本

1: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:34:42 ID:bfz
彡(゚)(゚)「うーん、さいきん金欠やなあ、買いたいものが多かったし」

彡(゚)(゚)「何かバイトせんと……」

彡(゚)(゚)「おや、玄関にチラシが落ちてるで、誰か投函していったんやな」

彡(゚)(゚)「なになに」


――本が好きなあなたにピッタリのバイト

――本を読むだけで日給1万円


彡(゚)(゚)「日給いちまんえん!? これや!」


5: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:35:39 ID:bfz

彡(゚)(゚)「あんまり本が好きってわけやないけど、まあ時々は読むし」

彡(゚)(゚)「何より日給1万円や、本でも納豆でも好きになるわ」



彡(゚)(゚)「このビルやな、なんや古臭いビルやで」

彡(゚)(゚)「えーと一階の(株)山本……あそこに黒服のおっさんがおるけど、あれかな」

彡(゚)(゚)「あの、バイト募集のチラシ見て来たんですが」

黒服「ああ、ちょうど面接が始まるところです、どうぞどうぞ」

彡(゚)(゚)「履歴書もってきたんですけど」

黒服「ああ履歴書ね、はい、もらっときましょう、どうぞどうぞ」

彡(゚)(゚)「なんか適当やなあ」

6: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:36:41 ID:bfz

ワイワイ ガヤガヤ


彡(゚)(゚)「なんや、教室みたいに机と椅子が並んでるで」

彡(゚)(゚)「ワイ以外にも十人ちょっと来てるな、日給一万ならそら集まるわ」

黒服「はい皆さん、おはようございます」

彡(゚)(゚)「なんで黒服にサングラスなんやろ……」

7: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:37:55 ID:bfz

黒服「えーと、今日はですね、この(株)山本のアルバイト面接に来ていただいて、ありがとうございますね」

彡(゚)(゚)「明らかに喋り慣れてへん……」

黒服「最初にですね、皆さんにちょっとテスト受けていただきますので」

黒服「これからお配りします、制限時間は30分です」

彡(゚)(゚)「なんやテストがあるんか……そら本を読むバイトやからな、学力もいるわな」

彡(゚)(゚)「しゃあない、ワイの実力見せたるわ」


問1
日本で初めてワードプロセッサで小説を書いた作家と言われ
「他人の顔」「砂の女」などの代表作で知られる人物は誰?


彡(゚)(゚)「初めてワープロで……これは有名やな」

彡(゚)(゚)「一太郎……と」

9: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:39:30 ID:bfz

問3
講談社の主催する新人文学賞であり、
森博嗣、西尾維新、舞城王太郎などを輩出した文学賞と言えば何?

彡(゚)(゚)「沢村賞」


問6
2020年のオリンピック開催地は東京ですが、その次の夏季オリンピックの開催地は?

彡(゚)(゚)「きっと大都市のはずやな……豊田市」


問11
明治維新以降の元号を4つすべて答えよ

彡(゚)(゚)「…………」

彡(゚)(゚)「平成、平成、平成、平成」



黒服「そこまでです、テストを回収します」

彡(゚)(゚)「満点あるでコレ」

12: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:41:03 ID:bfz

黒服「合格者を発表します、今回はお一人だけです」

黒服「14番の方、合格です、こちらへどうぞ」

彡(^)(^)「やったで、合格や、さすがワイやな」

黒服「こちらへどうぞ」

彡(゚)(゚)「なんや、エレベーターに乗るんか」

彡(゚)(゚)「おや、下へ降りてく……しかもけっこう深いな」


チーン


彡(゚)(゚)「B26……?」

15: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:43:35 ID:bfz
彡(゚)(゚)「おお……地下書庫やな、左右に本棚が並んでるわ、しかもすごく奥まで」

黒服「適当な本を選んでください」

彡(゚)(゚)「えーと、それじゃこの「たらばがに誘拐事件」ってやつを」

黒服「こちらの小部屋へどうぞ」

彡(゚)(゚)「おお、ローテーブルにソファが置いてある、お菓子やコーヒーメーカーもあるわ」

黒服「トイレはそっちの小部屋です」

黒服「好きにくつろいで読んでください、夕方の5時に迎えに来ますので」

彡(゚)(゚)「え、もうこれから仕事なん?」

17: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:46:48 ID:bfz
黒服「はい、それでですね、机の上に紙が置いてあります」

彡(゚)(゚)「あるな」

黒服「そこに、読んだ本のタイトル、それと感想を5行以上で書いてください」

黒服「一日3冊がノルマと考えてください」

彡(゚)(゚)「3冊かあ、ちゃんと読んだらけっこう大変やな」

黒服「ナナメ読みで構いません、最後の10ページだけ読んで書いても大丈夫です」

彡(゚)(゚)「…………」

黒服「ではよろしくお願いします」 バタン



彡(゚)(゚)「……変な仕事やなあ」

彡(゚)(゚)「まあええわ日給一万円や、日給一万円は無敵なんや」

彡(゚)(゚)「えーと、まずは、山根晋太郎「たらばがに誘拐事件」か……」



彡(゚)(゚)「タラバガニは激怒した、必ず、かの邪智暴虐のエチゼンガニを除かねばならぬと……」

18: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:47:54 ID:bfz
8時間後

黒服「お迎えに来ました」

彡(゚)(゚)「ふう、ずっと読み続けるってのもキツかったわ」

黒服「はい、こちら本日のお給料です」

彡(^)(^)「おおー、一万円や、やったで」

黒服「地上までお送りします」

彡(゚)(゚)「ちょっと歩き回ってみたんやけど、ずいぶん広い書庫やなあ」

彡(゚)(゚)「というか、明らかに地上のビルより広いような……」

黒服「あまり奥まで行かないように、迷うと大変ですので」

彡(゚)(゚)「はあ」

黒服「ではまた明日」

彡(゚)(゚)「はい」

23: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:51:03 ID:bfz

彡(゚)(゚)「うーん、結局何の仕事やったんやろ……」

彡(゚)(゚)「まあええわ、現金が手に入ったし、靴でも買おうかな」

警官「ちょっと、そこの君」

彡(゚)(゚)「はい?」

警官「このあたりで、妙な人間を見いへんかったか?」

彡(゚)(゚)「妙な……?」

警官「なんか変なものを配ったり、変な仕事を頼んでくるような人間や」

彡(゚)(゚)「…………」

彡(゚)(゚)「いえ、知りません」

警官「そうか、わいはこのあたりをパトロールしてるから、何か見かけたら教えてくれんか」

彡(゚)(゚)「はい」

警官「(立ち去る)」

24: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:52:06 ID:bfz
彡(゚)(゚)「……別にウソは言ってへん」

彡(゚)(゚)「本を読むだけの仕事や、そんなに怪しくもないし……たぶん」

彡(゚)(゚)「今日はもう帰ったろ……」



彡(゚)(゚)「帰ってきたわ、しかし変なバイトやったな」

彡(゚)(゚)「でも二冊目の「カスタネットへようこそ」はけっこう面白かったな」

彡(゚)(゚)「作者を検索してみたろ、えーと確か、山わさび陽子……」カタカタ

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「ヒット数……ゼロ?」

27: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:53:44 ID:bfz
彡(゚)(゚)「どういうこっちゃ……ええと、「たらばがに誘拐事件」は」カタカタ

彡(゚)(゚)「さ、三冊目の「青春スチームダクト」は」カタカタ

彡(゚)(゚)「ゼロや……それか、全然関係なさそうな記事しかヒットせえへん」

彡(゚)(゚)「なんなんや……どんなマイナーな本でも、一件もヒットしないなんてこと……」

彡(゚)(゚)「……株式会社山本」カタカタ

彡(゚)(゚)「これは逆に山ほどヒットするな、どの会社か分からへん……」


彡(゚)(゚)「どうも妙や……さすがに気になってきたで」

彡(゚)(゚)「ワイの頭で分かることやないな」



彡(゚)(゚)「あいつ  に   相    談  」

29: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:54:07 ID:bfz





――ここで、やきうの記憶はしばらく途切れる




32: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:55:34 ID:bfz
彡(゚)(゚)「ふう、今日の仕事も終わりか」

彡(゚)(゚)「……え、あれ?」

黒服「おつかれさまでした、ではまた明日」

彡(゚)(゚)「は、はい、お疲れ様です」

彡(゚)(゚)「あれ、ワイ今日は何を読んだんやったっけ……」

彡(゚)(゚)「ええと確か、「ゴリラ五千匹の城」「80歳の青春ロックンロール」「皇帝と卑底の愛」の3つ……」

彡(゚)(゚)「そう、確かそれだけ読んで……」

彡(゚)(゚)「……なんか、頭にモヤがかかってるわ」

彡(゚)(゚)「寝不足かな、帰って寝たろ」

彡(゚)(゚)「……」

33: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:56:52 ID:bfz

-数日後-


彡(゚)(゚)「ふう、今日の仕事も終わりや……」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「でもなんか、ソワソワするわ、何なんやろこの感じ…」

彡(゚)(゚)「あかん、今日は酒でも買って……」

警官「やあ、また会ったな」

彡(゚)(゚)「あ、警官のおっちゃん……」

36: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:57:53 ID:bfz
警官「あれから何か変わったことないか?」

彡(゚)(゚)「いえ、別に……」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「別に何も…」ボロボロ

彡(゚)(゚)「あ、あれ、なんや、なんで涙が……」

警官「うわ君どうしたん、なんで泣いてんのやキモいな」

彡(゚)(゚)「……わ、分からへん」

彡(゚)(゚)「なんで泣いてんのやワイは……」

37: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:58:54 ID:bfz
警官「……ふむ」

警官「ここにな、小瓶があるんやけど」

彡(゚)(゚)「え? 小瓶? そのガラスのやつかいな?」

警官「ちょっと中身のニオイ嗅いでくれるか?」

彡(゚)(゚)「へ??」

38: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)08:59:49 ID:bfz
警官「ええからええから」

彡(゚)(゚)「はあ……」クンクン


ツーーーーーーーン


彡(゚)(゚)「ほんぎええええええ臭っさあああああああ」

彡(゚)(゚)「なっ、何やこれ!?」

警官「アンモニアに色々な香料を加えたもんや、マトモに嗅いだら悶絶するレベルやで」

警官「気付け用やな、何か思い出したか?」

彡(゚)(゚)「えっ、思い……」

彡(゚)(゚)「…………」





彡(゚)(゚)「……思い出した」

40: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:01:10 ID:bfz


― 回想 ―




彡(゚)(゚)「っと、そういうバイトなんや」

(´・ω・`)「ふーん、変な話だねえ」

(´・ω・`)「でも日給一万円は魅力的だな、僕もやろうかな」

彡(゚)(゚)「こいつはワイの友人や」

彡(゚)(゚)「本が好きなやつで、フリーターやりながら本を山ほど読み漁ってる」

彡(゚)(゚)「どのぐらい本が好きかというと、置き場所がないので冷蔵庫にまで本を入れてるほどで」

(´・ω・`)「誰に言ってるの?」

41: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:02:14 ID:bfz
彡(゚)(゚)「せやけど、本を読むだけのバイトなんてあるんやろか」

(´・ω・`)「公募されてる文学賞とかで、応募作の下読みをするバイトはあるけど……」

(´・ω・`)「でも全部ハードカバー本だったんでしょ」

彡(゚)(゚)「そうなんや」

(´・ω・`)「まあ僕も面接受けてみようかな、本を読んでお金がもらえるなんて最高だ」

彡(゚)(゚)「試験があるんやで、大丈夫か?」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「たぶん逆を行けばいいんだろうな…」

彡(゚)(゚)「何ブツブツ言ってんねん」

43: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:03:39 ID:bfz

彡(゚)(゚)「採用されてよかったな」

(´・ω・`)「うん、予想通りだった、ボケすぎないように書くのが難しかったけど」

彡(゚)(゚)「?」



彡(゚)(゚)「今日はコレにするかな、「ゴリラ五千匹の城」か」

(´・ω・`)「ふーん……これはミステリー…。これは青春小説か……並べ方に脈絡がないなあ」

(´・ω・`)「装丁がどれも似たり寄ったり……。紙質も同じ……、奥付は……」

(´・ω・`)「切り取られてるな…なるほど」

彡(゚)(゚)「どうしたんや?」

45: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:04:29 ID:bfz
(´・ω・`)「カラクリが分かってきたよ」

(´・ω・`)「ここの本はね、ぜんぶアマチュア……素人が書いた本だと思う」

彡(゚)(゚)「え?」

(´・ω・`)「あなたも本を出してみませんか? って広告を見たことはない?」

(´・ω・`)「いわゆる自費出版の広告だね」

彡(゚)(゚)「あるような気がする」

(´・ω・`)「部数やページ数にもよるけど、自費出版にはだいたい100万から1000万ぐらいかかるんだ」

(´・ω・`)「企業の社長に自伝を書かせたり、お金を持ってて小説執筆が趣味な人に出版を持ちかけるんだね」

(´・ω・`)「出版社としては手数料が収入になる、専門に扱ってる出版社もあるんだよ」

彡(゚)(゚)「自費出版かあ、売れるんか?」

(´・ω・`)「売れないよ」

彡(゚)(゚)「へ?」

47: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:05:52 ID:bfz
(´・ω・`)「しょせん素人の本だからね、身内や知り合いに配って、それで終わり」

(´・ω・`)「でもね、自費出版を請け負ってる出版社は、特定の書店と提携していて」

(´・ω・`)「そういう書店にはちゃんと陳列されるし、書籍コードが発行されて国会図書館に納本される」

(´・ω・`)「これがお金持ちの自尊心に響くんだろうね」

彡(゚)(゚)「なるほど、検索しても出てけえへんはずやな」

彡(゚)(゚)「それで、ワイらみたいなバイトを雇って感想を書かせると」

(´・ω・`)「……うーん、でも何か、そこまでするかな、って気もするけど」

(´・ω・`)「それに自費出版とはいっても、検索結果がゼロ件になるはずは……」

(´・ω・`)「まあいいや、とりあえず僕もちゃんと読むよ、三冊がノルマだったね」

彡(゚)(゚)「せやな、とりあえず仕事しよか」

50: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:07:52 ID:bfz
彡(゚)(゚)「ほーん、ゴリラの学名はゴリラ・ゴリラいうんか……」

(´・ω・`)「ふむふむ、近未来SFかな……」パラパラパラパラ

彡(゚)(゚)「読むの早いなあ」


-1時間後-


(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「何だこれ……」

彡(゚)(゚)「どないしたんや?」

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと、他の本も取ってくる」

55: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:09:14 ID:bfz

(´・ω・`)「取ってきた」ドサドサッ

彡(゚)(゚)「ど、どないしたんや、こんなにたくさん」

(´・ω・`)「ここの本、何かおかしい……」

(´・ω・`)「文体が画一的すぎるし、言葉遣いがどこか変だ、すごく奇妙な語彙が、複数の作品で出てくる」

(´・ω・`)「これはシェアードワールド? 何かの二次創作? 同じ小説教室での習作? いやそれとも……」

彡(゚)(゚)「??? ワケ分からんで、何を言うてんのや」


(´・ω・`)「ちょっと待ってて……あと何冊か読めば確信が……」パラパラパラパラ

(´・ω・`)「…………」パラパラパラパラ

57: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:10:12 ID:bfz
(´・ω・`)「こ、これは、本当にそんなことが」

彡(゚)(゚)「どないしたんや、説明してくれ」

(´・ω・`)「やきう君、この会社の事務所ってどこにあるの?」


彡(゚)(゚)「へ? 事務所? いや知らんけど」

(´・ω・`)「……上のビルはダミーだろうな、とすると下か」

(´・ω・`)「やきう君、ここで待ってて、ちょっと調べたいことがあるんだ」

(´・ω・`)「もし僕の予感が本当なら……」




 ― 回想終わり ―

60: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:12:21 ID:bfz
警官「分かったもうええ、行くで」

彡(゚)(゚)「え、行くって」

警官「その子は黒服に拉致されとるんやろう、ほんで君は記憶を消されたんや」

警官「そのビルに助けに行くで、案内してくれ」

彡(゚)(゚)「え、ええけど」

62: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:13:32 ID:bfz
彡(゚)(゚)「ここやで、う、入り口に黒服がいるわ……」

彡(゚)(゚)「どうやって入ろうか……ってあれ、警官のおっさんおれへん」

彡(゚)(゚)「あっ、すでに入り口に」



警官「あーもしもし、そこの兄ちゃん」

黒服「え、私ですか」

警官「しねえええええええええええ!!!!」ズギューン

黒服「グワーーーッ!!」

彡(゚)(゚)「!?!?!?!?」

65: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:14:22 ID:bfz
警官「よっしゃ、エレベーターはどこや」

彡(゚)(゚)「ななな、何してんねん!!」

警官「心配せんでもええ、非殺傷のゴム弾や、骨ぐらい折れるかも知れんけど」

彡(゚)(゚)「いやいや! それ以前にいきなり発砲とか!」

警官「エレベーターはどこや!!」

彡(゚)(゚)「あ、あ、あっちです」

66: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:15:57 ID:bfz
ズギューン ズギューン

警官「ふん、大したことないな、ニューナンブやと不安やったけど余裕やな」

彡(゚)(゚)「撃ちまくっとる……天才バカボンの警官みたいな人や……」

彡(゚)(゚)「しかもエレベーターで行ける一番下が、地下125階て……」

警官「やれやれ、かなり大規模に作ったもんやな、後始末がわややで」

彡(゚)(゚)「原住民は無事やろか」

警官「心配いらん、ここの人間を殺したら重罪や、そこまではせんやろ」

彡(゚)(゚)「ここの人間?」

警官「なんや、まだ分かってへんのか?」

警官「おっと、その部屋がオフィスみたいやな」

警官「(ドアを蹴り開ける)」

彡(゚)(゚)「いちいち乱暴やなこの人」

71: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:18:15 ID:bfz

警官「おらおらー、全員お縄につけやー」

黒服A「ち、ちくしょう、ここがバレるとは」

黒服B「だからもっと田舎がいいと言ったんや」

彡(゚)(゚)「あ、原住民もおる」

(´・ω・`)「やきう君!」

(´・ω・`)「気をつけて! この人たちは――」

警官「心配いらん、もう本部に連絡済みや、ワイに見つかった以上、暴れても無駄やと分かるはずや」

彡(゚)(゚)「本部…? ワイに…?」

警官「そうやで、こう言ったほうが分かりやすいか?」

警官「ワイはタイムパトロールや! 全員、神妙にお縄につけや!」

74: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:19:52 ID:bfz
-1時間後-


警官「よっしゃ全員転送完了や、あとは黒服どもが元いた時代で裁かれるやろ」

警官「あの地下施設は業者を呼んで潰させるわ、今日中には跡形もなくなるやろ」

彡(゚)(゚)「タイムパトロールってホンマにいたんやなあ」

彡(゚)(゚)「どうりで警官らしくないと思ったわ」

警官「いろいろ苦労があるんやで、武器をこの時代に合わせんといかんからな」

警官「このニューナンブは博物館から借りてきたんや」

彡(゚)(゚)「はあ」

76: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:20:37 ID:bfz
彡(゚)(゚)「まあそんな事どうでもええねん、あの黒服は何やったんや」

警官「あれはな、未来の人間や」

警官「未来になるとな、いろんな技術が進歩するんやけど、その中の一つに、創作活動の補佐っちゅうもんがある」

彡(゚)(゚)「補佐?」

警官「そうや、小説で言うと、口であらすじを説明したり、設定を指定するだけで、あっという間に小説を仕上げてしまう、っちゅうソフトがあるんや」

彡(゚)(゚)「ほーん」

(´・ω・`)「絵画における自動生成と似たようなものですね」

(´・ω・`)「あれも、かなり水準が上がってるらしいけど……」

警官「せやな、似たようなもんや」

78: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:21:38 ID:bfz
警官「それでな、ある時代では、人間の99%以上が表現者の側に回ってもうたんや」

警官「なにしろ、「こんな話を書け」と命令すれば、AIがすぐにこしらえてしまうからな、専門職としての作家もほとんど生き残っとらん」

(´・ω・`)「そんな……」

彡(゚)(゚)「言葉遣いが妙やとか言うてたのは、あれが未来人の書いた本やったからか」

警官「そうやな、そして、ほとんどの人間が表現者になったことで、「読者」が存在しなくなったんや」

警官「作品は一日に何十億ってペースで増えていくのに、誰も読んでくれへんのやな」

83: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:23:06 ID:bfz
(´・ω・`)「うーん……AIが発達するなら、AIに読んでもらうとか……それこそロボットに」

警官「そういう人もおるけど、やっぱり生身の人間に、って人もおるんや」

(´・ω・`)「同じ時代の人を雇えば……いやでも、雇われた人間には読んでほしくないのか……」

警官「そういうこっちゃ、彼ら……つまり未来の金持ちたちはな、率直な感想が欲しかったんやな」

警官「ほんでこの時代で読者を集めてたんや、未来人が書いた本やと気づきにくそうな子をな」

彡(゚)(゚)「せやけど、ワイ一日に三冊しか読んでへんで」

警官「なに、60年もやってれば数万冊は読めるやろ」

警官「未来人にしてみれば、こっちの時代で何年かけようが同じやからな」

彡(゚)(゚)「なるほどなあ」

84: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:24:09 ID:bfz
彡(゚)(゚)「まあとにかく、原住民が無事で良かったわ」

彡(゚)(゚)「ワイは記憶を消されてたみたいやけど、原住民は何かされたか?」

(´・ω・`)「いや、軟禁されてただけだよ、食事もちゃんと出てたし」

(´・ω・`)「給料もずっと出てた、一日に40冊読んでたら歓迎されちゃって」

彡(゚)(゚)「のん気やなあ、心配してたのに」

85: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:24:51 ID:bfz
警官「さて、そろそろワイも帰るで」

彡(゚)(゚)「えっ」

彡(゚)(゚)「……ワイらの記憶は消さへんのか?」

警官「できるけど、そんな命令は出てへん、でも分かるやろ、タイムパトロールは存在してるんや」

警官「君らが手に入れた未来の情報で、金儲けしたり、悪さしようとすれば……」

彡(゚)(゚)「わ、分かったわ」

(´・ω・`)「分かりました」

警官「ほなな」バシュッ

彡(゚)(゚)「うわ、消えた」

87: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:25:55 ID:bfz

(´・ω・`)「それにしても、過去の人間を使うなんて……」

(´・ω・`)「黒服に依頼した人たちは、そこまでして本を読んでほしかったのかな」

彡(゚)(゚)「せやなあ、今ですら世の中に小説が溢れてるのに……」

彡(゚)(゚)「なんや世知辛い話やで」

(´・ω・`)「まあ、そんな暗い未来にならないように、読書家が生き残ることを祈りたいね」

彡(゚)(゚)「せやな」

彡(゚)(゚)「……」

89: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:26:31 ID:bfz
彡(゚)(゚)「……それにしても」

(´・ω・`)「うん?」

彡(゚)(゚)「警官のおっさん来えへんかったら、みんな幸せやったんちゃう……?」

(´・ω・`)「…………」



(おしまい)

93: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:28:43 ID:bfz
読んでくれてありがとうございます
ついでに宣伝を……最近書いたやつはこちら

彡(゚)(゚)「これ……誰の結婚式やったっけ?」
巨人「巨人に入りたい」彡(゚)(゚)「えっ」

102: 名無しさん@おーぷん 2018/10/11(木)09:48:04 ID:bfz
ちなみにやきうの受けたテストの答えは

安部公房
メフィスト賞
パリ
明治、大正、昭和、平成 

ですね