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1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/21(木) 05:18:19.93 ID:lP81vGRX0

体育祭は、まさかの展開で裏生徒会の勝利で終わった。
しかし万里は自分の男子生徒にしてきたことを反省し、全権を表生徒会にゆずり渡した。
不純異性交遊も解禁とまではいかないが、以前よりかなり寛大になってきた・・・

それでは。ということではないであろうが、男子生徒はそれぞれ
ガクトはみつ子と、アンドレはリサ、シンゴと杏子、ジョーとスターさん。
まだまだぎこちないにしろ、いい感じになっていた。ただひとり、キヨシを除いては。

(みんな女の子と仲良くしているのに何で俺だけ・・・?)
キヨシは皆の近況に羨ましく思いつつも、それがなぜなのかなんとなく解っていた。
「俺が好きなのは・・・千代ちゃん・・・だよな?」

体育祭が終わるまでははっきりと千代が好きだったことはキヨシも認識している。
体育祭が終わったら告白しようと思っていたのだが、結局それもしないままでいる。
なぜなら、徐々に心の中で存在の大きくなってきたあの女性が頭をよぎるからだ。

「花さん・・・か」

千代ちゃんは俺にとって天使だ。それは間違いない。
退学阻止にも多大なる貢献をしてくれたし、とても優しい。
しかしそれは自分に限ったことではなく、男子生徒全員に対して・・・だ。
それは理解しているし、だからといってそれが気持ちの枷になっているわけでもない。
その天使たる千代の存在をも超えるほど、花との攻防がキヨシにとって無視できない程の
出来事として心に刻まれていたのである。

キヨシの手には映画のチケットが2枚握られている。
「これで素敵な女の子をデートにでも誘いなさい」
こんなメッセージを添えて、キヨシの母が送ってきたチケットだ。
素敵な女の子・・・
以前のキヨシなら間違いなく千代を誘っていたであろうが、キヨシは迷っていた・・・






2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/21(木) 05:21:49.88 ID:lP81vGRX0

「あ~ぁ、退屈だな~」
花は放課後自室に戻り、普通の人はどれだけ暇でもあまり口に出してはつぶやかないセリフを吐いていた。

万里が全権を表生徒会に委ねてから、たまにみつ子から生徒会業務について相談される事以外、
ほぼやる事がなくなっていた。
それまで忙しく生徒会業務に精を出していた花にとって、今の状況は「ヒマ」の一言に尽きる。

(バカキヨシでもからかいに行こうかな)

ぁ・・・またキヨシの事を考えちゃった。
認めたくはない。認めたくはないが、心の中にアイツがいる。
それが復讐とか、憎しみではない、もっと別の感情であることに花自身、うすうす感づいてしまっている。

(なんであんなバカの事・・・)

全く以って理解ができない。
おしっこを見られおしっこをかけられエリンギを押しつけられあそこを見られ初チューを奪われ?
おしっこをかけてパンツ交換してパンツ脱がされてetc・・・
思い返してみると、良く考えたら自殺モンの恥ずかしいことばかり、しかもほとんど私が仕掛けての事。
たしかにこれだけ色々あって気にするなってほうが無理かな・・・

(でもいつから?)

最初の頃は当然、そんな感情は無かった。
キヨシなど、のぞきをしたキモイ男子生徒の一人にしかすぎなかった。
アイツが囚人だったころはとにかくされた事に対して復讐することしか頭に無かった。

(やっぱ、あの時・・・かな)

あの時。
言わずと知れた、看守部屋での攻防だ。
初チューを奪われた??から?バカになっちゃたすごいキスをされたから?
でもあの時はどうなんだろう。たしかにアイツに「隙をついて」って聞いた時はブチ切れたけど、どうなんだろう・・・わかんないな。

それからもアイツとは色々あって・・・
気づいたら心にアイツがいて・・・
日を追うごとにアイツが私の中で大きくなって・・・
でもアイツは千代ちゃんが好きで・・・

「あーもう!めんどくせ~な、花!」

そうよ、このままではダメ、私はやられたらやり返す女。
私がアイツに惚・・・っく・・・
そうだ、アイツから私の事を好きにさせてやる。
そうよ、そうでなくちゃ。このままじゃ私の負けみたいじゃない。それだけはいや。
アイツが私の事を好きになれば、この勝負私の圧勝!まいったか、バカキヨシ!
で、好きって言わせて、・・・言わせて?
言わせてからど、どうする、ワタシ!?

「私も好きです!」か?

いやいや、それじゃだめでしょ。優位に立てない。

「はぁ?オマエ誰に向かって告ってんの。10年はえーよ」とか?

いやいやいや、これじゃ付き合えないじゃん!
てか、え、付き合う?わたし、キヨシと付き合うの??
キャー・・・

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/21(木) 05:24:23.29 ID:lP81vGRX0

そんな二人が物思いに耽っていた日から数日後・・・

「花さんを映画に誘おう」

キヨシは決心した。どうなってもいいように、遺書も書いた。

(あくまで俺の勝手な憶測だが、花さんは俺の事を嫌いではない!・・・はずだ。
そうでなければあんなことやそんなこと、こんなコトまでしないだろう。それに何度か以心伝心、心が通じ合った事もある!)

最悪のシナリオを振り払うかの様に、キヨシは良い事だけを頭に浮かべていた。
しかし花のいる教室に向かうその顔は、素敵な女の子をデートに誘うものとは程遠い、死地へ赴く戦場の兵士そのものだった・・・


(バカキヨシを誘ってみよっかな)

花はあれから色々とシュミレーションをしていた。
あくまでも自分からでは無く、キヨシから好きになった的にもっていくにはどうしたら良いのかと。
結果導き出した答えがこれだ。

「買い物に付き合わせて、素敵な女の子っぽい所を見せつけて惚れさせる」

色々と考えた割には単純そしてだいぶ強引、且つどうしたら素敵な女の子?っぽいのかは良く分からないが、
なんとかなるよ!と、自分に言い聞かせ、花は逸る気持ちを抑えつつキヨシのいる教室に向かった。

「!」「!!」

「あ、花・・・さん」「うっ、キ、キヨシ・・・」

二人はお互いの教室に向かう途中の階段でばったり出会った。
二人とも教室に着くまでに心の準備をして・・・と思っていたのでこれは想定外だ。

(やべっ、ここで会うとは考えていなかったぞ。ど、どうする俺?どう切り出す!?)
(な、なんでここにキヨシが?三年生の教室に向かっていた?何故??)

「あの・・・」「あのさ・・・」

((っく、被ってしまった。これじゃあ(コイツ)(花さん)と相討ちだ!))

「な、なんだよ、何か用あんのかよ?」
(ヨシ、先手はもらった、これで私のペースで進めるわ!・・・ってあれ?)

「なんですか、いきなり。出会い頭にそんな言い方しなくてもいいじゃないですか!」
(ヨシ、言ってやったぞ!先手は取られたがこれで形勢逆転、俺のペースだ!・・・あれ?・・・いやそうじゃない、ちがうぞ俺!)


(っく・・・バカキヨシのくせに偉そうに。コ○ス・・・いやちがう、誘わなきゃ)
「あぁ、ワリィワリィ。つい・・・な。なんだオマエ、もしかして私に用事あったの?実は私もなんだよね、なんかムカつくから同時に言う?」

(いったい何処にムカつく要素があるのか良くわからないが、まあいいか花さんだし)
「そうですね。では同時に用件言いましょうか」

「今度の日曜ですが・・・」「今度の日曜さ~・・・」

「「!?」」

(まさか花さん、俺を誘いに来たのか?しかし何故?今までの花さんから顧みるに全く以って予想外だぞ。)
キヨシは顔を真っ赤にしながら花の予想外の言葉に困惑していた。

(え、キヨシから誘ってくれるの?うそ・・・え、だってコイツが好きなのは・・・??)
キヨシの3倍、顔を真っ赤にしてフリーズしている自分が、どうしようも無く恥ずかしい。

(な、なにがどうなっているのか・・・しかしここは男の俺から誘うのが正解な気がする)
「花さん、今度の日曜日、良かったら映画でも観に行きませんか?
 母からチケット送られて来たんですが、素敵な女の子を誘えってありまして
 ・・・花さんが良ければ・・・ですが」

は、恥ずかしいよ・・・自分の顔が更に赤く染まっている事は、鏡を見なくてもわかる。
まさかキヨシから誘ってくれるなんて・・・しかもサラッと素敵な女の子とか言いやが
ったぞ!?ど、どうするワタシ?なんて返せば優位に立てる?・・・いやちがうって!

「へ、へ~。オマエのお母さん、出来た人なんだな。ホントにオマエの親か?」

「なんでそういうこと言うんですかね。もういいですよ、じゃ・・・」
(相変わらずだな、この人は・・・これがなければホントに素敵でかわいい・・・っく)

やばい、怒らせた?ホントにダメだな私は・・・
「うそ、ごめん。誘ってくれて、あ、ありが・・とぅ、ウレシイよ・・・」
(素直になれ、自分!)
「でも、・・・千代ちゃんでなくていいの?」
(うわ~言っちゃったよ、言いたくないし聞きたくないのに・・・)

「ええ・・・俺は花さんを誘いたかったんです。いけませんか?」

「・・・・・・うれしいよ・・・・・・・」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/21(木) 05:27:58.02 ID:lP81vGRX0
そして日曜日・・・

ヤバい、どうしよう緊張してきたな~。
しっかりしなさい、花。そもそもアイツから好きって言わせる事が目的、今日のデート
だって私がリードして素敵な女の子だって事を気付かせるのよ!
ん?・・・デ、デート?あれ、これってデート・・・だよね。
まままマズイ、落ち着いて花。私は花。やられたらやり返す女!・・・何に??

と、とりあえず今日はショッピングしてランチして映画観て~
ヨシ、今日の予定を考えたら心が弾んで来たよ!
目いっぱいお洒落にしてきたし、キヨシはどんなカッコなのかな~・・・あは♪あれれ?


どうしよう、緊張してきたぞ・・・
待ち合わせ時間の一時間も前に着いちゃったし、どんだけ楽しみにしているんだ、俺?
実際楽しみで仕方ないけど。
映画観ながら手とか繋いじゃっていいのかな?殴られないかな?花さんも誘ってきたく
らいだから、流石に殺られはしないと思・・・いたいけど。
とりあえずまだ時間には早いな、その辺プラプラして来るか・・・

って花さん!?

「オ~ス、お待たせ!」

「ず、随分早いっすね。まだ50分前ですよ?」

「な、なんだよ、そういうオマエこそどんだけ楽しみにしてんだよ?」

「お前こそって・・・花さんも楽しみにしまくってたんですか?」

「っく・・・そ、そんな事・・・あるかも・・・」

「え、なんですか?良く聞こえないんですが。まあいいです、早速行きましょうか。
 お互い早く来たんだから、ゆっくりデート出来ますよ!」

(な・・・!コ、コイツあっさりとデートって認めやがったぞ。
 そりゃたしかにショッピングしたりランチしたり映画観て寄り添ってたりあと
 ・・・キス・・・とかしたらデート・・・っぽいけどさ。
 う、うれしくなんかない・・・事もない・・・か?あぁくそっ)


「花さん、今日は一段と素敵ですね」

「えっ、何、急に。ええっと・・・ありがと・・・」
(くそっ、油断した。まさかショッピングモール歩きながらのタイミングでこのセリフかよ!
 うぅ・・・顔が熱いよ。バカキヨシのくせにさっきからウレシイ事ばっか言いやがって。
 このままじゃペースを掴めないじゃん!・・・ていうか気付いてくれたんだ♪)

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/21(木) 05:30:28.62 ID:lP81vGRX0


「花さん、ランチは何がいいですか?」

「そうだな~、洋食がいいかな。ドリアとかパスタとか?」

「了解、ではそうしましょう!」


キヨシはパスタ、花はグラタンをつつきながら・・・

「さっきキヨシに選んでもらったこのブラウス、かわいいね」

「俺、花さんみたいにファションセンスは無いですが、俺なりに花さんに似合う服を選んだつもりですよ。
それにそのブラウス、袖がシースルーになっているからセクシー・・・」

(くぅぅ・・・キヨシの奴、次から次へと・・・。また顔が・・・キヨシの事睨みつけたいのに見れないよ・・・
 こ、ここは話題を変えないとヤバいぞ、私が!)
「キ、キヨシのパスタ美味しそうだね、一口もらっていい?」

「いいですよ、大盛り頼んだんで一口位。・・・はい、あ~んして」

「!!」

「ぁ、ぁ~ん」(きゃぁぁぁぁぁぁぁ~)


「どうしたんです?なんか疲れているようですが・・・」

「だ、大丈夫、体質なの・・・」


花の具合?が戻るまで休んでから、映画館へ・・・

「・・・ガラッガラですね・・・」

「そうだね、つまんない映画なのかな?」

「いや、そんな映画を母が勧めるとは思えませんが・・・」

「あ、始まるみたい。観てみりゃわかるよ」

「そうっすね」


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/21(木) 05:32:14.15 ID:lP81vGRX0


こ、これは・・・
なんてこった、メチャクチャ甘~い恋愛映画かよ!
しかも主人公達のいちゃつきっぷりときたら・・・こっちがはずかしくなるわ。
たしかにストーリーもしっかりしていて面白い映画だけど、花さん、こんなの     
観れるのかな・・・って食い入ってるよ!

(手、繋いでみようかな・・・コロ・・・されるか!?)

な、なんなのよ、この映画!?
ただ甘いだけじゃないし、物語も素敵だし純愛だし・・・憧れるぅ
こんなの観ながらカップルって寄り添ったりするのかな・・・

(よ、寄り添ってみよう・・・かな・・・具合悪いふりでもすればいいでしょ?ダメ?)

「「!!!」」

「「な、なぜ・・・」」

((同時に手を繋ぎ寄り添ってんだ?(私)(俺)達―!!))


結局最後まであのままの姿勢で観てしまった・・・
映画と私たち、どっちのほうが甘かったんだろう?
映画館が暗くて良かったわ、あの時の顔コイツに見られてたらワタシ生きてけないよ。

「映画、良かったですね、その・・・素敵な感じが」

「そ、そうだね、楽しかったよ」

((途中から内容入って来なかったわ!))

「そろそろ帰りますか?」「・・・うん」


あ~あ、今日が永遠に続けばいいのに・・・
楽しい時間って、あっという間だね。でもホントに楽しかったな~
キヨシも楽しんでたのかな・・・私だけって事、無いよね?

「花さん」
 
「?」


夕焼けの灯りに照らされた若いカップルは、微笑ましい位に素敵なキスをしていた・・・

終わり