1: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:08:27.273 ID:uZVYIWqdD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
宗像里奈(29) 派遣社員
【正社員になりたい女】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
宗像里奈(29) 派遣社員
【正社員になりたい女】
ホーッホッホッホ……。」
5: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:10:13.467 ID:uZVYIWqdD
夜。山手線の電車が、仕事を終えて帰宅に向かう人たちを乗せて走っている。
乗客たちは疲れきった顔をしている。
左手に吊革を握り、右手に英語の単語帳を持っている私服の女性客がいる。
英語の単語帳の表紙には「英検1級」の題字がある。
テロップ「宗像里奈(29) 派遣社員」
里奈は回想する。
朝。マイクロバスが、派遣社員を乗せて目的地に向かっている。バスの中には里奈もいる。
ある工場。派遣社員たちは、真っ白く分厚い防塵服を着ている。里奈の全身も防塵服にすっぽり覆われている。
里奈は黒いピンセットを握り、器の中に部品を一つずつ入れている。彼女の顔は汗だくだ。
夜。マイクロバスが、派遣社員を乗せて走っている。バスの中で里奈は居眠りをしている。
乗客たちは疲れきった顔をしている。
左手に吊革を握り、右手に英語の単語帳を持っている私服の女性客がいる。
英語の単語帳の表紙には「英検1級」の題字がある。
テロップ「宗像里奈(29) 派遣社員」
里奈は回想する。
朝。マイクロバスが、派遣社員を乗せて目的地に向かっている。バスの中には里奈もいる。
ある工場。派遣社員たちは、真っ白く分厚い防塵服を着ている。里奈の全身も防塵服にすっぽり覆われている。
里奈は黒いピンセットを握り、器の中に部品を一つずつ入れている。彼女の顔は汗だくだ。
夜。マイクロバスが、派遣社員を乗せて走っている。バスの中で里奈は居眠りをしている。
6: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:11:37.191 ID:uZVYIWqdD
場面は夜の電車の中に戻る。
里奈(今日の仕事は、工場でのスマホの組み立て……)
(朝の4時半に起きて……。バスは片道2時間で……。工場内には残業も含めて12時間もいて……。今は夜の11時か……)
1週間後。ある家電メーカーの工場。派遣社員たちは皆、お揃いのジャンパーと帽子を身につけている。
里奈は電動ドライバーを握り、ある製品にねじを装着している。どうやら、炊飯器を組み立てているようだ。
さらに数日後。ある倉庫の中に里奈がいる。建物の中には段ボール箱が山ほど積まれている。
里奈は段ボール箱にシールを次々と貼っていく。
夕方。里奈は電車に乗って帰宅する途中だ。電車内で彼女は、相変わらず英単語帳を開いている。
里奈(私はいつか必ず……、正社員になるんだ……)
里奈(今日の仕事は、工場でのスマホの組み立て……)
(朝の4時半に起きて……。バスは片道2時間で……。工場内には残業も含めて12時間もいて……。今は夜の11時か……)
1週間後。ある家電メーカーの工場。派遣社員たちは皆、お揃いのジャンパーと帽子を身につけている。
里奈は電動ドライバーを握り、ある製品にねじを装着している。どうやら、炊飯器を組み立てているようだ。
さらに数日後。ある倉庫の中に里奈がいる。建物の中には段ボール箱が山ほど積まれている。
里奈は段ボール箱にシールを次々と貼っていく。
夕方。里奈は電車に乗って帰宅する途中だ。電車内で彼女は、相変わらず英単語帳を開いている。
里奈(私はいつか必ず……、正社員になるんだ……)
8: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:13:10.412 ID:uZVYIWqdD
さらに1週間後。
あるショッピングモール。里奈は、頭に三角巾を、身体にエプロンを身につけている。
彼女は食品売り場で、プチトマトの試食販売をしているようだ。
里奈「穫れたてで、甘くて、おいしい熊本産のプチトマト!!プチトマトはいかがですかぁー!!」
試食販売中の宗像里奈に、喪黒福造が寄ってくる。
喪黒「ほう……、プチトマトですか」
喪黒は、皿の上に乗っているプチトマトに手を伸ばす。
里奈「いかがですか?」
プチトマトを食べる喪黒。喪黒「なかなか……おいしいですよ」
里奈「ありがとうございます」
喪黒「まあ、こうやってあなたと出会ったのも縁ですから……。以後、お見知りおきを」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
あるショッピングモール。里奈は、頭に三角巾を、身体にエプロンを身につけている。
彼女は食品売り場で、プチトマトの試食販売をしているようだ。
里奈「穫れたてで、甘くて、おいしい熊本産のプチトマト!!プチトマトはいかがですかぁー!!」
試食販売中の宗像里奈に、喪黒福造が寄ってくる。
喪黒「ほう……、プチトマトですか」
喪黒は、皿の上に乗っているプチトマトに手を伸ばす。
里奈「いかがですか?」
プチトマトを食べる喪黒。喪黒「なかなか……おいしいですよ」
里奈「ありがとうございます」
喪黒「まあ、こうやってあなたと出会ったのも縁ですから……。以後、お見知りおきを」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
10: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:14:39.446 ID:uZVYIWqdD
夕方。試食販売が終わり、ショッピングモールを後にする里奈。
里奈は道を歩きながら、喪黒から貰った名刺を目にする。
里奈「ココロのスキマ、お埋めします……か」
駅。そば屋で里奈は、立ち食いそばを食べている。
里奈(それにしても、不思議な感じの人だったなぁ……。試食販売で出会ったあの人のことが、今も頭の中に残っている……)
里奈の隣の席には、喪黒が座っている。喪黒は彼女に声をかける。
喪黒「昼間の試食販売のプチトマト、おいしかったですよ!」
里奈「うわっ!!……ってあなたは!!」
喪黒「これはこれは、奇遇ですなぁ」
里奈「びっくりしましたよ、今のは……」
喪黒「あなた、昼間に出会った私のことがずーっと頭の中に残っていたようですね」
里奈「いいえ、そんな……」
(この人、何で私が考えてることを見抜けるのよ……!!)
里奈は道を歩きながら、喪黒から貰った名刺を目にする。
里奈「ココロのスキマ、お埋めします……か」
駅。そば屋で里奈は、立ち食いそばを食べている。
里奈(それにしても、不思議な感じの人だったなぁ……。試食販売で出会ったあの人のことが、今も頭の中に残っている……)
里奈の隣の席には、喪黒が座っている。喪黒は彼女に声をかける。
喪黒「昼間の試食販売のプチトマト、おいしかったですよ!」
里奈「うわっ!!……ってあなたは!!」
喪黒「これはこれは、奇遇ですなぁ」
里奈「びっくりしましたよ、今のは……」
喪黒「あなた、昼間に出会った私のことがずーっと頭の中に残っていたようですね」
里奈「いいえ、そんな……」
(この人、何で私が考えてることを見抜けるのよ……!!)
12: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:16:45.187 ID:uZVYIWqdD
喪黒「試食販売ですか……。おそらく、あなたのご職業は派遣社員でしょう?」
里奈「そ、そうですけど……」
(うわ、また私のこと見抜いた!!勘が鋭いなぁこの人)
喪黒「あなたは見た目からして頭がよさそうなお方でしょう。だから、おそらく一流大学の出身者だと思いますよ」
「大学名は……。当ててみましょうか?」
里奈(ま、まさか……)
喪黒「首都公立大学!……とかその辺りなんじゃぁ……、ないですかねぇ……!?」
里奈「大学名まで見抜けるなんて……!!あ……、あなた何者なんですか!?」
喪黒「いやぁ、私はセールスマンですよ。仕事柄、長年、人間の観察を行ってきたおかげ……というわけです」
BAR「魔の巣」。喪黒と里奈が席に腰掛けている。
喪黒「それにしても……。宗像さんのような高学歴で優秀なお方が、派遣社員とは実にもったいないですなぁ……」
里奈「大学時代、就職活動に失敗したんですよ……」
里奈「そ、そうですけど……」
(うわ、また私のこと見抜いた!!勘が鋭いなぁこの人)
喪黒「あなたは見た目からして頭がよさそうなお方でしょう。だから、おそらく一流大学の出身者だと思いますよ」
「大学名は……。当ててみましょうか?」
里奈(ま、まさか……)
喪黒「首都公立大学!……とかその辺りなんじゃぁ……、ないですかねぇ……!?」
里奈「大学名まで見抜けるなんて……!!あ……、あなた何者なんですか!?」
喪黒「いやぁ、私はセールスマンですよ。仕事柄、長年、人間の観察を行ってきたおかげ……というわけです」
BAR「魔の巣」。喪黒と里奈が席に腰掛けている。
喪黒「それにしても……。宗像さんのような高学歴で優秀なお方が、派遣社員とは実にもったいないですなぁ……」
里奈「大学時代、就職活動に失敗したんですよ……」
13: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:18:55.083 ID:uZVYIWqdD
喪黒「おそらく、時期的にいろいろ恵まれなかったんでしょうなぁ……」
里奈「はい。私が大学4年を迎えたのは2011年。あの年は、東日本大震災が起きた年でもありましたから」
「それに……。私が大学に入学した2008年は、100年に1度の金融危機が起きた年でもありますしね」
喪黒「日本経済が大変な時期でもありましたからねぇ。あのころは」
里奈「大学を卒業して以来、私は派遣社員として食いつないできました」
喪黒「でも、あなたは正社員になる夢を持ち続けてきたようですなぁ」
里奈「はい。派遣の仕事の傍らで、私は正社員になるための就職活動に励んできました」
喪黒「おそらく宗像さんは、資格を獲得するための勉強も頑張ってきたでしょうねぇ」
里奈「ええ、もちろん。私は、正社員になるために、資格もいろいろ取得しましたよ」
喪黒「……にも関わらず、あなたは正社員になることができず今に至っている……。というわけですか」
里奈「そうです」
喪黒「それだけではないでしょう……?たぶんあなたは、人間関係でもストレスを抱えていると思いますよ」
里奈「もちろんです」
里奈「はい。私が大学4年を迎えたのは2011年。あの年は、東日本大震災が起きた年でもありましたから」
「それに……。私が大学に入学した2008年は、100年に1度の金融危機が起きた年でもありますしね」
喪黒「日本経済が大変な時期でもありましたからねぇ。あのころは」
里奈「大学を卒業して以来、私は派遣社員として食いつないできました」
喪黒「でも、あなたは正社員になる夢を持ち続けてきたようですなぁ」
里奈「はい。派遣の仕事の傍らで、私は正社員になるための就職活動に励んできました」
喪黒「おそらく宗像さんは、資格を獲得するための勉強も頑張ってきたでしょうねぇ」
里奈「ええ、もちろん。私は、正社員になるために、資格もいろいろ取得しましたよ」
喪黒「……にも関わらず、あなたは正社員になることができず今に至っている……。というわけですか」
里奈「そうです」
喪黒「それだけではないでしょう……?たぶんあなたは、人間関係でもストレスを抱えていると思いますよ」
里奈「もちろんです」
15: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:20:50.977 ID:uZVYIWqdD
喪黒「派遣会社の中で、宗像さんは一人浮いているはずです。なぜなら……、あなたは高学歴だから」
「周りにいる派遣社員たちと、あなたは全く話が合わないでしょうな。……そうですよね!?」
里奈「ええ。喪黒さんの見立て通りですよ」
喪黒「間違いなく……。あなたは、様々な意味で今の生活に限界を感じているはずですよ」
里奈「そりゃあ、もう……。ですが……、他に生活手段がありませんから……!!仕方ないですよ!!」
「でも、できることなら私だって……!!私だって……!!」
喪黒「あなたは、どうしても正社員になりたいんですよね!?」
里奈「それに尽きます……!!」
喪黒「その心意気、気に入りました……!何事も、諦めないことが肝心ですからねぇ」
「真面目でひたむきなあなたのために……、いいものをあげましょう」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは透明な結晶で作られた人形のキーホルダーだ。
キーホルダーの人形は、女性の姿をしていて、古代ギリシャかローマのような格好をしている。
「周りにいる派遣社員たちと、あなたは全く話が合わないでしょうな。……そうですよね!?」
里奈「ええ。喪黒さんの見立て通りですよ」
喪黒「間違いなく……。あなたは、様々な意味で今の生活に限界を感じているはずですよ」
里奈「そりゃあ、もう……。ですが……、他に生活手段がありませんから……!!仕方ないですよ!!」
「でも、できることなら私だって……!!私だって……!!」
喪黒「あなたは、どうしても正社員になりたいんですよね!?」
里奈「それに尽きます……!!」
喪黒「その心意気、気に入りました……!何事も、諦めないことが肝心ですからねぇ」
「真面目でひたむきなあなたのために……、いいものをあげましょう」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは透明な結晶で作られた人形のキーホルダーだ。
キーホルダーの人形は、女性の姿をしていて、古代ギリシャかローマのような格好をしている。
16: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:22:33.788 ID:uZVYIWqdD
里奈「これは……!?」
喪黒「お守りですよ。名前は『クリスタルヴィーナス』です」
「名前の通り、ローマ神話の女神ヴィーナスの姿をした水晶細工です」
里奈「美しい人形ですね……。室内の電気の光を受けて、七色に輝いていますよ」
喪黒「造形美だけではありません。この人形には、特殊な効果があるのです」
里奈「まさか……」
喪黒「この人形は、持った人の運気を好転させる効果があります」
「特に、進路面では……。その人の望んでいる分野に進ませてくれる働きがあるのです」
里奈「その話が本当なら、いいですけどね……」
喪黒「本当ですよ。祈ったことも、『クリスタルヴィーナス』はかなえてくれますよ」
里奈「じゃあ、正社員になりたいという願いも……」
喪黒「もちろん、かなえてくれますよ」
里奈「面白そうですね……。じゃあ、騙されたと思って……」
喪黒「そうです、その意気!!これは私からあなたへのプレゼントですよ!!」
喪黒「お守りですよ。名前は『クリスタルヴィーナス』です」
「名前の通り、ローマ神話の女神ヴィーナスの姿をした水晶細工です」
里奈「美しい人形ですね……。室内の電気の光を受けて、七色に輝いていますよ」
喪黒「造形美だけではありません。この人形には、特殊な効果があるのです」
里奈「まさか……」
喪黒「この人形は、持った人の運気を好転させる効果があります」
「特に、進路面では……。その人の望んでいる分野に進ませてくれる働きがあるのです」
里奈「その話が本当なら、いいですけどね……」
喪黒「本当ですよ。祈ったことも、『クリスタルヴィーナス』はかなえてくれますよ」
里奈「じゃあ、正社員になりたいという願いも……」
喪黒「もちろん、かなえてくれますよ」
里奈「面白そうですね……。じゃあ、騙されたと思って……」
喪黒「そうです、その意気!!これは私からあなたへのプレゼントですよ!!」
17: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:24:19.002 ID:uZVYIWqdD
夜。電車を降り、自宅の最寄りの駅を出る里奈。
里奈の鞄の紐の方の金具には、キーホルダー型お守り『クリスタルヴィーナス』が付いている。
アパート。室内には、パジャマを着た寝る前の里奈がいる。
彼女は、鞄に付いた『クリスタルヴィーナス』に向かって何かを祈っている。
数日後。ある大学。建物の前に多くの人間が並んでいる。列の中には里奈もいる。
大学のキャンパスの入り口には「英語検定試験 会場」と書かれた立て札がある。
室内で、英検の試験が行われる。部屋にある黒板には、「英検1級 一次試験」と書かれている。
試験を受ける里奈。里奈(この問題は……!!思った以上にスラスラ解ける……!!)
試験を終え、室内から退出する里奈たち。
里奈(もしかしたら、一次試験に合格できるかもしれない……!!)
(まさか、これも『クリスタルヴィーナス』の効果……!?)
里奈の鞄の紐の方の金具には、キーホルダー型お守り『クリスタルヴィーナス』が付いている。
アパート。室内には、パジャマを着た寝る前の里奈がいる。
彼女は、鞄に付いた『クリスタルヴィーナス』に向かって何かを祈っている。
数日後。ある大学。建物の前に多くの人間が並んでいる。列の中には里奈もいる。
大学のキャンパスの入り口には「英語検定試験 会場」と書かれた立て札がある。
室内で、英検の試験が行われる。部屋にある黒板には、「英検1級 一次試験」と書かれている。
試験を受ける里奈。里奈(この問題は……!!思った以上にスラスラ解ける……!!)
試験を終え、室内から退出する里奈たち。
里奈(もしかしたら、一次試験に合格できるかもしれない……!!)
(まさか、これも『クリスタルヴィーナス』の効果……!?)
19: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:26:22.584 ID:uZVYIWqdD
大学のキャンパスから去ろうとする里奈に、一人の男性が声をかけてくる。
男性「君は英検1級を受験していたのか……。頭がいいんだな、君……」
男性は中年だが、顔立ちが整っていてスタイルがいい。男性「私はこういう者だ」
男性が取りだした名刺には「株式会社アフロディーテ 社長 成海龍太郎」と書かれている。
里奈「株式会社アフロディーテ……。化粧品や健康食品の販売で有名な……、あの会社ですか!!」
成海「そうだよ」
里奈「た、確か成海社長は……。立志伝中の人として有名な経営者……!!」
「貧困家庭から東都大学に合格し、大学卒業後は製薬会社勤務を経て独立……」
「その後、アフロディーテを創業し、一流上場企業へと育て上げたあの……」
成海「なかなか詳しいな。経歴的には君の言う通りだよ」
里奈「ところで成海社長が、なぜ私に声をかけてくださったのですか……!?」
成海「2回も君と出会ったもんだからな」
「この間、ショッピングモールでプチトマトの試食販売をしていた売り子は、君だったろう?」
里奈「そういえば、あの試食販売の時……」
成海「思い出したかね?で、今回、英検1級の試験会場でも私は君を見かけた。そういうわけさ」
「よかったら、一緒に食事でもどうだい?」
男性「君は英検1級を受験していたのか……。頭がいいんだな、君……」
男性は中年だが、顔立ちが整っていてスタイルがいい。男性「私はこういう者だ」
男性が取りだした名刺には「株式会社アフロディーテ 社長 成海龍太郎」と書かれている。
里奈「株式会社アフロディーテ……。化粧品や健康食品の販売で有名な……、あの会社ですか!!」
成海「そうだよ」
里奈「た、確か成海社長は……。立志伝中の人として有名な経営者……!!」
「貧困家庭から東都大学に合格し、大学卒業後は製薬会社勤務を経て独立……」
「その後、アフロディーテを創業し、一流上場企業へと育て上げたあの……」
成海「なかなか詳しいな。経歴的には君の言う通りだよ」
里奈「ところで成海社長が、なぜ私に声をかけてくださったのですか……!?」
成海「2回も君と出会ったもんだからな」
「この間、ショッピングモールでプチトマトの試食販売をしていた売り子は、君だったろう?」
里奈「そういえば、あの試食販売の時……」
成海「思い出したかね?で、今回、英検1級の試験会場でも私は君を見かけた。そういうわけさ」
「よかったら、一緒に食事でもどうだい?」
20: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:28:20.599 ID:uZVYIWqdD
都内のフランス料理店で一緒に食事をする成海と里奈。
成海「こういう場所で食事をするのは初めてだろう?」
里奈「は、はい……」
緊張のせいか、里奈はナイフとフォークを持つ手がぎこちない。
成海「実はねぇ、私は頭がよさそうな人間に興味があるんだよ」
里奈「い、いえ……。私はそんな……」
成海「謙遜するなよ。宗像さんは頭がよくて、真面目そうで、学歴も比較的いい」
「それなのに派遣社員のままであり、実力を生かし切れていない」
「だから、私が何とかしてやりたいと思っているんだ」
里奈「……ということは?」
成海「私は、宗像さんをアフロディーテに正社員として採用しようと思っているんだ」
里奈「ほ、本気ですか!?社長……!!」
成海「私は本気だよ。それどころか、私は君を第二秘書にしてもいいかと思っている」
里奈(こんなことが本当に……!!夢のようだ……!!)
成海「こういう場所で食事をするのは初めてだろう?」
里奈「は、はい……」
緊張のせいか、里奈はナイフとフォークを持つ手がぎこちない。
成海「実はねぇ、私は頭がよさそうな人間に興味があるんだよ」
里奈「い、いえ……。私はそんな……」
成海「謙遜するなよ。宗像さんは頭がよくて、真面目そうで、学歴も比較的いい」
「それなのに派遣社員のままであり、実力を生かし切れていない」
「だから、私が何とかしてやりたいと思っているんだ」
里奈「……ということは?」
成海「私は、宗像さんをアフロディーテに正社員として採用しようと思っているんだ」
里奈「ほ、本気ですか!?社長……!!」
成海「私は本気だよ。それどころか、私は君を第二秘書にしてもいいかと思っている」
里奈(こんなことが本当に……!!夢のようだ……!!)
23: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:31:00.327 ID:uZVYIWqdD
BAR「魔の巣」。喪黒と里奈が席に腰掛けている。
喪黒「どうです?『クリスタルヴィーナス』の効果は抜群でしょう?」
里奈「はい!おかげで今の私は、一流上場企業の社長秘書になれました!!」
「それに、英検1級の一次試験にも高得点で合格することができました!!」
喪黒「よかったですなぁ、宗像さん」
里奈「何もかも喪黒さんのおかげです……!!喪黒さんには本当に感謝していますよ」
喪黒「宗像さんのお役に立てて、実に何よりです……」
「ですがね……、宗像さん。私の方から忠告しておきたいことがありまして……ねぇ」
里奈「は、はあ……」
喪黒「『クリスタルヴィーナス』は持った人の願いをかなえてくれます。ですから、使用法にはくれぐれも気をつけてください」
里奈「はい……」
喪黒「悪いことをするためや、相手を呪うために使っても効果を発揮しますが……」
「その場合は、自分自身に強力な副作用が返ってくることになりますよ……」
里奈「そうですか……。気をつけます……」
喪黒「約束です。悪いことをするためや、相手を呪うために『クリスタルヴィーナス』を使用してはいけませんよ」
里奈「わ、分かりました。喪黒さん……」
喪黒「どうです?『クリスタルヴィーナス』の効果は抜群でしょう?」
里奈「はい!おかげで今の私は、一流上場企業の社長秘書になれました!!」
「それに、英検1級の一次試験にも高得点で合格することができました!!」
喪黒「よかったですなぁ、宗像さん」
里奈「何もかも喪黒さんのおかげです……!!喪黒さんには本当に感謝していますよ」
喪黒「宗像さんのお役に立てて、実に何よりです……」
「ですがね……、宗像さん。私の方から忠告しておきたいことがありまして……ねぇ」
里奈「は、はあ……」
喪黒「『クリスタルヴィーナス』は持った人の願いをかなえてくれます。ですから、使用法にはくれぐれも気をつけてください」
里奈「はい……」
喪黒「悪いことをするためや、相手を呪うために使っても効果を発揮しますが……」
「その場合は、自分自身に強力な副作用が返ってくることになりますよ……」
里奈「そうですか……。気をつけます……」
喪黒「約束です。悪いことをするためや、相手を呪うために『クリスタルヴィーナス』を使用してはいけませんよ」
里奈「わ、分かりました。喪黒さん……」
24: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:33:32.144 ID:uZVYIWqdD
アフロディーテ本社。社長室のソファには、成海と他社の社長が座っている。里奈は二人にお茶を出す。
黒塗りの車が、成海社長を乗せて目的地に向かう。車の中には、第一秘書の女性と第二秘書の里奈も同席している。
テロップ「アフロディーテ社長第一秘書 町田静香」
場面はアフロディーテ本社に戻る。廊下で町田静香が、里奈を激しく叱責している。その様子を、社員たちが見ている。
社員たち「おい、見ろよ」「ああ、今日もまた始まったぞ」「社長第一秘書による、新人秘書いびりがな」
夜。帰宅途中の電車の中の里奈。彼女の頭の中に、自分に事あるごとに辛く当たる町田静香の顔と罵声が思い浮かぶ。
(静香「のろま!!!」「あんたって、本当に何をやってもダメね!!!」「虫けらの分際で、いい気になるんじゃないよ!!!」)
里奈(いつもいつも……!!私への悪口と嫌がらせばかり……!!何かにつけて私のことを……!!)
里奈の頭の中に、ある日の光景が思い浮かぶ。社長室で、成海社長が町田静香の肩に手を回す。うっとりした表情になる静香。
里奈(社長の愛人であることを鼻にかけて、あの女は……!!)
アパート。室内には、パジャマを着た寝る前の里奈がいる。
彼女は、鞄に付いた『クリスタルヴィーナス』に向かって何かを祈っている。しかし、その表情は険しく怒りに満ちている。
黒塗りの車が、成海社長を乗せて目的地に向かう。車の中には、第一秘書の女性と第二秘書の里奈も同席している。
テロップ「アフロディーテ社長第一秘書 町田静香」
場面はアフロディーテ本社に戻る。廊下で町田静香が、里奈を激しく叱責している。その様子を、社員たちが見ている。
社員たち「おい、見ろよ」「ああ、今日もまた始まったぞ」「社長第一秘書による、新人秘書いびりがな」
夜。帰宅途中の電車の中の里奈。彼女の頭の中に、自分に事あるごとに辛く当たる町田静香の顔と罵声が思い浮かぶ。
(静香「のろま!!!」「あんたって、本当に何をやってもダメね!!!」「虫けらの分際で、いい気になるんじゃないよ!!!」)
里奈(いつもいつも……!!私への悪口と嫌がらせばかり……!!何かにつけて私のことを……!!)
里奈の頭の中に、ある日の光景が思い浮かぶ。社長室で、成海社長が町田静香の肩に手を回す。うっとりした表情になる静香。
里奈(社長の愛人であることを鼻にかけて、あの女は……!!)
アパート。室内には、パジャマを着た寝る前の里奈がいる。
彼女は、鞄に付いた『クリスタルヴィーナス』に向かって何かを祈っている。しかし、その表情は険しく怒りに満ちている。
27: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:37:02.555 ID:uZVYIWqdD
翌朝。アフロディーテ本社。誰もいないエレベーターの中に入る里奈。そこへもう一人の男性も続く。
エレベーターはドアが閉まる。中にいるのは、宗像里奈と喪黒福造の二人だ。
喪黒「宗像里奈さん……。あなた、約束を破りましたね……!」
里奈「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は忠告したはずです。悪いことをするためや、相手を呪うために『クリスタルヴィーナス』を使用してはいけない……と」
里奈「わ、私は何も……!!」
喪黒「とぼけても無駄です!宗像さんは、第一秘書の町田静香さんから連日のように嫌がらせを受けていました……」
「そのおかげもあって……、あなたは憎い町田さんを呪うために『クリスタルヴィーナス』を使用してしまいましたね」
里奈「ゆ、許してください!!喪黒さん!!」
喪黒「もう手遅れです!あなたは『クリスタルヴィーナス』を持つ資格がなくなりました……!!」
喪黒は里奈に右手の人差し指を向ける。
喪黒「約束を破った宗像さんには……、ペナルティーを受けて貰いましょう!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
里奈「キャアアアアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受けるとともに、里奈の鞄の金具に付いた『クリスタルヴィーナス』が粉々に砕け散る。
エレベーターはドアが閉まる。中にいるのは、宗像里奈と喪黒福造の二人だ。
喪黒「宗像里奈さん……。あなた、約束を破りましたね……!」
里奈「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は忠告したはずです。悪いことをするためや、相手を呪うために『クリスタルヴィーナス』を使用してはいけない……と」
里奈「わ、私は何も……!!」
喪黒「とぼけても無駄です!宗像さんは、第一秘書の町田静香さんから連日のように嫌がらせを受けていました……」
「そのおかげもあって……、あなたは憎い町田さんを呪うために『クリスタルヴィーナス』を使用してしまいましたね」
里奈「ゆ、許してください!!喪黒さん!!」
喪黒「もう手遅れです!あなたは『クリスタルヴィーナス』を持つ資格がなくなりました……!!」
喪黒は里奈に右手の人差し指を向ける。
喪黒「約束を破った宗像さんには……、ペナルティーを受けて貰いましょう!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
里奈「キャアアアアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受けるとともに、里奈の鞄の金具に付いた『クリスタルヴィーナス』が粉々に砕け散る。
28: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:40:15.590 ID:uZVYIWqdD
社長室に呼ばれる里奈。成海社長は深刻そうな表情で里奈に話す。
成海「大変なことが起きたぞ……。今朝、第一秘書の町田静香さんが交通事故に遭った……」
里奈「えっ!?」
成海「彼女のけがは深刻だ……。それに脳も損傷している。まさに、生きるか死ぬかの状態だよ」
里奈「そ、そんな……」
彼女の頭の中に、喪黒のある忠告が思い浮かぶ。
(喪黒「悪いことをするためや、相手を呪うために使っても効果を発揮しますが……」
「その場合は、自分自身に強力な副作用が返ってくることになりますよ……」)
夜。イタリア料理店で会食をする成海と里奈。
成海「今日から君が第一秘書だ。責任は重いだろうが、しっかり頑張りたまえ」
里奈「あ、ありがとうございます……」
テーブルの上のワインに口をつける里奈。その途端、彼女の意識は朦朧した状態になっていく。
ある程度時間が経ち、意識を取り戻す里奈。彼女は目を開けた時、異変に気がつく。
成海「大変なことが起きたぞ……。今朝、第一秘書の町田静香さんが交通事故に遭った……」
里奈「えっ!?」
成海「彼女のけがは深刻だ……。それに脳も損傷している。まさに、生きるか死ぬかの状態だよ」
里奈「そ、そんな……」
彼女の頭の中に、喪黒のある忠告が思い浮かぶ。
(喪黒「悪いことをするためや、相手を呪うために使っても効果を発揮しますが……」
「その場合は、自分自身に強力な副作用が返ってくることになりますよ……」)
夜。イタリア料理店で会食をする成海と里奈。
成海「今日から君が第一秘書だ。責任は重いだろうが、しっかり頑張りたまえ」
里奈「あ、ありがとうございます……」
テーブルの上のワインに口をつける里奈。その途端、彼女の意識は朦朧した状態になっていく。
ある程度時間が経ち、意識を取り戻す里奈。彼女は目を開けた時、異変に気がつく。
29: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:44:31.840 ID:uZVYIWqdD
里奈は下着姿のまま、ベッドの上で手足を縛られている。
成海「気がついたか!?ここは俺が保有するマンションの……、ヤリ部屋だよ……。フフフ……」
一方、成海社長は上半身が裸だ。里奈は、成海の背中に竜の入れ墨が彫ってあるのを目にしてしまう。
里奈「まさか……!!そんな……!!アフロディーテがフロント企業だったなんて……!!」
成海「ああ、そうだよ!!アフロディーテはその筋の会社だよ!!なぜなら、俺は住之江会の最高幹部の隠し子……」
「俺が会社を創業できたのも……、成功者になれたのも……、そういうことなんだよ!!」
里奈「……だとすると、町田静香さんの交通事故も……」
成海「俺が組の人間を使ってやらせたのさ!!俺名義で、彼女に多額の生命保険をかけてなぁ……!!」
「フフフ……。秘密を知った以上、お前は俺の情婦になって貰うぞ!!」
「里奈……!!お前は、この部屋で徹底的にシャブ漬けにしてやるからな!!」
成海社長の右手には、注射器が握られている。迫りくる成海を前に、里奈は泣きながら悲鳴を上げる。
里奈「だ、誰か……!!助けてええええ!!!」
成海が保有するマンションの前にいる喪黒。
喪黒「一億総中流の時代が終わり、深刻な格差社会となった今、正社員になることさえも狭き門の時代が訪れました」
「競争に次ぐ競争を生き延びないと、まともな生活水準を維持することさえも難しい時代を私たちは生きているのです」
「しかしながら、熾烈な競争には出し抜きあいがつきものですし、一握りの勝者の陰には多くの敗者の存在があります」
「裏切りや騙し……。憎しみや呪い……。悪意と謀略の果てに地位や富を勝ち取ったとしても……」
「果たしてそれは……、本当の意味で幸福になったと言えるでしょうか?ねぇ、宗像里奈さん……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
成海「気がついたか!?ここは俺が保有するマンションの……、ヤリ部屋だよ……。フフフ……」
一方、成海社長は上半身が裸だ。里奈は、成海の背中に竜の入れ墨が彫ってあるのを目にしてしまう。
里奈「まさか……!!そんな……!!アフロディーテがフロント企業だったなんて……!!」
成海「ああ、そうだよ!!アフロディーテはその筋の会社だよ!!なぜなら、俺は住之江会の最高幹部の隠し子……」
「俺が会社を創業できたのも……、成功者になれたのも……、そういうことなんだよ!!」
里奈「……だとすると、町田静香さんの交通事故も……」
成海「俺が組の人間を使ってやらせたのさ!!俺名義で、彼女に多額の生命保険をかけてなぁ……!!」
「フフフ……。秘密を知った以上、お前は俺の情婦になって貰うぞ!!」
「里奈……!!お前は、この部屋で徹底的にシャブ漬けにしてやるからな!!」
成海社長の右手には、注射器が握られている。迫りくる成海を前に、里奈は泣きながら悲鳴を上げる。
里奈「だ、誰か……!!助けてええええ!!!」
成海が保有するマンションの前にいる喪黒。
喪黒「一億総中流の時代が終わり、深刻な格差社会となった今、正社員になることさえも狭き門の時代が訪れました」
「競争に次ぐ競争を生き延びないと、まともな生活水準を維持することさえも難しい時代を私たちは生きているのです」
「しかしながら、熾烈な競争には出し抜きあいがつきものですし、一握りの勝者の陰には多くの敗者の存在があります」
「裏切りや騙し……。憎しみや呪い……。悪意と謀略の果てに地位や富を勝ち取ったとしても……」
「果たしてそれは……、本当の意味で幸福になったと言えるでしょうか?ねぇ、宗像里奈さん……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
30: SSまとめSTATION 2018/07/19(木) 01:55:56.830 ID:/UAUV6TT0
光景が頭に思い浮かぶわ
スレURL:http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1531930107/
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