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1: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 22:35:18.56 ID:82VEg7fQ0
善子「っ………………!!!」


無理やり意識が引き起こされたように目が覚めた。
時計を見れば、アラームより1時間も前に起きてしまったみたい。

霞む視界には、ただ暗い部屋の天井が広がっているだけで、思考も回らない。


脳裏に張り付いた夢の中の私が、延々と頭の中に居座っている。



しばらくの間二度寝を試みたけど、下着が張り付くほど汗をびっしょりとかいているのに気がついた。


善子「――はぁ……お風呂入っておこうかしら」


2: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 22:41:09.66 ID:82VEg7fQ0
よしりこです。多分シリアス。
よろしくお願いします。

3: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 22:44:10.47 ID:82VEg7fQ0
―――シャワーを浴びながら、最近見る悪夢について考える。


実のところ、今日のようなことは今回が初めてではない。
むしろ今日で連続3日目の新記録よ。


何回目かどうかは数えていないけれど、多分、両手でも足りないくらい。

流石にこんな夢を見続けて、堪えてきてる。

4: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 22:48:58.26 ID:82VEg7fQ0
……私が泣いている。たったそれだけの夢。


声を押し殺して、顔を手で覆って、その目からただ涙が溢れてくる。


その姿は、懺悔しているようにも、逃避しているようにも見えた。



それ以上のことは、自分でも分からない。

というのも、起きてから夢のことを思い出そうとしても、思い出せるのは泣いている自分だけなの。


不気味すぎて気持ちが悪いわ。


善子(堕天使に与えられた試練だとか、ふざけて言ってられなくなってきたわね……)

不幸体質のレベルなんて、とっくに超えてるもの。

5: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 22:54:21.37 ID:82VEg7fQ0
いつになったら、どうしたら、この悪夢は止むんだろう。


どうしようもない不安に駆られ続けるのは、もううんざりよ……


一日中、咽び泣く自分が脳裏に張り付いて離れないなんて、あんまりよ……



身体がだるい。


学校、行きたくないなぁ…………





―――それでも、Aqoursの皆に迷惑はかけられないもの。
練習しなくちゃ。



善子「よし、今日も行くわよ」



善子「頑張るのよ、堕天使ヨハネっ!」

6: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:15:32.63 ID:82VEg7fQ0
結局あの夢のせいで、最近Aqoursの練習にも身が入らなかった。

私にとって、それが一番避けたい事態だったのだけれど。



曜「ワン、ツー、スリー、フォー!ワン、ツー……」


曜「千歌ちゃん少し走り気味!善子ちゃん遅れてるよ!」


千歌「うんっ」タッタッ

善子「分かったわっ」 アトヨハネ!



ステップの練習も、私は本調子には程遠い。
それはみんなの目にも明らかみたいで……


果南「善子ちゃんどうしたの!全然振りにキレがないよ!」

善子「ご、ごめんなさい……」

7: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:20:03.32 ID:82VEg7fQ0

ラブライブ本選が近いせいか、みんな練習に熱が入って、少し雰囲気がピリピリしてる気がする。

でも、それも全部、みんなの夢のためなんだ。


このままじゃだめ、頑張らなきゃ。


迷惑、かけっぱなしじゃないの………っ





善子「ふっ……はっ…………ぅわっ!!」

梨子「善子ちゃん!大丈夫?」

8: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:23:19.15 ID:82VEg7fQ0


足がもつれて転んでしまった。みんなの視線が私に集まる。

ダイヤ「………3分休憩しましょう。これでは効率も良くないですわ」


千歌「っはあぁああ、今日もハードだねぇ」




休憩時間だというのに、果南や曜は振り付けの確認をしている。


ほかのメンバーも全く集中は切れていないみたい。




みんな、本気なんだ。


私も……頑張らなきゃ……。

9: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:28:40.09 ID:82VEg7fQ0



善子「っ、はぁっ……はぁ…………」ガクッ


立ち上がろうとして、膝から崩れ落ちるように体勢を崩した。


何もない地面でつまずくなんて、今日もヨハネはアンラッキーね……





―――絶対、よく寝られなかったせい、分かってる。

それでも、悪夢程度で揺らいでいたら、みんなに迷惑をかけてしまう。

今が一番大事な時期なの。そうでしょう?


屈してはいけないわ、ヨハネ……

10: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:31:13.62 ID:82VEg7fQ0
梨子「ちょっと、よっちゃん大丈夫!?」


善子「だっ、大丈夫よ……気にしないで」


花丸「全然大丈夫じゃないずら!!」


ルビィ「よしこちゃん、休んだほうがいいよぉ」


曜「顔色もかなり悪いし、保健室のベッドを借りた方がいいかも。連れていくよ!」


みんなが駆け寄ってくる。
これも、一度目なんかじゃない。

11: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:39:36.96 ID:82VEg7fQ0


善子「ダメよ、本選が近いんだから、まだ」


ダイヤ「だからこそですわ!!身体を壊してラブライブに出られなくなったら本末転倒でしょう!」


善子「……っ!わ、分かったわよ」



曜「じゃあ善子ちゃん、おぶってくよ。保健室まで、ヨーソロー!」


善子「流石にそれはいいわ………」


ダイヤの剣幕に圧されて、やっぱり心配だとついてくる曜と渋々保健室へと向かう。

12: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 23:44:13.13 ID:82VEg7fQ0
梨子「――よっちゃん!!」

善子「っ……?なに?」



背中越しに声をかけられた。
声色から不安が漏れてる。


梨子「……ううん、なんでもない。今はゆっくり休んで?」


善子「ええ、ごめんなさい」






梨子は何か言いかけて、飲みこんだ。


また、みんなに迷惑かけちゃったなぁ……

18: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 20:08:51.45 ID:d4Eah32H0


保健室に着くとすぐ眠ってしまったらしい。
ドアを開けたあとの記憶がなかった。



気づくと、時間的にはまだ練習中のはずのリリーがベッドの横にいた。


梨子「あ、目が覚めたのね。ほんとに心配したんだから!」


善子「……ごめんなさい」

19: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 20:11:17.32 ID:d4Eah32H0


リリーは本当に心配そうに私を見つめて、しばらくしてやっと少し安心したようにため息をついた。




善子「練習は、どうしたの?」


梨子「ダイヤさんが、今日はもう終わりだって。最近かなりハードだったから、明日もオフにするみたい」


梨子「多分、自分が練習詰めすぎてるせいだって、責任感じちゃったんじゃないかな」

20: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 20:15:44.89 ID:d4Eah32H0


梨子「まったく、調子が悪いときはちゃんと言わなきゃダメ。いい?」


善子「はい」


梨子「よろしい」 ニコッ



頷いて、リリーはいつもの、本当に優しい微笑みでゆるしてくれた。


目を細めて、ちょっとだけ困り顔の眉で、どんな私も受け入れてくれる、そんな気さえする。




思えばこの笑顔に、私はいつも救われてきた。






そう、いつだって。

21: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 20:36:42.57 ID:d4Eah32H0


……だから、無意識にも私は、彼女に助けを求めてしまったのかもしれない。



梨子「――ねぇ、よっちゃん。何か心配事があるんじゃない?」


梨子「ずっと、様子が変だったから」


梨子「私もだし、Aqoursのみんなも。どうしたのって、何度も聞いてくれたんじゃない?」


善子「それはっ………」




梨子「何か、言えない理由があるの?」


善子「…………」

22: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 20:56:23.32 ID:d4Eah32H0


梨子「―――私ね、ほんとに不安なの。」



……泣きそうな顔、しないでよ。




梨子「話しかけても、上の空なんだもん。何処かにいっちゃうんじゃないかって、そんな気までして」




私は、あなたにそんな顔をさせるために……?

23: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 21:02:08.60 ID:d4Eah32H0



梨子「ねえよっちゃん」



梨子「私に、話してみて。それにみんな、迷惑なんて思わないよ?」



梨子「私は……ううん。私達は、いつでもあなたの味方なのよ?」



梨子「お願い……っ、よっちゃん」









善子「…………あのね」

24: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/02(月) 21:07:53.41 ID:d4Eah32H0
私はね……? リリー。



本当はもっと、言うべきことがあるの。


いえ、正確には、ある“ 気がする ”の。






私の心の、ずっとずっと奥に押し込んでしまったもの。


私が、目を背け続けてきたもの。







―――――あなたに、隠し事をしているの。

33: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 21:49:49.95 ID:cheqrU4L0



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




梨子「――泣いている、夢………」


善子「ええ」



思っていたより、話は深刻みたい。


というより、そんなことってあるんだ。




よっちゃんは怯えているように、保健室のベッドの上で膝を抱えている。

34: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 21:55:29.67 ID:cheqrU4L0


話の途中で、

『ふふ、ついに鍛錬を積んできた黒魔術の効果が出てきたのかしら』

なんて言っていたけれど……




やっぱり、不安そうな表情は隠せていなかった。



みんなを心配させないように、よっちゃんはこうして、ずっと無理してきたんだ。





梨子(よっちゃん…………)


35: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:05:01.05 ID:cheqrU4L0


怖かったよね。


そんな夢を見続けて、たった独りで耐えていたなんて。




――――私に、出来ることは。





梨子「…………それなら、」


善子「なに?」

36: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:12:07.75 ID:cheqrU4L0





梨子「今日はうちでお泊まりにしよっか!!」


善子「ふぇ?い、いいの……?」



戸惑った表情で私を見つめる。



梨子「いいに決まってるでしょっ。今のよっちゃん、放っておけないもん」





善子「……ありがとう、リリー」

37: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:14:50.63 ID:cheqrU4L0


梨子「ううん。私に出来ることは、これぐらいしかないから」






善子「―――ほんとはね、夜が来る度に不安だったの」




梨子「うん、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」






そう言って頭を撫でてあげると、よっちゃんは安心したように笑った。

38: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:17:01.23 ID:cheqrU4L0






お泊まりの用意をするために、よっちゃんは一度家に帰った。


私はよっちゃんを迎える準備をしつつ、今日の話を思い出して考える。



……ただ泣いている夢、か。


梨子(ほんとに黒魔術の効果、なわけないし)



―――やっぱり、なにか嫌なことがあって、そのせいなのかな。


39: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:19:23.86 ID:cheqrU4L0


お風呂を沸かして、お布団を敷いて、お母さんと夕ご飯を作っていると、インターフォンが鳴った。



善子「お、おじゃまします」ペコリ



梨子「はいっ、どうぞあがって?」ガチャッ



こういうのには慣れていないのか、キョロキョロと頭のお団子を揺らしながら、私の部屋までの階段を登っていく。

40: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:22:33.24 ID:cheqrU4L0


善子「なんだかいい匂いがするわね」



梨子「今日はシチューなの。もうすぐできるから、荷物置いたらリビングに行こうね」



善子「悪いわね、夕ご飯までいただいちゃって」



梨子「変なところで気を遣わないのっ」



善子「はーい」

41: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:24:15.51 ID:cheqrU4L0



梨子「お母さん、善子ちゃんが来たよ」



梨子母「あら!こんばんは~。善子さんね。いらっしゃいっ」


善子「ど、どうも。こんばんは。おじゃまします」ペコ




リビングに入ると、お母さんが明るく迎え入れた。


よっちゃんはだいぶ緊張してたみたいだけど、ひとまず落ち着いたみたい。

42: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:26:10.02 ID:cheqrU4L0


梨子「それじゃあ、夕ご飯にしよっか」


善子「ええ。このシチュー、とっても美味しそうね!」




梨子母「ふふっ。今日はね、善子ちゃんが来るからって、梨子が張り切って作ったのよ」


善子「えっ、……そうなの?」


梨子「ちょっとお母さん!いつもみたいに手伝っただけでしょ!?」カァ///


43: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:28:19.14 ID:cheqrU4L0


梨子母「なによ~、恥ずかしがることないじゃない。何度も何度も味見して、よっぽど気合が入ってたのね~っ」


梨子「うぅぅううう」////





善子「そうだったのね……ありがと、リリー」


梨子「う、うん。どういたしましてっ」

44: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:30:19.96 ID:cheqrU4L0


梨子母「あら、梨子ったらそんな風に呼んでもらってるの?可愛いじゃない」


梨子「もう!からかわないでよっ」//


善子「っ!!」///



今度はよっちゃんも一緒に赤くなって、なおのことシチューが白く見えました。



お母さんったら、からかい過ぎなんだから。


45: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:47:38.02 ID:cheqrU4L0


―――よっちゃんが美味しそうにシチューを食べてくれてる、よかったぁ。



あなたの幸せそうな顔をみるだけで、私も幸せなんだよ。


スプーンがお皿を撫でる音が、まるで福音みたい。





………………でもね。





あのね、よっちゃん。



私ね。




46: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/03(火) 22:50:43.73 ID:cheqrU4L0






梨子(ほんとは全部知ってるんだ。って言ったら)



――――――どうする?

48: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:11:31.37 ID:4kXr7mid0


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


談笑をしながら夕ご飯を食べていると、すぐに時間は過ぎていった。


少しずつ、気持ちが楽になってきたような気がする。



善子(リリーの作ってくれたシチュー、ほんとに美味しかったなぁ……)


照れていたけど、リリーはやっぱり優しい。


お風呂も先に入らせてもらっちゃったしね。

49: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:13:30.74 ID:4kXr7mid0


リリーの部屋で彼女がお風呂から上がるのを待ちながら、物思いに耽った。




リリーや美味しかった夕ご飯のことを考えると、胸があったかくなる。




―――あったかい、はずなのに。



50: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:14:35.35 ID:4kXr7mid0


このざわめきは何だろう。


リリーの家に来てから、ずっと感じていた。



彼女の優しさを、温もりを感じるほど、胸が痛くなった。



今だってそう。



チクチクと、拍動の度に胸が針に刺されるように痛む。




何か、大事なことを忘れてしまっている。
そんな気がする。

51: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:16:42.72 ID:4kXr7mid0

梨子「――よっちゃーん、お待たせ」



善子「っええ」ビクッ



ぼーっとしていたせいで、リリーが部屋に入ってきただけなのにかなりびっくりしてしまったわ……



梨子「どうしたの?よっちゃん」


善子「ううん、少し考え事してただけ。リリーのシチュー美味しかったなぁって」




梨子「そ、それならいいんだけど……」///





……ちょろい。将来が心配になってくる。

52: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:17:46.78 ID:4kXr7mid0


梨子「……そういえばよっちゃん、結構長風呂だったけど」


善子「そうだったかしら?」



梨子「もしかして、一緒に入りたくて待ってたの?」



善子「違うわよっ!」





いきなりなんてこと言うのこの子!?


53: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:27:47.02 ID:4kXr7mid0


梨子「えぇ……そんなに強く言われたらちょっと傷つくなぁ」



善子「えっ、ちょっと、あの、恥ずかしかっただけだってば。だから………」







梨子「―――っもう、冗談だってば」クスクス


善子「なんなのよぉもう!」



仕返しのつもりかしら。


ちょっと心配して損したわ。

それに、リリーって意外と大胆なのね。

54: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:28:37.86 ID:4kXr7mid0


梨子「それより、まだ寝るまで時間あるよ。なにする?」



善子「そうねぇ……ゲームくらいなら持ってきたわよ。マ〇オとか」



梨子「うん。それじゃあ、ゲームにしよっか!私すごく久しぶりだけど」



そういってリリーは携帯ゲーム機を引き出しから取り出した。

55: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:30:00.92 ID:4kXr7mid0


善子「だいぶ昔のやつだけどいい?」


梨子「いいよ。私もそれやってたし、懐かしいなぁ」


善子「へぇ、梨子もゲームやるのね」


梨子「まあねー」



2人でベッドに並んで寄りかかってゲームを始める。

56: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:31:01.53 ID:4kXr7mid0

――対戦するモードにしたけど、ほとんど一方的にやられてしまっている。




善子「もう、リリー上手すぎ!」ポチ


梨子「よっちゃんが下手すぎるのよ」ポチポチ




リリーめ、さてはこのゲーム極めたな……



リリーは楽しそうに画面を見つめて、一生懸命に綺麗な指を動かしていた。

57: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:35:04.18 ID:4kXr7mid0

負けっぱなしじゃいられないわ。


リリーがうとうとしてる今がチャンス!




善子「……よしっ!やっと勝てた!」フフン



梨子「ああっ!……うーんまあ、仕方ないか」


善子「ふふん、堕天使は最後に勝つのよ」


梨子「はいはい、よく出来ました」



善子「うんっ。……あ、もうそろそろ寝る時間よね」

58: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:37:05.27 ID:4kXr7mid0

梨子「そうね、眠くなってきたし、寝よっか」


梨子「それじゃあ、私はこの布団で寝るから、よっちゃんは私のベッド使っていいよ」



善子「なんかいろいろ悪いわね。お世話になってばかり」



梨子「そういうものでしょ?」



善子「そうなの?」



梨子「そうなのっ」

59: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:50:18.22 ID:4kXr7mid0

リリーが電気を消して、部屋は真っ暗になった。




梨子「それじゃあ、おやすみ。よっちゃん。」




善子「ええ、おやすみなさい、リリー。」




……目を閉じると、私の世界は一面真っ黒になる。

60: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:52:32.80 ID:4kXr7mid0


やっぱり怖いな。


またあの夢をみるんじゃないかって思うと、体が震えてくる。


私が、泣き崩れているだけの、それだけの夢。





……情けないわよヨハネ。

しゃんとしなさい、しゃんと。

61: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:55:13.08 ID:4kXr7mid0


善子「……、はぁ…………っ……」






梨子「よっちゃん」




善子「っどうしたの?リリー」



梨子「―――大丈夫だよ。大丈夫」



善子「……ええ、ありがと。リリー」


62: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/04(水) 00:56:39.49 ID:4kXr7mid0


リリーは、そっと私の手を握ってくれた。


それだけで体の震えはすぐにやんじゃったみたい。


やっぱりすごいのね、リリーは。









私の意識は、静かに遠のいていった――――――

72: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 21:44:14.77 ID:vJwqBb4D0




「―――――――――――ん」




「――――――ちゃん」





「―――よっちゃん」







頭がぼーっとする。



誰かが、私を呼んでいるのが聞こえた。




視界は真っ暗で、声だけが水の中を彷徨うみたいに響いている。

73: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 21:58:31.87 ID:vJwqBb4D0



「…………リリー?」





「おはよう、よっちゃん」





「リリー。私、何も見えないわ」




「ううん、よっちゃん、ちゃんと見えてるよ」



74: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 22:15:29.13 ID:vJwqBb4D0


どういうことだろう。




不思議に思っていると感覚が徐々に戻ってきた。





足が地面についている感じ。私は、立っているのかな。

75: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 22:18:01.25 ID:vJwqBb4D0



「やっぱり、何も見えないわよ」




「よっちゃん、目を開けて?」




リリーがそう言うと、一瞬で視界が開けた。
けど……


ここは………………音楽室?




真っ暗で、リリーがピアノの椅子に座っている以外はほとんど分からない。




なんだか、根拠はないけど、嫌な予感がする。



私の、不幸だけは的確に射抜く直感が、そう告げていた。

76: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 22:29:51.92 ID:vJwqBb4D0



善子「訳が分からないわ、なんで私は音楽室にいるの?」




善子「それとも、また夢を見ているの?あの悪夢じゃ、ないみたいだけど」





梨子「うん。よっちゃんはね、ずっと夢を見ていたんだよ」





善子「ずっと?それじゃあなんで、私は音楽室にいるの?」




梨子「よっちゃんが、ここに来たいと願ったからだよ。ここは、“貴女の夢の中”だから。」




会話になっているようで、なっていない。

77: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 22:43:49.07 ID:vJwqBb4D0


善子「私は、リリーのお家でお泊まりをしていて、部屋で寝ていたわ」



梨子「そうね、でもここは夢の中だもの。」



善子「なんでもありってこと?」



梨子「あなたがそう思うならね」





さっきから、リリーの言っていることの意味がいまいちわからない。



それに、彼女のいつもの穏やかな表情は、そこには無かった。



何かを決意したような、そんな固い表情。

78: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 22:54:26.25 ID:vJwqBb4D0



善子「ここが夢なら、もうすぐ私は夢から醒めるの?」



梨子「―――きっとね」




リリーは少し言葉に詰まったあと、頷いた。





梨子「よっちゃん、少し私とお話しよっか」




善子「急に改まって、なに?話くらいなら、いくらでも付き合うけど」


というか、



善子「これが私の夢の中なら、あなたは誰なの?」


善子「私の中のリリーってこと?」




梨子「ううん、多分私は私だよ」


ますます分からない。

79: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 23:01:22.97 ID:vJwqBb4D0


梨子「だって私は、今こうしていろんなことを考えて、感じているもの」



善子「私から見たら、そんなこと分からないわ」




梨子「そうかもね。でも、そうなの」




善子「ふーん。それで、話って何?」





得体の知れない焦りが、私の言葉尻を尖らせた。



話を聞きたいと思うけれど、同時に心のどこかが、聞いてはいけないと叫んでいる。

80: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 23:15:06.09 ID:vJwqBb4D0



梨子「どうしてよっちゃんは、あんな悪夢を見ていたんだと思う?」



善子「分からないわ。貴女は知っているの?」



梨子「知ってるよ。よっちゃんは知りたい?」



善子「わたしはっ………………」





知ってはいけない。でも、知らなければならない。



自分でも不思議なほど、意識とは関係ないところで思考が駆け巡る。

81: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 23:25:25.06 ID:vJwqBb4D0


善子「私は、きっと知らなきゃいけない」




梨子「うん。よっちゃんなら、そう言うと思ってたよ」



リリーはそう言って、今度は儚げな笑みを浮かべている。




梨子「……それじゃあ、これを話したら、お別れになっちゃうね」

82: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 23:56:52.48 ID:vJwqBb4D0


善子「――――――は?」



善子「ち、ちょっと待って、なんでそんなこと言うのよ」



善子「なんで?あの夢の話をするだけなんでしょ!?」



善子「なんでそうなるのよ!」




言ってることは支離滅裂なのに、頭に入ってきてしまう。


リリーは淡々と続けた。

83: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/05(木) 23:59:07.43 ID:vJwqBb4D0


梨子「それはきっと、お話を聞いたら分かるよ」



善子「だって今、貴方がお別れって言っ」




梨子「やっぱりよっちゃんは、とっても優しい子なんだよ」



善子「やめて」




梨子「あの夢はね」




善子「やめなさいッ!!!」




梨子「……」

84: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:06:00.34 ID:ChffUwC00



梨子「ひどいなぁ、よっちゃんが知りたいって言ったんだよ?」




善子「そっちこそ、どうしちゃったの?全然いつものリリーじゃない。」




梨子「……そうだね。私らしくない」




梨子「ごめん、あんな言い方しちゃって」




善子「……」


85: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:12:31.77 ID:ChffUwC00



善子「でも、今リリーが言ってること、嘘だなんて思いにくい」


リリーの嘘にしては上手すぎるもの。



善子「きっと、覚悟が必要なのは私の方」





私がしていた隠し事。



リリーにも、自分にも秘密にしていたこと。




そう思っていたけれど、きっとそれを、リリーは始めから知っていたんだ。



善子「こっちこそごめん。話してくれる?リリー」

86: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:17:25.90 ID:ChffUwC00


梨子「……やっぱり、よっちゃんだね」ニコッ



そう言って、リリーはやっと、いつもの笑顔で笑ってくれた。





梨子「あのね、よっちゃん」



善子「…………」ゴクリ




静寂が訪れ、そしてそれは、私にとって永遠にも思えた。

87: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:27:31.17 ID:ChffUwC00


リリーは一つ息を吐いて立ち上がった。

ゆっくりと私の元へ歩いてくる。




私はそれを、何も言わず見つめるしかなかった。


そして、リリーは私の目の前に立った。


88: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:31:49.93 ID:ChffUwC00



梨子「……やっぱり、お話はおしまい」



善子「ええ、そうね」








梨子「――――今までありがとう、ばいばい」



梨子「愛してるよ、よっちゃんっ」スッ









――――――リリーは私に、顔を近づけて……






唇が触れ合う。



とっても、優しいキスね。

89: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:32:39.13 ID:ChffUwC00







……………………そして、私は。




すべてを思いだした。

90: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:49:49.06 ID:ChffUwC00


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




夏の終わりのある日、リリーは、私を庇って死んだ。




二人で一緒にバスを待っている途中、運転手が発作を起こして歩道に突っ込んだのだ。



本当に、いっそ死んでしまいたいと思うほどの不幸体質。




でも、死んだのは一人、リリーだけだった。





私たちはバス停で、話すのに夢中になっていた。


私より先にバスの異常に気づいたリリーは、すぐ目の前に迫るそれを見て


もう二人で避けることは出来ないと察したのかもしれない。




私を突き飛ばして、間抜けな私が気づいたときには、リリーは道路の随分離れたところで倒れていた。

91: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 00:57:24.67 ID:ChffUwC00


駆け寄った時には、全てが遅かった





なけなしの意識で救急車と警察を呼び、

呆然と立ち尽くす。





リリーのお母さんが通報を聞いてすぐに駆けつけた。

耳を裂いたのは、悲痛な叫びだった。





無力な私は、目の前の出来事がどうか夢であるようにと祈ったけれど、



時間は無常にも、私達を置き去りにしていった。

92: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:00:29.12 ID:ChffUwC00


――――みんな泣いていた。



Aqoursはバラバラになった。


本選を目指していた輝きは、とうの昔のことのように感じた。



私は学校に行かなくなった。




お母さんは、何も言わず私の頭を撫でた。




私には、泣くことなんて出来なかった。




そんな権利、私にはきっとないと思ったから。









全部、私のせいだから。

93: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:07:16.28 ID:ChffUwC00




この世界はきっと、



一瞬の儚い白昼夢なんだ。



私がそれを自覚した瞬間に、

つまり、ただの空想だと気づいたときに




シャボン玉が割れるようにあっけなく消える




それだけの、夢。

94: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:14:40.43 ID:ChffUwC00



本選を目指してみんなで頑張るのも。


リリーのお母さんと仲良くなるのも。


リリーと一緒に遊んで、楽しく喋るのも。




私のわがままな望みの虚像。


後悔からの逃避、苦し紛れの懺悔だった。

95: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:16:23.75 ID:ChffUwC00



そして、ただ声を押し殺して泣いていた


あの時夢で見ていると思っていた私こそが、


夢なんかじゃない、




心の一番奥の、本物の私だったんだ。



96: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:25:15.15 ID:ChffUwC00


そして、リリーは私を信じていた。




私が、現実を受け止められること、


この夢を、終わりにできることを。




彼女は、それで本当に、もう二度と戻れなくなるというのに。




リリーはあのとき、どんな気持ちで笑っていたのかな。


97: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:32:08.26 ID:ChffUwC00




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





目の前に、もうリリーはいなかった。



どこを探しても、音楽室だと思っていたそれは、ただ闇が広がるばかり。





善子「ねぇっ……リリー」



善子「返事、しなさいよっ…………」グスッ





善子「消えないでよ!まだ私は」




善子「一番伝えたいこと、あなたに伝えられてないのにっ!!」ダッ

98: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:37:46.89 ID:ChffUwC00



闇の中を、ただがむしゃらに走る。




頭では分かっている、もう彼女はいないんだと。


それでも、体はいつの間にか動いていた。

99: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:51:40.61 ID:ChffUwC00

彼女の名前を叫びながら、私は必死に走った。



でもその声は、届くことなんてない。




「リリーーっ!!!―――うぐっ」ドゴッ



……走り続けていると、壁にぶち当たった。



どうやら不幸なのは徹底されてるみたい。

100: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:53:40.94 ID:ChffUwC00



私は考える。

善子(どうして、あなたに出会えたのかな)




きっとあなたと繋がってるって、信じていたから?


それが嘘じゃないって、そう信じていたかったけれど。



結局、幻は幻なのね。






あの日に戻りたいって、たった一つの願いも叶わないなら…………

101: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 01:56:41.10 ID:ChffUwC00



善子(自らの手で、終わりにしよう)

102: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 02:00:15.45 ID:ChffUwC00



そこにあったのは、黒い扉


きっとその向こうにあるのは、本物の運命






………………行かなくちゃ。



彼女の為に。

103: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 02:05:13.39 ID:ChffUwC00



……扉に手をかける。



一度だけ振り向いて、声の限り叫んだ。




善子「私も、リリーのこと!」




善子「――――大好きよっ!!!!」





扉を開けたとき、彼女の声が聞こえた気がした。



104: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 02:08:34.45 ID:ChffUwC00
おわりです!
最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!

今回初めてSSを書いてみて、想像以上に大変なんだと知りましたが、同時にとても楽しかったです。

絶対また書きます。そのときは、是非また読んでいただければ嬉しいです!

105: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/06(金) 02:11:34.63 ID:ChffUwC00
あと、敢えて答えを出さなかったところがいくつかあるので、よかったら自分なりの答えを考えてみてくださいね。

お気づきかと思いますが、タイトルやストーリーは、
「Daydream Warrior」をもとに考えました。

以上あとがきです。
ありがとうございました!