉放火した!

ドンドンドンッ!

フェローチェ『あああっ!』

しんのすけ「あいちゃん!」

136: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:10:00.78 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネ「さあ、しんのすけくん。わたくしと同じようにウツロイドと混じり合いなさい。……そして供に生きましょう? この美しい愛の世界で……」

しんのすけ「うわー! 40過ぎの妖怪メノクラゲオババとずっと暮らすとかやだやだやだ! 離せぇぇぇっ!!」ジタバタジタバタ

ルザミーネに拘束されているしんのすけの頭上に、もう1匹のウツロイドがしんのすけに覆い被さろうと、垂直に降りてくる。しんのすけは身の危険を感じ、暴れ逃げ出そうとするががっちりと固定されたかのように体を動かすことが出来なかった。

ウツロイド「じぇるるっぷ……」フヨォ

フェローチェ『ううっ……しん様……!!』

ルザミーネ「さあいらっしゃい……」ニヤァッ

しんのすけ「おわっ、おわぁぁぁぁっ!!」

クチュッ
グニャグニャ……






じ ぇ る る っ ぷ

137: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:10:39.35 ID:Y7xDIbbj0
今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。

じゃ、そゆことで~

138: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:11:34.67 ID:Y7xDIbbj0
【おまけ】

アセロラ「わ~かわいいー! しんちゃんの妹?」

ひまわり「た?」

みさえ「うん、ひまわりっていうの」

アセロラ「抱っこしてみてもいい?」

みさえ「いいわよー。気をつけてね」ハイ

アセロラ「アローラ、ひまちゃん! 古代のプリンセス、アセロラちゃんでーす!」

ひまわり「たぁ?」

みさえ「あ、そうだ。ちょっと下の階に行って荷物取りに行ってくるから、ちょっとひまの面倒見てくれる?」

アセロラ「はーい! じゃあひまちゃん、アセロラちゃんと遊んでお母さん待ってようねー!」

みさえ「じゃあお願いね」ガチャ

139: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/14(水) 21:12:11.13 ID:Y7xDIbbj0
バタン

みさえ「そういえば、なにか言い忘れていた気がするけど……」

アセロラ「ほーらひまわりちゃーん、ゴーストのZポーズだよー♪」

ひまわり「ほーほー」

みさえ「……ま、いいか。楽しそうだし」

~数分後~

ひまわり「きゃきゃきゃー♪」ダダダダ!

アセロラ「あー! その腕輪大事なものだから持ってっちゃダメ! アセロラちゃん、とってもアングリーになっちゃうよ!」ドタドタドタ!

みさえ「そうそう、光り物はひまの前に出しちゃダメって言おうとしたけど……手遅れだったわね」

150: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 19:54:23.74 ID:aMmubLhw0
エーテルパラダイス ルザミーネの屋敷前

リーリエは太陽の光を浴びながら、右手にはカザマの入ったボールが、左手にはウルトラビーストのデータが入った端末が握られている。

リーリエ(月の笛も……もうそろそろ……)

きっと、ビーストの世界に行けば、ウルトラビーストを従えた母と戦うかもしれないだろう。そうでなくとも、ビーストからリーリエの身を守るために、しんのすけのポケモンたちの力は必須だ。

リーリエ(やれるだけのことはやりました。あとは――)

151: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 19:55:19.47 ID:aMmubLhw0
~前日の夜~

ルザミーネの屋敷の庭で、みんなに見守られながら、リーリエとハウ、ネネとガオガエンが対峙していた。
ネネはピンク色の毛並みのあちこちに火傷があり、ガオガエンの身体にも激しい拳撃の跡が残っている。だが、ネネは片膝をついてガオガエンを睨みつけている一方で、当のガオガエンは不敵そうに笑っていた。

ハウ「ガオガエン! フレアドライブ!」

ガオガエン「ガオオオッ!」ダッ!

ハウの指示を受けたガオガエンは、一気にネネに向かって走り出すと、へそから炎を放出させて全身に纏い始めた!
そして、炎と一体になりながら、ネネに全身をぶつける!

ガオガエン「オオオオッ!!」ゴォォォッ!!

ドンッ!!

キテルグマ「クーーーッ!??」

ガオガエンのフレアドライブを受けたネネの巨体が燃え盛りながら宙を飛び、地面に倒れ伏した。

リーリエ「ネネちゃんさん!」

キテルグマ「ク……クー」ガクッ

ククイ博士「ハウとガオガエンの勝ち、だね」

152: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 19:56:50.66 ID:aMmubLhw0
ハウ「……っぷはぁー! 手に汗握る、すごい戦いだったー!」

リーリエ「お見事です。ハウさん!」

リーリエ「……ですが、あくタイプに有利であるはずのネネちゃんさんが押し負けられるとは思いませんでした。タフさでは、しんちゃんのポケモンさんの中でも一番と思っているのですが……」

ひろし「ネネちゃん――キテルグマの特性はもふもふって言ってな、その名のとおりもふもふとした身体で攻撃を軽減させる代わりに、ほのおタイプの攻撃にはめっぽう弱いんだ」

ククイ博士「そういうことだね。ガオガエンのフレアドライブでは受け止めきれないだろう」

ハウ「うんー。それにねー、おれが逆にリーリエの作戦を真似したのー」

リーリエ「そうだったのですか……。ハウさん、さすがです!」

ハウ「でも、リーリエの戦い方ってーすごいえげつないよねー。作戦に気がつかなきゃ、おれ、負けてたかもー」

リーリエ「え、えげつないって……」

アセロラ「ハウくん、もっと他にも言い方あるでしょー! 間違ってないけど……」

ハウ「うー、ごめんねー」

プルメリ「ま、あたいはあの戦い方、結構好きだよ。なにがなんでも相手を倒そうっていう気迫がビンビンに感じられるね」

153: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 19:57:26.10 ID:aMmubLhw0
グラジオ「だが、同時に弱点も明らかになったな。まずは作戦を悟られないようにすること……そして相手の出すポケモンの性質と傾向を理解しておくべきだ」

リーリエ「はい……今回もアセロラさんとの戦い方も、お互いの手持ちを知っていたからああいうことが出来たんですよね」

グラジオ「リーリエ、ひとつずつミスを潰せばいい。お前には、志を共にする仲間がいるんだからな」

ククイ博士「そうだね。まずはマーレインから貰ったビーストのデータを頭に入れるんだ」

アセロラ「それに、しんちゃんのポケモンたちも、だんだんリーリエちゃんの言うこと、分かってきてるよ」

みさえ「そうね、私ポケモン勝負はさっぱりだけど、リーリエちゃんが強くなっていってるのは分かるわ!」

ひまわり「たい!」

リーリエ「みなさん……本当にありがとうございます。わたし、カザマさんたちと一緒に、もっと頑張ります!」

プルメリ「今度はあたいと戦ってみようか。状態異常についても、知っておいて損はないだろ?」

リーリエ「はい! よろしくお願いします!」

みんなの粘り強い指導と、リーリエとカザマたちが夜通し行った血のにじむ努力は、これから発揮されていくだろう。

154: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 19:59:46.41 ID:aMmubLhw0
リーリエ(あなたたちを、信じます)

コツコツ

グラジオ「リーリエ、ここにいたか」

リーリエ「みなさん……」

みさえ「あなたに渡すものがあるのよ」

アセロラ「リーリエちゃん、はい!」

アセロラが一歩前に出ると、飾り気のない直方体の箱を渡された。リーリエはそれを受け取り、箱を開けると、完全に直った月の笛が陽の光を浴びて青々と輝いていた。

リーリエ「これは……!」

ひろし「さっき、修復が終わったんだ」

ククイ博士「アローラの人たちと、ビッケさんたちエーテル財団の方々が、がむしゃらに修復に勤しんでくれたおかげだね」

プルメリ「これで伝説のポケモンを呼び出すんだろ?」

ハウ「おれもみんな、バッチリ行く準備はできているよー。リーリエはー?」

リーリエ「わたしも……準備万端です!」

アローラの人々と神々の祈りを込めながら修復された月の笛を手に、リーリエたちはグラジオの小型船へと乗り込んだ。

ククイ博士とバーネットはエーテルパラダイスの人やポケモンたちの助けになれるよう、マーレインと協力してビーストへの対抗策を練り、アセロラはエーテルハウスから連れてきた子供を守るために残ることになった。

155: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:00:30.82 ID:aMmubLhw0
リーリエ「みなさん。月の笛からポケモンのことまで……何から何まで、ありがとうございます!」

バーネット「あなたがゼンリョクで頑張るのなら私達も応援するって、それだけよ」

ククイ博士「リーリエ、ハウ、君たちならきっとしんのすけとルザミーネを取り戻せるよ。ポケモンと供に、ゼンリョクで突き進んだ!」

バーネット「みんなの想い、あなたたちに託したからね!」

アセロラ「必ずしんちゃん連れて戻ってきてよ! アセロラ、アローラ防衛隊なのにしんちゃんから防衛隊バッジもらってないんだから」

リーリエ「はい!」

みさえ「さ、出かけるわよ――家族を取り戻しに」

ひろし「そしてすべて終わらせるために――行くぜ!」

全員「おーーーっ!!」

156: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:01:56.46 ID:aMmubLhw0
海上

グラジオの小型船が海を爆走するなか、ひろしたちは渡された昼食のマラサダを次々と口の中へ放り込んでいく!

ひろし「バクバクバクバクバク!!」

みさえ「ガツガツガツガツガツ!!」

ひまわり「チューチューチューチューチュー! !」

ハウ「モグモグモグモグモグモグ!!」

リーリエ「ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ!!」

グラジオ「ボリボリボリボリボリボリボリ!!」

プルメリ「ガリガリガリガリガリガリガリ!!」

シロ「」ポカン

157: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:02:45.62 ID:aMmubLhw0
ポニ島

小型船が海の民の村に停泊すると、一斉にポニの原野へと駆け出した!

全員「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」ドドドドドド!!

ケンタロスすら超える速度で、ポニの原野を突っ切り、ポニの古道を横切っていく!

マッシブーン「ブンブーン!」モストマスキュラー!

アクロマ「いま あなたの めのまえで そんざいかんを はなつ ウルトラビースt」

ひろし「うるせぇ!」バキッ!

アクロマ「おほァ!」ドサッ

ドタドタドタッ!

アクロマ「よ、よろしいっ……なかなかの、パンチです……」ピクピク

マッシブーン「ブーン?」ダイジョウブ?

158: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:03:36.67 ID:aMmubLhw0
ポニの大峡谷

ひろしたちはポニの大峡谷に突入し、勘で洞窟内を駆け巡り、橋を渡り、飛び出した野生のポケモンを無視して突き進んでいく!

全員「うおおおおおおおああああああああ!!!」ドドドドドド!!

試 練 開 始 !

ジャラランガ「ジャラジャランジャン!」バァーン!!

ポニの大峡谷 ぬしポケモン
ジャラランガ 出現!

みさえ「邪魔!」バキッ!

ジャラランガ「ジャランガーーッ!?」ドサッ

試 練 達 成 !

ドタドタドタッ!

ジャラランガ「ジ……ジャラ」ヤッパリ

ジャランゴ「ジャラ?」ダイジョウブ?

159: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:04:42.51 ID:aMmubLhw0
月輪の祭壇

ハウ「あらよっと! ついたー!」

グラジオ「ここが月輪の祭壇……」

みさえ「なんか神秘的な場所ね……」

リーリエ「太陽と月……ここで2本の笛を吹けば……!」

ひろし「ここまで勢いで来ちまったけど、どこで笛を吹けばいいんだ?」

プルメリ「あの階段の上じゃないかい? 登ってみようよ」

満月が見下ろす中、リーリエたちは長い階段を登って祭壇の上部へとやってくる。

リーリエ「月の力、いっぱい感じます……。ほしぐもちゃん……あなたを元の世界に戻すまえに、しんちゃんを取り戻して、かあさまの目を覚まさせます……!」

グラジオ「あの水たまりに囲まれたところに、床に太陽と月の笛と同じ文様があるな……。ここに立って、それぞれ笛を吹くのだろう」

リーリエ「では、にいさまは太陽の笛を。わたしは月の笛を吹きます」

グラジオ「わかった」

160: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:10:22.80 ID:aMmubLhw0
プルメリ「あたいらは儀式の邪魔にならないよう、下がっていようか」

ひろし「ああ」

ひろしたちは階段のそばへ下がり、リーリエは月の文様が描かれた床へ、グラジオは太陽の文様が描かれた床へ立つと、それぞれ笛を取り出した。

リーリエ「月の笛……手になじみます。ひとりでに吹けそう……」

グラジオ「準備はいいか? 始めるぞ」

リーリエ「はい……!」

リーリエとグラジオは太陽と月の笛を口元に持っていくと、そっと息を吹きかけた。
しんのすけはリーリエが笛を吹けないことを不安がっていたが、その心配はなかった。笛そのものが、音色を出しているからだ。
笛から飛び出した鮮やかな音は、祭壇を覆っていき空間そのものに優しく囁いていく。

みさえ「……きれいな音」

そして、笛が歌い終えた瞬間――。

ゴゴゴゴ!!

リーリエ&グラジオ「!」

ハウ「なになにー?!」

161: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:12:28.74 ID:aMmubLhw0
地面が揺れたかと思うと、リーリエとグラジオの周囲の水たまりが光を帯びた。光は床の模様を伝って、正面にある巨大なモニュメントへと駆け抜けていく!
そして、てっぺんにある円形のレリーフにたどり着くと、レリーフがひとりでに開いていった。
開いた箇所からマグマのような朱色の光が溢れ出し、虹色に変色すると、祭壇に向かって光線を照射した! 照射した部分が、小さな光のドームとなる!

ゴソゴソッ!

リーリエ「ほしぐもちゃん……?」

プルメリ「リーリエのリュックが!」

リーリエのリュックに入っているコスモッグが、飛び出した。コスモッグはリーリエから離れて、光のドームの中へと入っていく。

ほしぐもちゃん「……!」

グラジオ「コスモッグが……!」

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

光のドームの中で、コスモッグも呼応するように輝きだし、光のドームがコスモッグに力を与えるように縮んでいく!
そして、超新星爆発の如く、青く眩い光を放ち、その場にいた全員が目を逸らした。


「マ ヒ ナ ぺ ー ア ! ! !」バサッ!

162: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:13:42.79 ID:aMmubLhw0
進化したコスモッグは、三日月のような巨大な翼を広げながら光のドームのあった場所へと舞い降り、産声を上げるように咆吼を上げた。

リーリエ「……!」

ハウ「コスモッグが進化したー!」

ルナアーラ「……」

みさえ「すごーい……!」

ひまわり「たやーい!」

プルメリ「アローラの伝説のポケモンは……コスモッグの進化系だったのか!」

コスモッグから進化したルナアーラは、真紅の瞳でリーリエたちを見下ろしている。

ひろし「あれが……ルナアーラ!」

――あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ

ひろし(星の繭……こういうことだったのか!)

163: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:14:45.37 ID:aMmubLhw0
リーリエ「ほしぐもちゃん……よかったです……無事で……いきなり飛びだすから……わたし、驚いちゃって……!」

グラジオ「それにしても……笛の音で力を与えるとはな……」

リーリエ「伝説ポケモンに進化させる……すごい儀式だったなんて!」

ルナアーラ「マヒナぺ!」

ハウ「すごいすごいー! コスモッグが進化すると伝説のポケモンになるなんてー! おれ、来てよかったー!」

リーリエ「伝説のポケモンに進化する話なんて、そんなの、本でも読んだことないのに……」

リーリエ「ルナアーラさん……ううん、ほしぐもちゃん! わたし、しんちゃんとかあさまに会いたい!」

ルナアーラ「マヒナぺーアッ!!!」バサッ!

ルナアーラは翼をはためかせると、急上昇した。翼を満月のように広げると、夜空のような青い身体が白くなっていき、額にもうひとつの目が浮き出てきた。

164: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:15:51.63 ID:aMmubLhw0
すると、祭壇のモニュメントに光が出現し、空間が歪んでいく。ルナアーラは第三の目から光を放ち、空間の歪みに当てると、ウルトラホールへと変化した。

グラジオ「ウルトラホール……!」

みさえ「これでしんのすけを助けに行ける!」

その時だった。
銀色の光が祭壇を襲い地面を穿った! 全員が攻撃を受けた方向を見ると、空にはテッカグヤが、祭壇と洞窟の出入り口にアクジキングが立ってた。

テッカグヤ「フー……!」ゴゴゴゴ!!

アクジキング「ズモォォォォッ!!」

ひろし「あいつら! こんなところにまで!」

グラジオ「行け……! ここはオレが食い止める!」スッ

ハウ「おれも手伝うー!」スッ

リーリエ「にいさま! ハウさん!」

プルメリ「リーリエ! グズグズしてる暇はないよ! 早くルナアーラと一緒にウルトラホールの中に飛び込むんだ!」

リーリエ「……はい! お願いします! ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!」グワッ

165: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:18:00.80 ID:aMmubLhw0
ハウ「アローラ防衛隊、ファイヤーだよー!」グッ!

リーリエ「ファイヤー! です!」グッ!

ルナアーラは急降下し、リーリエたち4人をかかえると、ウルトラホールの中へと飛び込んでいった!

バサッ!
グワァァァァッ キィーーーン!

グラジオ「頼んだぞ! ヌル!」ヒョイッ

ハウ「行くよー! ライチュウ!」ヒョイッ

ヌル「オオオッ!」ポンッ

ライチュウ「ライラーイッ!」ポンッ

グラジオ「ハウ……オマエがいてくれてよかった。礼を言う」

ハウ「褒められちゃったー照れるなー」

グラジオ「『BLASTER』は任せた。オレは『GLUTTONY』をやる!」

ハウ「へへー任せられたー! ライチュウ、10まんボル――」

その時、空から1匹のポケモンが回転しながらテッカグヤへと激突し、地面へと落下させる。同時に、ポケモンも地面に着地する。

バンバドロ「ムヒイウンッ!」ズザザザッ!

166: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:18:37.24 ID:aMmubLhw0
グラジオ「バンバドロ――!」

???「まったく……わらわを差し置いてこのポニ島の中で暴れるとはいい度胸じゃ」テクテク

ハウ「ハプウさん!」

ハプウ「お主らが全力疾走する姿が見えてな。ライドギアを渡そうと思ったが、今の状況を見る限り、必要なさそうじゃな」

ハウ「手伝ってくれるのー?」

ハプウ「もちろんじゃ。伝説のポケモンを見れて、気分も良いしな! このハプウとバンバドロ、最初からゼンリョクでビーストを迎え撃とうぞ」

グラジオ「よし……ホールを守りきるぞ!」

ハウ「うんー!」

ハプウ「うむ!」ギンッ!

167: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:19:54.53 ID:aMmubLhw0
ウルトラスペース

ブゥゥゥンッ!

リーリエ「きゃっ!」ドサッ!

ひろし「うわっ……と!」ドサッ!

みさえ「イタタ……」

プルメリ「……ここがビーストの世界」

リーリエたちは周囲を見渡すと、自分たちは別の世界に来たことをまざまざと思い知らされた。
まるで深海にいるような暗さ、奇妙な植物や岩、そして浮遊しているウツロイドたち。見ているだけで不安になる。

リーリエ「思っていたよりきれいな場所で……驚いています。でも……空気がどんよりと、なんだか苦しい……」

みさえ「ここに、しんのすけがいるのよね……」

プルメリ「グズマもね……」

168: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:20:45.45 ID:aMmubLhw0
リーリエはふと、空に浮かんでいるウツロイドをみやった。

リーリエ「博士は……ウルトラビーストもポケモンかもしれないと言ってました。だとすると、ウルトラビーストさんと呼ぶべきでしょうか」

ひろし「ああ、そうかもしれないな」

リーリエ「……行きましょう!」

ルナアーラ「……マヒナぺーア!」

待って、と言いたげに、ルナアーラがリーリエを呼び止めた。

リーリエ「どうした……の?」

ルナアーラが、息を切らしたように身体を震わせてリーリエを見据える。

みさえ「なんだか、弱っている気がするわ」

リーリエ「初めてウルトラホールを開いたから……疲れているのでしょうか?」

ルナアーラ「マヒナぺーア」コクン

プルメリ「さすがに伝説のポケモンといえど、別の世界に行くには相応の体力が必要ってことだね。よく頑張ったよ」

リーリエ「ありがとうね、ほしぐもちゃん。ビーストさんの世界に連れてきてくれて……!次はわたしの番ですね! 必ず、しんちゃんとかあさまをここへ連れてきますから! ここでゆっくり休んでください」

ルナアーラ「マヒナぺィーア」

169: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:21:50.66 ID:aMmubLhw0
みさえ「でも、どうやって探せばいいのかしら?」

すると、ひろしのそばで控えていたシロがリーリエたちの前に立った。

シロ「……」クンクン

ひろし「シロ、どうしたんだ?」

シロ「キャンキャン!」

みさえ「しんのすけの場所が分かるの?」

シロ「アンッ!」

みさえ「シロ……きっと、しんのすけのニオイを嗅いだのよ!」

ひろし「追いかけようぜ! まずは1人でもいいから誰かを見つけるんだ!」

プルメリ「そうだね……代表と一緒にいたグズマなら、なにか知ってるかもしれないね」

リーリエ「しんちゃん、待っててくださいね! 今、助けに行きますから!」

170: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:23:45.75 ID:aMmubLhw0
リーリエたちは、ニオイを辿って歩くシロを先頭にしつつ、ウルトラスペース内を歩き回った。
途中、アローラでうんざりするほど見かけたウルトラビーストたちがウルトラスペース内を闊歩しているのを目撃し、なるべく戦闘を避けるために身を潜めながら進んでいった。迷わないように、あらかじめひろしが持ち込んできた頑丈なロープを地面に垂らして帰り道を作る。

リーリエ「本当に、ビーストさんばかりの世界なんですね……」

プルメリ「多分だけど、この世界は他の世界に繋がる中間地点だと思うよ。だから、ここから様々な世界からビーストが行き交っているんだ」

ひろし「宅配で言うなら、流通した荷物の集まるベースか。ルザミーネはここから、ウルトラビーストをアローラへ『出荷』させてるってところだな」

みさえ「ここに人間が迷い込むこともあるのかしら?」

プルメリ「別の世界からやってきた人間が、アローラに流れ着く。逆もまた然り。可能性はあるかもね」

リーリエ「元の世界へ帰れなくなるなんて……そんなの、悲しいです。かあさまも、グズマさんも、しんちゃんも、そんなことさせません!」

ひろし「ああ――」

シロ「……キャンキャンッ!」

ひろし「シロ? なにか見つけたのか?!」

???「ポケモンの声……?」

プルメリ「……その声、まさかっ!」

171: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:24:58.67 ID:aMmubLhw0
プルメリは人の声がした方へ走り出した。ひろしたちも後に続いていく。
緩やかな岩のカーブを曲がっていくと、果たしてそこには、岩場に座り込んでいるグズマの姿があった。
グズマはプルメリたちの姿を見たとたん、まるで怪物でも見たかのように心底驚いた表情で迎え入れた。

プルメリ「グズマ! グズマなんだね!」

グズマ「……本当に、来やがっただと?」

リーリエ「ご無事だったんですね!」

ひろし「お前、確かエーテルパラダイスでルザミーネと一緒にいた……!」

みさえ「ねえ、しんのすけはどこにいるの?」

グズマ「うるせぇっ! てめーら一斉に喋るな!」

全員「……!」

グズマ「プルメリ、それに代表の娘、後のやつらは知らねえが……」

みさえ「私たちはしんのすけの親よ!」

ひろし「しんのすけはどこに行ったんだ? お前は確かルザミーネと一緒にいたよな?」

グズマ「しんのすけ……あのじゃがいも小僧のことか。そうか、お前らが親かよ」

172: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:26:04.31 ID:aMmubLhw0
リーリエ「お願いします。しんちゃんとかあさまを探しているんです」

グズマ「知らねえよ。ただ、あのじゃがいも小僧とは一度そこら辺で会ったが、帰れる帰るとピーピー喚いて、どこか行っちまったぜ」

ひろし「ということは、少なくともあの後、ルザミーネから逃げられたってことだな!」

みさえ「よかった……!」

グズマ「お前らは代表に連れてこられたってクチじゃねぇな。一体全体どんな手段でこっちに来たのか……。ホントにバカだな」

プルメリ「アンタを連れ戻せるのなら、いくらでもバカになってやるよ」

プルメリ「……なあ、ちょっとグズマとふたりっきりで話、させてくれないかい? アンタらも急いでるんだろ? あたいもグズマを説得したら、すぐに助けに行くからさ。頼む」

ひろし「ああ、ロープはそのまま垂らしておくから、それを伝って来てくれ」

プルメリ「すまないね」

プルメリ「……リーリエ」

リーリエ「はい!」

プルメリ「しんのすけと代表、絶対取り戻すんだよ。お姫様が王子様を救うって物語も、悪くないだろ?」

リーリエ「必ず助け出します! しんちゃんも、かあさまも!」

リーリエたちは再びシロが嗅いでいるしんのすけのニオイを頼りに、ウルトラスペースの奥へと進んでいった。

173: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:28:08.82 ID:aMmubLhw0
残ったプルメリとグズマの間に、沈黙が漂う。最初に口火を切ったのは、グズマだった。

グズマ「お前……本当にオレを連れ戻しに来たってのかよ」

プルメリ「そうだよ。わざわざそのために、伝説のポケモンの力を借りて、ここまで来たんだ」

プルメリ「さ、帰ろう。グズマ」

グズマ「今更なんだってんだ。わかってるんだろ? 今のアローラは、ビーストに破壊され尽くされちまっている。ここにいようがアローラに帰ろうが、変わんねえよ」

プルメリ「ああ、確かに代表のせいで、アローラはひどい有様さ。だけどね、アローラの人たちだって、ただ黙って自分たちの住んでる街を壊されるのを眺めているわけじゃないんだよ」

プルメリ「知ってるかい? しまキングやキャプテン、カプたちだけじゃない。スカル団のみんなも、必死でアローラを守ってるんだよ。アンタが帰ってくるのを待ちながらさ」

グズマ「あいつらが……?」

プルメリ「ああ、あたいもクチナシとマーレインに言いくるめながらも、ビーストと戦ってきたんだ。あいつらも、ビーストとの戦いでたくましく成長してるはずだよ」

グズマ「……だとしてもよ、オレはお前らより代表を選んじまった。あいつらに見せる顔がねぇ」

プルメリ「なんだか、ずいぶん落ち着いたね。こっちでよっぽどエライ目にあったんだね」

プルメリ「しっかりしな! あんたはもうボスじゃないけど、たくさんの人に慕われてるんだからさ! 本当に見限られてるなら、あたいがこんなとこまで迎えに来ないって!」ポンッ

プルメリ「いいかいグズマ、アンタもあたいも元々は誰にも理解されなかった、いわゆるはずれ者だよ。だけどね、その時にはなかったけど、今はあるものがあるんだよ。わかるかい?」

グズマ「は……?」

174: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:29:46.95 ID:aMmubLhw0
プルメリ「『仲間』だよ。みんながアンタの事を理解してる。そしてアンタも、あいつらの事を理解してるんだよ。あたいらには互いに自分たちの痛みを知ってる人達がいる。もう一人ぼっちじゃないんだ」

グズマ「……」

プルメリ「失敗したんならさ、また立ち直りゃいいんじゃないの。そうやって人もポケモンも、強くなっていくんだからさ。今のアローラはボロボロだけど、みんながひとつになって、きっと立ち直っていくよ。今よりとっても良くなってね。そこにグズマもあたいも、居たいだろ?」

プルメリ「そのためにもさ、アローラへ償いをしようよ。グズマの罪も、あたいらみんなが一緒に背負ってあげるからさ」

グズマ「……」

――嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに
――おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!

グズマ「――ッ!」

グズマ「グズマァ!! なにやってるんだああ!!」ガクガクッ

175: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:30:21.36 ID:aMmubLhw0
グズマ「……ハァハァ」

プルメリ「吹っ切れたかい? さ、あのヒモを伝って戻りなよ。伝説のポケモンがいるから、一緒にいればきっと帰れるよ」

グズマ「……その前に、代表のところへ行く」

プルメリ「え?」

グズマ「代表には、いろいろ世話になっちまったからな。だから、筋通しに行くんだよ」

プルメリ「……そうかい。ま、あたいもしんのすけの両親と約束しちまったからね。さっさと追いかけようか」

グズマ「……ああ!」

176: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:31:58.30 ID:aMmubLhw0
プルメリがグズマを説得している頃、リーリエたちは先ほどと同様、シロの嗅いでいるしんのすけのニオイを頼りに歩き回っていた。

ひろし「しんのすけ……どこにいるんだ」

リーリエ「でも、よかったです。しんちゃんが無事そうで」

みさえ「当たり前よ、そう簡単に死んでたまるもんですか!」

リーリエ「きっと、いつものような元気な姿で姿を見せてくれます。だから、辛抱強く探しましょう!」

ひろし「ああ、ここに来て諦めるようなオレ達じゃないぜ」

みさえ「ひょっとしたら、向こうから姿を見せちゃったりしてね」

リーリエ「そうですね。そうしたら、みんな心配してましたって、うんと叱らなきゃいけませんね」

ひろし「なんだかしんのすけのお姉ちゃんみたいな口ぶりだな」

リーリエ「ふふっ、島巡りで時間があるとき、しんちゃんの面倒を見てましたから」

みさえ「そのまましんのすけの面倒見てくれると、私たちも楽なんだけどね」

ひろし「そうだな……島巡りが終わったあとも、うちのしんのすけのこと、よろしく頼んだぜ。『お姉ちゃん』」

リーリエ「はい!」ニコッ

シロ「アンアンッ!」

全員「!」

177: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:33:15.32 ID:aMmubLhw0
みさえ「どうしたの? シロ?」

リーリエ「なにか見つけたのでしょうか?」

シロが走り出すと、奥に小さな赤い物体と、白くて細いポケモンが倒れているのを発見し、再び吠えだした。
リーリエは赤い物体に近付くと、それがなにか理解して顔を青ざめさせながら拾った。

リーリエ「これ……しんちゃんのロトム図鑑さんです……!」

みさえ「あっ、そうよ! 誰か忘れていたと思ったら、みんなコイツのこと忘れてたのよ!」

ひろし「なんでこんなところに落ちてるんだ……? とにかく、話を聞いてみようぜ」

リーリエ「ロトム図鑑さん! ロトム図鑑さん! 返事してください!」

ひろし「おいっ、なに寝てやがるんだ。さっさと起きろ!」

ロトム図鑑「」

みさえ「……ちょっと貸してもらってもいい?」

リーリエ「あ、はい。……でも、どうなさるおつもりですか?」

178: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:34:01.86 ID:aMmubLhw0
みさえ「フー……フー……ふんっ!!」

げ    ん

こ    つ

ロトム図鑑「ブヒッ!?」パッ!

ひろし「あ、起きた!」

みさえ「壊れた機械なんて大抵叩けば直るものよ」

ロトム図鑑「私は誰だ……確か、ナギサシティのジムリーダー、デンジだったような……」

ひろし「お前はぶりぶりざえもんだろうが、なに都合のいい思い出し方してるんだよ」

リーリエ「ロトム図鑑さん、しんちゃんがどこに行ったか分かりますか?」

ロトム図鑑「んあ……? お前らなんでこんなところに?」

みさえ「しんのすけがこっちの世界に連れてこられたから助けに来たに決まってるでしょ? で、しんのすけはどこにいるの?」

ロトム図鑑「しんのすけだと……? ここにいないのなら私が知るわけないだろう」

みさえ「あっ、そう。じゃあもう一度ぶっ叩けば思い出すかしら」スッ

ロトム図鑑「待て待て! 本当に知らないのだ! 私は確かにあいつと居たのだが、突然ボディがショートして、そのまま気絶してしまったんだよ!」

179: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:35:06.49 ID:aMmubLhw0
リーリエ「そんな……」

ロトム図鑑「ん? あいつも倒れているではないか」

みさえ「あいつ?」

ロトム図鑑はみさえの手から離れると、すぐそばで倒れている、フェローチェのそばに近づいた。

ロトム図鑑「こいつは以前、アーカラで倒れていたところをしんのすけが助けたウルトラビーストだ。名前は『あい』らしい。こいつならなにか知ってるんじゃないのか?」

ひろし「あい? あいってカスカベに住んでるあの――」

みさえ「いい加減なこと言ってたら、タダじゃおかないからね」

リーリエ「ロトム図鑑さんを信じましょう。まず、このビーストさんを元気にさせなきゃ、なにも始まりません」

リーリエはリュックからげんきのかたまりを取り出して、それを砕きながらひとかけらも残さずフェローチェの口の中に入れて飲み込ませた。

フェローチェ「フェ……フェロ……」ピクッ

ひろし「おっ、気がついたぞ!」

リーリエ「よかった……ビーストさんにもげんきのかたまりは効くみたいですね!」

しかし、喜んでいるリーリエたちとは真逆に、フェローチェはいきなり起き上がると一瞬でリーリエたちと距離を取って、警戒心に満ちた眼差しで睨みつけた。

フェローチェ「フシューッ……!」

180: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:37:00.55 ID:aMmubLhw0
ひろし「なんだ? まるで俺たちに怯えてるみたいだ」

ロトム図鑑「ふむ……リーリエ、お前のニオイがあのフェローチェの敵と同じニオイを感じているようだ」

リーリエ「わたしのニオイ……?」

みさえ「敵と同じニオイってなによ? ちゃんと説明してよ」

すると、リーリエの腰にくっつけているモンスターボールがカタカタと揺れて、カザマとマサオが飛び出した!

ジュナイパー「ホーッ!」ポンッ!

ヨワシ「ヨワッ!」ポンッ!

フェローチェ「フェロ? フェロローッ?!」スッ

ひろし「なんだなんだ?」

リーリエ「カザマさんとマサオさんが飛び出したと思ったら……急に警戒心を解いたみたいです」

ロトム図鑑「奴らも顔見知りだからだろうな。ネネは気に食わない様子だけどな」

181: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:37:42.39 ID:aMmubLhw0
フェローチェ「フェロー?」

ジュナイパー「ホッホーッ! ホー?」

ヨワシ「ヨワワッ、ヨワワ?」

フェローチェ「フェローロ。フェロロ、フェーロー」

ジュナイパー「ホーホー!」

ひろし「なんて言ってるんだ?」

ロトム図鑑「軽い自己紹介と事情説明だな」

ヨワシ「ヨワヨワッ! ヨワシーッ!」

フェローチェ「フェロ……フェローロ!」

ロトム図鑑「どうやら、こっちが味方であることがわかったようだ……。だが、しんのすけは、このビーストを庇ってルザミーネに捕まったあと、どこかへ連れ去られてしまったらしい」

リーリエ「そんなっ……!」

ひろし「あいつ……!」

みさえ「ねぇ、なんとかならないの? どこにいるかわからない?」

ロトム図鑑「おい、しんのすけの居場所はわからんのか?」

フェローチェ「フェロ、フェローロ……」

182: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:39:29.50 ID:aMmubLhw0
ロトム図鑑「一応、アテはあるようだ。だが、そこにいるか正直自信はないらしい」

ひろし「ないよりはましだ! 案内頼むぜ!」

リーリエ「お願いします、ビーストさん! しんちゃんとかあさまのところへ、連れて行って欲しいのです!」

ロトム図鑑「だそうだ」

フェローチェ「フェロ!」

すると、フェローチェ……もとい、あいはシロの代わりに先頭に立って、「ついてきてください」と言いたげに顎でしゃくって歩き出した。

ひろし「とりあえず、ついて行けばいいんだな?」

みさえ「みたいね……」

ロトム図鑑「おい」

みさえ「え?」

183: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:39:59.04 ID:aMmubLhw0
ロトム図鑑「翻訳料五百億万円、ローンまたはクレジット、ウェブマネーでも可」

げ    ん

こ    つ

みさえ「次適当なこと言ったら画面叩き割るからね!」

ロトム図鑑「わ、わかった……もう何も言わん……」

リーリエ「カザマさんもマサオさんも、ありがとうございます」シュンッ

リーリエ「急ぎましょう。なんだか胸騒ぎがして……ならないのです」

ひろし「同感だ。早くしんのすけを見つけよう!」

184: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:40:59.75 ID:aMmubLhw0
先程までの明るさは消え去り、みんな焦りに満ちた表情であいの後をついていく。時折、しんのすけの名を呼びかけながら、ウルトラスペースをさまよい歩く。

どのくらい歩いただろうか。リーリエたちはウルトラスペースの中でもスタジアムの内部のように大きく開けた場所にたどり着いた。
岩や植物があちらこちらに転がっているものの、これといった起伏もない。他にあるものといえば、空に浮かんでいるウツロイドたちのみだ。

フェローチェ「フェロー……」

ロトム図鑑「ここで、しんのすけを最初に見つけたようだ。ルザミーネのお気に入りの場所だそうだ」

ひろし「じゃああのウルトラホールはここに通じてたんだな」

みさえ「しんのすけー! どこにいるのー?」

リーリエ「しんちゃんとかあさまはどこに……?」

リーリエたちがしんのすけとルザミーネの名を呼びかけたその時だった。

ウツロイドたち「じぇるるっぷ……!」

リーリエ「!」

宙を漂っていたウツロイドたちが動き出すと、リーリエたちの目の前に集まり、次々と並び始めた。まるで、ウツロイドで出来た壁が形成しているようだ。
そして、ウツロイドたちの群れが散り散りになると――。

――ああ……! ウルトラビーストの世界……わたくしとビーストちゃんの愛だけが存在する、なんて甘く美しい真実のパラダイス……!!

全員「!」

185: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:41:47.16 ID:aMmubLhw0
グニュウッ

ルザミーネ「だというのに! ……なんてしつこいのかしら! 心底ウンザリしますわね。誰の許しを得て、わたくしとビーストだけの美しい世界に来たのです!!」ギロッ

ルザミーネが、侮蔑するようにリーリエたちを見下ろしながら現れた。ポニの大峡谷で見た、ウツロイドとの融合を果たしたあの姿で。

ひろし「うるせぇ! しんのすけを助けに来たのに、いちいちお前の許しがいるかよ!」

みさえ「そうよ! うちのしんのすけを返してっ!」

フェローチェ「フシューッ!」

ルザミーネ「『うちの』しんのすけ、ですって? なにを言っているのかしら? あなた達……」

リーリエ「どういうことですかっ! しんちゃんは? しんちゃんは無事なんですか?」

ルザミーネ「どういうこともなにも、この世界にあるものは、全てわたくしのモノよ?」

ルザミーネ「この美しい景色も! この世界に住むビーストちゃんも!」

ルザミーネ「……そして、しんのすけ君もね! いらっしゃい、わたくしの愛しい息子……」

ルザミーネの呼びかけに答えるように、彼女の背後から誰かが歩いてきた。小さな人影が、ルザミーネの前に現れる。

ルザミーネ「……しんのすけ君」

スッ

しんのすけ「……」

186: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:42:25.94 ID:aMmubLhw0
その姿を一目見た瞬間、リーリエたちは全身が逆立つような恐怖と深い絶望が一斉に押し寄せてきた。

みさえ「いやぁぁぁぁっ!」

リーリエ「しんちゃん……!」

ひろし「しんのすけっ!」

フェローチェ「フェロ……ッ!」

リーリエたちの前に現れたしんのすけの姿は、変わり果てたものだった。頭部にウツロイドがそのままくっつき、ルザミーネのように異形の姿にこそなっていないが、全身がウツロイドの触手によって絡みついている。目も焦点が合っておらず、腕も力なく垂れ下がっている。

しんのすけ「……」グネグネ

ひろし「てめぇ……しんのすけになにしやがったっ!!」

ルザミーネ「ウフフ! 別に? ただ、この子がとっても暴れちゃうものだから、ウツロイドの力を使って、親に愛情を注いでくれる、かわいいわたくしの子供になっただけよ?」

みさえ「あんたの子供ですって? ふざけんじゃないわよ! しんのすけを元に戻して!」

ひまわり「たいっ!」

ルザミーネ「どうして? どうして、こんな可愛い子をどうして手放さなきゃいけないのかしら? もちろん、最初は反抗的だったから、ビーストちゃんの餌にしようと思ったわ」

ルザミーネ「でもね……この子の才能には驚かされてばかりだもの。突然のことがあってもすぐに切り抜けられる頭の良さ、大試練を乗り越えられるポケモントレーナーとしての実力、そしてなにより、こんな幼い子供をビーストちゃんの餌にするなんて、かわいそうですもの」

しんのすけ「それほど……でも……」

187: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:43:13.60 ID:aMmubLhw0
ルザミーネ「ウフフ、こうして見ると本当に愛おしく感じます……おいで」

しんのすけ「……ほい」

ルザミーネはしんのすけを触手でかかえると慈しむような頭を撫でて、優しく笑いかけながらきつく抱きしめた。あたかも彼女がしんのすけの母親であるかのように振舞って。

ルザミーネ「フフフ……愛しいしんのすけ君。わたくしが、ずっと守ってあげます。あなたの心はわたくしのモノ……」ギュッ

リーリエ「――ッ!!」

みさえ「……アンタ! アンタはぁぁっ!」ビキビキビキッ!

ひろし「か、軽々しくしんのすけに触れてんじゃねぇ!」

ロトム図鑑(羨ましいのか羨ましくないのか分からないな)

ルザミーネ「なにを怒っているのかしらねぇ? あの人たちは」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「お母さんの温もりはどうかしら? しんのすけ君」

しんのすけ「……40過ぎのおばさんに……こんなことされても……嬉しくない」

ルザミーネ「」イラッ

ロトム図鑑「敵に操られても本質的なところは変わってないようだな」





リーリエ「……もう、ウンザリです」ボソッ

189: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:44:56.76 ID:aMmubLhw0
ルザミーネ「なにか言ったかしら?」

リーリエ「かあさま」

ルザミーネ「あら? あなたにかあさま、なんて言われる筋合いは無いのですけれども」

リーリエ「わたしと……ポケモン勝負をしていただけませんか? それでわたしが勝ったら、しんちゃんをここにいるご両親に返してください。そして、ウルトラホールを閉じてかあさまも元の世界に帰るのです」

ひろし「リーリエちゃん……」

ルザミーネ「ふうん? なにを言うかと思えば……そう、リーリエ、ポケモントレーナーになったの」

リーリエ「はい、しんちゃんの借り物ですが。あなたとしんちゃんを取り戻すために、カザマさんたちと一緒に、ここまでやってきました」

ルザミーネ「そうやって他人の息子のモンスターボールを持って、トレーナー気取りですか? ずいぶん舐められたものね」

リーリエ「何とでも言ってください。トレーナーさんは、目と目が合った瞬間、勝負を申し込まれたら、受けなければいけないルールがあります。かあさまはご存知ですよね? それとも、背中を向けて逃げるんですか?」

ルザミーネ「言ってくれるわね。……いいわ、相手になってあげる」

ルザミーネ「だけど、もしわたくしが勝ったら、あなたはなにを差し出すの? それ相応の対価を用意しているのでしょう?」

リーリエは向かい合っていた母親と、一瞬目をそらした。薄いピンク色の唇が震える。これから出る言葉を口にすることを、ためらうように。

リーリエ「……ほしぐもちゃんをっ」

ひろし&みさえ「!」

190: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:46:01.60 ID:aMmubLhw0
リーリエ「ほしぐもちゃんを、あなたにお返ししますっ! それでいいですか?」

みさえ「リーリエちゃん!」

ルザミーネ「あのコスモッグのこと? もうわたしには、あんなモノ必要ないのだけれども。アローラにウルトラホールを開けることぐらいなら、今のわたくしには造作もないことですもの」

リーリエ「いいえ、ほしぐもちゃん……コスモッグは伝説のポケモン、ルナアーラの進化前なのです。ポ二島にある月輪の祭壇で太陽と月の笛を吹くことで、コスモッグをルナアーラへと進化させることができます」

ルザミーネ「それは初耳ね。ルナアーラには、ウルトラホールを自由自在に開けられる能力を持っていたわね。……そう、その力を使ってこの世界に来たのね。確かにルナアーラを掌中に収めれば、アローラ以外にもウルトラホールを開けられるかも……悪くないわ」

ルザミーネ「でも、そのルナアーラはどこにいるのかしら? あの子はウルトラビーストだから、ウルトラボール以外では捕獲できないはずだけれども」

リーリエ「あの子は今、わたしたちがここにやってきたところで休んでいます。力を使い始めたばかりですから、その反動で動けないのです。ですから、もしわたしが負けたらほしぐもちゃんのところへ案内いたします。後は……あなたの好きにしてください」

ルザミーネ「分かったわ、取引成立ね。あなたが勝てば、しんのすけ君をウツロイドから解放した上であなたたちにお返しし、ウルトラホールも閉じて向こうの世界へ戻ることも約束します。だけど負けたら、あなたのルナアーラはわたくしのもの、そしてしんのすけ君も返さない。これでいいわね?」

リーリエ「はい」

みさえ「リーリエちゃん! そんなことしたら……」

ひろし「みさえ、よすんだ」

みさえ「だって……!」

ひろし「あれが、リーリエちゃんなりの覚悟なんだ。ここで負けたら、どのみち全てを失う……だからあえて捨て身になって、絶対に負けられないゼンリョクの覚悟で母親に挑もうとしている。俺たちがそんなリーリエちゃんの決意を鈍らせるわけにはいかないだろ」

みさえ「リーリエちゃん……」

191: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:47:06.74 ID:aMmubLhw0
リーリエ「ひろしさん、みさえさん、必ずしんちゃんを取り戻します。わたしを信じてください!」

みさえ「……わかったわ!」

ひろし「ああ、頼んだぜ!」

ルザミーネ「さぁ来なさい。わたくしのビーストちゃんたち……!」バッ!

すると、ルザミーネの周囲に、ビーストが4匹現れた。ウツロイド、デンジュモク、テッカグヤ、あいとは別個体のフェローチェだ。

ルザミーネ「そっちの使用ポケモンは4匹。ならこっちも4匹で相手してあげる」

リーリエ(ウツロイドさん……そして、後の3匹のビーストさん……)

ルザミーネ「光栄に思いなさい。わたくしが選んだ、愛しい子供たちの相手をしてあげるのですから」

ビーストたちは、次々とルザミーネの持っているウルトラボールの中へ入っていく。
リーリエの頭の中に、必死に暗記したウルトラビーストの情報が駆け巡る。同時に、最初に何を出すべきか、決まった。

フェローチェ(あい)「フシューッ!」

リーリエ「ロトム図鑑さん。ボールに入っていないあいさんを参加させることはできないので、なんとか説得していただけませんか? これはわたしたちの戦いなんです」

ロトム図鑑「やれやれ、仕方ないな」

リーリエ「かあさま……覚悟してください。絶対に負けませんから!」スッ

ルザミーネ「かつての親に向かって、なんて口聞くのかしら! その下らない自信もプライドも、全て粉々にしてあげます!」スッ

193: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/15(木) 20:53:09.82 ID:aMmubLhw0
【おまけ】

このSSを執筆する前に書いた「しんのすけとリーリエ」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。

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シリーズ一覧
しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」
【メレメレ島編】【アーカラ島編】【ウラウラ島編】【エーテルパラダイス編】【ポニ島編】
【ウルトラスペース編 前編】【ウルトラスペース編 後編】【大大試練編】【エピローグ】