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シリーズ一覧
しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」
【メレメレ島編】【アーカラ島編】【ウラウラ島編】【エーテルパラダイス編】【ポニ島編】
【ウルトラスペース編 前編】【ウルトラスペース編 後編】【大大試練編】【エピローグ】



758: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:48:13.58 ID:CVZsSMq50
…… …… ……
【ポニ島編】
…… …… ……

ポニ島 海の民の村

しんのすけ「おー、お船ばっかりー」

グラジオ「ポニ島……暮らす人もほぼいない、自然豊かな島だ」

ロトム図鑑「裏を返せば田舎、ということだ」

グラジオ「しまキングを訪ねろ。しまキングでありながら、伝説のポケモンにまつわる祭壇の番人も兼ねるという。なにか聞けるといいがな」

リーリエ「にいさま……ありがとうございます! ただ……にいさまがヌルさんとエーテルパラダイスを出たあと、かあさま、大変だったのですよ! ビッケさんがいてくれなかったら……」

グラジオ「悪かったな……。大事な時にそばにいなくて。オレもヌルを守るので必死だったんだ……」

759: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:48:51.05 ID:CVZsSMq50
グラジオ「……しんのすけ」

しんのすけ「お?」

グラジオ「お前は子供だろうが、3つの大試練を乗り越えた1人のポケモントレーナーだ。島巡りとリーリエのサポート、両方やってみせろ」

しんのすけ「オラがサポート……。ま、リーリエちゃんはオラがいないとすぐ道に迷ったりしますから」

リーリエ「しんちゃん。もうわたし、困っていませんし、迷いません。やること、わかってますから! それに……おかしな話ですけれど、ドキドキもしています」

しんのすけ「フッ、やっとオラのみりんに気がつきましたか。リーリエちゃんも男というものがわかってきましたな」

リーリエ「そういう意味でドキドキしてるワケじゃないです。それにみりんじゃなくて魅力、です」

グラジオ「それじゃ、任せるぞ」テクテク

760: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:49:45.07 ID:CVZsSMq50
リーリエ「本当に船だけなんですね。村というより、船着場という感じがします」

しんのすけ「船酔いする人には相当きつい村だね」

リーリエ「船に住んでいる人たちは、平気でしょうけれども……」

???「よう来たな!」

リーリエ「ひゃあ!」ビクッ

しんのすけ「ひゅうひょう!」

リーリエ「ど、どなたでしょうか」

海の民 団長「わし? 海の民をまとめてる団長や!」

しんのすけ「あーキミキミ、次の日出れる?」

ロトム図鑑「ごめんなさい。その日用事があって……」

しんのすけ「困りますなー、商品の品出しできる人がいないじゃないかー」

団長「そりゃバイトをまとめる店長やろが!」

761: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:50:30.94 ID:CVZsSMq50
リーリエ「海の民……さん?」

団長「そや! 周りの船、船、船! なんやと思う。海の民は長年かけて世界の海を渡りゆき、不思議という不思議を求め! 珍しいものをみつけては、アローラで交換しとるんや」

しんのすけ「んー男のマロンがあっていいですな」

リーリエ「ロマン、です」

団長「他の島にある港は立派になったんで、なんとなくポニに来るんやな」

団長「で、キミらなにしに来たん? わしらみたいにきのみ集めか?」

リーリエ「はい! わたしたち、しまキングさんを訪ねるのです!!」

団長「しまキング? ハプウちゃんところかいな。まあ、ポニにある家は一軒だけやし、そこやろな!」

762: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:51:09.90 ID:CVZsSMq50
ロトム図鑑「島に家がひとつだけって……どんだけ田舎なのだ」

しんのすけ「おーハプウちゃんかー懐かしいですな。ここに住んでたのか」

団長「ああ、ハプウちゃんの家、ごっついバンバドロがおるから、一発でわかると思うで!」

リーリエ「団長さん、ありがとうございます!」ペコリ

リーリエ「しんちゃん、ハプウさんやバンバドロさんに会えるといいですね!」

しんのすけ「うん、でもオラ、ひとつ心配事が……」

リーリエ「なんですか?」

しんのすけ「ここにおねいさんがいるかどうか、そこがちょっと心配で……」

リーリエ「やっぱり……さ、行きましょう」

763: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:51:59.97 ID:CVZsSMq50
ポニの原野

しんのすけ「リーリエちゃーん、オラ疲れちゃったよー」

リーリエ「なーに言ってるんですか? 置いていきますよ、しんちゃん」

しんのすけ「それはそれでなんか心配。またリーリエちゃん迷っちゃうんじゃない?」

リーリエ「むっ……! しんちゃん、わたしはゼンリョクを出したんです。今までは、自分に何ができるのかわからなかったから、迷っていたんです」

リーリエ「ですけど、やりたいことは決まってますから、道にも、自分が決めた目標にも、もう二度と迷いません!」

しんのすけ「じゃあ、もしオラがいなくなったら?」

リーリエ「え……?」

764: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:53:02.98 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「オラがいなくなっても、リーリエちゃんはルザミーネおねいさんにハッキリ言いたいこと言える? 行きたいトコロとかもちゃんと行ける? 一人でもやってける?」

リーリエ「……」

リーリエ「やってみせます。その覚悟をしてゼンリョクを出したんですから!」

しんのすけ「ほうほう、じゃあリーリエちゃんに期待しますかー。リーリエちゃんが無事独り立ちしてニート生活から脱却できるかを!」ビシッ

リーリエ「なんか質問の意図が違ってきてませんか……?」

ガサガサッ

デカグース「ぬっしゃぁぁっ!」ドスンッ!

リーリエ「きゃっ! で、デカグースさんっ!」

しんのすけ「ゆけっ、リーリエちゃん!」

リーリエ「私はポケモンじゃありませんっ!」

しんのすけ「あ、そ。じゃ、ボーちゃんレッツラゴー!」ヒョイッ

ミミッキュ『ボ!』ポンッ

デカグース「しゃあああっ!」ガアッ!

ドンッ!

ミミッキュ『……ボ!』カクンッ

766: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:54:19.04 ID:CVZsSMq50
デカグース「しゃっ?」

リーリエ「わ……っミミッキュさんの首が……」

しんのすけ「ミミッキュじゃなくて、ボーちゃん。それにあれは首じゃないゾ」

ミミッキュ『ボー!』ジャキンッ!

ザクッ!

デカグース「しゃ、しゃーっ?!」

スタコラサッサ!

ミミッキュ『ボッ。去る者追わず……』フッ

しんのすけ「ボーちゃん、ごくろーさん」シュンッ

リーリエ「これが……ポケモンさん同士の戦いなんですね。何度も見てきましたが、改めてすごい迫力です」

リーリエ「トレーナーさんってすごいです。厳しい道だけでなく、ポケモンが傷つく姿も、ともに乗り越えて……」

しんのすけ「リーリエちゃん、トレーナーなる?」

リーリエ「そう……ですね。でも、まずはやらなきゃいけないことをやらないと!」

しんのすけ「よーし! じゃあ目指せ! トップアイドル!」

リーリエ「なりませんっ!」

767: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:55:29.55 ID:CVZsSMq50
ポニの古道

リーリエ「いつのまにか、お日様も傾き始めてますね……」

しんのすけ「オラもう疲れたー有名人に送る手紙はファンレター」クタクタ

リーリエ「もう少しでハプウさんの家ですよ。頑張ってください」

しんのすけ「てゆうか、この道であってんの?」

リーリエ「大丈夫ですよ。人が通ってきた道そのまま歩いているので。トレーナーさんもたくさん見かけたでしょう」

しんのすけ「へええ……歩きたくなーい」

リーリエ「さんざん島巡りでたくさん歩いてきたのにですか? ほら、ひょっとしたら、しんちゃんが好きなきれいなおねえさんだっているかも……」

しんのすけ「甘い甘い。こーゆーところにいるのは、たいがいオバちゃんばかりだから」

ドンッ

しんのすけ「……お?」

バンバドロ「ムヒイウン!」

768: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:56:50.11 ID:CVZsSMq50
リーリエ「バンバドロさん、おひさしぶりですね! お元気そうでなによりです」

しんのすけ「よ!」

ロトム図鑑「フン……」

バンバドロ「ムヒヒン!」

ハプウ「おや、しんのすけに……それにリーリエか?」

しんのすけ「ハプウちゃん! 背ぇすごい伸びたね」

ハプウ「わしはラーメンではないぞ。一日や二日でそうやすやすと背が伸びるか」

リーリエ「ハプウさん! お会いできて嬉しいです」

ハプウ「見違えたのう……。なんだか、ゼンリョクを感じる!」

リーリエ「はい! やるべきことがありまして。わたしの全力の姿です!」

ハプウ「おお! がんばるリーリエ、いわば、がんばリーリエじゃのう!」

リーリエ「はいっ!」グッ

しんのすけ「ほうほう。……ふんばリーリエ」ボソッ

リーリエ「なにか言いましたか?」チラッ

しんのすけ「なんも?」

769: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 10:59:50.97 ID:CVZsSMq50
リーリエ「あのう、ハプウさん。しまキングさんをご存知ですか?」

ハプウ「しまキング……? うーん、ポニにはおらぬのだ」

リーリエ「え……!? そんなことって……。どうしましょう、しんちゃん」

しんのすけ「じゃあ帰りますか」

リーリエ「そうもいかないですよ!」

ハプウ「ふむう……。今なら大丈夫かの。空の穴から出てきた、けったいじゃがかわいいポケモンの相手もしたしな」

リーリエ「それって……ウルトラビーストさんですか?」

ハプウ「ウルトラビースト? なるほど、あれはウルトラビーストというのかあ」

しんのすけ「ハプウちゃんの見たやつってこんなの?」ピコピコ

ロトム図鑑「ウツロイド、というぞ」

ハプウ「ふむう……。わしが見たビーストとやらはこんなものではなかったな。なにせ、写真すら撮っている暇がなくてな」

ハプウ「ま、ともかく、これから遺跡に行こうぞ! しんのすけたちもついてくるのだ!」

リーリエ「しんちゃん……。行くしかないですよね! ……って、トレーナーですものね。行くに決まってますよね!!」

しんのすけ「えー、また歩くのぉ?」

770: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:00:37.97 ID:CVZsSMq50
ハプウ「お前さんも1人のトレーナじゃ、もそっとしっかりせい」

ハプウ「このまま道をまっすぐ行くと、ポニの荒磯という場所にたどり着いてな、地面の色も濃くなっていく。そこを先に進んだところに、彼岸の遺跡があるのじゃ」

リーリエ「いろいろ教えてくださって、ありがとうございます!」

リーリエ「彼岸の遺跡……。ポニの守り神である、カプ・レヒレさんがいるところですね。では、参るとしましょう!」ギュッ

しんのすけ「あーん、手ェ繋がなくっていいってばァ」

ハプウ「ふむう、ウラウラのときと比べると、ずいぶん2人の距離が縮んだように見えるぞ。まるで姉弟じゃ」

しんのすけ「オラたち……ひとつのベッドの上で忘れられない夜を過ごした仲ですもの。それにしてもリーリエちゃんって、おしっとりな草食系女子かと思ったらガツガツ行く肉食系女子だったなんて……」

ハプウ「うん? 忘れられない夜? 肉食?」

リーリエ「な、なんでもないですっ! なんでも!」カアッ

しんのすけ「リーリエちゃんって、あんなことをする時もがんばリーリエですもの~////」

ハプウ「????」

リーリエ「誤解招くようなこと言うのやめてくださいっ!!」

771: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:01:12.42 ID:CVZsSMq50
彼岸の遺跡 入口

リーリエ「彼岸の遺跡……。どこか重々しい感じがいたします」

しんのすけ「かーちゃんの見た目……どう見ても重々しい感じがします」

リーリエ「ほしぐもちゃん……。遺跡の中に入れば、元気になるかも……!」

リーリエ「彼岸の遺跡の守り神、カプ・レヒレさんは、不思議な水でけがれを清めていたそうです」

しんのすけ「……ミネラルウォーター?」

ロトム図鑑(一儲けできそうだな……)

リーリエ「このコを元気にして、いい意味でしんちゃんを困らせますよ。ですから……待っててくださいね、ほしぐもちゃん! 今度こそ、わたしがあなたを助けるんですから!」

しんのすけ「やだーオラ困らされちゃうー」

リーリエ「ではしんちゃん、参るとしましょう!」

772: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:02:00.35 ID:CVZsSMq50
彼岸の遺跡内

リーリエ「道を切り拓くには、巨石を押すのですよね! 本で読みました!」

リーリエ「せーの……ううッ! ……ううッ!」ググッ

リーリエ「わたしにはムリみたいです。言葉にできないほど重くて……ライドギアで、ポケモンさんの怪力を借りないと……しんちゃん?」

しんのすけ「うんしょっと……なんか言った? 行くよー」

リーリエ「えっ? 巨石を登ったんですか? ちょ、ちょっと待ってください~!」

773: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:03:09.18 ID:CVZsSMq50
彼岸の遺跡 最奥

しんのすけ「どしたの? そんな疲れて」

リーリエ「し、しんちゃんみたいに、石を登ってきたんです……!」ハァハァ

キテルグマ(ボール)『女の子に無茶させちゃダメよ。岩を押し出すことぐらい、ネネだって出来るんだから』

ヨワシ(ボール)『ネネちゃんがかいりきをするってすごいピッタリだね』

キテルグマ(ボール)『どーゆー意味よ! えぇ?』

ヨワシ(ボール)『ひいい〜っ! 褒めてるだけだよぉ〜っ!』

リーリエ「アローラの遺跡……。これも本で読んだのですが、守り神ポケモンさんは。いつも好きな場所にいて、まず会えないのです。ただ、遺跡で呼びかければ姿をみせることもあるそうです」

リーリエ「……もっとも気まぐれなので、あてにならないとも書かれていました。だからでしょうか……遺跡に入っても、ほしぐもちゃん変わりませんね……」

ほしぐもちゃん「…………」

しんのすけ「こうなったらもう一回ケツだけ星人を見せて……」

リーリエ「ここでそれするのはやめましょう……」

774: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:04:24.14 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「てゆうかハプウちゃんどこー?」

リーリエ「あ、あの祭壇に……」

祭壇にいるハプウは、穏やかに光が満ち溢れる中、かがやく石を両手に乗せていた。

ハプウ「確かに授かりました。ありがとうございます。しまクイーンとして、ポケモンのため、人のため、がんばります」ニコッ

しんのすけ「ハプウちゃん、なんかフインキ違う」

ハプウ「……おお、見ておったか」テクテク

ハプウ「しまキングやしまクイーンは、守り神が鎮守する島で暮らす者から選ばれるのだ。リーリエから聞いたが、しんのすけは遠いところからアローラに来たばかりであろう?」

しんのすけ「主にとーちゃんの甲斐性のせいだけどね」

ハプウ「なのに、かがやく石を授かるのは特別なことなのじゃ! カプはどういうお考えでそなたを選んだのか、興味があるのう」

しんのすけ「ま、オラほどの美少年なら選ばれて当然だゾ」

ハプウ「よく言うわ、こやつ」

775: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:05:21.72 ID:CVZsSMq50
ハプウ「……わらわのじいさまも選ばれていたのだが、数年前ぽっくりいってな。しまキングはいないままだった。で、受け継ごうとしたが選ばれず、島巡りのように各地を周り鍛えなおしてな」

ハプウ「リーリエ、そなたが探していたしまクィーンは、ここにおるぞ」

リーリエ「は、はい! しまクイーンさん!」

しんのすけ「ほうほう、ハプウちゃんがしまクィーンだったのか」

ロトム図鑑「何故こんな小汚いロリババアをカプ・レヒレは選んだのか」

ふ    み

つ    け

ロトム図鑑「」ピクピク

バンバドロ「ムヒヒウン!」

ハプウ「次ロリババアと言ったらスクラップにして売りつけてやるからの」

しんのすけ「もうなってるよ」

リーリエ「えっと……伝説のポケモンさんについて教えていただければ!」

ハプウ「……月輪(がちりん)の祭壇に祀られているという、ルナアーラのことか」

しんのすけ「ガチ○コ祭りのアラモード?」

ハプウ「月輪の祭壇のルナアーラ、じゃ!」

776: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:08:42.93 ID:CVZsSMq50
リーリエ「母がビーストさんの世界に……別の世界に消えて……。ひどい人とはいえ、親ですので会いに行き、言いたいことを言うのです」

リーリエ「そのために、伝説ポケモンさんの力を借りたいのです……。見知らぬ世界を行き来する、伝説ポケモンさんの力を!」

ハプウ「ビーストの世界なあ……。さっきしんのすけとロトム図鑑が見せた未知のポケモンが住む世界か。カプ・レヒレと供に相手したが、くたびれたな。うむ! 知っていることを教えようぞ」

リーリエ「ハプウさん!」

しんのすけ「君の瞳に乾杯」

ハプウ「というてもな……祭壇で行う儀式とは、伝説のポケモンのため、2本の笛で音色を奏で、力を与えるだけだぞ」

リーリエ「太陽の笛です。母が持っていたようで……」つ太陽の笛

ハプウ「おお! ウラウラの湖にある笛じゃな。もう1本は、ナッシー・アイランドにある。なぜだか、そこに置いておくよう伝わっておるのだ」

しんのすけ「ナッシー・アイランド?」

ロトム図鑑「な、ナッシーたちの住む……無人島だ。ポニの島から離れたところにある……」バチバチ

ハプウ「よし! 善は急げじゃ。団長に会うぞ! 海の民の村に行くのだ! リーリエはバンバドロでな」

777: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:09:46.76 ID:CVZsSMq50
リーリエ「わたしは大丈夫です。それより、しんちゃんを乗せてあげてください。ここまで来て、きっと疲れてますから」

ハプウ「ほう」

しんのすけ「……お、オラまだ平気だもん。さ、いこいこー!」

ハプウ「これっ、年上の言うことを無碍にするものではないわ。あまり無茶して足を痛めたら、せっかくの島巡りも出来んじゃろ」

リーリエ「そうです。これはしんちゃんにとって大事な島巡りの旅でもあるんですから」

しんのすけ「もう、さっきは歩けとか言ってたくせに!」

ハプウ「リーリエ、お前も乗っていけ。なに、わしが歩いてバンバドロを率いれば良い話だしな。……向こうに着くのは、夕方になるじゃろうが」

リーリエ「じゃあ、一緒に乗りましょう、しんちゃん」

しんのすけ「えぇ~いいってば! オラどうせご一緒するならエリートトレーナーのおねいさんがいいもん」

ハプウ「ウラウラにいた時うっすらと気づいたが、5歳児のくせに色気付いておるのか、こやつ」

778: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:11:00.55 ID:CVZsSMq50
リーリエ「もう慣れました。さ、乗りましょう、しんちゃん。ハプウさんの厚意を無駄にしちゃいけません」グイッ

しんのすけ「ぶつぶつ……」

ハプウ「仲睦まじいのう。よきかな、よきかな」

リーリエ「今まで散々振り回されたんです。わたしが『お姉さん』として、しんちゃんを引っ張っていかないと」

ハプウ「そうか。それじゃ、改めて行くとするかの。海の民の村へ!」

リーリエ「はい!」

しんのすけ「ほーい……」

779: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:12:15.66 ID:CVZsSMq50
ポニの原野

リーリエ「そういえば、畑があるということは……ハプウさんは農家なんですか?」

ハプウ「ああ、いつもはばあさまとポケモンと供に畑仕事をしておる」

しんのすけ「オラのじーちゃんも農家だよ。野菜採るの手伝ったこともあるし」

ハプウ「ほぉ、そうか。なら今度、機会があればしんのすけにも手伝いをしてもらうとするかの。わしとばあさましかおらんから、男手が足りんのだ。……いっそ将来、わしの婿にして家を継がせるというのも悪くないかのう」

しんのすけ「え゛ーっ!」

リーリエ「え? ほ、本気なんですか?」

ハプウ「わしがしまクイーンになったんじゃ、決して周りからの扱いは悪くないと思うぞ」ニヤッ

しんのすけ「お、オラ、都会暮らしのほうが性にあってるんで、結構です」

ハプウ「ま、冗談はさておきじゃ……。リーリエ、お主らが行こうとしている月輪の祭壇は、ポニの大峡谷を通り抜けた先にある」

しんのすけ(ほっ)

リーリエ「はい」

ハプウ「ケンタロスで行けばあっという間じゃろうが、しんのすけはライドギアを持っておらん。だから、ナッシー・アイランドで笛を取って、歩きで行くとなると、着いた頃には朝日を拝んでいることだろう」

780: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:12:44.68 ID:CVZsSMq50
ハプウ「だから笛を取ったあと、今日は海の民の村のポケモンセンターで泊まって、身体を休めると良い。明日の昼、大峡谷の入口で待ち合わせるとするかの」

リーリエ「何から何まで……ありがとうございます」

ハプウ「気にするな。それに、しまクイーンとしてしんのすけにやらねばならぬことがあるからな」

しんのすけ「まかさっ、オラをてごめにするのっ?!」

ハプウ「おぬしに大試練をするんじゃろうが!」

リーリエ「でも、この島にはキャプテンがいるはずですよね? 試練はこなさないんですか?」

ハプウ「あぁ、あることにはあるが……。なにせ、キャプテンは1人、しかも旅して行方知らずでの。一応、大峡谷にドラゴンの試練の場があるんじゃが、そちらはキャプテンが不在なので、ほとんど機能しておらんのだ。ぬしポケモンはいるのじゃが」

リーリエ「そうなんですか……」

しんのすけ「なぁんだ、楽チンじゃん」

ロトム図鑑「ふっ、キャプテンもいない島など、カレールーのないカレーも同然だ」

ハプウ「ほう、子供とは言え舐められたものじゃ。その余裕が大試練後まで持つかどうか、楽しみじゃな。わしをただの田舎娘と甘く見たら、痛い目を見ることになるぞ」

しんのすけ「オラだって、舐めたって甘くはないゾ!」

ハプウ「そりゃそうじゃろ。面白いヤツじゃ、お前は」

781: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:13:55.56 ID:CVZsSMq50
海の民の村

ハプウ「……とりあえず、団長とは話をつけておいた。準備が出来次第、話しかけると良い」

リーリエ「ハプウさんもバンバドロさんも、ありがとうございます……!」

ハプウ「友達のためじゃ!」

リーリエ「ハプウさんがお友達……。憧れのトレーナーでもあるハプウさんが……」

リーリエ「はい! わたし、なにがあってもあきらめません!」

ハプウ「しんのすけの面倒もあって大変だろうが、無事を祈っておるぞ」

しんのすけ「ふんだ、クジラくんもハプウちゃんも、みんなリーリエちゃんのことばっかり。オラもうグレちゃうぞ」

ハプウ「しょうがないじゃろ。いくら3つ大試練を勝ち抜いたとは言え、お前はまだ子供だからの。それに、リーリエはトレーナーではないしな」

しんのすけ「でも、ここに来る前はオラがリーリエちゃんの面倒みてたんだから」

ハプウ「見ていたのではなくて、見られてたのではないか?」

しんのすけ「ホントだもん。方向音痴で、スケスケおパンツ団に絡まれたり、その度にオラがお助けしてるんだから。まったく、世話のかかる『妹』を持つと苦労するよね」

782: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:15:08.00 ID:CVZsSMq50
ハプウ「……そうか。次に相まみえる時は大試練じゃ。お前のゼンリョク、見せてもらうぞ」

しんのすけ「ほいっ、見せられちゃいます!」

バンバドロ「ムヒイウン!」

テクテク

団長「ハプウちゃん、しまクイーンになったんか。よかったなあ」

リーリエ「ひゃっ! びっくりしました」

しんのすけ「本日二回目ー」

団長「ははっ、すまんすまん。だが、ハプウのじいさんも喜んでるやろ」

リーリエ「そうですね……! ハプウさん、亡くなったおじいさんのために……。わたしも、かあさまのため、ほしぐもちゃんのため、がんばらないと!」

リーリエ「そっ、それでですね、行きたいところがあるのです」

しんのすけ「タマムシジムです」

リーリエ「ナッシー・アイランドです!」

団長「ナッシー・アイランド! ハプウちゃんから話は聞いておるで! 笛のあるところやろ?」

団長「まあ、お二人はしまクイーンに会えても、ポニのキャプテンはおらんし、島巡りの試練もできんわな。よっしゃ! コイキング丸で、のんびり行こうやないか!」

784: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:39:00.69 ID:CVZsSMq50
【おまけ】

ミミッキュ『うーん……ここらへんの石は、あまりいいのがない』

しんのすけ「ねぇねぇボーちゃん」

ミミッキュ『ボ、どうしたの?』

しんのすけ「ボーちゃんって、なんでピカチュウの布被ってるの? 健康ランドで刺青見られたくないから?」

ミミッキュ『違うよ。紫外線対策。僕たちミミッキュは、陽の光に弱いから』

しんのすけ「日焼けしやすいの?」

ミミッキュ『そうじゃない。陽の光を浴びちゃうと、体調が悪くなるの』

しんのすけ「ほうほう。オラ、ボーちゃんの中身、見てみたいなー?」

ミミッキュ『それはダメ。僕のプライバシーに関わるから』

しんのすけ「いいじゃんいいじゃん~オラたち、一度全部脱いでみんなあらわにするべきだと思うもの~」ワキワキ

ミミッキュ『ボ……! しんちゃんダメっ!』

しんのすけ「そーれっ」

バサッ!

しんのすけ「……!」

785: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 11:39:34.22 ID:CVZsSMq50
ボーちゃんの正体……布の中にあったのは、たくさんの石で固められた生き物だった。

しんのすけ「おわーっ! ボーちゃんのカラダって、石で出来てたのか!」

ミミッキュ?『……バレちゃったら、仕方ない』

ミミッキュ?『そう、僕はゴースト・フェアリーにみせたいわタイプだったの。それを隠すため、布を被ってた』

しんのすけ「ふーん、だから石好きなのかー」

ミミッキュ?『そうそう。石が僕の体だから、石集めは大事なんだ』

しんのすけ「ほうほう、若いのに苦労してますなぁ」



ガサガサ

ミミッキュ(ごめんね、それ予備の布で作った身代わりをサイコキネシスと腹話術で操ってるだけなんだ)

ミミッキュ(僕の本当の姿見せちゃうと、しんちゃんびっくりして死んじゃうかも知れないから……)

787: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:22:41.64 ID:CVZsSMq50
ナッシー・アイランド

団長「はあ……ようやく到着。ナッシー・アイランドやで! なんでもむかしは、ここが試練の場所やったらしいな。ほな、がんばりよし!」

しんのすけ「いってらっしゃーい」フリフリ

リーリエ「しんちゃんも来るんですっ」ガシッ

しんのすけ「いやん、リーリエちゃん、ゴーインなんだからぁ」

リーリエ「笛を求めて……ですね! ポケモンさんがいれば、どこにでも行くトレーナーさんの気持ち……少し、わかってきたようです」

テクテク

リーリエ「しんちゃん」

しんのすけ「お?」

リーリエ「ポケモンさんと供に、未来への扉を開けるのが。わたしのトレーナーのイメージです。しんちゃんも、ハウさんも、ハプウさんもそうですもんね!」

しんのすけ「いや、オラは別に……」

ジュナイパー(ボール)『そこは「うん」って言うもんだろ!』

リーリエ「じゃあ、しんちゃんにとって、トレーナーってなんですか?」

しんのすけ「オラ、トレーナーって言われてもさっぱりだし……」

788: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:23:48.16 ID:CVZsSMq50
リーリエ「あ……」

リーリエ(……そうでした。しんちゃんは、カプ・コケコさんに選ばれてポケモントレーナーになったのでしたね。しんちゃんには、まだトレーナーと言われても、分からないかもしれません)

しんのすけ「でもオラ、カザマくんたちと旅してて、とっても楽しいゾ。カスカベにいるみんながそこにいる気がするし。パラダイスでも、カザマくんたちとスケスケおパンツ団と戦った時も、ドキがムネムネしたし」

しんのすけ「オラ、島巡りしてよかった。カザマくんたちと一緒に旅したり、一緒に戦ったりできるのが楽しいもん。カザマくんたちは、アローラで出来たオラのお友達だよ」

ジュナイパー(ボール)『しんのすけ……』

リーリエ「……それがしんちゃんにとっての、トレーナーさんなんですね」ニコッ

ガサガサッ!

しんのすけ&リーリエ「!」

ユサユサッ!
ズボッ

アローラナッシー「ナッシー!」

リーリエ「ひゃあ! し、しんちゃん!」

しんのすけ「おー、首なげー」

リーリエ「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないですって!」

789: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:24:27.85 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「へいへい、よーし、オラが相手だ!」ボクシンググローブソウビッ

ヨワシ(ボール)『しんちゃんが直接戦ってどうすんの……』

ナッシー『ナッシー!』

ドスン、ドスン、ドスン

リーリエ「……行っちゃいました」

しんのすけ「ふふん、オラにビビって逃げましたな」

キテルグマ(ボール)『たぶん、違うと思う』

リーリエ「ふう……ナッシーさんだったんですね。アローラの天候がいいからって、育ちすぎで驚きました!」ポカン

リーリエ「……クスッ! フフフッ!」

しんのすけ「急にどうしたの? 拾い食いでもした?」

ポツッ ポツッ
サーッ

しんのすけ&リーリエ「!」

リーリエ「えっ、雨ですね……あそこに洞穴があるので雨宿りしましょう」

しんのすけ「ほい」

790: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:27:38.37 ID:CVZsSMq50
リーリエ「アローラの雨……スカート、少し濡れました……」

しんのすけ「あーあ、おとなのおねいさんがいればなぁ」

リーリエ「悪かったですね……」

リーリエ「……しんちゃん。わたし、雨を見ると思いだすことがあるのです」

しんのすけ「伝説の探検家ジンダイ隊長を予約し忘れたとか?」

リーリエ「違います」

リーリエ「わたしがしんちゃんと同じくらいだったころ……映画の真似をして、雨の中で歌い踊っていたら、驚いたかあさまが傘もささずに飛びだしてきて……そしたらかあさま、笑顔で……いっしょに歌ってくれたのです……」

リーリエ「もちろん、ふたり風邪をひき……一緒に寝ることになったのに、わたし嬉しくて、何度も何度も、かあさま、起こしちゃって……」

リーリエ「なのに……かあさま、ウルトラビーストのことだけ考えるようになって……ヌルさんや、ほしぐもちゃんを……」

リーリエ「本当のことを言うと……まだ、かあさまが怖いです。あんなに変わってしまって、エーテルパラダイスでも……。ゼンリョクを出した今でも思い出すと……辛くて、悲しいです」

しんのすけ「…………」

791: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:29:09.66 ID:CVZsSMq50
リーリエ「それでも、わたしは昔の優しかったかあさまの事を信じたいんです。まだかあさまの心の中に、優しかった頃のかあさまがいるような……そんな気がするのです」

リーリエ「……でも、何をすればいいのかわからなくて、ほんとに困ってしまって」

リーリエ「……そういえば、わたしが困っていると、いつもしんちゃんがいましたね。最初の出会いも、ほしぐもちゃんが襲われていたのに、わたし、みているだけでした……エーテルパラダイスでも、わたし……しんちゃんやみなさんを待っているだけでしたし」

リーリエ「あの夜も……一緒にいてくれて、ありがとうございます。一人じゃ辛くて、立ち直れない気がして……」

しんのすけ「まぁ、リーリエちゃんはオラがいないと何も出来ませんから」

リーリエ「ふふっ、そうですね」

リーリエ「……ごめんなさい」

しんのすけ「何が?」

リーリエ「本当は、わたしがしんちゃんのことを見てあげなきゃいけないのに……わたし、逆に面倒を見られている感じがして。それに、わたしたち家族の問題にも巻き込んでしまって……」

しんのすけ「こーゆー問題はもう慣れっこだからへーき」

リーリエ「……しんちゃんってすごいですよね。まだ5歳なのに島巡りして、スカル団やエーテル財団にも立ち向かって……。時々、しんちゃんがわたしよりずっと年上の人のように見える時があります」

しんのすけ「……」

792: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:30:12.32 ID:CVZsSMq50
リーリエ「しんちゃん?」

しんのすけ「……リーリエちゃんさー、オラのことすごいって言うけど、オラそんなにすごくないよ?」

リーリエ「えっ?」

しんのすけ「だってオラ、アクション仮面とか、カンタムロボとか、それからおまたのおじさんのように強くなってないし」

リーリエ「お、おまたのおじさん?」キョトン

しんのすけ「そ、オラおじさんみたいに、とーちゃんもかーちゃんも、ひまもシロも、カスカベ防衛隊のみんなも、カザマくんたちも、ハウくんも博士も、リーリエちゃんもみんな、大切な人をお守りできるような強い男になりたいんだー」

リーリエ「なら、しんちゃんもわたしと同じなんですね。しんちゃんがその、おまたのおじさんに憧れたように、わたしもそんなしんちゃんに憧れてるんです」

しんのすけ「……褒められたって、ちっとも嬉しくないもん」プイッ

リーリエ(案外、素直じゃないところもあるんですね……)クスッ

793: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:31:30.12 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「これ食べる?」スッ

リーリエ「それは……お菓子ですか?」

しんのすけ「チョコビ。カスカベ名物のおやつだけど、アローラ地方じゃ売ってなかったから、とっておいたの」

リーリエ「ふふっ、じゃあいただきます」パクッ

リーリエ(しけっちゃってますね……)

しんのすけ「チョコビ代十億万円ね。ローンも可」

リーリエ「ええっ?!」

ポリポリサクサク

リーリエ「えっと……しんちゃん」

しんのすけ「なーにー?」ポリポリサクサク

リーリエ「島巡りを終えたら……どうなさるんですか?」

しんのすけ「んー……オラ、やりたいことがあるの」

リーリエ「やりたいことが決まってるなんて、すごいですね。どんなことなんですか?」

794: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:33:36.00 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「とにかくダラダラしてーおじいさんになってー」

リーリエ「それって決まってないようなものじゃないですか!」

しんのすけ「失敬な。これがオラのやりたいことなんだけど」

リーリエ「はぁ、よかった……さすがにしんちゃんでも決められないこと、あるんですね」

リーリエ「わたしはトレーナーになって、しんちゃんがどんな大人になっていくのか、そばで見守りたいな……。それで、どこか遠い地方をわたしとしんちゃんで旅して、色んな人やポケモンさんと出会ってたくさん冒険、したいです」

しんのすけ「えぇ……。リーリエちゃんと一緒? なんだかなぁ、疲れちゃいそう」

リーリエ「だって、しんちゃんはほっとくと、すぐナンパしたり人前でおしり出したりするんですから、わたしがキチンと見張っておかないと」

しんのすけ「方向音痴でブティックに寄り道する人に言われたくないけどね」

リーリエ「もうっ、しんちゃんしつこいですっ! それに、おしりを出すよりマシです!」ムスッ

しんのすけ「ま、トレーナーになるなら、オラのしゅぎょーはとても厳しいからね。でもリーリエちゃんにやる気があるなら、一から目取り口取り教えたげる」

リーリエ「それを言うなら、手取り足取りですよ」

しんのすけ「そーとも言うー」

795: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:34:35.42 ID:CVZsSMq50
リーリエ「……ふふっ。……しんちゃん」

ナデナデ

しんのすけ「……? どしたの?」

リーリエ「ずっと、わたしを守ってくれてありがとうね。今度はわたしが、ゼンリョクであなたを守ってみせますから。しんちゃんが、わたしを守ってくれたように」

しんのすけ「うむ、がんばリーリエたまえー」

リーリエ「無理やり言わなくていいですよ」

☆彡 ☆彡

リーリエ「あっ」

しんのすけ「おっ、流れ星!」

リーリエ「なにかいいことありそう……っというか、ありますよね!」

しんのすけ(島巡りチャンピオンになって、おねいさんたちに「しんちゃん素敵~」って言われますように)

リーリエ「さ、雨も上がりましたから……探しに行きましょう!」

しんのすけ「ほーい」

★挿入歌 月灯りふんわり落ちてくる夜★

796: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:35:39.29 ID:CVZsSMq50
リーリエは洞穴から出ると、しんのすけの手を引きながらナッシー・アイランドを走り出した。
リーリエはこれから起きるワクワクとドキドキを胸に秘めて笑顔を浮かべながら、しんのすけは女子大生のおねいさんだったら最高のシチュエーションなのに……まあいいや、と、ちょっと微妙そうな表情で。
月の笛を探し求めるそんな2人を、満月とダイヤモンドを散りばめたような星空は優しく見守っていた。

リーリエ「しんちゃん!」

しんのすけ「なにー?」

リーリエのそばに古びた台座が。その台座の上に、月光を浴びて輝く青い笛が飾られていた。

リーリエ「これが月の笛みたいですよ」

しんのすけ「オラが持つ~! オラが持つ~!」ピョンピョン

リーリエ「はいはい」

797: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:36:15.79 ID:CVZsSMq50
ロトム図鑑「ふむ……オークションにかければ、20万は行くかな」

リーリエ「そんなことしたらロトム図鑑さん、わたし怒りますから」

しんのすけ「おおっ、げきおこリーリエ……」

ロトム図鑑「ざぶとん一枚やろう」

しんのすけ「イェーイ!」

リーリエ「上手くないです……。とにかく、太陽と月、二本の笛が揃いましたね! 伝説のポケモンさんが現れるかわかりませんが、少なくとも音色を捧げられます!」

しんのすけ「リーリエちゃん、笛吹けるの? オラ吹けないから教えて」

リーリエ「え……」ピタッ

しんのすけ「…………」

リーリエ「…………」

リーリエ「で、では、団長さんといっしょに戻りましょう!」テクテク

ロトム図鑑「ごまかしたな」

しんのすけ「ごまかしたね」

798: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:36:50.46 ID:CVZsSMq50
コイキング丸

団長「やったなあ! 島巡りの人!! 祭壇で笛を吹くんやろ?」

リーリエ「はい!」

しんのすけ「笛の吹き方分からずじまいですけどね! えっへん」

ロトム図鑑「まいったか!」

リーリエ「威張らないでください」

団長「祭壇があるんは、ポニの大峡谷の奥の奥。ほんま自然の試練やで……」

リーリエ「はい、今日は身体を休めて、明日にも早く出発しようと思います!」

団長「ほな、がんばり!」

799: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 16:59:43.94 ID:CVZsSMq50
翌日 ポニの古道

しんのすけ「Zzz」

しんのすけ「……お?」

リーリエ「あ……やっと起きたんですね」

しんのすけ「ここはどこ? オラってミクリだっけ?」

リーリエ「野原しんのすけ、です」

リーリエ「ポケモンセンターで起こしてもまったく起きないんですから、おんぶしてここまで連れてきたんです」

しんのすけ「おお、それはそれはごくろーさんでした。じゃもっかいおんぶしておんぶ」ダキッ

リーリエ「わっ、ダメですっ! ちゃんとしんちゃんも歩いてくださいっ」

しんのすけ「いいじゃん、おねえちゃんおんぶ~」ユサユサ

しんのすけ「……!」ピタッ

リーリエ「……? どうかなさったんですか?」

800: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:01:08.55 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「あれあれ」ユビサシッ

スカル団たち「…………」

リーリエ「……スカル団のみなさん!」

しんのすけ「なんでみんな横一列に並んで野グソしようとしてんの?」

全員「」ズルッ

したっぱA「そういう意味でしゃがんでるわけじゃねーよ!」

ドラコ「会いたかったぜ、じゃがいも小僧」

しんのすけ「よ! 師匠!」

リーリエ「師匠?」

しんのすけ「そう、スケスケおパンツ団のこの人、オラのお笑いの師匠なの」

ドラコ「笑わせまっせー見せまっせー! えんやこらしょー!」ペケペケペン♪

ドラコ「って、師匠じゃねぇよ! あたいらは――」

801: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:05:04.34 ID:CVZsSMq50
ドラコ「いじっぱりのドラコ!」カーン!

おキン「れいせいのおキン!」カーン!

マミ「ひかえめのマミ!」カーン!

3人「三人合わせて、『スカル団黒ガバイト隊』!」バァーーーン!!!

リーリエ「」ポカン

したっぱB「ヨヨヨー、そんなことするためにここにいるんスカ?」

ドラコ「あ、そうだな」

おキン「おい、あんたら、エーテルで聞いたけどよ、グズマさんを助ける方法、知ってるんだってな」

しんのすけ「くさやのおじさんのこと?」

マミ「てゆうか、必ず聞き出してやるから!」

ドラコ「お前ら手ェ出すんじゃねぇ。ここはあたいが行く!」スッ

リーリエ「しんちゃん……」

しんのすけ「仕方ないなぁ」スッ

スカル団のしたっぱの ドラコが
勝負を しかけてきた!

802: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:08:37.70 ID:CVZsSMq50
ドラコ「行きな! フカマルッ!」ヒョイッ

フカマル「ガァーッ」ポンッ!

しんのすけ「カザマくん、レッツラゴー!」ヒョイッ

ジュナイパー『こっちは早く大試練をこなしたいんだ。さっさと決着をつけよう!』ポンッ

ドラコ「フカマル! ドラゴンクローだ!」

フカマル「ガウッ!」ダッ

ジュナイパー『かげぬい!』ググッ……ドシュッ!

フカマル「ガウッ!」サッ!

フカマル「ガウーッ!」ブンッ!

ジュナイパー『うわっと!』ザクッ!

803: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:09:43.33 ID:CVZsSMq50
おキン「おおっ! さすがリーダー!」

マミ「攻撃を避けて、あのじゃがいも小僧のポケモンにダメージを与えたぞ!」

しんのすけ「カザマくん、しっかりして」

ジュナイパー『わかってる!』ダッ

ジュナイパー『お返しだ! リーフブレード!』ブンッ!

フカマル「ガウッ!?」ザクッ!

ジュナイパー『そしてもう一度、かげぬいっ!』ドシュッ!

フカマル「ギャウウーッ!!」ドゴォォッ!

フカマル「ギャ、ウウ……」

ドラコ「フカマルッ! くそーっ!」

しんのすけ「師匠たち、やっぱスケスケおパンツ団より、お笑いの方が向いてるって」

ドラコ「だから師匠ってゆーな!」

おキン「こうなったらアタシら全員で……!」

ザッ

プルメリ「よしな! 負け犬がみっともない!」

804: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:10:33.20 ID:CVZsSMq50
ドラコ「あ、姉御!」

リーリエ「プルメリさん……」

プルメリ「だから言っただろ。お前らじゃこの子には勝てないって。あんたたちは下がってな。あたいはこの二人と話があるから」

ドラコ「へ、へい……」ズコズコ

しんのすけ「師匠ーまたあおーねー!」フリフリ

ドラコ「師匠って言うなっつってんだろーが!!」

プルメリ「ん、リーリエ、あんた……覚悟決めたのかい」

リーリエ「はい!」

プルメリ「つーかさ、あんたには悪いことしたよね。代表に頼まれた仕事とはいえ、あんなことを……今更謝っても、許されることじゃないけど」

ロトム図鑑「まったく……深く反省して欲しいものだ」

プルメリ「ああ……って、お前に上から目線で言われたかないよ!」

805: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:11:46.60 ID:CVZsSMq50
プルメリ「……グズマはさ」クルッ

プルメリ「代表が好きなのさ。あいつの強さを認めてくれる、唯一の大人だからさ。あいつ、今まで代表以外の誰にも、力を認めてくれなかったんだよ。自分の師匠にもね」

しんのすけ「なにやら複雑な恋愛模様ですな」

ロトム図鑑「子供もいるというのに」

リーリエ「話がややこしくなるので黙っててください」

プルメリ「……スカル団にいる奴らみんなそうなんだ。グズマのように、誰にも認められず、島巡りを脱落していった子たちばっかなんだよ。」

しんのすけ「プルメリのおねいさんもそうなの?」

プルメリ「そうだよ。だからスカル団のみんなは、人々に認められない辛さっていうものを分かっているのさ。特にグズマは痛いほどにね。だからみんな慕っているのさ。グズマが代表を慕っているように」


806: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:12:44.81 ID:CVZsSMq50
リーリエ「あの人は……かあさまはわがままです。自分が好きなものだけを自分勝手に愛でて……。でも、助けます! 言いたいこと、言うために!」

リーリエ「そうしたらグズマさんも、いっしょに助けられますよね!」

プルメリ「あんた……芯の部分は、代表に似ているかもね。種類は違うけれど、気持ちの強さを感じるよ」

しんのすけ「てゆうか、オラたちと一緒にくさやのおじさんをお助けに行こうよ」

プルメリ「そうしたいのは山々だけどね。今のあたいたちじゃ、はっきり言って力不足だよ。アンタの足を引っ張りかねない」

しんのすけ「みんなでお助けに行けばだいじょーぶだって!」

プルメリ「……優しいんだね、あんたは。だけど……あたいらも戦ったのさ、ビーストと」

リーリエ「えっ……?」

プルメリ「とてつもなく大きなビーストだったけどね、みんな一斉に挑んだけど、あっという間に消し炭さ。自分たちの無力さを思い知らされたよ」

プルメリ「だというのにあいつら、グズマを助け出すって聞く耳持たなくってね」

プルメリ「だからグズマのこと……頼めた義理じゃないけれど。どこかに消えたままでは償わせることもできやしない」

807: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:17:01.25 ID:CVZsSMq50
リーリエ「はい、グズマさんも、かあさまも、必ず取り戻します!」

しんのすけ「負けちゃったら、強くなればいいのに。おねいさんたちにとって、大事な人なんでしょ?」

プルメリ「……現実はそう簡単に行かないんだよ、しんのすけ。負けて強くなるで済めばあたいらはスカル団なんてやってないよ。アンタもいつかそれが分かる時がくる」

プルメリ「でも、しんのすけ。あんた、全然ふつーのコじゃなかったね。スカル団だけでなく、エーテル財団の闇にも物怖じせず立ち向かってさ。まだ5歳なのに、大したもんだよ」

しんのすけ「照れますな」

プルメリ「ほら、お姫様を守ってやんな。迷惑かけたお詫びとして、どくタイプのZクリスタルをやるからさ」つドクZ

しんのすけ「ありがとござますぅ」

リーリエ「プルメリさん、今度はわたしがしんちゃんを守るのです!」

プルメリ「……そうだね。ふつーのコじゃないって言ったってしんのすけはまだ小さいからね。でも無茶しちゃいけないよ」

プルメリ「そういやしんのすけ、カプ・コケコから直々に石をもらったんだって? 大事にしなよ、そのZリング。ポケモンがいて、はじめてポケモントレーナーなんだ」

プルメリ「それを忘れたらカプの罰を……あんたなら安心だけどさ」

リーリエ「……プルメリさん」

808: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:17:42.65 ID:CVZsSMq50
プルメリ「……帰るよ」

テクテク

しんのすけ「お土産買って来ねー」フリフリ

リーリエ「カザマさん、元気にしますね」

ジュナイパー『あっ、どうも……』

リーリエ「……スカル団にも、いろいろあるのですね」

ロトム図鑑「火サス一本作れそうな関係だったな」

リーリエ「あなたはそれしか思いつかないんですか……」

しんのすけ「さ、ハプウちゃんのところにいこいこー!」

809: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 17:18:59.36 ID:CVZsSMq50
ポニの原野

プルメリ「…………」

――オラたちと一緒にくさやのおじさんをお助けに行こうよ

――みんなでお助けに行けばだいじょーぶだって!

――負けちゃったら、強くなればいいのに。おねいさんたちにとって、大事な人なんでしょ?

プルメリ「……ふん」

810: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 18:30:33.84 ID:CVZsSMq50
大峡谷入り口

ハプウ「む……来たか」

しんのすけ「よ!」

リーリエ「ハプウさん!」フリフリ

ハプウ「首尾よく行ったか」

リーリエ「はい、笛はしんちゃんが……」

しんのすけ「ほい!」プリプリ

リーリエ「笛をお尻で挟まないでください!」

ハプウ「相変わらずじゃのう……」ハァ

811: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 18:31:18.20 ID:CVZsSMq50
ハプウ「しんのすけ、お前の戦いは一度アーカラで見せてもらったな」

しんのすけ「そうだっけ?」

ハプウ「ロイヤルアベニューの近くでスカル団からポケモンを助けてもらった時じゃ。あの時からどれほど成長したのか、見せてもらうかの」

ハプウ「そう、ハプウの大試練じゃ!」

バンバドロ「ムヒイウン!」ブルルッ

しんのすけ「んー、そんなに育ってる気はしないけど」チラッ

ハプウ「そこの話ではないわ!」

???「しんのすけー!」

3人「!」

ひろし「やっと見つけたぜ!」

みさえ「しんちゃん!」

ひまわり「たいっ!」

シロ「アンッ!」

しんのすけ「とーちゃんかーちゃん! ひまにシロ!」

812: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 18:32:13.33 ID:CVZsSMq50
ロトム図鑑「お前ら何しに来たのだ?」

ハウ「そっこーでウラウラの大試練終えて来たよー!」

ククイ博士「2人の最後の大試練を見届けようと思ってね」

リーリエ「ハウさんに博士……!」

ククイ博士「お、リーリエ! フォルムチェンジしたのかい?」

リーリエ「はいっ、ゼンリョクの姿ですっ!」

ハプウ「ほへえ……にぎやかになったのう」

ククイ博士「おや? 君は確かしまキングの……」

ハプウ「む、久しぶりじゃな、博士。カプから認められ、亡くなった祖父を継いでしまクィーンになったのじゃ」

ハウ「君がしまクィーンなんだー。よろしくー」

ハプウ「そういうお前は、ハラの孫か。しまクィーンのハプウじゃ」

814: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 18:44:02.59 ID:CVZsSMq50
ハプウ「ところでしんのすけ、そちらの方はお前の家族か」

しんのすけ「うだつの上がらないとーちゃんと、最近5キロぐらい太ったとみられるかーちゃんです」

ひろし「うだつが上がらなくて悪かったな!」

みさえ「5キロも太ってないわよ!」ギュウウウ

しんのすけ「いぢぢぢぢ! てゆーかなんで来たの?」

ひろし「そりゃ、もちろんお前が最後の島に行くって言うからな。みんなで応援に来たんだ」

ひろし(本当はエーテルパラダイスの一件でみさえが不安になって押し切られたんだけどな……)

みさえ「しんちゃん、どこにも怪我とかない? 大丈夫?」

しんのすけ「みさえこそ、そろそろ体脂肪率が30パーセント越えしてない? 大丈夫?」

げ    ん

こ    つ

みさえ「心配してくれてありがとよ」

しんのすけ「今のオラ……無事じゃない」

815: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 18:44:57.16 ID:CVZsSMq50
リーリエ「しんちゃんのお母様、お久しぶりです」

みさえ「あら、リーリエちゃん! ずいぶんイメチェンしたのね! 似合ってるわよ」

みさえ「……エーテルパラダイスでの話、聞いたわ。私たちでよければ、力になるわ。なんでも言ってね」ボソッ

リーリエ「はい! ありがとうございます!」ニコッ

ひまわり「や!」

リーリエ「あなたは……ひまわりちゃんですね? しんちゃんの妹さんでしたね。しんちゃんと一緒に旅してるリーリエです!」

ハプウ「しんのすけのご家族の方々。わしはポニ島のしまクィーン、ハプウじゃ。わざわざこのポニ島まで御足労頂き、感謝する」

ひろし「あ、こちらこそ……」

ハプウ「しまクィーンとしてそなたらの息子しんのすけに、最後の大試練を課し、ゼンリョクを確かめるのがわしの役目じゃ。しんのすけが島巡りを経てどれだけ成長したのか、それを見る良い機会と思う。ぜひ最後まで、お付き合い頂きたい」

みさえ「は、はい……(ずいぶんしっかりしてるわねぇ)」

816: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 18:55:29.27 ID:CVZsSMq50
ハウ「しんのすけー最後の大試練がんばって勝ってー! そしたらおれも勝ってー2人で一緒に島巡りチャンピオンになろうよー」

しんのすけ「ハウくんと一緒。いやん、オラたち、そんな関係じゃないのに……」

ハウ「そーゆー意味で言ったわけじゃないよー」

ククイ博士「しんのすけ! 君がどこまで強くなったか、見させてもらうよ! 君がラナキラマウンテンを登る資格があるか、楽しみだね」

リーリエ「しんちゃん、わたし、この目でしんちゃんとカザマさんたちの戦いをしっかり見てます。トレーナーはどういうものか、もっと知りたいです!」

しんのすけ「まっかせなさい!」

ハプウ「しんのすけ。わしは若いが、ほかのしまキング、しまクイーンにひけはとらん! むしろ、バンバドロたちとの絆は、アローラで一番の自負がある!」

ハプウ「わしとポケモンたちのゼンリョク、受けてみるかの?」

しんのすけ「オラだって、オラのお友達とゼンリョクでハプウちゃんに勝つ!」

817: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:06:24.83 ID:CVZsSMq50
ハプウ「その心構えや良し! しまクイーン、ハプウ。カプより頂いたかがやく石を、Zリングにさせていただいた!」

ハプウ「しんのすけも同じ! Zリングを持つということは、カプと共にあるということ!」 

ひろし「しんのすけー! ポケモンを信じて戦うんだ!」

みさえ「がんばって!」

しんのすけ「あ、でもやっぱり、ギャラリーにおねいさんがいなきゃ張り合いがないなぁ」

全員「」ズルッ

ハプウ「おいおい……緊張感のないやつじゃ」

ハプウ「では、気を取り直して……しまクイーンハプウ――はじめての大試練! ゼンリョクを尽くし、心ゆくまで戦うぞ!」ギンッ!!

818: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:08:45.51 ID:CVZsSMq50
しまクィーンの ハプウが
勝負を しかけてきた!

ハプウ「さぁ、行くぞ! ダグトリオ!」ヒョイッ

ダグトリオ「ダクダグッ!!」ポンッ

しんのすけ「ボーちゃん、レッツラゴー!」ヒョイッ

ミミッキュ『ボ!』ポンッ

みさえ「あら? ダグトリオってあんな髪生えてたかしら?」

ひろし「あれはアローラ固有のダグトリオさ。それにあれは髪じゃなくて髭なんだ」

ハプウ「ダグトリオ、すなあらしじゃ!」

ダグトリオ「ダグッ!!」

ダグドリオが咆哮を上げると、あたり一面に砂嵐が巻き起こった!

みさえ「きゃあ! なにっ?」

ひまわり「いたいやー!」

ククイ博士「すなあらし、ですよ! あまごいのように場に直接干渉する技で、文字通り砂嵐になるんです!」

819: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:12:26.62 ID:CVZsSMq50
みさえ「砂嵐になると、何が起きるのよー!」

ミミッキュ『ボ……周りが見えない!』

しんのすけ「んー目にゴミが入っちゃいそう」

ハプウ「ダグトリオ、飛び出すのじゃ!」

ダグトリオ「ダグッ!」ボコッ!

ミミッキュ『ボ!?』カクン

ハプウ「これで化けの皮は剥がしたぞ。さて、ここからじゃ」

ミミッキュ『ボッ!』ブンッ

ボーちゃんはシャドークローで反撃するが、ダグトリオはすかさず穴に潜って回避した。

ダグトリオ「ダグダグッ!」サッ

ハプウ「ダグトリオ、アイアンヘッドじゃ!」

しんのすけ「……! ボーちゃん、そこっ!」

ダグトリオ「ダグッ!」バッ!

ダグドリオが地面から頭突きするために飛び出したと同時に、ボーちゃんがすぐさま反応して、おにびを繰り出した。

ミミッキュ『ボ!』メラッ!

820: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:13:22.22 ID:CVZsSMq50
ボーちゃんはダグドリオのアイアンヘッドを躱しつつ、すれ違いざまにおにびをぶつけた。

ハプウ「……!」

ダグドリオ「ダグっ……」ジュウウッ

ミミッキュ『……ボ。あぶないあぶない』ムクッ

ハウ「わー! ダグトリオがやけどしてるー!」

ククイ博士「ミミッキュのおにび、かなりのスピードだぜ!」

ハプウ(それもあるが、ダグトリオが出る場所をしんのすけが予測しおった。あのミミッキュもしんのすけのとっさの指示にすぐさま対応するあたり、相当経験を積んでおると見た)

ハプウ(……にしても、しんのすけ、相変わらずポケモンに技の命令をしとらんとは。だが、なにか違うのう。どれ、もう少し様子見してみるか)

ハプウ「ダグトリオ、一旦潜れ。かく乱しつつもう一度アイアンヘッドじゃ!」

ダグトリオ「ダグッ」ズポッ

ダグトリオが地面へ再び潜ると、四方八方からダグトリオが飛び出してくる!

ダグトリオ「ダグッ! ダグッ! ダグッ! ダグッ!」ズポッ ズポッ ズポッ

しんのすけ「もぐらたたきみたーい」

ミミッキュ『ボーッ!』ピカー!

ボーちゃんの周りに、うっすらと光る透明の壁が現れた。

821: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:14:28.13 ID:CVZsSMq50
ひまわり「たや?」

ひろし「あれは……光の壁を貼ったのか」

リーリエ「どうしてボーちゃんさんは攻撃しないのでしょうか?」

ハプウ(かく乱しようが構わず、攻撃よりも着々と守りを固めことを優先したか)

ハプウ(おにびに光の壁。あのミミッキュはサポートに徹するようじゃな)

モコッ

ダグトリオ「ダグッ!」バッ!

目の前にダグドリオが顔を出し、頭突きする。

ミミッキュ『ボッ?!』ドンッ!

ハプウ「よし、そのまま畳み掛けよ。メタルクローじゃ!」

しんのすけ「ボーちゃん、来るゾ!」

ダグトリオ「ダグダグッ!」ジャキンッ

ミミッキュ『――ボ!』ジャキンッ

ダグドリオの髭が硬質化したメタルクローが迫る中、ボーちゃんも鼻水状の影から変えたシャドークローで応戦する。

ザクザクッ!

822: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:16:28.53 ID:CVZsSMq50
ダグドリオ「ダグッ……!」

ミミッキュ『ボ……!』ザザザッ

しんのすけ「ボーちゃん、いける?」

ミミッキュ『大丈夫……』フゥフゥ

ひろし「まずいな……ミミッキュ――ボーちゃんはフェアリー・ゴーストタイプだから、はがねタイプのダグトリオとは不利なんだ」

ロトム図鑑「それに、すなあらしのダメージも入っている」

ハウ「だけどダグトリオやけどしてるみたいだからー、そこまでボーちゃんにダメージを与えられてないっぽいよー」

ハプウ「穴を掘って惑わせたところで無駄じゃな。ならば、じしんじゃ!」

ダグトリオ「ダグッ!」

ズズンッ!

823: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:17:08.09 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「ボーちゃん、ジャンプ!」

ミミッキュ『ボ!』ピョンッ

地面が揺れてヒビ割れる瞬間、ボーちゃんはしんのすけの合図と供に振動を利用してジャンプし、再びシャドークローをダグトリオに繰り出す。

ザンッ!

ミミッキュ『ボ!』フッ

ダグトリオ「ダ、ダグッ……!」

シャドークローが急所に当たり、ダグトリオが髭を振り乱しながら力なく倒れる。

しんのすけ「ボーちゃんかっこいい!」

みさえ「やったわ! まず一匹目ね!」グッ

ひろし「いいぞ、しんのすけ! ボーちゃん!」

ハプウ「ほほう、じしんを利用するとは……かなり、やるのう。それにこんな砂嵐の中、ダグトリオにダメージを与えるとは」

824: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:17:55.69 ID:CVZsSMq50
ハプウ「ならば――ゆけい、トリトドン!」ヒョイッ

トリトドン「ポワーオ!!」ポンッ

ハプウ「あまりそやつを野放しにするわけにはいかないのでな。ストーンエッジじゃ!」

トリトドン「ポワーオ!」ドシン

トリトドンが地面を振動させると、ボーちゃんに尖った岩が襲いかかる!

ズズンッ!

ミミッキュ『うッ!?』ザクザクッ!

ククイ博士「まずいね、こっちも急所に当たったようだ」

825: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:18:36.89 ID:CVZsSMq50
ハウ「それに光の壁も切れかかっちゃってるー!」

ハプウ「とどめじゃ! トリトドン、だくりゅう!」

トリトドン「ポワァァッ!」ブシュウウウッ!

トリトドンの口から吐き出された土の入り混じった激流がボーちゃんに迫る。しかし、ボーちゃんは構わずトリトドンを見据えると、

ミミッキュ『……ボ!』ギンッ!

トリトドン「ポワッ……!」ズキンッ

ククイ博士「!」

そしてボーちゃんはだくりゅうに飲み込まれてしまった。
だくりゅうの勢いが収まると、ぐったりとしているボーちゃんの姿が。

しんのすけ「ボーちゃん!」

ミミッキュ『……後は、頼んだ』

リーリエ「これでお互いに1匹ずつ倒れましたね……」

みさえ「また振り出しに戻っちゃったのね」

ククイ博士「いや、それはどうかな……」

826: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:28:22.17 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「うーし、ネネちゃん、レッツラゴー!」ヒョイッ

キテルグマ『あたしの出番ね。負けないんだから!』ポンッ

ハウ「わー! ネネちゃん、進化してたんだー!」

みさえ「あら、あんなかわいいポケモンゲットしてたのね。しんのすけったら、いい趣味してるじゃない」

ハプウ「ふむう、ストーンエッジじゃ!」

トリトドン「ポワーオ!」ドシン

ズズンッ!

キテルグマ『いたっ!』

ハプウ「トリトドン、更にどろばくだんじゃ! 奴を近づけるな」

トリトドン「ポ……ワッ!」ボシュッ

トリトドンの口から次々と泥の塊が発射されて、ネネに直撃する。ネネは手でガードするが、それでも攻撃に移れずにいた。

キテルグマ『これじゃ、思うように進めないじゃない! この砂嵐も、収まらないし……』ビシャッ ビシャッ

827: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:35:52.54 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「じゃあそこの刺さった岩投げればー?」

キテルグマ『あ、その手があったわね! ふんっ!』ベキッ

しんのすけのアドバイスを聞いて、ネネは尖った岩の一部をへし折って持つと、それをトリトドンに向けて投げつけた。

キテルグマ『えいっ! えいっ! ふんっ!』ブン! ブン! ブンッ!

トリトドン「ポワッ! ポワ!?」ドンッ! ズグッ!

ハプウ「ぬう……ストーンエッジの残骸を利用するとは、なんて破天荒な攻撃じゃ」

トリトドン「ポッ……ポワッ」ブルブル

ハプウ「うん? どうしたトリトドン?」

ひろし「なんか様子が変だぞ」

ハウ「体調が悪いのかなー?」

キテルグマ『今がチャンス!』ダッ

ハプウ(この感じ……あのミミッキュ、倒れ際に呪いをかけおったのか! なんと油断ならないヤツよ)

ハプウ「トリトドン、自己再生じゃ!」

トリトドン「ポワーオッ!!」パアアッ

キテルグマ『な、なに?』

828: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:38:19.22 ID:CVZsSMq50
トリトドンの身体が光に包まれると、見る見るうちにネネに負わされていた傷が塞がっていく。

ククイ博士「向こうも気付いたようだね」

リーリエ「なににですか?」

ククイ博士「あのミミッキュ、呪いをかけていたんだよ。自分の体力を削ることで、どく状態のように相手の体力をじわじわと奪っていくんだ。しかも、呪いは自己再生しても治せないから、トリトドンが倒れるまで続くよ」

みさえ「ピカチュウみたいなかわいい見た目して随分怖い技を使うのね。あの子……」

ひまわり「たい……」

トリトドン「ポワーオッ!」

しんのすけ「おおっ、元気になっちゃった」

キテルグマ『元気になったからどうだって言うのよ! 倒すまで戦えばいいだけよ!』ブンッ

ネネが放ったアームハンマーが、トリトドンに命中する!

トリトドン「ポ、ポワァッ…!?」ドズムッ

ひろし「おおっ、あの一撃はでかいぞ!」

ハプウ「トリトドン、だくりゅうで押し戻せ! 距離を取らせるのじゃ!」

トリトドン「ポォワァァッ!」

アームハンマーの反動で動きが鈍くなったところで、口を大きく吸い込み、さっきとは比べ物にならない量のだくりゅうを迸らせた。巨体のキテルグマでも耐え切れず、流されてしまう。

829: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:39:37.54 ID:CVZsSMq50
キテルグマ『きゃあああっ!』ドドドドッ

しんのすけ「おおっ、ネネちゃんのような重くて巨体な身体でも押し流されるなんて……」

キテルグマ『やかましいッ!』

ハプウ「よし、自己再生じゃ!」

トリトドン「ポワーオッ!!」パアアッ

キテルグマ『あーん、また自己再生?』

しんのすけ「まるでダイエット中のかーちゃんみたい」

キテルグマ『どういうこと?』

しんのすけ「いくらダイエットして体重を減らしても、またリバウンドして元通り!」

ロトム図鑑「うまい、座布団一枚だ」

げ    ん

こ    つ

しんのすけ&ロトム図鑑「」

みさえ「うまくないわよっ! 失礼ね!」ドスドス

キテルグマ『こうなったら、あいつを一撃で倒すっきゃないわ!』

830: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:41:02.38 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「ネネちゃん、あれを使えばきっと気合出せるんじゃない?」

キテルグマ『あれ? ……ひょっとして、あれ?』

しんのすけ「武器にしたら、きっと役に立つと思うよ。あっちのネネちゃんもそうしてたし」

キテルグマ『そうかしら……?』

ハプウ「ぶつくさしゃべってるヒマがあるかの? トリトドン、どろばくだんで攻撃じゃ!」

トリトドン「ポワッ!」ボシュッ!

キテルグマ『きゃっ! いたい!』グチャッ! ドッ!

しんのすけ「ネネちゃん、耐えるんだ!」

ひろし「さっきと同じ状況に戻っちまったな……」

ハウ「ネネちゃんだけ体力を一方的に奪われてるからねー、あのトリトドン結構タフだねー」

みさえ「このまま何もできずに倒れちゃうのかしら?」

ロトム図鑑「……それはどうだろうか」

みさえ「え?」

ロトム図鑑「見よ、攻撃をこらえるネネのがまんのボルテージを」

リーリエ「あっ、そういえばネネちゃんさんには……!」

831: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:42:13.30 ID:CVZsSMq50
キテルグマ『…………!』グチャッ! ドチャッ!

ハプウ(どうしたのじゃ? あやつめ、さっきと違ってまったく攻撃しようとせん)

ハプウ(なにかの前触れか? ともかく、呪いのダメージもそろそろ無視できん。あやつを倒しにかかろう)

ハプウ「トリトドン、そろそろだくりゅうで仕上げるぞ!」

トリトドン「ポワァァッ!」ブシュウウウッ!

三度目のだくりゅうが襲いかかってくる。しかし、同時にネネちゃんもどろばくだんを受け続けて、我慢の臨界点を超えた!

キテルグマ『うがあああああっ!』ダッ!

全員「!?」

キテルグマはだくりゅうの流れに逆らい、地面を踏みつけながら猛ダッシュしトリトドンへ急接近する!

ハプウ「な――!」

しんのすけ「やっちゃえネネちゃん!」

キテルグマ『いい加減女の子に向かって、ンなきたねーもん……』バッ!

ネネちゃんはジャンプすると、手に隠し持っていた「あれ」を握る。

ハウ「あれって……」

リーリエ「ピッピ人形さん……ですか?」

832: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:44:29.28 ID:CVZsSMq50
キテルグマ『ぶつけてんじゃねぇぇぇっ!』ブンッ!

ド ズ ム ッ!

トリトドン「ポワ゛ッ!!!?」

ひろし「行ったーっ!」グッ

ハプウ「む……がまんか!」

リーリエ「ピ……ピッピ人形さんを武器にするなんて……」ドンビキ

ククイ博士「すごいなぁ、自分の持ち物を武器に技を繰り出すなんて! あのキテルグマはヤレユータン並みの知能の高さと器用さがあるようだね」

リーリエ「そういう問題じゃないですって!」

キテルグマ『あーすっきりした。でも、悪くないわね、これ武器にするの。それに、まだまだ戦えるし』

しんのすけ「おおっ、さすが『ネネ』ちゃん!」

キテルグマ『よくわからないホメ言葉だけど、アドバイスありがと、しんちゃん』

トリトドン「ポワァ……」ピクピク

ハプウ「……さすがにトリトドンも自己再生できるほどの体力も残っとらんか。よくやったぞ、トリトドン。ゆっくり休め」シュンッ

833: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:45:41.46 ID:CVZsSMq50
ハプウ(今のピッピ人形に、さっきのミミッキュへの回避の指示。やはりしんのすけは……)

ハプウ「では次! 行くぞフライゴン!」ヒョイッ

フライゴン「フラァーッ!」ポンッ!

しんのすけ「エビフライゴン……?」

ハプウ「エビはいらん! フライゴン、騒いで攻撃せよ!」

フライゴン「ラァァァァァァッ!!」

キテルグマ『ひいっ!』キーンッ!

しんのすけ「うわぁぁっ、耳がキンキンする!」

ハプウ「フフ……さすがに飛んでる相手には、自慢の怪力はおろか手も足も出んじゃろ? フライゴン、ソニックブームじゃ!」

フライゴン「ラァァァ! フラッ!」ブゥーン!

騒ぐのをやめたフライゴンは、今度は衝撃波を放った。砂嵐を吹き散らしながら、ネネに直撃する!

キテルグマ『ううっ……!』

834: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:46:49.13 ID:CVZsSMq50
ハプウ「最後じゃ! フライゴン! ドラゴンテール!」

フライゴン「フラーッ!」バッ

砂嵐の中、急降下してきたフライゴンが、空中を一回転しつつ尻尾をネネに向けて振り下ろし、脳天に直撃した!

ゴンッ!!

キテルグマ「ぎゃんっ!」

しんのすけ「げんこつ……!」

キテルグマ「う、うーん……ピッピちゃんが1匹……ピッピちゃんが、2匹」フラフラ

ドサッ!

しんのすけ「あーんネネちゃん!」

ひろし「空を飛んでる相手じゃ、ネネちゃんにも分が悪いだろうな……」

ハウ「トリトドンでのダメージもあるしねー」

ロトム図鑑「情けない奴だ。せめて空を飛ぶことぐらいして見せろ」

キテルグマ『出来るわけないでしょっ!』ガバッ

835: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:48:32.73 ID:CVZsSMq50
ククイ博士「まさに一進一退! 技と技の応酬だ! 次はどんな技で戦うのか楽しみだぜ!」

ハプウ「さあ、次のポケモンを出すが良い!」

しんのすけ「んー……じゃ、マサオくん、レッツラゴー!」ヒョイッ

ヨワシ(群)『よっしゃあ! 行くぜい!』ポンッ

ひろし「でっけぇ……あれがマサオくん……群れたヨワシの姿か!」

ハプウ「おお! あの時のヨワシか! ずいぶん逞しくなったのう! さて、どれほど強くなったのか、見せてもらうぞ」

ハプウ「フライゴン、あやつにソニックブームじゃ!」

フライゴン「ラァァァ! フラッ!」ブゥゥンッ!

ネネちゃんにダメージを与えたソニックブームが、マサオを纏うヨワシの群れを少しずつ散らせていく!

ヨワシ『へっ、チマチマしゃらくせえ! 攻撃ってのはなぁ、こうやるんだよ!』ブシュウウッ!

フライゴン「ラァァァッ!!」

マサオの口から熱せられた水が発射された。フライゴンはすぐさま攻撃を中断して、回避しようとするが、しっぽに熱湯があたってしまった。

836: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:49:57.59 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「マサオくん、いつの間にそんな技覚えてたのかー」

ヨワシ『ポケモンだって日々成長してくもんなんだよ!』ヘッ

ハプウ「こやつがねっとうを使えるのを知らんかったのか、しんのすけ」

しんのすけ「うん、いちいち技覚えんのめんどくさいし」

ひろし「お前なあ、そんな理由で命令しないって、よくここまで来れたな」

ハプウ「相変わらずじゃな、お前は……」

しんのすけ「いやあそれほどでも~」

全員「褒めてないっ!」

ハプウ「フライゴン、りゅうのいぶきじゃ!」

フライゴン「フゥラァァッ!!」ゴウッ!

フライゴンが口から青白い光が放たれ、ヨワシへ真っ直ぐに飛んでいく!

ヨワシ『ヤローども! 例のアレ行くぜい!』

ヨワシたち「ヨワーーーッ!!」

バララーーーッ!

りゅうのいぶきが当たる直前、マサオの号令の元、次々とマサオを纏うヨワシの群れが四方八方に散っていく!

837: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:50:48.51 ID:CVZsSMq50
そのままりゅうのいぶきは空を切り、岩壁に直撃する。

ハプウ「なにっ……?!」

ククイ博士「おおっ!」

しんのすけ「マサオくん、すげー!」

ヨワシ(単)『しんちゃんとカザマくんのアドバイスを実践してみたんだ!』

そして、再びマサオを中心に次々とヨワシたちが集まって、元の群れた姿のマサオに戻った。

ハプウ(まったく……技を覚えんかと思ったら、ヨワシの群れを散り散りにさせて回避か……先が読めん奴じゃ)

ハプウ「……フライゴン! 砂嵐に身を隠しつつ、騒いで攻撃せよ!」

フライゴン「フラッ!」ズズズッ

フライゴンはハプウの命令通り、砂嵐の中へとその姿を消していった。
そして一瞬の静寂の後……。

フライゴン「ラァァァァァァッ!!」キィィィンッ!!

しんのすけ「ぬわーっ! またきたぁぁぁっ!」

ヨワシ『ぐぅぅっ……!』ビクビクッ!

838: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:52:48.18 ID:CVZsSMq50
しんのすけは耳を塞ぎながらも、どこから声が聞こえるのか集中する。

しんのすけ「マサオくん! あっち!」

ヨワシ『おうっ、そこだなっ!』ドバッ!

さわぐで群れが少しずつ離れていく中、マサオはハイドロポンプを放った! 怒涛の水流が砂嵐を一直線に貫くように放出されていく!

フライゴン「フラァァッ!?」ドドドド!

ククイ博士「ハイドロポンプか!?」

ハプウ「なんと……あの砂嵐の中でフライゴンの位置を当てるとはのう」

しんのすけ「あーやっと静かになった。うるさいっての」キーン

ヨワシ『このまま押し切ってやるぜ!』

マサオは群れとともに前進すると、フライゴンがネネにやったように、その巨体を動かして空中で一回転する。

フライゴン「フラッ……!?」

フライゴンの目の前に、群れたヨワシで構成されたマサオのアクアテールが迫る!

ズシンッ!!

フライゴン『フラッ……!』ドンッ!

839: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 19:54:28.48 ID:CVZsSMq50
アクアテールに押される形で地面に叩きつけられたフライゴンは、反撃を試みようとするが、そのまま地面に突っ伏して力尽きた。

フライゴン「フ、ラァ……」

みさえ「やった! またしんのすけが一歩リードよ!」

リーリエ「群れたマサオさん……すごい攻撃力です!」

ハウ「しかもまだ群れは散ってないよー!」

ハプウ「ふむう……やはりな」

ハプウ(技はポケモンに任せ、己の直感を頼りにポケモンたちの死角を補うように助言する……。まるであやつ自身、ポケモンと一体になって戦っておるようじゃ)

ハプウ(時折、ポケモンとも会話する素振りを見せておる……。まるで馴染みの友と話しておるように。彼らとの間には、深い信頼が築かれておる。何も考えておらんわけがない)

ハプウ(アーカラの時はほとんど何もせず、見ているだけだったが、島巡りを経てようやくこの戦法を開花させたようじゃな)

840: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:00:13.78 ID:CVZsSMq50
ハプウ「しんのすけ、お前は本当に面白いトレーナーじゃ!」ニッ

しんのすけ「おー、今度は褒めてるの?」

ハプウ「もちろんじゃ、お前はわしが今まで戦ってきたトレーナーの中でも特に変わった戦運びをする!」

しんのすけ「オラちゃんと歯は磨いてるゾ。オラの歯ってそんな臭いかな?」

ひろし「歯くさ運びじゃなくて、戦運び! お前の戦い方をハプウちゃんは褒めてるってことだよ」

ハプウ「さて、これがわしの最後の1匹じゃ! といっても、しんのすけとリーリエにとってはもう馴染み深いだろうがの」

リーリエ「バンバドロさん、ですね!」

ハプウ「そうじゃ! さあ出番じゃ! しんのすけに我らの絆を見せようぞ、バンバドロ!」バッ!

ハプウの呼びかけに応じるように、彼女の背後に控えていたバンバドロが飛び出し、足を地面にめり込ませながらマサオを睨みつける。

バンバドロ「……!」

みさえ「ラスト一匹ね! これに勝てば試練達成よ! しんのすけ!」

ひろし「行けるぞ! ヨワシはみずタイプ、対して相手はじめんタイプだ。このまま押し切れる!」

ロトム図鑑「どうかな……」

841: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:01:38.05 ID:CVZsSMq50
ヨワシ『よぉーし! さっさとこいつを倒して、大試練クリアするぜ! おりゃっ!』

再びマサオは一回転して、バンバドロに向けてアクアテールを放った。水をまとった尾がしなりながらバンバドロへ落ちてくる!

バンバドロ「……!」

ズズンッ!

ハウ「やったー?!」

ククイ博士「……いや」

勝ちを確信した野原一家やハウたちの期待とは裏腹に、砂煙の中から現れたのは、アクアテールを喰らっても地面にめり込むだけで平然としているバンバドロの姿だった。

バンバドロ「…………」

しんのすけ「ほうほう」

ヨワシ『なにっ!?』

ハプウ「バンバドロ……10まんばりきじゃ」

バンバドロ「……ッ!!」ギラッ!

842: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:03:12.35 ID:CVZsSMq50
ドゴッ!!

ヨワシ『え……!』

バンバドロはマサオの尾を跳ね除けると、ぐるりと半回転させてマサオから背を向けた。そして違わずマサオに向けて勢いよく、後ろ蹴りを繰り出した!

ド ゴ ッ ッ ! !

ヨワシ(単)『うわぁぁぁっ!!』

リーリエ「一撃で、マサオさんの群れを……!」

ハウ「散らしちゃったよー!」

ヨワシ(単)『そ、そんなぁ……』

バンバドロ「……!」ブルルッ!

ククイ博士「バンバドロの放つ10まんばりき……恐るべき威力だ」

しんのすけ「10万まんボルト?」

ククイ博士「ボルトじゃなくて、ばりきだよ」

ハプウ「いいことを教えてやろうかの。10まんばりきは、バンバドロの全体重を蹴りに集中させて攻撃するワザじゃ」

ハプウ「そして、バンバドロの平均的な重さは920 kgじゃ。その重さを乗せて、マサオを蹴りつけたのじゃ!」

843: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:04:29.79 ID:CVZsSMq50
みさえ「きゅ、920kg!? ……って、どのくらいなの?」

ひろし「」ズルッ

ククイ博士「だいたい軽自動車と同じくらいの重さですよ。ポケモンの種類は豊富でも、あそこまで重いポケモンはこのアローラに存在しません」

ひろし「いや、そこらのポケモンにもいないんじゃないか?」

ロトム図鑑「コイツに二度も踏みつけられたが死ぬかと思った」

リーリエ(あの体重で踏みつけられて、よく無事でいられましたね……)

ヨワシ(単)『ど、どうしようしんちゃん……』オロオロ

しんのすけ「しょーがない、戻っていいよ」シュンッ!

ハウ「せっかくのヨワシも、単独じゃバンバドロに勝つのは難しいよねー」

リーリエ「残るのは……カザマさんだけですね」

しんのすけ「カザマくん! レッツラゴー!」ヒョイッ

ジュナイパー『いよいよ僕の出番か!』ポンッ

ハプウ「最後はやはりお主か。マサオに劣らず立派になったのう。さあ、どうバンバドロに立ち向かうつもりじゃ?」

ジュナイパー『しんのすけ! マサオくんの技でダメなら、Zワザだ! くさのZワザで、一気にバンバドロを倒すんだ!』

844: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:05:30.62 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「ブ・ラジャー!」

バッ バッ ブリッ ブリッ パァァッ バァーン!

ピカッ! ゴウッ!!

カザマは Zパワーを 身体に まとった!

ハプウ「ほう、Zワザか!」

カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!

ブ ル ー ム シ ャ イ ン エ ク ス ト ラ !

しんのすけ「カザマくん! ファイヤーッ!」

フクスロー『行くぞっ! 一気に倒す!』

カザマがZパワーを周囲へ放出すると、次々と花が咲き乱れていく! そして日光がバンバドロに照射され、どんどん威力を増していく!

パァァァッ!!

バンバドロ「……!」

ドゴォォォン!!

ククイ博士「しんのすけ! 今のZワザは効果は抜群だぜ!」

ひろし「やった?!」

845: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:07:47.60 ID:CVZsSMq50
ジュナイパー『僕たちの勝ちだ!』

ハプウ「…………」

砂嵐が収まり、戦闘で穴だらけになったり、水たまりができて原型をとどめていないフィールドがあらわになる。
くさのZワザを受けて、誰もがしんのすけの勝利を確信した――ハプウを除いて。

ハプウ「なかなか良いZワザじゃ。バンバドロも驚いておるぞ」

ハプウ「じゃが、これでわしとバンバドロを乗り越えられると思ったら、大間違いじゃ!」ギンッ!

バンバドロ「……ッ!!」ブルルッ!

砂煙が収まると、バンバドロが凛然と仁王立ちしながら、カザマを睨みつけていた。その姿に、全員が仰天した。

ククイ博士「……これは!」

リーリエ「……!」ポカン

みさえ「どういうこと?」

ハウ「エー! Zワザを耐えたのー!」

ひろし「信じらんねぇ……」

ロトム図鑑「もはやバケモノだな」

ひまわり「たい……」

846: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:08:36.46 ID:CVZsSMq50
ジュナイパー『そ、そんなっ……!』

しんのすけ「ほーほー……」

ジュナイパー『でも、Zワザでも体力を削りきれないなんて……!』

しんのすけ「んーどうしよっかなー……」

しんのすけは腕を組んで困っていると、地面に目が行った。

しんのすけ「…………!」ピーンッ

ハプウ「今度はこっちの番じゃ! バンバドロ、ヘビーボンバーじゃ!」

バンバドロ「……!」ダッ!

バンバドロが駆け出すと、鈍重な身体でありながら跳躍した! そして全身を急回転させながら全体重を乗せてカザマへ襲いかかる!

ハプウ「さぁ、これを喰らえば瀕死は免れんぞ! どうする!」

ひろし「空に逃げても当たっちまうぞ!」

ジュナイパー『うっ、うわっ!』

ド ゴ ッ !

ジュナイパー『……!』

リーリエ「ああっ! カザマさんが!」

847: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:11:17.06 ID:CVZsSMq50
ククイ博士「いや、あれは――」

人形「」ドロン

ハプウ「ほう、みがわりか」

ジュナイパー『はっ!』

カザマは、ヘビーボンバーから体勢を整えているバンバドロへ向けて、かげぬいを放った!二つの影の矢が空を切り、バンバドロの影に刺さると爆発を起こした。

ドガンドガンッ!”

バンバドロ「……!」ユラッ

ジュナイパー『まだまだぁっ!』グッ!

シュルシュルシュルッ!

バンバドロ「!」

駆け出そうとするバンバドロの右前足に草が生えて、バンバドロを転ばせる!

バンバドロ「……!」ズシンッ!

ハプウ「む、くさむすびか……! ちと面倒な技を持っておるな」

ひろし「あいつ……俺があげたわざマシンをきちんと使ってるんだな……!」

バンバドロ「……ッ!」ムクッ

ハウ「あれでも倒せないなんてー……」

848: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:12:53.58 ID:CVZsSMq50
ハプウ「お主たちの技はしっかりバンバドロに通っておるぞ。じゃが、わしのバンバドロは鍛え抜かれた鉄の意志と鋼の肉体の持ち主じゃ。ちょっとやそっとの技を真正面から受けたところで、びくともせん」

みさえ「ねぇ、あなた。どうしたら倒せるの?」

ひろし「どうしたらって言われてもな……」

ジュナイパー『くそっ、どうしたら……!』

しんのすけ「カザマくんっ、あっちあっち!」

ジュナイパー『えっ……?』

しんのすけが指し示したのは、このバトルの序盤で、ディグダが掘りまくっていた穴の地帯だった。
そして次にしんのすけは、マサオの入ったモンスターボールを見せる。

ハプウ「ん……?」

ジュナイパー『……そうか! 分かった! しんのすけがやりたいことが分かったよ!』

カザマは羽ばたくと、しんのすけが指示した場所へと降り立った。そして、矢羽根をつがえてバンバドロへ放つ。

ジュナイパー『さあ、Zワザでもなんでもかかってこいっ!』

ハウ「あんなところに移動して、どうするつもりなんだろー?」

849: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:13:59.99 ID:CVZsSMq50
ハプウ(あれはダグトリオの掘った穴――大方、バンバドロを落として身動きが取れないところで攻めると言ったところかの)

ひろし「バンバドロを落とそうっていうのか?」

ロトム図鑑「バカ、そんなバレバレな作戦してどうするんだっつーの!」

ハプウ「……良いじゃろう、しんのすけ! おぬしの挑発に乗ってやろう!」

ハプウ「文字通り、穴に入ってやろうではないか。地の底の底まで潜ってやろうぞ!」

しんのすけ「!」

バッ バッ グルンッ ズンッ

ハプウ「ほにゃあ!」バァーン!

ピカッ! ゴウッ!!

バンバドロは Zパワーを 身体に まとった!

ククイ博士「Zワザだ! 来るぞ!」

バンバドロが 解き放つ
全力の Zワザ!

ラ イ ジ ン グ ラ ン ド オ ー バ ー !

850: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:15:37.68 ID:CVZsSMq50
バンバドロ「ムヒイウンッッ!」ズンッッ!!

ジュナイパー『うわっ!』

バンバドロが前足を踏みしめ地ならしをすると、地割れが起きてカザマがその中へ落下していった!
そしてカザマが落下してる最中に、Zパワーをまとったバンバドロが、全速力でカザマに突進! そのまま押し切りながら、地盤も貫きどんどん地の底へ向かってゆく!

バンバドロ「……ッ!」

ジュナイパー『うわぁぁっ! うっ! ぐぅっ!』

やがてマントルまで到達すると爆発を起こし、バンバドロとカザマが地割れの中から戻ってきた。

ジュナイパー『う、ううっ……』ピクピクッ

バンバドロ「ムヒィィーウン!」ブルルッ

851: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:16:46.32 ID:CVZsSMq50
静寂が訪れる。わずかに聞こえるのは、トリトドンとマサオが戦闘で放った水が、Zワザの余波で出来た大穴やダグトリオの掘った穴に流れる音だけだ。

しんのすけ「カザマくん……」

ハプウ「惜しかったの。しんのすけ」

ハプウ「ここまでわしとバンバドロが追い詰められたのは久方ぶりじゃ。あともう一息、と言ったところかの」

しんのすけ「……」

ひろし「しんのすけ……」

みさえ「そんな、しんちゃん負けちゃったの?」

リーリエ「しんちゃん……」

ハプウ「だが、この敗北は決して無意味なものではないはずじゃ。もっと精進して、再びわしに挑んでこい。いつでもわしとバンバドロはお前の挑戦を待っておるぞ」

852: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:18:21.09 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「ハプウちゃん、なんかかっこいいコト言ってるけど――」

ハプウ「?」

しんのすけ「オラ、まだ1匹残ってるよ?」スッ

しんのすけが手に持っているのは、マサオの入ったモンスターボールだ。

ヨワシ(ボール)『えっ? 僕なの?』

ククイ博士「あれはさっきのヨワシ……マサオか?」

ハウ「でも、もう群れは散っちゃったんでしょー?」

ロトム図鑑「たたきにされるぞ」

ハプウ「……しんのすけ、降参するのもひとつの勇気じゃ。お前さんのポケモンはよく鍛え上げられておる。また挑戦すればよいじゃろ」

ハプウ「それとも、群れを纏う力も無いそやつを出して、無駄に傷つけることが望みかの?」

853: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:19:06.56 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「オラ、諦めないもん。絶対に島巡りチャンピオンになって、おねいさんにモテモテになるもん!」

ハプウ(……自暴自棄になったわけじゃない。動機は不純だが、活路を見出しておる面持ちじゃ)

ハプウ「なら、そやつでわしとバンバドロを乗り越えてみせろ。お前の最後のゼンリョクを見せてみよ。野原しんのすけ!!」

しんのすけ「おっしゃー! レッツラゴー! マサオくん!!」ヒョイッ

ヨワシ(単)『え、ええっ? 僕が勝てるの? もう群れは纏えないよ?』ポンッ!

ジュナイパー(ボール)『大丈夫、いいかい? これから僕の言う作戦と、しんのすけの言うことを聞くんだ! そうすればあいつに勝てる!』

ヨワシ(単)『……でも』

ジュナイパー(ボール)『これは今の君じゃないとできないことなんだ!』

キテルグマ(ボール)『もうあんたしか残ってないの! 自信持ちなさい!』

ミミッキュ(ボール)『グッドラック!』b

しんのすけ「マサオくんかっこよかったってあの白いポケモンに伝えてやるゾ」

ヨワシ(単)『…………』

ヨワシ(単)『……わかった! 僕、みんなを信じる!』

854: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:20:38.13 ID:CVZsSMq50
ハプウ「では――ゆくぞ、しんのすけ!」

しんのすけ「こぉぉいっ!」バンバンッ!

ハプウ「バンバドロ! ヘビーボンバーじゃ!」

バンバドロ「……!」ダッ!

バンバドロはマサオに一直線に駆け出し、ジャンプ! そして回転するとマサオに向かって落下していく!

ドドドドドド!!!

しんのすけ「マサオくんっ!」

ヨワシ(単)「!」

ズ ズ ン ッ !

バンバドロのヘビーボンバーが地面に激突し、砂煙が巻き起こる。地面にヒビが入り、泥水が染み出した。

ひろし「ど、どうなったんだ?」

リーリエ「マサオさんは……?」

855: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:22:28.46 ID:CVZsSMq50
砂煙が晴れると、体勢を立て直すバンバドロの姿があった。
そしてヘビーボンバーを食らって戦闘不能になっているはずのマサオの姿は――なかった。

ハプウ「なに?!」

バンバドロ「……!」

ハウ「あれー?! マサオはー?」

驚く一同。ハプウもバンバドロも例外ではなく動揺していた。一体どこへマサオが消えてしまったのか、あたりを見渡す。
ハプウはそこで、ダグトリオが掘った、水で満たされた穴に目が行った。そこで、ハプウはしんのすけの企み全てを察した。

ハプウ「まさか――! そこから離れよ! バンバ……」

しんのすけ「マサオくんっ! ファイヤーーーッ!!」

ヨワシ『フ ァ イ ヤ ー ー ー ー ッ ! ! 』

しんのすけとマサオの掛け声と同時に、バンバドロの真下の地面がさらにひび割れて、地面を突き破りながら勢いよくハイドロポンプが噴射された!
激流はバンバドロの腹に直撃し、そのまま勢いよく空中へと放り出された。

バンバドロ「ヒヒウ……!?」

ハプウ「……!」

856: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:23:14.55 ID:CVZsSMq50
しんのすけとマサオを除く一同が唖然とするなか、バンバドロは大きな音を立てて、マサオのハイドロポンプやトリトドンのだくりゅうで出来た水たまりへ落下した。

バシャッ!!

バンバドロ「ムッ……! ムヒィ……」

水たまりの中で、バンバドロは横たわりながらもがいて脱出しようとするが、その体力は残っていなかった。ハイドロポンプを食らった際、急所である腹を直撃したからだ。
そのままバンバドロは負けを認めたように足を動かすのをやめて、悔しそうにハプウを見た。

ハプウ「バンバドロ……」

みさえ「……勝った」

ひろし「勝ったんだ……! しんのすけが、勝ったんだ!」

ハウ「やったーー!」

リーリエ「バンバドロさんをあんなふうに倒すなんて……!」

ひまわり「たいやー!」

ククイ博士「すごいぜしんのすけ! バンバドロの真下からハイドロポンプを打つなんて!」

しんのすけ「いやぁ照れますなぁ」

857: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:24:29.07 ID:CVZsSMq50
ジュナイパー(ボール)『マサオくんもお疲れ様! よくやったよ!』

ヨワシ『え、えへへっ……僕はただ、しんちゃんとカザマくんの言う事しか聞いてなかったから』

キテルグマ(ボール)『あんたもっと誇りなさいよ。群れがなくったって強いんだから!』

ミミッキュ(ボール)『ガッツが、ある』

しんのすけ「安心しなさい、会ったらちゃんと伝えたげるから」

ヨワシ『う、うん、ありがとう、しんちゃん』

ロトム図鑑「ふっ、私の綿密な作戦が功を喫したな」

ひろし&みさえ「お前なんもやってないだろっ!」

ハプウ「……しんのすけ」

しんのすけ「お?」

ハプウ「わしらの負けじゃ」

858: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:26:00.30 ID:CVZsSMq50
ハプウ「いやぁ、たまげたぞ! ダグトリオの掘った穴がトリトドンやマサオの技で水いっぱいになったところに、単独の姿になったマサオを潜り込ませ、ハイドロポンプで奇襲をかけるとは……」

しんのすけ「ま、こんなくらいどうってことありませんから」

ジュナイパー(ボール)『ほとんど即興だったんだろ?』

ミミッキュ(ボール)『でも、よく思いついた。しんちゃんすごい』

ハプウ「お前のゼンリョク……大胆な発想、最後まで諦めない意志、友を信じる心、この目でしかと見届けたぞ」

しんのすけ「いやぁ」テレテレ

ハプウ「本当に面白いヤツじゃ。ゼンリョクを尽くしても勝てないすごさ……いろいろ学べて感謝じゃ、しんのすけ!」ニィッ

ひろし「みさえ……俺たちが知らないあいだに、しんのすけはこんなに成長してたんだな」

みさえ「ええ、とっても誇らしいわ」

ひまわり「た!」

ハプウ「では、じめんタイプのZクリスタル……ジメンZを授けるぞ!」

しんのすけは ジメンZを 手に入れた!

しんのすけ「正義は勝つ! ワッハッハッハッ!」

大 試 練 達 成 !

859: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:27:29.52 ID:CVZsSMq50
ハプウ「ポーズも授けるから、しかとみておれ!」

しんのすけ「ほいっ」

ハプウ「うぅ……!」ギンッ!

バッ バッ グルンッ ズンッ

ハプウ「ほにゃあ!」バァーン!

しんのす「おお、なかなかいいターンですな。オラも!」

バッ バッ プリッ グルンッ ズンッ

しんのすけ「ぷるるん!」バァーン!

ハプウ「いや、尻は出さんでよい……」

みさえ「対抗して掛け声出さなくてもいいの」

リーリエ「しんちゃん! これで4つの島全ての大試練、達成ですね!」

しんのすけ「そーいえば、そうだね」

ククイ博士「後はウラウラのラナキラマウンテンに登って、大大試練を乗り越えれば、しんのすけの島巡りは達成だ!」

ハウ「わー! おれも早くしんのすけに追いつかなくっちゃ! ハプウさん! おれと戦ってー!」

ハプウ「これこれ、そう慌てんでもわしは逃げんぞ。まずはリーリエじゃ」

860: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:30:42.89 ID:CVZsSMq50
ハプウ「リーリエ、ここを通り抜け、祭壇に向かうのだ! 大峡谷は祭壇につながる道、修行するトレーナーもおって、道のりは厳しいぞ」

リーリエ「はい!」

ハプウ「リーリエもここが踏ん張りどころじゃ。なにかあれば、わしもバンバドロと駆けつけるでな!」

リーリエ「ハプウさん! わたし、やります!!」

――カプゥーレ!

全員「!」

みさえ「今の声は……ポケモン?」

ハプウ「おお! 珍しいのう。カプ・レヒレが我らの前でさえずりを上げるなど……」

しんのすけ「なんで?」

ククイ博士「カプ・レヒレは、ある理由で人間の前に姿をめったに見せないんだ。こうして声を上げることだって、そうそうないことなんだよ」

しんのすけ「ほうほう」

ハプウ「カプに選ばれたしんのすけが、4つの島の大試練を終えたことに対して祝福しとるのかもしれんな」

861: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:32:18.46 ID:CVZsSMq50
――カプゥーレ!

ハプウ「……!」ピクッ

ひろし「あ、また聞こえた!」

しんのすけ「どしたの?」

ハプウ「どういうことじゃ? ……『逃げろ』とは」

ハプウが言葉を言い終えた瞬間だった。

ズズンッ!

しんのすけたちの目の前――ポニの大峡谷の入口に、突然白い光が現れた。

みさえ「な、なにっ?!」

ハプウ「これは……!?」

白い光は空間にヒビを入れるように侵食していくと、巨大な穴へ変貌した。穴の奥は光に包まれ、そこから虹色の波動が外に解き放たれていく。

ハウ「ウルトラホールだよー!」

862: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:35:18.15 ID:CVZsSMq50
ククイ博士「これがバーネットの言ってたウルトラホール……!」

しんのすけ「誰かいる!」

全員がウルトラホールの出現に仰天していると、ホールの奥から、人影が現れた。コツコツというヒールの足音を響かせて、ホールの外へと出てくる。

???「フフフ……」

ひろし「あ、あんたはっ!」

リーリエ「かあさまっ!」

リーリエにかあさまと呼ばれた人物――ルザミーネは、不気味な微笑みを浮かべながら、ウルトラホールから現れた。

ルザミーネ「ウツロイドに導かれて出てきたと思ったら、まさかアナタたちがいるなんて……。奇妙な偶然もあるものね」

みさえ「この人って、あなたの会社の……」

ひろし「あぁ、エーテル財団の代表……そしてリーリエちゃんの母のルザミーネだ」

しんのすけ「40越えてるけどかーちゃんより美人だゾ」

みさえ「うるさいわねっ! 知ってるわよ!」

863: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:38:33.31 ID:CVZsSMq50
ククイ博士「まさかこんな形で、あなたと出会うとは思いませんでした。代表」

ルザミーネ「あら? あなたは確か……ククイ博士だったかしら? ポケモンの技に興味がおありで、研究を進めているとか」

リーリエ「かあさまっ! グズマさんはどうなさったのですか?!」

ルザミーネ「グズマ? あぁ、別にあんな人、もうどうだっていいのですよ。元の世界に連れて帰ろうとしてわたくしを困らせるのですよ? 愚かにも程があります!」

リーリエ「……そうやって、ここでもエーテルパラダイスでも、自分のことばかりっ!」

ルザミーネ「何を今更……だってそうでしょう! わたくしは! わたくしの好きなものだけがあふれる世界で生きるの!」

ルザミーネ「たとえ自分の子供でも!」

ルザミーネ「どれだけわたくしを慕っていても!」

ルザミーネ「珍しいとされるポケモンだとしても!」

ルザミーネ「わたくしが愛を注げる美しいものでなければ、ジャマでしかないのです!」ギロッ

みさえ「なんなの……この人。本当にあなたが言ったとおり……!」

ひろし「……だろ?」

864: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:40:14.71 ID:CVZsSMq50
ハプウ「……ご婦人、お取り込み中のところ失礼する。わらわは、ポニ島のしまクィーン、ハプウじゃ」

ルザミーネ「しまクィーン……それがどうかしまして?」

ハプウ「此度のビーストの事件は、そなたが元凶としんのすけとリーリエから聞かされていた。なにゆえ、このような事態を引き起こしたのじゃ? その目的は?」

ルザミーネ「そんなくだらないこと、聞くのですね。決まっているでしょう? ウルトラホールの向こう側にある世界から、ビーストちゃんたちをアローラに呼び寄せて、世界中をビーストちゃんで満たしていくのです」

ルザミーネ「異世界のポケモンであるビーストと、愛しいポケモンが混じり合う究極の愛に満ち溢れた世界。その理想郷を作り上げることがわたくしの夢なのですから」

ハプウ「馬鹿げたことを……このアローラがそのビーストとやらで溢れかえれば、間違いなくアローラ――いや、世界中が混乱に陥る。そなたの言う愛とは程遠い世界じゃ。それが望みなのか!」

ルザミーネ「えぇ、わたくしは愛しい子供たちを束縛したりしませんから。ここにいる人間の命など、どうでもいいことです」

ルザミーネ「ですが!」ギロッ!

ルザミーネ「そこにいる野原しんのすけくん……! その子だけは、絶対に許しません! 生かしておくわけにはいきませんの!」

しんのすけ「オラが? いやあ照れますなぁ」

ハウ「褒めてるわけじゃないよー!!」

865: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:41:24.10 ID:CVZsSMq50
みさえ「どうしてうちのしんのすけが! アンタに何したっていうのよっ!」

ルザミーネ「うちのしんのすけ? そう、あなたがしんのすけ君の母なのね。ならば、同じ母親同士、少しはわたくしの気持ちも分かるのではなくって?」

ルザミーネ「その子は、エーテルパラダイスでわたくしの計画を邪魔したからです。あんな穢らわしい異臭物をよくもわたくしの鼻に……!」

ひろし「……」

ルザミーネ「それに、しんのすけ君と出会ったから、リーリエは醜く変わってしまったからです! 幼い頃は、わたくしの言うことをなんでも聞いてかわいかったのに、親に逆らうだなんて……それもこれも全て、しんのすけ君の所為ですっ!!」

リーリエ「わたしが変わったのはわたし自身の意志です! しんちゃんは関係ありません!」

ルザミーネ「黙りなさい! ですからしんのすけ君! あなたを始末します!」

しんのすけ「ポケモンの散歩したらちゃんとフンは片付けなきゃね」

ひろし「それは後始末! しかもそういう意味じゃねぇよ!」

ハウ「ちょっとは空気読もうよー」

866: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:42:50.59 ID:CVZsSMq50
ククイ博士「それはどうかな? ここにいるしんのすけはたった今、4つの島をめぐり、全ての大試練を終えたところさ! あなたがどれほどの実力者か知りませんが、しんのすけをたかが子供と侮らないほうがいいぜ!」

ハプウ「当然じゃ、このハプウとバンバドロを打ちのめしたからのう。ビーストなど敵ではないわ」

ルザミーネ「……ふふっ」

ルザミーネ「ふっふふふふふふ!!」

ハプウ「……なにかおかしなことでも言ったかの?」

ルザミーネ「いや、アナタたちの無知さには、笑うしかなくってね! ビーストちゃんは、この世界の常識を超えたポケモン。ただ単純にバトルに用いるだけしか思いつかないなんて。その程度の発想で、ビーストを知ったフウに語らないでくださる?」

ハウ「どういうことー? だってポケモン勝負で決着つけるんじゃないのー?」

ルザミーネ「見せてあげる……このウツロイドの、本当の力を!」

ルザミーネ「ウルトラスペースで手に入れた、わたくしとビーストちゃんが築き上げた愛の力を!!」ヒョイッ

ウツロイド「じぇるるっぷ……!!」ポンッ!

867: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:51:22.32 ID:CVZsSMq50
ククイ博士「あれがウルトラビースト……!」

ルザミーネの頭上に現れたウツロイドは、そのままルザミーネへと真っ直ぐに下っていく。それをルザミーネは受け入れるように両手をウツロイドへ伸ばした。狂気に満ちた表情を湛えながら。
ルザミーネの身体をウツロイドが覆っていくと、光に包まれながら変化が起きた。

ハプウ「なにが起きようとしているんじゃ……!」

最初に光から飛び出したのは、黒く変色したいくつもの肥大化した触手だった。そして触手の持ち主である巨大化したウツロイドの頭部に入った、ルザミーネがあらわになる。ブロンドの髪から闇のように黒く染め上げられている。

みさえ「ひいいっ……!」

ルザミーネはまぶたを開き、金色の瞳で驚きに包まれる一同を順に見回し、狂気に満ちた笑い声とも言える叫び声をあげた。

ルザミーネ(マザービースト)「ウアァハハハハハッ! アハハハハッ……!」

ルザミーネ「どうかしら? この美しい姿! ウツロイドとひとつになることで、わたくしはすべてのビーストの母となったの!」

ルザミーネ「そしてこれから、本格的にアローラへウルトラホールをたくさん開けて、理想郷を創りあげるわ!」

ひろし「バカな……人間とポケモンが融合したっていうのか!?」

リーリエ「かあ……さま……!」

ハウ「うわ、うわわー! ルザミーネさんがー!」

868: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:52:45.37 ID:CVZsSMq50
ルザミーネ「しんのすけ君! あなたをビーストちゃんの世界に連れて行って、あの子たちのエサにしてあげる。まだまだウルトラホールには、お腹を空かせた大きなビーストちゃんがたくさんいるもの!」

ハプウ「いかん! まだしんのすけのポケモンは元気になっとらん!」

ひろし「や、やめろーっ!」

みさえ「しんのすけ!! 早く逃げてーっ!!」

リーリエ「しんちゃんっ!」

ルザミーネがその巨体とは裏腹に、とてつもないスピードでしんのすけに接近する!

しんのすけ「うおおーっ!?」

ハウ「おれが相手だーっ!」スッ

ククイ博士「僕も相手になるぜ!」スッ

シロ「アンアンッ!!」バッ!

ルザミーネ「邪魔です!」カッ!

ルザミーネが咆哮を上げると、10本の触手で巧みになぎ払い、ハウとククイ博士、シロを吹き飛ばした!

シロ「ぎゃんっ!」ドサッ!

ハウ「うわーっ!」ドサッ!

ククイ博士「うっ……トレーナーに攻撃を仕掛けるなんて……!」グググ

869: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 20:56:13.10 ID:CVZsSMq50
しんのすけ「シロ! はかせ! ハウくん!」

ルザミーネ「ふふっ! しんのすけ君っ!」シュルルッ

ルザミーネが触手を伸ばし、シロたちに動揺するしんのすけを捕まえた!

しんのすけ「ぬわーっ!」

ルザミーネ「さあ、わたくしと……」

しんのすけ「なんちゃって」

ズルッ!

ルザミーネ「!?」

しんのすけはズボンとパンツを身代わりに、ルザミーネの触手から縄抜けした!

しんのすけ「や~い来てみろ来てみろ~妖怪メノクラゲオババ~!」オシリペンペン

ルザミーネ「――ッ! なんて反抗的な子なの!」ビキキッ!

870: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 21:00:01.54 ID:CVZsSMq50
みさえ「早く逃げてっ!」

ルザミーネ「させませんわ! 絶対に捕まえます!」ブンブンブンッ!

しんのすけ「おそいおそーい! ほーれほれー♪」シュパパパパ!!!

ルザミーネが触手を次々と繰り出していくが、それをしんのすけは電光石火の速さで回避していく。

しんのすけ「ほれほれどーしたの? ひょっとしてオラのインドぞうさんに見とれちゃって、ゼンリョクだせないとか?」シュパパパパ!!!

ルザミーネ「くぅぅぅっ!」ブンブンブンッ!

ハプウ「煽ってる場合じゃなかろうが!」

リーリエ「しんちゃん! 早く逃げてくださいっ!」

ルザミーネ「……!」ニヤッ

871: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 21:00:48.41 ID:CVZsSMq50
ルザミーネはいきなりしんのすけから背を向けると、リーリエへと狙いを定め接近した!

リーリエ「ひっ……!」

しんのすけ「――ッ! リーリエちゃんっ!」ダッ!

ルザミーネがリーリエへ触手を伸ばしてきた!
リーリエは無意識に船着場で彼女から暴力を受けた記憶がフラッシュバックし、目を閉じて身をかがめ、頭を抑えた。

……しかし、リーリエの身体に何も起きなかった。リーリエはおそるおそる目を開けると……。

しんのすけ「おわわっ!」

ルザミーネ「ふう、やっと捕まえた。もう逃がさないわ」グググッ!

しんのすけ「ぬううっ! ホントに離せ離せっ!」ジタバタ

リーリエ「そ、そんな……! しんちゃん!」

みさえ「しんのすけーっ!」

ひろし「くそっ! しんのすけを離せっ!」バッ!

872: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 21:01:51.13 ID:CVZsSMq50
ひろしが靴を脱いでルザミーネへ突進する!

ルザミーネ「その臭いはもう嗅ぎたくありませんの」スッ

しんのすけ「うわぁぁぁーっ! とーちゃんそのニオイやめてーっ!!」ツーーーン!

ひろし「し、しんのすけ! ……ゲフッ!」バキッ

ルザミーネ「みなさん、無粋なんですから。……あら」

靴を構えるひろしを触手で殴り飛ばしたルザミーネは、しんのすけが縄抜けの際身代わりにした地面にずり落ちたズボンを覗いた。
そして、しんのすけのポケモンの他に、月の笛が転がっていることに気が付いた。

ルザミーネ「これは何かしら……ねぇ?」ヒョイッ

リーリエ「それは!」

しんのすけ「あーん! 触っちゃダメっ!」

ルザミーネ「ふうん、これは二人にとって大事なものなの。これがねぇ……こんなもの!」

ベキッ! バキッ! ボキッ!

しんのすけ&リーリエ&ハプウ「!」

873: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 21:04:58.34 ID:CVZsSMq50
ルザミーネは勝ち誇った笑みを浮かべながら、バラバラにへし折られた月の笛の残骸を、地面へと落とした。

ルザミーネ「ウフフッ! 伝説のポケモンを呼び出すつもりだったのでしょうけれど、そうはいきませんよ」

ハプウ「笛が……!」

リーリエ「そんな……っ!」

ルザミーネ「さぁ、しんのすけ君、招待しますわ。ビーストの世界へ」グイッ!

しんのすけ「うわわっ! とーちゃんかーちゃーんっ!」

ひろし「しんのすけ! しんのすけーっ!」

リーリエ「しんちゃん!!」ダッ!

ルザミーネと供にしんのすけがウルトラホールに入っていく直前、リーリエが走り出してしんのすけの手を掴んだ!

しんのすけ「リーリエちゃん……!」

リーリエ「んくっ……! んんんっ!」ググッ!

874: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 21:05:51.46 ID:CVZsSMq50
ハプウ「でかした! 皆の者! リーリエを引っ張るんじゃ!」

ククイ博士「おうっ! みんなでんこうせっかで急ぐんだっ!」

すぐさまひろしたちはリーリエのもとへ駆け寄り、みさえがリーリエの腰に手を回し、さらにそのみさえの腰をひろしが、ひろしの腰をククイ博士が……というふうに引っ張り、しんのすけをウルトラホールから引きずり出そうとする。

リーリエ「しんちゃんっ……! 離しません! 絶対に離しませんから諦めないでっ……!」ググッ!

しんのすけ「ぬくくっ……」ググッ!

ギュッ

しんのすけ「1・2・3・4……」ギュウウウッ

リーリエ「指相撲してる場合ですかっ!」

875: 超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 2017/06/11(日) 21:06:51.60 ID:CVZsSMq50
ブンッ!

リーリエ「ごふっ!」ドゴッ!

パッ

しんのすけ「あ」

ウルトラホールから飛び出してきた触手に腹を殴られた拍子に、リーリエはしんのすけの手を離してしまった。しまった、とリーリエが目を見開いた時には、すでに遅かった。

しんのすけ「おわぁぁっ! リーリエちゃんっ! リーリエちゃんっ!」ズズズッ

リーリエ「しんちゃーーーんっ!!」

みさえ&ひろし「しんのすけーーーっ!」

しんのすけ「とーちゃん! 『やんちゃDEブリーダー』録画しといt……」

しんのすけが言い切るより先に、ウルトラホールの向こう側へと消えてしまった。
思わずリーリエがウルトラホールに入って追いかけようとするが、ひろしとハウがそれを抑える。

ブゥゥゥン

リーリエ「そんな……しんちゃん……! しんちゃん……ッ!!」

【ポニ島編 おしまい】


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