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3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:45:19.39 ID:ER9JoE5x0
美樹「その通り! 広珍しく察しがいいじゃない」

広「珍しくってなんだよ?」

郷子「でもあそこの森って確か私有地なんじゃなかった?」

郷子「勝手に入ったら怒られるでしょ」

広「ふーん。じゃ仕方ねーな」

美樹「え、何? もしかしてビビっちゃった?」

広「は? 違えよ」

美樹「そういやあそこって雑木林が広がってるし、案外珍しい虫とかいたりして」

美樹「カブトムシとかー、クワガタとかー、案外高く売れそうなのもいるかも~!」

広「……確かにいろいろいそうだ」

美樹「それにムシムシして暑いからさ、肝試しも兼ねて……なんてどう?」

広「そーだなー」

郷子「あんたバカねー、何カンタンに乗せられてるのよ」




4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:47:19.49 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「おーい、お前たち。何の話をしているんだ?」


郷子「あ、ぬ~べ~」

広「いやさ、森に虫捕りに行こうかって話」

美樹「そうそう!」


ぬ~べ~「そうなのか? だが今日はもう日も暮れるしな」

ぬ~べ~「虫取りは休みの日にでも行って……良い子はさっさと家に帰りなさい」


「「「はーい」」」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:50:38.12 ID:ER9JoE5x0

――死の森――


カァー カァー


広「う~ん、いねえなーカブトムシ」

広「美樹、そういやカブトムシって1本角だっけ、2本角だっけ?」

美樹「え、本気でカブトムシ捕るつもりで来たの?」

郷子「ちょっと、良い子は家に帰るんじゃなかったの?」

美樹「何言ってんの、私達悪い子でしょ?」

郷子「やめなさいよ……変なのに襲われるわよ」

広「しっかしこの森気味悪りいな……その辺にペットの墓がゴロゴロあるし」

美樹「案外人間も埋まってたりしてね」

郷子「だからそういうこと言うの止めなさいって」


広「……お、おい。あれ見ろよ」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:53:44.43 ID:ER9JoE5x0
郷子「……嘘、ホントにあった……古井戸……しかも結構大きいし」

広「横に腐った木の板が転がって……あ、これが井戸の蓋だったのか?」

広「ボロボロになって苔がびっしり生えてら……」

郷子「周りは雑草とか蔦とかに覆われて……凄い薄気味悪い」

美樹「これはこれは……お菊さんでも出てきそうな雰囲気ね」

美樹「じゃ、広。早速井戸の中を覗いてみて」

広「! おい、何でオレが覗くんだ」

美樹「何言ってんのよ、男でしょ。それとも何、ぷぷぷ……そんなに怖い?」

広「ッ!」

郷子「やめた方がいいって……今はぬ~べ~もいないし……もし何かあったら」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:57:30.54 ID:ER9JoE5x0
広「いーや、見る!」

広「こんなの全然怖かねーし!」

郷子「ちょっと広……」

広「ダイジョブだって。妖怪だろうが何だろうがもう慣れっこだっての!」

広「心配すんなよ郷子、何か出てきたらオレがぶっ飛ばしてやるから」

美樹「さっすがー、よっ男前!」

郷子「もー……ホント……」


広(どうせ何も出てこねーよ……いてもタヌキか野良猫くらいだろ)


美樹「じゃ、広が見終わったら次は私達ってことで」

郷子「……」


広「……ゴクリ」


美樹「……どう、何か見えた?」


広「いや、別に……普通の井戸だぞ。完全に涸れちまってるようだけど」

広「特に何――ってうわぁぁぁあああああああっ!!!」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:01:59.09 ID:ER9JoE5x0
美樹「!?」

郷子「どうしたの!?」


広「手だ! 手だ! 何か青白い手に掴まれたっ!!」

広「スゲー力で! 中に引っ張り込む気だ!!!」

郷子「もうホントバカなんだから!!」

郷子「美樹! あんたも広を引っ張るの手伝って! 私だけじゃ踏ん張りきれない!!」


美樹「えー、何その言い方。まるでこの美樹ちゃんが太ってるとでも言いたげね」


広「ますます引っ張る力が強くなってく!!」

郷子「いいから早く手伝え!!」

美樹「分かったわよ――て、何よぉ!? この馬鹿力っ!!」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:07:05.72 ID:ER9JoE5x0
ボワァァァァァァァァ


広「!? 何か手が這い出て来た先に! 何だありゃ!」

郷子「だから何なのよ!?」

広「分っかんねーけど!! 変な空間が広がってる!?」

美樹「ダメだわ、これ無理! 私スリムだからもう限界!!」

郷子「全員引っ張り込まれるー!!」


ダッ


ぬ~べ~「お前たちっ!」


「「「うわぁぁきゃぁぁああああああああっ!!!」」」


11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:11:09.83 ID:ER9JoE5x0

――??――


ドスンッ


美樹「痛たたた……って何処よぉ……ここ?」

郷子「い、井戸の中……じゃないわね」

郷子「何だか物凄く……広いみたいだし」

美樹「確かに、井戸の中に落っこちたんだったら……井戸の口が上に見えるはずだもんね」

郷子「……洞窟の中……みたいな」

美樹「出口は見えないけれど。あーあ、困ったことになったわー」

郷子「誰のせいだと思ってるのよ」

美樹「ノコノコついてくる方にも責任はあるんじゃないかしらー」

郷子「いい加減に――」


ぬ~べ~「美樹、郷子! 大丈夫か」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:13:51.79 ID:ER9JoE5x0
郷子「あっ、ぬ~べ~!」

美樹「どうしてここに?」

ぬ~べ~「……どうしたもこうしたもないだろ」

ぬ~べ~「お前たちのことだ。また危ない所に勝手に足を踏み入れたんじゃないかと思ってな」

ぬ~べ~「幸い克也達が、お前たち3人が北区の森の方に向かったのを見ていて」

ぬ~べ~「仕事を切り上げて急いで駆け付けたんだよ……」

美樹「さっすがぬ~べ~! 頼りになるわ」

美樹「ついでに克也もたまには役に立つじゃないの」

郷子「本人がいないからってそういう言い方は、……ううん本人の前でも変わらないか」

郷子「――あれ、そういえば広は?」


広「おーい! こっちだよこっち!!」

??「キシシシシシ」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:18:10.90 ID:ER9JoE5x0
美樹「あ、あそこ!! 上の方にぶら下がってる……桶? ……から広の顔が見えるわ」

美樹「もしかしてあれ、井戸水を汲むための桶?」

郷子「よく見て、桶の中に別の誰かもいるわよ!」



キスメ「お前たちが落とした死体はこれかい?」

広「オレは死体じゃねーよ!!」



郷子「広の奴、あいつに捕まったみたい!」

美樹「ぬ~べ~、あれって」

ぬ~べ~「釣瓶落としだな」

美樹「……それって確か、木の上から落ちてきて人間を襲うってやつ?」

郷子「でも見た感じ子どもじゃない? 私達と……そんなに変わりないくらい」

ぬ~べ~「ああ、見た目は子どもだが……妖怪であることは間違いなさそうだ」

美樹「ついでに郷子と同じくらいぺっちゃんこね、クワバラクワバラ」

郷子「ちょっと! 私と同じくらい何がどうなんだって……?」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:24:43.53 ID:ER9JoE5x0
キスメ「人間ひとり連れ去るつもりだったのにねぇ」

キスメ「ヤマメの友釣りみたいになっちゃった……いや、それはアユだったかな」

広「ごちゃごちゃ言ってないで放せよこんにゃろー!」

キスメ「ジタバタするなら首切っちゃうよ?」

広「ひっ」



美樹「ねぇ、あいつ手にカマ持ってるわよ!」

郷子「ぬ~べ~! 早く広を助けないとこのままじゃ……!」

ぬ~べ~「……」

ぬ~べ~「おい、広を……いや、その子を放してやってくれないか?」


キスメ「どうして?」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 20:29:51.20 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「広は、いやここにいる子どもたちは……俺の大事な生徒だからだ」


キスメ「せいと? ああ、じゃあ、お前はせんせぇ?」

キスメ「寺子屋で教えてるの?」



郷子「寺子屋って……」

美樹「例えがやたら古いわね~」

ぬ~べ~「とにかく、お前が広を連れ去ろうとしたのがただのいたずら目的だったとしたら」

ぬ~べ~「俺はこの子達を引き連れて、さっさとここから立ち去る。ここはお前の棲みかなんだろうしな」

ぬ~べ~「それ以上の干渉は一切しない。聞き入れてくれるか?」


広「……ゴクリ」

キスメ「……」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:35:31.58 ID:ER9JoE5x0
キスメ「大丈夫、私はこれを殺さない」


ぬ~べ~「!」

美樹「良かったじゃない、話が通じる相手みたいよ」

郷子「だったら、早く広を降ろしてあげて」


キスメ「子どもはねぇ」

キスメ「たんまりと太らせてから喰っちまうのさ」

キスメ「だから今は、殺さない」

広「そっか、それは助かった……て、助かってねぇええっ!?」


美樹「あちゃー、交渉決裂ね」

美樹「ぬ~べ~!!」

ぬ~べ~「そうか、それなら――仕方がないな」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:40:58.36 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「『南無大慈大悲球苦救難(なむだいじだいひきゅうぐきゅうなん)

広大霊感(こうだいれいかん)

白衣観世音(びゃくえかんぜおん)』

白衣観音に封ぜられし鬼よ

今こそ――その力を示せ」


キスメ「!」

キスメ「お、鬼ッ!?」


ブチィ……ッ……!!!


美樹「やった! あいつの入ってた桶に繋がってた縄か何かを切っちゃったわよ」

郷子「真っ逆さまに落ちていく!」


広「落ちるー!!」

美樹「オウ!?」

郷子「こっち来るなー!!」


ドスンッ

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:45:15.82 ID:ER9JoE5x0
広「痛つつ……」

郷子「痛いのはこっちよ! ってドサクサに紛れてドコ触ってんの!!」

広「んだと!? これは不可抗力だろ!」

美樹「いーから早くどいてって」



キスメ「……ッ……」

キスメ「! 桶……私の桶は……どこ……?」

ぬ~べ~「お前が落とした桶は――これか?」


キスメ「……!」

ぬ~べ~「いいか、よく聞け」

ぬ~べ~「妖怪(おまえ)が単にいたずら目的だったら、ここまでしない」

ぬ~べ~「だが、お前が俺の生徒達に危害を加えるというのなら」

ぬ~べ~「俺は心を鬼にする」

ぬ~べ~「この左手に宿りし鬼の力を――躊躇なく使えるように」

ぬ~べ~「そうするために」

キスメ「……ひ……ひぃ」

ぬ~べ~「だから……これに懲りたらもう二度と」


ヒュルルルルルルルルル


広「!? 危ないぬ~べ~!」

美樹「何かがまた上から来るわ!」

郷子「何あれ、太い糸みたいな!!」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:51:02.16 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「!」

キスメ「!」


シュルン!


ぬ~べ~(俺への攻撃――じゃない。釣瓶落としを回収した?)

美樹「あっ、あれ見て!」

広「上にでっかい蜘蛛の巣が張ってあるぞ!」

郷子「さっきまでは何もなかったのに! いつの間に」

広「ってやめろよ! 電話線のアレ思い出したじゃねーか!」

郷子「って言わないでよ!? 私も思い出しちゃったじゃない!」


??「私は巣(いえ)を作るのが得意でねぇ。勿論、貴方たちが住めるような建物も一昼夜で作れちゃうよ」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:54:38.58 ID:ER9JoE5x0
広「……」

郷子「また女の子なの……」

美樹「今日やたら女妖怪出没してるけど、ぬ~べ~女難の相でも出てるんじゃないの?」

ぬ~べ~「やめてくれ……何だか背筋が寒くなるから」


キスメ「……ヤマメ」

ヤマメ「まったく何やってんだい、あんたは」

ヤマメ「外界(そと)の人間をこっちに引っ張り込んでくるのに飽き足らず……」

ヤマメ「どうやら随分と厄介なモノまで連れてきてしまったようね」


広「……ぬ~べ~の鬼の手のこと言ってんのか?」

郷子「案外美樹のこと言ってるんじゃない?(首が伸びるし)」

美樹「おんどりゃ! 誰が厄介者じゃ!」

ぬ~べ~「3人とも少し黙っていてくれないか」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:01:01.98 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「巣から逆さに吊り下がっているお前は十中八九――土蜘蛛のようだな」

ぬ~べ~「『土蜘蛛草紙』という絵巻物には、平安時代の武将源頼光とその郎党が土蜘蛛退治をした様が描かれている」

ぬ~べ~「土蜘蛛はこういったジメついた空間を好み、強靭な糸を張って営巣をするし、粘着質の糸は人を捕えるのにも使う」

ぬ~べ~「ただ、糸を口ではなく手から放つのはなかなかに珍しいが」


ヤマメ「ほほう……貴方はやたら妖怪に明るいようで」

ヤマメ「先生がどうとか言っていたけれど、民俗学者か何かなのかい?」


ぬ~べ~「いや、俺はただの小学校の教師だが」

ぬ~べ~「ひとつだけ普通の教師と違うのは、俺が霊能力を持っているということだ」

ぬ~べ~「日本では唯一の霊能力教師、といったところさ」


ヤマメ「……なるほど。通りでやたら察しがいいわけだ」

ヤマメ「そうなると、もしかして貴方は今自分達が置かれた状況も、ある程度理解できているの?」


ぬ~べ~「まあ――大体な」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:07:21.34 ID:ER9JoE5x0
広「?」

郷子「私達が置かれている状況って……どういう意味なの?」

美樹「ぬ~べ~、もったいぶらずにハッキリ言ってよ」

ぬ~べ~「要するにだ。どうやら俺達4人は“神隠し”に遭ってしまったらしい」

ぬ~べ~「さっきの釣瓶落としによってな」

広「神隠しだって?」


スルスルスルスル


ヤマメ「大方間違ってはいないかな」

ヤマメ「貴方達、有名な心霊スポットにでも行ったの?」

ヤマメ「スキマ以外の妖怪が外の人間を引きずり込むには……余程境界が薄くなっている結節点じゃないと」


郷子「って何か言いながら、降りて来たわよ!?」


ヤマメ「安心しなさいな。私はキスメ(あれ)ほど手が早い妖怪じゃないから」


美樹「って言ってるけど……」

広「大丈夫なのか、先生?」

ぬ~べ~「……、こいつは大丈夫だろ」

郷子「えーそんなあっさりと?」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:12:38.05 ID:ER9JoE5x0
ヤマメ「おやおや。ちゃんと話が通じる人間で、こちらしてもありがたいね」

ヤマメ「何しろ、鬼の手だなんて……こんな厄介モノを持っている相手に襲いかかるのは、腫れ物に触るようなもの」

ヤマメ「触らぬ神に祟りなし……いや触らぬ鬼だね」

ぬ~べ~「それはいいとしてだ」

ぬ~べ~「ここで面倒事を起こしたくないのなら、俺達をここから追い出す手引きをしてほしい」

ぬ~べ~「この異界に通じる“入口”が存在するということは、当然“出口”も存在するということだろ?」

ヤマメ「まあ、込み入った話は後でゆっくりしてあげるからさ」

ヤマメ「まずはキスメのやつに桶を返してあげてくれないかい?」


キスメ「……」


ヤマメ「これは滅法内気な妖怪でね。宿を取られるとヤドカリみたいに縮こまってしまうのさ」


ぬ~べ~「……。わかった、ほら」

キスメ「……ペコリ」


広「どこが内気なんだよ……オレ普通に襲われたんだぞ」

美樹「まーまー、過ぎたことはもういいじゃないの」

広「何だよ人ごとだと思って!」

美樹「だって人ごとだし」

郷子「はいはい、大人げないわよ……広」

広「何でオレが責められんだ!」

郷子「妖怪が出たらぶっ飛ばすって言ったのはどこの誰だった?」

広「……っ」

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:19:27.55 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「キスメ……というのか、あの釣瓶落としの名前は。桶を取り返したらもう闇に紛れて行ってしまったが」

ヤマメ「ちなみに私はヤマメだよ。川魚じゃなくてさっき貴方が言った通りの土蜘蛛」

ヤマメ「好んでここに棲みついているかといったら、少し微妙なところもあるけどねぇ」

ぬ~べ~「……まぁとにかく、ヤマメくん。詳しい話を聞かせてもらえるか?」

ヤマメ「うーん、こんなところで立ち話ってのも難だし」

ヤマメ「いい機会だから、私が案内してあげても良いわ――この旧地獄をね」


広「へー……ってここ地獄なのかよぉ!?」

郷子「えっ、じゃあ閻魔大王とかがいるわけ!?」

ヤマメ「よく聞きなって、旧(ふる)い地獄さ――今ではもう本来の地獄としては機能していない」

美樹「ま、とにかくその旧地獄とやらを観光案内してくれるのね。面白そうじゃない!」

ぬ~べ~「美樹は適応力が高いなー」

ぬ~べ~(しかし、かつての地獄だと? 逆に言うならば……現在の地獄は……)



ヤマメ「付け加えるなら――蛇の道は蛇ってやつだ」

ヤマメ「貴方の話し相手は、私では不釣り合いだと思ってね」

ぬ~べ~「……!」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:25:41.87 ID:ER9JoE5x0
広「どういう意味だ?」

郷子「ヘビが出てくるから気をつけろってことでしょ?」

美樹「確かにいろんなモノが出てきそうよね。ハイスケールなお化け屋敷って感じ」


ヤマメ「とまあ、そういうことさ。どうだい、ついてくるかい?」

ヤマメ「別にイヤなら無理にとは言わないけど。私は勝手に闇にでも紛れるから」


ぬ~べ~(この妖怪の纏う妖気の感じからして、敵意はなさそうだが)

ぬ~べ~(万一、これが罠だとしたら……広達を危険にさらすことになる)

ぬ~べ~(だが、仮にこのままこの場に残ったとしても)

ぬ~べ~(食糧はおろか水さえも入手できるとは限らない……何しろ未知の環境だ)

ぬ~べ~(そして、この土蜘蛛が言う蛇の道は蛇という言葉の本意は)

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:32:43.53 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「分かった――案内を頼もう」

ヤマメ「よし来た――それでは、楽しい楽しい地底の旅へ外来人4名様をご案内~」


広「地底って……ここ地下だったのかよ」

美樹「そりゃ地獄なら地下にあるでしょ」

広「でも本当に大丈夫なのか……ついて行って?」

郷子「ぬ~べ~がそう言うんだし……大丈夫なんじゃない?」

美樹「それにしても、今日のぬ~べ~ってやたらマジメな感じよね?」

郷子「うーん、そう言われると……いつものぬ~べ~っぽくないかも」

ぬ~べ~「あのなぁ、もう少し危機感を持て」

ぬ~べ~「それから……お前たちはいつもの俺にどんなイメージを持っているんだ……」

ヤマメ「いつもはどんな感じなの?」

広「んーと。普段はおっちょこちょいなスケベだけど、やる時はやるって感じかな」

ヤマメ「へー、やる時はやるねぇ。一体ナニをやるんだか」

ぬ~べ~「……広、言葉足らずだぞ」


美樹「さーて、地獄の底に埋もれたお宝探しの旅にしゅっぱーつ!」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:44:39.47 ID:ER9JoE5x0

――妖怪の山(茨華仙の屋敷)――


華扇「――何かな、この胸騒ぎ」

小町「お、不整脈かい? ようやくあたいが一仕事する時が来たか」


華扇「生憎そっちの方面でお世話になるつもりはないわ」

小町「そうかいそうかい。まあ、あんまりお仕事増やされちゃ……こちらとて身が持たない」

小町「今も邪仙が悪さをしないか監視するのに忙しくて……ああ、肩が凝るなあ」

華扇「監視って……うちに来てお菓子を食べてお茶を飲んで油を売っているだけでしょ?」

小町「うーん、あたいは菓子よりやっぱり旨い酒に美味い肴が一番かな?」

華扇「……貴女の食の好みを聞いているわけじゃないから」

華扇「第一私が邪仙って失礼ね……過去によこしまな行いをしたことも無ければ、これからするつもりもないというのに」

小町「あんたがそう思うんならそうなんだろうけどさ。あんたにとってはね」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:49:45.21 ID:ER9JoE5x0
小町「それで、さっきの胸の空騒ぎってやつは?」

華扇「――間欠泉の一件以来、地上に残留した怨霊が、わずかながら活発になっている様子」

華扇「もともとそれらは地底に蔓延(はびこ)っていた怨霊達……」


ヒョイ


野良怨霊「Oh…」


パァンッ


華扇「その怨霊達が妙に敏感になっているのが気になってね。地底に何らかの動きがあったのかな、と」

小町「それだけのことで? わざわざ地底に結びつけるなんてこじつけじゃないのさ」

小町「それより、あたいの目の前で平然と怨霊を握りつぶすのはさすがにやめなよ……」

華扇「これこそ、それだけのこと、で済ませてもいいんじゃないの?」

小町「やれやれ」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:52:21.03 ID:ER9JoE5x0
華扇「それよりも貴女、いい加減本業に戻りなさい」

華扇「三途の川の渡し船が欠航続きじゃ、さ迷える魂達も密になり身動きがとれなくなって彷徨うこともできなくなるでしょう?」

華扇「貴女の上司もさぞ気に掛けていることでしょうね」

華扇「まずは自分の職分に対する責任というものをもっと自覚して――」

小町「あーはいはい、もういいから! 説教は映姫様(ボス)だけで十分だよ」

小町「もともと、そろそろお暇するつもりだったのさ。けれど、貴女の監視もあくまで仕事の一環なんでね」

小町「それじゃ、また来るから。今度はこっちが他所へ連れて逝ってもいいんだよ?」

華扇「はいはい、いいからさっさとお行きなさい」


スゥ……


華扇「――さて、地底の方で妙な気配を感じるっていうのは本当なのね?」

ヒョコリ

管狐「コクリ」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:56:37.40 ID:ER9JoE5x0
華扇(前に霊夢に憑いて、解放した管狐――わざわざ私を頼ってここまでやってくるとは)

華扇(私達にはまだはっきりとは感じられない小さな“異変”を鋭敏に感じ取ったのかも知れない)

華扇「……少し探りを入れてみましょうか」


ザッ


竜「……」


華扇「鬼が出るか蛇が出るか、何も出てこないのか――あるいは」


44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 22:03:31.54 ID:ER9JoE5x0

――地底(旧都周辺)――


??「ったく、この世の掃き溜めってのはまさに此処のことだな」


正邪(けれども、さすがにこんなところまで追ってくる輩はいないだろ)

正邪(お尋ね者もラクじゃないな――ほとぼりが冷めるまでしばらく地底を流離っとくか)


??「お! 貴女はもしかして、お尋ね者の天邪鬼さんかな? 噂だけは耳にしているよ」


正邪「あァ? 誰だおま……、え……?」


勇儀「喜びな! お前の仲間の鬼だよ。と言っても、お前は正確には鬼に似て非なるモノか」

正邪(あ……モノホンだ……)


ガシッ

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 22:08:22.63 ID:ER9JoE5x0
勇儀「丁度いい。酒盛りしようと思ったんだが今日はモリ(呑み仲間)があつまって無くてね」

勇儀「さっき正体不明の妖怪が珍しく地底に戻っていたから捕まえたが」

勇儀「二人酒ってのも興が足りない」

勇儀「折角だからお前も交えてやるよ。たまには気ごころの知れない者同士呑むのいいだろう」

正邪「あの……、申し訳ありませんがお断りさせてもらってもよろしいでしょうか」

勇儀「よし快諾だね! お前さんは天邪鬼らしく素直だな」

勇儀「鬼の酒盛りに誘われて物怖じしないとは、案外度胸があるじゃないか!」

正邪「……」


ズルズル……


正邪(捕まっちまった……ヤバいやつに……)

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 22:11:21.61 ID:ER9JoE5x0

――死の森――


殺人犯「……おお、こんなところに古井戸があるじゃねーか」

殺人犯「この中に死体を入れちまえば、わざわざ穴掘って埋めることもねえ」


ドサッ


殺人犯「……よし、これでいい」

殺人犯(……念のために、ちゃんと底まで落ちたか確かめてみるか)


殺人犯(!? ない、嘘だろ……! 確かに下に落ちたはず!?)


ザッ


殺人犯「!? 上から……何か……」


「オマエガオトシタシタイハコレカイ?」「ぎゃぁぁぁぁああああああああああっ!!?」


ブシャァァッ


                      (第1話:地の底の釣瓶落としの巻・終)

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/27(日) 23:46:29.09 ID:qR/+qlng0

――童守小学校――


キーンコーン カーンコーン


玉藻「何ですって? 鵺野先生と生徒3人が行方不明になっている……と?」

リツコ「そうなんです……昨日の放課後から連絡が取れなくなっていて」

リツコ「……念のために警察には通報したんですが」


克也「そうなんだよ!」 

克也「あいつらが北区の方に向かってるのを見かけてよ……そん時は気にも留めてなかったんだが」

まこと「その後、念のためにって先生が3人のあとを追って行ったのだ……」

克也「ぬ~べ~がついてったら大丈夫だろうと思って、オレらは日が暮れたら帰ったんだ」

まこと「でもみんな、夜になっても家に帰って来なかったらしくて……」

まこと「ぼくの家にも家族の人が心配して『遊びに来ていないか』って電話があって……」


玉藻「そして――そのまま、現状に至るというわけか」


ヒュゥォォォォ


ゆきめ「鵺野先生が……行方不明っ!?」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 23:50:51.72 ID:qR/+qlng0
リツコ「……ええ」


克也「ああ、そうなんだよ……広達3人も」

まこと「きっと妖怪の仕業なのだ! 悪い妖怪に4人とも連れ去られてしまったのだ!!」


ゆきめ「そんな……」

玉藻(鵺野先生がついているならば、よもや大事はあるまいが……万一ということもあり得る、か)

玉藻「今日の健康診断は中止させてもらいます――いいですね、校長先生」


校長「う、うーん……」


リツコ「……あ、校長先生もいらっしゃったんですね」

ゆきめ「私も探しに行きます!」

ゆきめ「鵺野先生が苦戦するような敵だったら、少しでも戦力があったほうがいいでしょ?」

玉藻「……それはそちらの勝手だ。私が特段口を挟むことではありませんよ」

玉藻「私は私の目的に沿って行動するだけのこと。別に彼らを助けんがために向かうわけではない」

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 23:57:05.42 ID:qR/+qlng0
克也「オレも探しに行くッ! あいつらが行方不明じゃいてもたってもいられねぇ!!」

まこと「ぼくも行くのだ!」

玉藻「君たちはダメだ! ――更に生徒を危険に巻き込んでしまったら鵺野先生に顔向けできないからね」

克也「ッ! でもよ……」

ゆきめ「ふたりとも心配しないで。みんなは私達が必ず連れ戻してくる……だから、待っていて」

克也「……畜生、……わかったよ」

まこと「……絶対……なのだ。絶対みんなを連れ戻して……ほしいのら……」

克也「おい、泣くなよ……まこと」


玉藻(――何しろ鵺野先生は私にとって大事な研究対象だ。まだいなくなってもらっては困る)


リツコ「クラスの皆のことは私に任せて。……お願いね」

ゆきめ「――コクリ」

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 23:59:28.82 ID:qR/+qlng0

――博麗神社――


霊夢「はー、……相変わらず誰一人参拝客が来ないわね」

萃香「何を言ってんの? 私が今参拝してあげているじゃない?」

霊夢「あんたは参拝客に含まれてないわよ」

霊夢「昼間っから酒を浴びて、お酒臭いからさっさとどっか行って頂戴」

萃香「んー? まあ、言われなくてもそろそろ出かけるつもりだったんだ」

萃香「ちょっと興味深いモノを見つけてねぇ。ちらほら様子見にでも行こうかな」

萃香「それじゃあ――また今度」


サラサラサラ……


霊夢「……」

霊夢「さて、萃香はどっか行ったからいいとして……あんたはいつまでうちに居座るつもり?」

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/28(月) 00:03:46.21 ID:iWjHv62D0
貧乏神「……いつまで?」

霊夢「さっさと帰るべき場所に帰ったら?」

貧乏神「オラァ現世でニンゲンに存在忘れ去られただ」

貧乏神「そしてこっち流されて……まったく日蔭者の棲みづらい世の中になってしもたわ」

霊夢「嘘おっしゃい。あんたが忘れ去られるって、外は共産主義に彩られて格差社会が解消されたの?」

霊夢「そんなハナシ、早苗からは聞いてないわ」

貧乏神「……」

霊夢「博麗神社は幻想郷と外の世界とを隔てる境界線上に存在する」

霊夢「――だからどちらの側にも存在しているといえるし、逆に存在していないともいえる」

霊夢「あんたはたまたま外界の博麗神社に潜り込んで、たまたま大結界を通過してこっち側に来てしまったってことじゃないの?」

霊夢「外界に今でも息づく妖怪や神霊の類は、こっちの常識にもそっちの常識にも馴染み得るもんね」

貧乏神「難しいことなぞ分からん。オラァ発想も貧困だでな」


霊夢(それとも、誰かさんが気まぐれでこっちに連れ込んだ? むしろそっちの方があり得るか)

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/28(月) 00:08:53.58 ID:iWjHv62D0
霊夢「ま、理由はどうあれ私は気にしないけどね」

貧乏神「?」

霊夢「あんたが居ようが居まいが、たいして何も変わらないからよ」

霊夢「もっとも問題を起こすつもりがあるんだったら、容赦なく退治させてもらうけど」

霊夢「ただいるだけなら、問題ないってこと。もともとうちは妖怪神社なんて呼ばれてるし」

霊夢「何なら博麗神社に祀ってあげてもいいわ」

霊夢「この神社、もともと何の神様を祀っていたのか私も良く知らないし」


貧乏神「これまた……食えない巫女さんもおったもんぞ」

貧乏神「そんではいつまでも居座らせてもろうて。この神社の守り神になるがな……フェフェフェ」


霊夢「……え、さすがに今のは冗談よ」

霊夢「こっちだって、いくらなんでも貧乏神を祀ったりしたら商売上がったりだわ」


??「あら、こんなところにいたの?」


霊夢「え? そりゃ居るわよ、ここは私の神社なんだから」

霊夢「それより厄神がうちに何の用? 用が無いならとっとと山に帰ったら」


雛「はい、貧乏神さん。人間達の災厄を引き受けて、貴方に渡しに来たわよ」

貧乏神「おお、ありがたや、ありがたや。ここで使わしてもろう」

雛「そう。役に立てて良かったわ」


霊夢「はーいあんたたち――さっさと表に出なさいな」

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 00:11:05.59 ID:iWjHv62D0
――

雛「うう……ひどいじゃない……」

雛「私何もしてないのに……どうして襲われなきゃいけないの」

霊夢「何被害者ヅラしてんのよ。間接的にこっちに迷惑がかかることを自覚しなさいよね」

雛「服がボロボロに破けちゃったわ……どうしてくれるのよ?」

霊夢「いーじゃん、あんたお色気担当ってことで」

霊夢「その格好で帰りなさい」

雛「厄い……厄いわ……」


霊夢「さてと……貧乏神のやつはどこ行っちゃったのかしら」

霊夢「ま、吹っ飛ばしたから守矢神社にでも行ったのかもね」


ツンツン


貧乏神「なーに言っとるだ、まだまだ健在やがな」

貧乏神「代わりはいくらだでおるからの」

霊夢「……ったくしつこいわね」

89: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:18:03.58 ID:iWjHv62D0
霊夢「この際はっきり言っておくわ。うちは賽銭箱の中身は少ないけれど」

霊夢「だからといって生活に苦労しているわけじゃないのよ?」

霊夢「ほら、そっちに守矢神社の分社だって建ってるし。間欠泉の(将来的な)権益だって握ってるし」

霊夢「どちらかというと裕福な方なんだから」

霊夢「あんたがそうそう付け込むスキは――」


パチパチパチパチ……ホカホカ……


霊夢「ん?」


穣子「もう少しでお芋が焼けるわね、お姉ちゃん」

静葉「そうね、いい感じにキツネ色になってきたね」


霊夢「……」

90: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:19:50.17 ID:iWjHv62D0
霊夢「ちょっと、そこの野良神ども」


穣子「な!? 人を捉まえていきなり野良神って何よ無礼者!」

静葉「そうよ。折角いい芋が収穫できたから、貴方にも食べさせてあげようかと思って」

静葉「わざわざここの境内までやってきて焼き芋をしているってのに」


霊夢「ごちゃごちゃ言わないでいいからこっちの質問に答えなさい」

霊夢「あんたたち、そこで何を焼いているの……?」


穣子「何って……見ての通りお芋を焼いているのよ?」


霊夢「そうじゃなくて……火種に何を使ったのかって聞いてるのよ?」

91: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:22:44.38 ID:iWjHv62D0
静葉「そりゃ、私が落とした落ち葉を敷いて……」

穣子「あ、でもいまいち火の勢いが良くなかったから、神社の中にあった紙束を加えたっけ」

静葉「そうそう、壺の中に入ってた紙束を全部……そう言えばあれ、一円札の束だったかも」


霊夢「……」


穣子「でも、お陰で火の勢いが強くなったもん、別にいいよね」

静葉「あら、そんなことを言ってたら芋がちょっと焦げちゃったわ」

穣子「でも、美味しそうに焼けたみたい!」

静葉「ほら、貧乏巫女も食べる?」


ゴゴゴゴゴ


霊夢「ええ、食べさせてもらうわ――黒コゲに焼き尽くしたあんたたちをね」

92: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:26:33.80 ID:iWjHv62D0

――人間の里――


??「油揚げください、いつものやつ」

豆腐屋「はいよ、いつもご贔屓にしてもらってるから1切れサービスしとくね」

藍「あ、これはどうも」


スタスタ


藍(ふふ……あの店のお揚げは絶品だからなぁ)

藍(さて、紫様は“限りなく近くて遠いところ”にバカンス中だから)

藍(しっかりと仕事をこなさないと)

藍(――もっとも、博麗大結界は協力だから余程のことが無い限りは弱まったりしないのよね)

藍(そうだ、ちょっとマヨヒガに寄って行こうか)

藍(お土産ってことで、橙に新しいマタタビを買ってあげよう!)

93: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:30:53.39 ID:iWjHv62D0

――死の森――


ギュォォォオオオオォォォォオオ……


玉藻「――どうやら、ここで間違いないらしい」

玉藻「この古井戸の前で、鵺野先生の気がプツリと途絶えている」

ゆきめ「……井戸の奥に、穴が開いてる! 穴の向こうに……あれは……?」

玉藻「強い妖気を感じますね――どうやら、4人はあの結界の向こう側に取り込まれてしまったらしい」

ゆきめ「でも、これほどの妖気を放っている場所……どうして今まで誰も気づかないで」

玉藻「おそらく、何らかの原因で異空間と人間界を隔てる結界に歪みが発生したんでしょう」

玉藻(それが意図的なものなのか……偶発的なものなのかは定かでないが)

玉藻「だから今まで存在すら気付かなかったものが、あたかも突然現れたかのように認識できるようになった」

ゆきめ「……この結界の向こう側には、一体何が」

94: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:34:52.63 ID:iWjHv62D0
玉藻「さあて。どうやら私が人間界に来る前にいた空間とはまったく別物の様子」

玉藻「しかも、これほどの妖気を放つ結界――仮に何者かが意図的に作りだしたものだとしたら」

玉藻「相当の実力を持つ妖怪の仕業に違いない。あの鵺野先生もあっさりと飲みこまれてしまったのだ」

ゆきめ「……」

玉藻「私はこの結界の向こう側へ侵入しますが、あなたはどうします?」

玉藻「結界の向こうに何が待ち構えているか見当もつかない。何かあってもすべて自己責任――」

ゆきめ「行くに決まってます!」

ゆきめ「鵺野先生達がひどい目にあっているかも知れないのに……放っておくことなんてできない!!」

玉藻「――そうですか」


玉藻(――まったく、何故かくも非合理的で無謀な行動に駆り立てられているのか)


ゆきめ(鵺野先生、みんな……! どうか無事で……!!)


シュルルルルルルルンッ



                    (第1.5話:博麗の巫女と貧乏神の巻・終)

95: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:48:14.39 ID:iWjHv62D0
【今後の予定(場合によっては変更あり)】



第2話「 旧都に佇む怪力乱神 の巻」(来週末までには更新)



第3話「 片腕の仙人と鬼の手を持つ男 の巻」(再来週末くらい)



最終話「 百鬼夜行――そして境界線の向こう側へ の巻」(8月中くらい)



※時間軸は指摘にあった通りぬ~べ~側は覇鬼と和解する以前の段階におけるパラレルワールドです

※毎回、何らかの形で鬼の手の出番がありますが……
 ガチガチなバトル展開は多くないかも知れないので、その点で期待外れになったらすみません

128: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:45:22.03 ID:doHbD9dS0

――地底――


コツ……コツ……


ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」

ヤマメ「貴方のその左手も相当厄介だろうよ……幻想郷の連中にとってもね」

ぬ~べ~「しかし、そのスペルカードシステムとやらはなかなか良くできていると思うぞ」

ヤマメ「いやいや、私が考えたわけじゃないんだけどね」

ぬ~べ~「おーい、お前たち――何が出てくるかわからないんだから、ちゃんと離れずについてこいよ」


広「分かってるよー!」

美樹「……て、あれ? そういえば美樹は……?」

129: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:47:40.19 ID:doHbD9dS0
――


シーン……


美樹「う~ん、なかなかピーンとくる反応が無いわね」

??「貴方、そこで何をしているの?」

美樹「何って、これはフーチってやつ」

美樹「ま、占いの一種みたいなので、これを使ってお宝の埋まっそうな場所を探してんの」

??「へぇー、それで何か見つかったの?」

美樹「うーん、まだ何にも」


美樹「……」

??「……」

130: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:50:50.94 ID:doHbD9dS0
美樹「え……あんた、誰……」

??「誰なのかしら。いいえ誰でもないわ――私はただの路傍の小石」

??「滅多に見つけてもらえない」

美樹「……い、いま……見えている……じゃない……」

??「貴方は私が見えるのね。だったら私と遊びましょ?」

美樹「あ、遊ぶって……何を? ゲーム? それともドッジボールとか……そういうの……?」


??「楽しい楽しい弾幕ごっこ――はじまりはじまりー!」

??「表象『弾幕パラノイア』」



ポワッ!



美樹「え」

美樹「……キャァァァアアアッ!!」

131: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:54:37.90 ID:doHbD9dS0
美樹「何これヤバイ! 死ぬ! まだあの世は見たくな~い!!」


ダッ!!


ぬ~べ~「美樹ッ!! そこを一歩も動くな!!」


??「今度は誰?」


シュパパパパパパパパパ!!


美樹「ぬ~べ~!!ナニコレ爆弾!? こっち来るー!!」

ぬ~べ~「南無ッ!!」


コォォォォォォ


美樹「これは!」

ぬ~べ~「お前の周りには防御結界を張った――しばらくは持ちこたえられるだろ」

ぬ~べ~(これが弾幕か! 敵の姿は見えないが――とにかくは向かってくるタマを鬼の手で斬る!!)


シュパァァァァァァァン!!!


??「! えぇ、腕一振りで弾幕を弾いちゃったの?」


ぬ~べ~「本体は――そこか! 闇に紛れし物怪よ、その正体を現せ!」


カッ!


こいし「!」


ぬ~べ~「お前か! 美樹に攻撃を仕掛けたやつは」

美樹「私は最初から見えてたけどね! ていうか、また女妖怪!?」

132: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:58:56.14 ID:doHbD9dS0
こいし「貴方にも私の姿が見えるの?」

こいし「……うふふ、やっぱり注目を浴びるのも悪くはない気分だわ」


こいし「それじゃ、次行くわよ――本能『イドの解放』」


シュンシュンシュンシュン!!


美樹「アンビリーバボー! ハート型の爆弾が一杯、ステキじゃないの」

ぬ~べ~「自分は安全圏にいるからって、悠長なことを……」


ぬ~べ~(落ち着いて避けていけば――何とか回避はできそうだが)

ぬ~べ~(ここは一気に片付けるか。うまく行くかは五分五分――無数の霊気が充満し、妖怪にとって非常に棲みよいこの環境)

ぬ~べ~(こいつの秘める力も、一段と発揮できるはずだ)


シュポンッ!!


ぬ~べ~「俺の可愛い管狐よ――飛び交う弾幕を吸い取ってしまえ!」


くだ狐「クウ――――ン!!」

133: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:01:32.78 ID:doHbD9dS0
ギュォォォォォォォォォォォン!!


こいし「!!」


くだ狐「……ごっくん♪」


ぬ~べ~(よし――どうやら上手く飲み下せたようだな)


こいし「すごーい! 貴方、変わった遊び方をするのね」

こいし「私もペット、持ってるわよ。前にお姉ちゃんに貰ったんだー」


ぬ~べ~「そうか、機会があれば――また見せてもらいたいものだな」


こいし「さあ、もっともっと遊びましょ!」


ぬ~べ~(どうやら、こいつは美樹を襲うつもりだったわけじゃないな)

ぬ~べ~(単純に、見つけてもらって喜んで、遊びのつもりで勝負を吹っ掛けただけ)

ぬ~べ~(頭よりも先に手が動く――無邪気な子どものようだ)

134: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:11:35.85 ID:doHbD9dS0
――

ヤマメ「はいはい、分かったよ」

美樹「ありがと、土蜘蛛さん……私を安全圏に引っ張りこんでくれて」

美樹(それにしても……管狐ってあんなビジュアルだったんだ……)

郷子「先生が結界を張ってたのに、何でヤマメさんの糸で美樹を回収できたの?」

ヤマメ「――どうも、私がその子を助けることを想定したうえで弾幕が止んだ間に結界の強さを弱めたらしい」

ヤマメ「意外なくらい信用されちゃったもんだ、私もアブナイ妖怪なんだけどさ」

ヤマメ「しかしなかなかデキるねぇ、貴方たちの先生さんは」

広「当然さ。先生はこういう方面だったらホント頼りになんだよ」


ヤマメ(さすがにアレが覚妖怪の“変種”だということまでは考え至っていないだろうけれど)

ヤマメ(その性質については、この短い交戦の中である程度見抜いている様子)

ヤマメ(わざわざ引き連れてきちゃったけど、傍から見ているだけでも結構面白いね――この人間達)

135: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:13:16.66 ID:doHbD9dS0
>>128の最後のセリフは郷子の発言でした。訂正

136: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:23:10.63 ID:doHbD9dS0
>>133と>>134の間に以下のセリフ挿入

――

こいし「行くよー」

ぬ~べ~「よし、来い」

ぬ~べ~「お前が遊び疲れるまで――俺が相手になってやる」

ぬ~べ~「もし、先にこちらがバテてしまった場合には――後は頼むぞヤマメくん」

――



137: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:25:12.79 ID:doHbD9dS0

――人間の里(郊外)――


ザワザワ……


妖夢(おかしい……何かしら、このざわつきは)

妖夢(いくら博麗神社に続く獣道が近いとはいえ……普通じゃない)

妖夢(明らかに何か、変調が生じているわ)

妖夢(幽々子様からお買い物を仰せつかって人里まで来たけれど、これは霊夢に会って確かめた方が)


里人A「助けてくれぇぇええええッ!!」


妖夢「!」

138: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:26:54.71 ID:doHbD9dS0
ダダダダッ ドテッ


里人A「痛ッ!」

妖夢「! どうした――」

里人A「悪かった……もう二度と……道端に春画雑誌(エロ本)なんか捨てねえッ!!」

里人A「だから……命だけはぁッ! 許してくれッ!!」


ダダダダッ


妖夢「おい!! 一体何に追われて――」




??「罪人」

139: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:29:48.18 ID:doHbD9dS0
妖夢「誰?」


ギラリ


はたもんば「斬る」

はたもんば「罪人は、首を斬る!」




妖夢「――何者なの、貴方は」

                             (第2話につづく)

161: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:03:14.30 ID:Hh5NDJrr0

――地底――


コツ……コツ……


郷子「はぁー、もう足がクタクタだわ……」

広「そーか? じゃ、……背負ってやってもいいぞ」

郷子「な、何よ急に! 別にいいわよ、そんなに疲れてないから」

広「む……何だよ、折角ちょっと親切心でっていうか……」

郷子「いいのいいの! 余計なお世話」

広(んだよまったく……郷子を巻き添えにしちまったのはオレなんだから……ちっとは罪滅ぼしにって思ったのによぉ)

郷子(自分だっていくらサッカーで鍛えてるっていっても疲れてるでしょ……)

郷子(それに私が2人をちゃんと止めていたら……ぬ~べ~にも迷惑かからなかったし)



美樹「いやはや、アツアツ過ぎて妬けますね~あのお2人さ~ん」

ヤマメ「そうだねぇ、気をつけないと“橋”のたもとでまた危ない目に合うよ」

美樹「橋って?」

ヤマメ「ようは地上と地下を結ぶ縦穴のことさ――そこの門番として橋姫がいる」

美樹「ハシヒメ?」

162: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:07:26.39 ID:Hh5NDJrr0
ぬ~べ~「橋姫というのはだな、ハァハァ……簡単に言うと橋に宿った心霊をだな……ハアハア」

ぬ~べ~「橋を守る女神として……ゼーゼー……たてまつったもので……」

ぬ~べ~「“嫉妬に狂った女性”や……“愛する人を待ち続ける女性”の象徴でもあり……フー」

ぬ~べ~「そもそも橋ってのは……こちら側と向こう側を隔てる境界と言う意味で……」


美樹「やだ、ぬ~べ~。何ヤラシイこと考えながら説明してんの?」

美樹「しかも女神って……誰のことを想像してるのかしら~」


ぬ~べ~「お前なぁ……こっちはずいぶん体力消耗してるんだぞ……」


ヤマメ「結構な時間付き合わされたもんねぇ」

美樹「でもつまり、また女妖怪が出てくるってことで間違いないわけね」

美樹「……もしかして、このゲンソーキョーってとこ、実は女しかいないの?」

ヤマメ「男もいないことはないけれど……まあ、遭遇しやすさの問題かな」

163: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:09:53.77 ID:Hh5NDJrr0
ぬ~べ~「その点を深くは追及しないが……ここに棲む妖怪が“少女”の姿で現出する場合が多いのに理由はあるのか?」

ぬ~べ~「妖怪が本来持っている怖さ、ありのままの姿がすっかり裏側に隠されてしまっているような印象を受ける」

美樹「むー、良く分からん」

ヤマメ「ありのままねぇ」

ヤマメ「それじゃ、試しに私のありのままの姿ってやつを見せてやろうか?」

ヤマメ「この膨らんだ下腹にナニが隠されているのかわかるかい?」

美樹「え、ヒミツ道具とかを隠してんの? 見せて見せて~」

ぬ~べ~「違う違う……たぶん蟲の神秘を見ることになるから止めておけ」

164: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:13:06.38 ID:Hh5NDJrr0
ヤマメ「ま、今のは軽い冗談だよ」

ヤマメ「至極大雑把に言うならば、ここに棲む妖怪達はすっかり丸くなってしまってるから……かな」

ヤマメ「箱庭の中で妖怪や内側の人間その他が共生するためには、力のあるほうが丸くならないとしょうがないのさ」

ぬ~べ~「ふーむ……言わんとしていることは分かるぞ」

ぬ~べ~「“弾幕ごっこ”という決闘方法も、箱庭を壊さずに維持する上で有効と言えるものな」

美樹「いや、全然わかんないんだけど。だからなんで女の子ばっかになるの?」

ヤマメ「……」

ぬ~べ~「……」

ヤマメ「神も妖怪も幽霊も、つまるところは人間の心の作用によって生れて来るんだ」

ヤマメ「よく言う所の“偶像(アイドル)化”だね」

165: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:17:18.90 ID:Hh5NDJrr0
ヤマメ「現世の人間が思い描く妖怪達は、怖いものから少女(アイドル)に変化していったからなんじゃない?」

美樹「はーなるほど。要するにぬ~べ~や克也みたいなスケベ連中のせいでここの妖怪が女の子になっちゃったってことか」

美樹「おまけに、みんなペチャパイばっかで張り合い無いわね~!」

ぬ~べ~「妖怪のアイドル化……確かにそういう解釈も可能なのかもな」

ぬ~べ~「だが俺は断じて小児性愛者なんかじゃないぞ……」

ヤマメ「あれ、そうなの? 先生なのに?」




「きゃああああああああっ!!」「おいお前、郷子を放せ!!」

「貴方達に恨みはないけれど、襲う理由ならいくらでも拵えられるわ。見せつけられて妬ましいからよ」




ぬ~べ~「またなのかー……まったく」


ダッ!


美樹「私達に迷惑ばっかかけて、2人とも子どもよねー」

ヤマメ「貴方達、妖怪に付け込まれる才能があると思うよ」


ぬ~べ~(宇治の橋姫の伝承では“嫉妬の鬼”という側面も取り上げられている)

ぬ~べ~(ヤマメくんが言っていた“蛇の道も蛇”とは――もしや橋姫を指して言った言葉なのだろうか?)

166: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:21:36.55 ID:Hh5NDJrr0

――無縁塚――


ざわ・・ ざわ・・


てけてけ「足……いるか……」

屠自古「……イラネ」

てけてけ「足いるか?」

屠自古「……ヤルヨ」

てけてけ「……大根」

屠自古「……ア?」


小町「う~ん、自称仙人が怨霊の動きがどうこうっていってたから、一番そういう影響が顕著に出そうなところにやってきたけど」

小町「特に問題はないかな」

布都「うむ、何の問題も無かろうぞ」

布都「我が主も何やらイヤな予感がすると案じておられてな」

布都「とりあえず適当なところに行って、様子を見て、報告して安堵してもらおうと思っての」

167: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:30:23.71 ID:Hh5NDJrr0
布都「さてと、屠自古。もう私は帰る」


屠自古「……オウ。アバヨ!」

てけてけ「……」


ポンッ


てけてけ「っ……」

小町「冥土の土産に、お足なんかつけないでいいんだよ」

小町「ここの住人達は、(ほとんど)誰も貴女のことを怖がったりしないし、成仏するのを妨げたりもしない」

小町「外界の者達は、すっかり貴女のことを忘れてしまった――ま、形の上ではそういうことになるからね」

てけてけ「……もう、足を引っ張られることはないのか?」

小町「当然。もう誰も邪魔なんてできやしないさ」

小町「じゃ、逝こっか。輪廻転生――貴女の翻弄された魂を救済する、永い旅への船出だよ」

てけてけ「うん」

168: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:34:28.96 ID:Hh5NDJrr0
布都「霊ではなくあくどい妖怪でも現れたならば、一肌脱いでも良かったのだが」

布都「ふふ――昔の血が騒ぐというものよ」

屠自古「……」




屠自古「……ナニモノダ」

怪人A「……」


スゥー




布都「え、何じゃと?」

屠自古「……ヤレヤレ」

173: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:06:04.07 ID:Hh5NDJrr0
怪人A「……」


布都「んー、誰じゃ、おぬしは」

屠自古「……」


怪人A「……」


布都「何とか言ってくれんかのう?」

屠自古「……」


ヒソヒソ


布都「こやつ、何者じゃ? ――人間にも見えるし妖怪にも見えるし亡霊の類にも見えるし」

布都「私のカンで見抜けぬ相手など……初めてだぞ!」

屠自古「……ウソツケ」

174: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:08:42.95 ID:Hh5NDJrr0
怪人A「……」


ヒソヒソ


布都「どうする、とりあえず火でもつけて燃やすか?」

屠自古「……ナンデヤネン」

布都「あまり良からぬ雰囲気を醸し出しているのでな。こういった面妖な輩は早めに叩いた方が」

布都「いな、まずは道教の教えを説いてとりあえず改心させる契機を与えてから潰すか」

布都「宗教家たるもの、一応それらしい手続きを踏んでからの方が――」

屠自古「……オイミロ」


シーン


布都「――む、消えたか」

布都「まあ消えてしまっては仕方あるまい、帰るとしよう」

屠自古「……ホウコクスル?」

175: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:13:56.72 ID:Hh5NDJrr0
布都「ふむ」

布都「……この程度の瑣末なこと、わざわざ太子様のお耳に入れるまでも無かろう」

屠自古「……オイミロ」


ザッザッザッザッザッザッザッ


ミサキABCDEFG「「「「「「「……」」」」」」」


シャン…… シャン…… シャン…… シャン……


布都「……」

屠自古「……チョットヤバクネ」

布都「ほほう――修験者の一行か。無縁塚で鍛錬を積むとは見上げた心構え」


スタスタスタスタスタスタ……


布都「おう、貴方達はどちらへ向かうつもりじゃ?」

屠自古「……」

布都「ようし、我らも一行についてゆくぞ――何処に向かっているのか気になるのでな」

屠自古「……ソレデイイノ?」

176: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:21:54.08 ID:Hh5NDJrr0

――魔法の森――


ザワザワ……


蓮子(ここは……どこなのだろう)


蓮子(星や月が見えるような時間帯ではない)

蓮子(周囲は見渡す限りの原始林、加えて高温多湿――)

蓮子(ううん、原始林とは言い切れないか、原生林とみなすのが妥当ね)


蓮子「ごほっ……ごほ……」


蓮子(この気管から肺臓を蝕む異様な空気……毒性のあるガスが漂っている? あるいはまさか枯葉剤?)

蓮子(それとも、到るところに生えている茸の胞子がアレルゲンになって……?)

蓮子(この見るに堪えない無数の茸の群生……これは食用になるのかしら)

蓮子(うぐ、何だか視界がぼやけてきた……幻覚作用なんかじゃないよね?)

蓮子(……まるでマジックマッシュルームにでも手を出したような、奇妙な感覚)

177: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:23:57.85 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(私はXXXX年7月Y日午前Z時00分00秒にメリーと会う約束をして)

蓮子(案の定遅れて、待ちくたびれていたメリーに声を掛けた――)




蓮子「ごめーん……待った、メリー?」


??「かえして・・・」


蓮子「え、……?」




メリーさん「わたしのお人形……手足が……ないの」

メリーさん「かえして……手足を……かえして……」




蓮子(違う……メリーじゃない)

178: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:26:21.05 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(全身真っ白な服を着た女の子、手足の無い人形を抱えている)

蓮子(まるで辺り一面暗闇の底から響き渡るかのような……暗く淀んで、そして悲しみ愁いを帯びた声)

蓮子(とてもミステリアスな存在だけれども……同時にそれはとても怖い存在でもある)

蓮子(これは、メリーが見ている夢なのかも知れない――そして、私は今それを幻視している?)

蓮子(それはおかしい――だって今夜はまだ本物のメリーと落合ってないんだから)

蓮子(だとしたら、やはり夢――これは私の夢?)


メリーさん「わたしの……」


蓮子(この女の子と四肢をもがれた人形は、何かの暗示?)

蓮子(女の子と人形の関係――四肢をもがれた人形を弄ぶ女の子?)


メリーさん「わたしの手足……かえして……!」


ブチィっ!!!!


蓮子「あ――」

179: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:28:58.87 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(切られた……違う、斬られた? ううん違う、これはもがれたって言うやつだ)

蓮子「いや、それも違う」

蓮子(もがれたと思っていたけれど……もがれていない。やはりこれは夢の中)

蓮子(とするならば、女の子と四肢をもがれた人形はやはりの暗示)

蓮子「私がもがれた人形ということは、その人形である私を弄ぶ女の子は――」


スゥ……


蓮子「女の子が消えた! え、何この手の平のうちの感触――」


人形「かえして」

180: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:31:06.41 ID:Hh5NDJrr0
蓮子「っ!」


ポトッ


蓮子(握っていた。握らされていた……いつの間にか。――私の手に)


人形「……すてたね」


キィィ


人形「……すてたね!」


キィィィィィ


人形「……すてたね!!」


キィィィィィィィィィ


蓮子「ぐ……」

蓮子(どうすればいい? どうすればこの悪しき夢から逃れられるの、ねぇ、メリー)

181: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:33:36.23 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(私が人形を思わず手放した行為――それを彼女は『捨てた』と表現した。強い憎悪と憤怒の感情を伴って)

蓮子(まずは、この人形を拾い直して――よく調べてみることが先決なの?)


ヒョイ


蓮子「あ……」


??「……この人形には、霊魂がこもっているわ」

アリス「普通の人間は、生ける人形に触れてはいけない。だから貴女の手元にあるべきじゃない」

上海人形「シャンハーイ」


蓮子(――また別の操り人形? そして、この人は……)


人形「……かえ……して……」


ジタバタ


アリス「――ずっと、探していたのね。でも、見つからなかった。ううん、見つかるはずがなかった」

アリス「とても長い時間――あなたにとっては永遠に感じられるように永いときを費やして、ずっと探していたのね」

182: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:36:33.60 ID:Hh5NDJrr0
蓮子「貴女は?」

アリス「ついておいで、近くに私の邸(いえ)があるわ。もしかしたらあなたの力になれるかもしれない」




蓮子「え、私――の―――力、に―――――」

シュルルルルルルルン……シーン……




アリス「あ……ごめんね。人間(あなた)に言ったんじゃなくて」


アリス「――人形(あなた)にね、言ったのよ」

メリーさん「……」


アリス「あたたかい紅茶を淹れてあげる。ゆっくりと、人形(あなた)の気持ちを聞かせて頂戴」


                                        (つづく)

185: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:40:18.89 ID:Hh5NDJrr0

――人間の里(郊外)――


ジリ……


妖夢「何者だ――と聞いているでしょう」


はたもんば「許さん」


妖夢(……見たところ、刃物類の……付喪神?)

妖夢(けれど、この妖怪らしさをありありと残す姿――この幻想郷において存在する物怪とは相容れない凄みを持っている)

妖夢(この前起きた異変の鍵になった、打ち出の小槌の影響で突然変異が……?)

妖夢(でも、あの一件は終息したわけで、もう問題ないって霊夢も言ってたわ)

妖夢(だったら、どこからこんなヤツが沸いて……)

妖夢(――外から? 外界から流入してきたというの?)

妖夢(でも、道具自体は結界を無条件ですり抜けることができるのと違って)

妖夢(付喪神になったら容易にはすり抜けられないハズよね?)

186: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:45:14.99 ID:Hh5NDJrr0
妖夢「む!」


タッ……ヒョイ


はたもんば「許さんぞ」


妖夢「この雑誌を捨てたから斬るとか言って……」

妖夢(なになに……『白玉楼の淫美な庭師~禁断の剪定プレイ~』……?)


パラパラ


妖夢「……、……、……な!?」

妖夢「なんだこれはぁー!!!!」


スパーン!


妖夢「あの里人(ケダモノ)めぇ!! 許さん!!」

はたもんば「我ははたもんば、罪人は――」

妖夢「刀の錆にしてくれるわーっ!!!」

187: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:51:01.93 ID:Hh5NDJrr0

――アリス邸――


アリス「ふふ。どう、お口に合うかしら?」

メリーさん「……コクリ」

アリス「そう、良かったわ」

メリーさん「……」

アリス「早く本題に入って欲しいのね――」


上海人形「ソウチャーク」

人形「!」


アリス「右手、左手、それから右足――これらはあの人間(女の子)のいた場所の周りに隠されていた」

アリス「あの子の代わりに私の操り人形が回収して来たわ」

アリス「これらは元々貴女が持っていて、貴女が自分で隠したのね?」

メリーさん「……、……」

アリス「そして」


スッ


人形「あ・・・・」


アリス「――これが、人形(あなた)がずっと、本当に探し求めていたもの」

アリス「――貴女の世界から失われた貴女自身(あなたの心の拠り所)なのね」


メリーさん「左足・・・・・・私の・・・私の左足・・・!!」


188: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:55:09.35 ID:Hh5NDJrr0
人形「――」


……スゥ


アリス「四肢を取り戻した人形は消えた――貴女が貴女自身を取り戻したことで」

アリス「貴女が自らの遺志を仮託した人形は役割を終えて、貴女の中に戻っていった」

アリス「辛かったのね、苦しかったのね」


めぐみ「・・・・う・・・ひっく・・・・」


アリス「貴女にとっては本当に永い時間だったんだと思う――他の誰からも、貴女自身からも忘れ去られた人形の左足は」

アリス「いつしか私の手元に渡っていた――私が、たまたま人形遣いだったからかもしれないし、そうでもないかもしれない」

アリス「そしてこのもがれた人形の左足を、私はどうしても手放せなかったのよ」

アリス「理由は分からない――でも、いつかこの左足が、本来あるべき場所に帰ってゆく」

アリス「そんな予感がしていたから、ずっと捨てずにしまっておいた」

アリス「そして、今、無事あるべき場所に帰っていった――“お帰りなさい”」


めぐみ「ただいま・・・・」


アリス「さ、もう貴女は何にもこだわる必要はない。私の存在にこだわる必要もない――“お帰りなさい”」


めぐみ「・・・・さようなら。ありがとう」


スゥ


アリス(帰って行った――けれども、これであの子が成仏できたのかどうかは私には分からない)

アリス(強い怨恨や辛苦……それらの負の感情を伴って彼女と一心同体と化していた人形)

アリス(その人形と彼女をつなぐ“糸”を切り落としただけ――彼女の傀儡子としての側面を剥ぎ取り、普通の幽霊に戻したにすぎない)

アリス(それから先のことは、私にはどうしようもない)

アリス(私は死神でもなければ、幽霊(にんげん)の心に寄り添える人間でもないのだから)

189: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:59:15.11 ID:Hh5NDJrr0
アリス「……」

アリス(それにしても、外来人と外来霊が同じ頃合いに幻想入りして、同じ魔法の森で居合わせるなんて)

アリス(偶然にしては出来過ぎよね――おまけに測ったようなタイミングで人間はスキマ送り)

アリス「ったく、あいつが何か企んでるの?」

アリス「――でも、これ以外に目立った兆候はまだ見受けられないし、私があれこれ考えることでもないか」


アリス(――さてと、ティーカップを洗ってきましょう)


スタスタ


上海人形「……」

上海人形「……」


ピョンッ ピョンッ


上海人形「マリサーキヲツケテー」

190: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:03:32.82 ID:Hh5NDJrr0

――人間の里(郊外)――


妖夢「魔理沙ー!」

魔理沙「ん、何だ妖夢。また通り魔でもやってんのか?」

妖夢「またって何よ! それよりこの辺りで、顔が卑猥そうな里人を見なかった?」

魔理沙「見てないぜ。というか、どんな顔のやつだよそれ」


ギィィィィ


はたもんば「罪人は、何処だ!!」


魔理沙「わっ! 何だコイツは!」


妖夢「く、あの下劣者め! 私はあちらを探す――はたもんばはそちらを探して!」

はたもんば「よかろう」


ダッ――ストンッ


魔理沙「! 妖夢ー。お前買い物袋落としたぞ。中身も入って……」

魔理沙「ってもう行ったか――仕方ない、ありがたく頂戴するとしよう」




妖夢「て、ちょっと! 返しなさいよ泥棒!」


クルッ


はたもんば「盗人?」

191: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:09:02.96 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「ん? おい妖夢、あのゴッツイ奴が振り返って」


はたもんば「盗人は、首を斬る!!」


ギュィィィィン!!


妖夢「!? 危ない、魔理沙!!」


ガスッ!! ギギギギギギ……


はたもんば「斬る!!」

魔理沙「お、おいおい……いきなり襲ってくるとはよ!」

魔理沙「幻想郷のルールってモンをお前分かってんのか?」


ギギギギギギ……


妖夢(――ミニ八卦炉であの車輪状になった剣を受け止めたか)


はたもんば「……」

魔理沙「八卦炉(こいつ)にはいろんな能力が備わっていて――魔除けにも使えるんだ」

魔理沙「さーて――売られたケンカは掛け値なし、きっちり買い取るからな!」

魔理沙「恋符『マスター」


ピシピシピシッ……

192: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:12:22.69 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「んなっ!?」

はたもんば「罪人め、許さんッ!!」




妖夢「八卦炉にヒビがっ! 回避して魔理沙!!」


シュンッ!!


魔理沙「言われなくてもそうするぜ! クソッ、私の宝物によくもキズを……!」


はたもんば「許さんぞォ!!」


魔理沙(とりあえず空中に逃れたが――コイツ、まるで会話が成り立たないな)

魔理沙(妖怪らしさ丸出しってやつだ! スペカなんてハナから理解できてねーだろ!)

魔理沙(第一、私が罪人だと? 何言ってんだコイツ……私はただのシーフなんだぜ!)

魔理沙(――どうして私が首を斬られないといけないんだよ!!)

193: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:16:42.60 ID:Hh5NDJrr0
キラーン


妖夢「魔理沙、貴女の箒が! 早く下に降りた方がいい!」

魔理沙「なに、私の箒がどうしたって……痛ッ!」

妖夢「側面が――鋭利な刃物に変化しているわ!」


シュタッ


魔理沙「手が・・・! 手がー・・・!!」

妖夢「ちょっと大袈裟ね……」


はたもんば「罪人、逃してなるものか」


ジリジリ……


魔理沙「あんにゃろ、よくも……やりやがったなッ……! 降りた拍子に帽子も落としちま――」


ギラリ


魔理沙「って何だこりゃ、帽子のつばも刃先になってる!」

195: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:23:41.09 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(――今のはたもんばの力、幻想郷流に言うなら“あらゆる物を刃物に変える程度の能力”ってところかしら)

妖夢(――変質者、魔理沙と、たとえ悪事を働いたと言えども問答無用で殺しにかかっている)

妖夢(このまま放置していたら、マズイわ)

妖夢(外界から連れてこられた人間と違って、人里の人間が妖怪に殺され続けたら――)


はたもんば「斬る」


魔理沙「ちっ……今度は油断しねぇぞ」

妖夢「――待って、魔理沙」

妖夢「もともと、はたもんばを魔理沙の前まで引き連れて来たのは私なんだから」


妖夢「私が、こいつの相手をするわ」


ジャリ……


はたもんば「……」

196: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:28:44.96 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「おい待て妖夢! それじゃ私の腹の虫が納ま――」


スゥー


魔理沙「! 誰だ」




??「――赤が好き? ――白が好き?」




魔理沙「は?」


怪人A「それとも――青が好き?」


魔理沙(何なんだよ今日は……ヘンな連中がやたらめったら現れやがって!)

197: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:39:41.96 ID:Hh5NDJrr0
妖夢「この魂魄妖夢、斬れぬものなどあんまり無い! ――尋常に勝負せよ」


はたもんば「我を邪魔立てするか!」


妖夢(――とはいえ、八卦炉にヒビを入れるとは尋常じゃないわ、あの切れ味)

妖夢(考えられる理由は、この妖怪が外界でも力を失っていないから?)

妖夢(本来なら外界で居場所を失い、力を発揮しづらくなった妖怪が流れ着く場である幻想郷)

妖夢(一方で、現世においても外界で力を発揮している外来妖怪なら……相対的な強さが上がるということ)

妖夢(――いや、それは憶測にすぎないし、今は考えていても仕方がない)

妖夢(――ともかくも、今やることは目の前にいる敵を斬ること!)


はたもんば「退け」

妖夢「食らえ! ――断霊剣『成仏得脱斬』」


ブォン!!

199: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:44:34.64 ID:Hh5NDJrr0
はたもんば「退けッ」


ギュルギュルギュルギュル!


妖夢「! 弾幕(剣捌き)を斬られたか――」

妖夢(両刀を交差させて舞い上がらせた剣閃の柱――それを意図もあっさりと)

妖夢(やはり、弾幕勝負ではケリをつけられないわ)

妖夢(かくなる上は、体術・妖術を駆使して――直接的な斬撃でこいつを仕留める!!)


はたもんば「退けッッ!」

妖夢(――楼観剣!)


キィ――――ン!!  ズザザザザザザザ!!


はたもんば「ぬぅ!」

妖夢「くッ!」

200: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:49:56.22 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(タテに廻る車輪剣を楼観剣の腹で受け止めることができた!)

妖夢(相手の勢いに押されてここまで後退りしてしまったけど――魔理沙(ターゲット)から距離を置くことになり好都合ね)

妖夢(後は押し負けないこと!! 機を見計らって相手の急所を貫く!!)


ミシィ……!


妖夢(! 馬鹿な、一太刀で霊十匹を片せる楼観剣に……亀裂がッ!!)


はたもんば「退けッ!!!」


ギュォォォォォオオオオ!! ――パーンッ


妖夢「しまった! ――車輪剣の回転速度が急激に増して、勢いで楼観剣が弾かれ――」




ブシュァァァァ!!

201: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:51:30.58 ID:Hh5NDJrr0
妖/夢――シュルルン!

半霊「ホッ……」




はたもんば「!!」


ザッ


妖夢「――こっちよ」

妖夢「貴女の刃の餌食になる寸前に、半霊と入れ替わったわ」

妖夢「魂符『幽明の苦輪』で私の“みがわり”に仕立て上げて」


ヒュルルル ストンッ


妖夢「宙を舞った楼観剣も私の手元に戻った――少し歯毀れしたけれど、まだまだ十分使えるようね」



はたもんば「……」

202: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:57:58.07 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(とはいえ、あの車輪剣に対抗するには――やはり家宝(白楼剣)を使うしかない)


はたもんば「……」


妖夢「私はまだまだ修行の足らぬ未熟者――けれども、お前を倒すためには」

妖夢(私ではあの妖刀(はたもんば)を斬ることなどできない――その迷いを断ち斬れ)

妖夢(これほどまでに罪人を裁き殺めんと執心するこの怪異――その混迷なる精神を断ち斬れ)


はたもんば「おおおッ!!」


ギュォォォォォォォォォォォ


妖夢「私の師である妖忌様に、無様な姿を曝け出すやも知れないという――心の弱さ」

妖夢「私の魂と魄の弱さを、断ち斬れぇ―――――――ッ!!!」




パリィィィィィィィン

203: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:02:55.61 ID:gBEcaEdI0
妖夢「……、……った……」


フラリ


はたもんば「見事。我、あるべき場に……帰らん」


シュウウウウン……


妖夢「度し難い敵を、斬ることができました。お祖父様……幽々子……様」


ジャリ……


??「ほら、あんたの大事な買い物袋――ここに置いてくよ」

赤蛮奇「首がどうだこうだって、大騒ぎしてたから……気になって陰から様子を見てたの」

204: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:08:50.46 ID:gBEcaEdI0
妖夢「zzzz……」

半霊「zz……」


赤蛮奇(あら、寝てる。今ので相当精神力を費やしたのか?)

赤蛮奇(そして、あのはたもんばとか言う付喪神……元の妖刀の姿に戻った途端、消えてしまった)

赤蛮奇(けれども、それは折れてはいなかった――物理的に斬られたわけじゃない)

赤蛮奇(じゃ、何を斬られてしまったんだ? 私にはよく分からないね)

赤蛮奇(そして消えた先は……たぶん、結界を超えて外の世界へ)

赤蛮奇(でもあれほど強い妖怪なら――普通は大結界に遮られて出入りなどできないはず)

赤蛮奇(何者かが結界に干渉して、異変でも引き起こしてるんじゃないでしょうね?)


赤蛮奇「まー私には関係ないけど」


里人A「助けてくれぇえええッ!! ――生首が空を、飛んでるゥっ!」


ダダダダダダッ


赤蛮奇(え、私のことばれた!? 上手く溶け込んで里に棲んでるってのに!)


ハゲ頭「ぱたぱた、ぱたぱた」


赤蛮奇(え、な……何アレ、は……)

207: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:21:46.12 ID:gBEcaEdI0

――??――


メリー「おーい、蓮子。いい加減起きなさいよー」


蓮子「……うう~ん……うん……? はっ!」


蓮子(――夜空が見える。現在時刻午前2時22分22秒、……胡蝶の夢としては少し長かったかも知れない)

蓮子(それにしても、なぜあの女の子は私に対してあの人形を見せたんだろう)

蓮子(いや、私が見たかったのか? 私があの人形を見たかったから、あの女の子が私の夢に現れたのだろうか)

蓮子(でも、夢の現象学の知見からすると――あ、ううん、あれこれと思索を巡らすのは後にしよう)


ガタッ


蓮子「メリー! メリーなのね!! 良かった、メリーはちゃんといてくれたのね」

メリー「何言ってるの……今更? いつも貴女の隣にいるじゃない」

208: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:27:23.05 ID:gBEcaEdI0
蓮子「ふふ……ほんのちょっぴり怖い夢を見ていてね。夢と現(うつつ)の境界が曖昧になっていたのよ」

蓮子「……もう少し時間があれば、理論的な解析も可能だったかもしれない」

メリー「ふぅん。――でも時差の引き算がパッとできない蓮子なんだから、そんなことがあってもいいんじゃない?」

蓮子「それとこれはまたベツモノなのよー」

メリー「まあ、それより――早速今夜の秘封倶楽部の活動を始めようじゃないの」

蓮子「そうね。……えーと、今日は何をする予定だったっけ?」

メリー「ほら、あの有名な怪談的都市伝説について調べようって言ってたでしょ。降霊術で呼び出しを試みようと」

蓮子「うん。あれ、それで何を呼びだそうとして――」


メリー「――私、メリーさん。今貴女の眼の前にいるの」


蓮子「きゃぁぁあああああっ!!!」

ギュ

メリー「あらら、何を怖がっているのよ――よしよし」

209: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:30:38.00 ID:gBEcaEdI0

――地底――


美樹「嫉妬深い妖怪だったわね……ああイヤだわ、ああいう大人にはなりたくない」

郷子「あ、ありがとう広……私を助けようと、あの妖怪(ひと)に……その、立ち向かってくれて」

広「……最初に言ったろ。何かあったらオレが敵を吹っ飛ばすってよ」

美樹「でも、突っ込んでって吹っ飛ばされたのは広のほうでしょ――ぬ~べ~がすぐ駆け付けなかったら危なかったじゃないの」

広「……う、それは」

ヤマメ「にしてもよく、掠り傷程度で済んだもんだ」




ヤマメ「しかしその手、いろんなことができるねぇ。便利そうで少し羨ましいよ」

ぬ~べ~「いや……確かに色々と使いようはあるが……その代償も大きいからな」

ヤマメ「……、まあ、それはそうだろうね」

ぬ~べ~「……」

210: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:34:40.28 ID:gBEcaEdI0
ぬ~べ~「――それで、この先にいるんだな」

ぬ~べ~「――俺、いや鬼(こいつ)に面通しさせてみたいって鬼(やつ)が」

ヤマメ「まぁね」

ヤマメ「でも、そんなに気張ることも無いと思うよ」

ヤマメ「おそらく、貴方が想像している鬼(それ)とは相当乖離していると思うから」

ぬ~べ~(確かに……これまでに見て来た幻想郷の妖怪のことを思えば、それはそうかも知れないが)

ぬ~べ~(俺が最も恐れているのは――)


チラリ


ぬ~べ~(その鬼を前にして、コイツが一体どういった反応を見せるのか)

ぬ~べ~(そこのところだ)

212: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:40:28.97 ID:gBEcaEdI0
ぬ~べ~(それから――やはり餅は餅屋ということだな)

ぬ~べ~(もしその鬼が、コイツを封印する上で……代替できる方法を知っているとしたら)

ぬ~べ~(どうにかして……聞き出したい)

ぬ~べ~(あなたを助け出すためにです――先生)


グッ


ヤマメ(鬼の力を得た代償は、そんなに大きいものかい?)

ヤマメ(いや、それはそうか……何せ、鬼の力なんだから)

ヤマメ(でも、その鬼の力がなければ――いくら霊能力先生といえども、ここまで子どもらを守って来れたとは限らないんだろう?)

ヤマメ(皮肉な話だね)

213: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:51:58.48 ID:gBEcaEdI0

――??――


??(博麗神社は倒壊しても、大結界はビクともしなかった


だが、本殿を炎上させることによって、大結界を弱め、局所的なねじれを発生させることに成功した


これで、一時的に境界を超越しやすくなった外界の魑魅魍魎が博麗神社に押し寄せることになった


う~ん、他所からも沸き出てるみたいだけどね



なぜならこの幻想郷(せかい)ほど、連中の力が発揮される場所はないだろうから本能的に引き寄せられちゃうんでしょうね


元来は幻と実体の境界であり、現在は博麗大結界として二重に外界を遮断する結界にあけた風穴――


単に外界で忘れらさられ、“勢力の弱まった妖怪”達だけではない――


未だに文明化の進んだ外界の闇(かたすみ)に潜み、畏怖の対象とされている“残忍な猛者達”も――



今、この瞬間に、結界という見えない壁を乗り越えて幻想郷に押し寄せてこよう!


ならば“幻想郷流の戦い方(おあそび)”の枠に囚われないホンモノの決闘をすることができる!


暇潰しにはもってこいのイベントよね!




――さあ来い、平和(タイクツ)な日常に水を差すナラズモノ達よ


                    私の隙(ヒマ)を――突き崩せ~っ!!)



   


                                    (第2話・旧都に佇む怪力乱神の巻<前編>・終)

239: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 16:50:41.26 ID:l9umTQmh0

――守矢神社――


フキフキフキ キュキュ


早苗「ふう、床の雑巾掛けはこれで終わりですね」

早苗「はあー、毎日のことですけれど……結構腰にくるんですよねー」

早苗「でも、境内をはじめ神社の隅々までピカピカにしておくことは、信仰獲得の上でもとても大事なことです」

早苗「神社の清潔さは、すなわち神聖な空気感そのもの――」

早苗「それは日常から離れた尊い価値あるものとして人々を惹きつけ、ひいては篤い信仰心を育みます」

早苗「潔癖症のひとはいても不潔好きなひとなんて普通はいないんですから!」

早苗「まずは日々の心がけが大事なんですよね」


早苗「さてと――使い終わった雑巾をしっかり洗って干しておきますか」

早苗「白うねりになったりしないように――あら?」

早苗「まだ、隅っこのほうに埃が残って」


ヒョイ


早苗「あれ……これは……、……生き物?」


フワフワ……


??「……」

241: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 16:54:21.57 ID:l9umTQmh0
――


パフパフ パフパフ


神奈子(よしよし、いつもより肌の潤いが増して艶やかになった気がする)

諏訪子「んー、神奈子。今日は随分とお化粧凝ってるね」

神奈子「ああ、人里に買い物に行ったときに新しい化粧品の試供品をもらってね」

神奈子「試してみてるんだ」

神奈子「やはり神というもの、身だしなみには細心の注意を払わないとね」

諏訪子「ああ、最近神奈子、肌荒れ気味だもんね。もともと小ジワも」

神奈子「ん、今何て?」

諏訪子「ううん、何でもないよ」

242: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 16:57:30.59 ID:l9umTQmh0
神奈子「――それより、諏訪子は気付いたか」

諏訪子「――そりゃ、まあ気付くよ」


諏訪子「博麗神社の脇に立てた守矢の分社に、何かあったようだね」

神奈子「ああ。ま、おそらく火の不始末でボヤでも起こしたんじゃないかと思うが」

諏訪子「うん、あの巫女ならありそうな話だね」

諏訪子「案外、後々私達が博麗神社を乗っ取る布石なんじゃないかって勘繰って潰したのかも」

神奈子「流石にそれはないだろう、分社と言ってもちんまりとした鳥小屋のようなものなんだから」


スタスタ


早苗「神奈子様ー、諏訪子様ー、ちょっとこれを見てくださいよー!」

243: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:00:52.88 ID:l9umTQmh0

――妖怪の山――


ザワザワ……


ゆきめ「いろんな妖気が入り乱れていますね……この山」


玉藻「確かに」


ゆきめ「それで、ここは一体どこなんでしょ?」

ゆきめ「実は童守町から遠く離れたどこかの山の中ということも――」


玉藻「それも可能性としてはなくはないと思いますが……」

玉藻「あなた、雪女なら山の神との関わりが深いのでしょう?」

玉藻「この地に何か心当たりはないんです?」


ゆきめ「う~~~ん……」

244: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:05:05.56 ID:l9umTQmh0
玉藻(――てっきり結界を張った張本人にすぐにでも御目見えできると思っていたが)

玉藻(そうも上手くはいかないらしい)

玉藻(だが、古井戸(パワースポット)で感じた妖気に近いものが……うっすらとこの周辺にも残っている)

玉藻(割とそう遠くない場所に、あの結界の生成に関与している者がいると見た)


ゆきめ(故郷の山でもないのに……微妙に懐かしい感じがするのよね、ここ)

ゆきめ(そして――この山の上には一体何が? 無性に気になる!)


玉藻「この際、二手に分かれて探すとしましょう――事は一刻を争う」


ゆきめ「ええ――でも、もし先に鵺野先生達を見つけたら、すぐに狐火か何かで知らせてくださいよ!」

ゆきめ「それか小さな手掛かりでも、とにかく何か見つけたらすぐにすっ飛んで行きますから!」


玉藻「……」


ゆきめ「絶対ですよ!!」


玉藻「……善処しましょう」


ダッ

245: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:08:18.72 ID:l9umTQmh0

――妖怪の山(マヨヒガ)――


ニャー ニャー


橙「おや、藍様もうお帰りになるので?」

藍「ああ、少し野暮用が出来たらしいからね」

藍「もし猫の手も借りたい状態になったら橙を呼ぶだろうから、その時は」

橙「はい、何なりとお申し付けください。マタタビも頂きましたから!」

藍「うん。それじゃ」




――

藍(やれやれ……これは霊夢がわざと大結界を弱めているのか?)

藍(誰よりも幻想郷を愛してやまない紫様が、こんなリスクの高い行為をなすとは思えないし)

藍(あるいはまた別の原因があって……)

藍(ともかく早めに状況を分析して対策を講じる必要があるな)

藍(油揚げ(これ)を味わうのは、一仕事終わらせてからになりそうね)

246: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:15:49.97 ID:l9umTQmh0

――妖怪の山(茨華仙の屋敷)――


華扇(う~ん)

華扇(なかなかあの子、戻って来ないわね)

華扇(まさかとは思うけど……危険な目に遭っていたりして……心配だわ)


華扇「やっぱり――私が直接向かった方がいいわね」

華扇(それに地底に行くこと自体は、満更でもないし)


華扇「あ、その前に――」

華扇(守矢神社に寄って行きますか――私が感じた不穏な予感のことを一応伝えに行きましょう)

華扇(地底と地上をつなぐ穴として一番ポピュラーなのは、ここ妖怪の山にあるものだしね)

華扇(天狗達には……まあいいか。もし事が起これば、彼らなら組織的かつ迅速な対応できるだろうし)


タッ

247: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:20:29.97 ID:l9umTQmh0

――人間の里(郊外)――


怪人A「……」


魔理沙(! ……刃物と化した箒と帽子のつばが、元に戻った)

魔理沙(ということは、妖夢のやつ……あのバケモノ刀を倒したのか?)

魔理沙(しっかし、ミニ八卦炉にキズをつけるたぁ……たいしたやつだ)

魔理沙(まあ、表面のコーティングが少し削られた程度で――これから使うのに支障はないだろ)

魔理沙(あとで香霖堂に行ってもう一度……ったく、迂闊だったな。でも、普通考えられねーよ……コイツにキズが)

魔理沙(……)


魔理沙「っと、後悔はあんまり先にも後にも立たないな――とりあえず今はお前だ」


怪人A「……」


魔理沙「何者なんだ? 人間か? それとも――」

魔理沙「はっきり言っていい感じがしないぜ、お前」

248: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:23:57.33 ID:l9umTQmh0
怪人A「赤? 白? 青?」

怪人A「 ど れ が 好 き ? 」




魔理沙(……こいつ、これしか言葉知らねえのか?)

魔理沙(おまけに何なんだこの薄気味悪さは――掴みどころがねぇ)

魔理沙(とりあえず、答えてみるか?)

魔理沙(好きな色って聞かれたら……魔術師的にはアレだが、3つの選択肢には挙がってない)

魔理沙(だったら――)

249: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:28:28.93 ID:l9umTQmh0

――人間の里(移動屋台)――


ジュー ジュー グツグツ


ミスティア「メッチャメチャ苦しい敵機(かべ)だって不意にぃ~なぜか~♪」

ミスティア「撃ち落とす勇気とパワ~湧いてくるのよ~♪ 微笑みの弾幕~♪」


小町「最近この店、人間の里に出しているの多くない?」


ミスティア「まあね、場所代だけでも高くつく時代だから、いろいろ考えて移動してるわ」


美鈴「そういえば前に博麗神社に屋台を出してましたよね」


ミスティア「ああ、それ話はこれ以上止めてくれない?」


小町「いやー、あれは不幸な事件だったね」

チラ

小町「あれ……?」

美鈴「どうかしましたか、小町さん?」

250: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:30:34.17 ID:l9umTQmh0
小町「さっきそこの傘立てに私のカマを立てておいたハズなんだけど……知らない?」

美鈴「……いえ、知りませんけど。そこにありませんし」


ミスティア「本当に持ってきてたの? 私にも心当たりはないよ」


小町「そりゃ、お仕事中だから持ってないわけないさ」

美鈴「またまたー、貴女サボっているだけでしょ?」


小町(……ヤバイな。さすがにあれを無くしたとなっちゃ……ヤバイわさ)

小町(早く見つけ出さないと……映姫様にカミナリ落とされちゃうよー!)

251: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:33:27.10 ID:l9umTQmh0

――人間の里(中心部)――


里人B「なんだ……ありゃッ!」

里人C「首が沢山飛んでるぞ!!」

里人D「落ち着け、皆の衆!!」




ハゲ頭達「パタパタ、パタパタ」




ビューン


妹紅「い、今の見た、慧音? あれって確か……」

慧音「飛頭蛮の群れ。中国発祥の妖怪だけれど、同じように首とかかわりの深いろくろ首に比べたら、知られていない方よ」

妹紅「全員、頭皮が薄いようだが……そういう種族なの?」

慧音「うーん、それは……」

赤蛮奇「ちょっと、あんなハゲ連中と一緒くたにしないでよ!!」

252: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:36:13.34 ID:l9umTQmh0
妹紅「え、貴女も……もしや飛頭蛮」

慧音「さっきのは貴女の仲間?」


赤蛮奇「違うわよ! あんなのと同視されたら迷惑だわ」

赤蛮奇「たぶん、外界に残っている僅かな生き残りが……今回の騒動に紛れて入って来たんじゃない?」


妹紅「今回の騒動って、どういうことよ?」


赤蛮奇「とにかく、おかしなことが起きてんの。あんたら、里の人間達を案じてるなら気をつけな」

赤蛮奇「話の通じない連中が攻めてくるかも知れないよ!」


タッ!


妹紅「お、おい!」

253: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:39:25.38 ID:l9umTQmh0
妹紅「――さっきの群れを追いかけて行ったのか。今のあいつの言葉――どう思う、慧音」

慧音「……、妖怪が人間の安全に関してわざわざ忠告してくるなんて……そうそうないことよね」

慧音「念のため、里周辺を見回りに行く」

慧音「里で妖怪退治を専門としている人達にもこのことを伝えて、警戒に当たってもらおう」

妹紅「そう。それじゃ――私も手伝うよ」




――


ザッザッザッザッザッザッザッ


ミサキA「……」

ミサキB「……」

ミサキC「……」

ミサキD「……」

ミサキE「……」

ミサキF「……」

ミサキG「……」


スタスタ


布都「再思の道を通り過ぎて、魔法の森を越えて、命蓮寺を素通りか……となるともうじき辿り着くのは」

屠自古「……ヒトザトカ」

254: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:41:50.83 ID:l9umTQmh0
布都「……さすがにマズイの。この連中、どうも亡霊っぽいし、人里に入ったら混乱を招く恐れが」

布都「とりあえず足止めをして、我らが太子様の道場にでも連れてゆくぞ」

布都(といってもこの連中、さきほどから声を掛けても全く反応を示さない)

布都「よし、少し強引にでも連中の動きを止めてやるとするか!!」


屠自古「ヤッテヤンヨ!」


バッ!!


ミサキFG「「!?」」

布都「よし、とりあえず最後尾の2人から錫丈を奪ってこちらに惹き付けたぞ!(※強盗)」


屠自古「オンリョウ『イルカノイカヅチ』(※殺人)」


ピシャ――――――――ン!!!!!


255: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:46:01.56 ID:l9umTQmh0
シュ―――――――――


ミサキABCDE「「「「「・・・・・・・」」」」」



ミサキFG「「・・・・・にっこり」」


シュウン


布都「! 今の一撃で……む! 2人は……もしや成仏したのか!?」

屠自古「……ヤッタナ」

布都「ふふ、まさか迷える亡霊の魂を救うことになるとは――増長するわけではないが、悪い気はせぬなぁ」


ミサキA「はぐれぇ!!」

ミサキB「はぐれはおらんかァ!!」

ミサキC「向こうじゃー!! 人間のニオイじゃー!!」

ミサキD「人間がおるぞー!!」

ミサキE「いま、迎えに参らんッ!!!」


ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ


布都「……」

屠自古「……」

256: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:48:52.75 ID:l9umTQmh0
??「ぎゃあああっ!!」

小傘「何なのよ今のは!? すんごい怖そうな奴らが人里に向かってったよ!? ああ……吃驚した」


布都「……」

屠自古「……」


小傘「ねぇ、貴女たち……アレほっといていいの? 何だか、でんじゃらすな様子だったけれど」


屠自古「……ヤバイネ、オウヨ!」

布都「うむ、これは少し見過ごせぬな、追うぞ!」

布都「ついでにここで出くわしたのも何かの縁よ、お主も来るのじゃ!!」


ガシッ


小傘「え? ちょっと待って、私暇じゃないからイヤ! 遊びって雰囲気じゃないしとにかくイヤ!」


ダダダダッ


小傘「嫌ぁぁあああぁぁ行きたくな――――――いっ!!」


                                   (つづく)

276: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:05:31.52 ID:4wDqOJ3f0

――守矢神社――


??「……」


早苗「これ、何なんでしょう」

早苗「さっき、お掃除中に見つけまして……最初は埃かなって思ったんですけど」

諏訪子「何だろうねこれ、植物の綿毛っぽく見えるけど、目ん玉がついてるし」

神奈子「目玉がついているんなら動物なんじゃないかい?」


??「……」


早苗「動物なのか植物なのか。とりあえず、今夜のおかずにでも」

諏訪子「ちょっと待って、私は味噌汁の具の方が合うと思う」

神奈子「いや待って、こいつもしかしたら小妖怪の一種かもしれないよ」


??「……」

277: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:07:44.96 ID:4wDqOJ3f0
早苗「妖怪? こんなフワフワしたのがですか?」

神奈子「ほら諏訪子――以前にこういう感じの生物の話題が巷で噂になっていたことがあったろう?」

諏訪子「あったっけ?」

神奈子「ちょっと、よく見せてくれ」

早苗「わかりました、どうぞ」


ジー


神奈子(これは……確か……)

神奈子「諏訪子、そこのおしろい入りのケースを取ってくれ」

諏訪子「これ? 厚化粧にさらに上塗りするの?」

神奈子「こうするんだよ」


サラサラサラサラ……


\ポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッ/

278: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:11:07.17 ID:4wDqOJ3f0
諏訪子「わわっ」

早苗「えっ急に数が増えちゃいました!? おしろいの粉を振りかけただけで!」

神奈子(やっぱりか、……これに反応して増殖した)

神奈子(――よし、ならば次は)

神奈子「――早苗、何か欲しい物でもないか?」

早苗「え、欲しい物?」

早苗「そうですねー、うーん……神社の参拝者さんですかね」

早苗「それからー、高級スイーツとか」


トントン


「あら、華扇さんじゃないですか。どうしてこちらに」「うーん、まあ参拝客ってことかな。ちょっと貴女たちに伝えたいことが」

「あ、これ訪問ついでにお土産ね」「わー! 美味しそうなお菓子ですね、これはどうも」



諏訪子「あら、ちょうどいいじゃない。動物に詳しいひとが来たから聞いてみれば――」

神奈子「いいや、もうその必要はないな」


\ポーンッ/


神奈子「一匹消えたか……間違いない」

諏訪子「え、何が間違いないって?」

280: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:18:03.26 ID:4wDqOJ3f0
ガタッ


諏訪子「あ、ちょっと何処行くの神奈子?」

神奈子「諏訪子も手伝ってくれ。上手く量産できれば――」

諏訪子「量産って、この小玉なやつを?」


神奈子(フフフ、囲いには紙垂(しで)を使うかな。この小妖怪、早苗とともに我々が上手く扱うことができれば……!)

神奈子(地道な産業革命を推進するよりももっと手っ取り早く、膨大な力を手に入れることができる)

神奈子(僥倖だ。こいつはまさに僥倖のタネ――)

神奈子(手軽な奇跡を起こすなら、わざわざ頼ることもないが――)

神奈子(大いなる奇跡を起こすには、多大な労力とそれ相応の代償を伴うからね)

神奈子(そして――代償が大きすぎるから、実現不可能なこともままある)


神奈子「貴方たちのチカラ――幸運をもたらす程度の能力――を活用させてもらうとしよう」

神奈子「――ケサランパサラン達よ」


\ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン/

281: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:22:57.49 ID:4wDqOJ3f0

――霧の湖――


わかさぎ姫「へぇ、外の世界からはるばる幻想郷(こちら)に?」

速魚「いやー、それほどでも」

わかさぎ姫「でも、ここ淡水よ。貴女の肌に合う?」

速魚「あー、私、人間に変身して歩くこともできますし大丈夫ですよー」

わかさぎ姫「本当に? 凄いわね、今度コツを教えてくれない?」

速魚「いいですよー」

速魚「それにしても霧が濃いですねー、ここ。どうして?」

わかさぎ姫「……さあ、どうしてかしらねぇ」


ザッ


咲夜「あら、湖の周辺の掃除でもしようかと思ったら……見慣れぬ半漁人が二匹いるわね」

咲夜「外来魚かしら? 一応駆除したほうがいいか」

282: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:26:40.80 ID:4wDqOJ3f0
わかさぎ姫「って!? 貴女、私とは面識あるでしょ!」

速魚「こんにちは」


咲夜「丁度いいわ、今夜は魚料理にでもしましょうか――魚の血液ってカリウム分多そうよね」


わかさぎ姫「ちょっと、食べる前提で話をしないでよ!」

速魚「どうぞどうぞー、私を食べたら不老不死になりますよ」


咲夜「あら、そうなの。特段面白くもなんともない冗談ね」

咲夜「じゃ、私は忙しいから」


スタスタ


速魚「あれー、行っちゃいました」

わかさぎ姫「それで、貴女はこれからどうするの? 一緒に歌でも歌う?」

速魚「えーと、人を探してて。とりあえず一緒に歌いましょう」


「「おぼえていますかー♪ 眼と眼があったときー♪」」

283: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:35:09.97 ID:4wDqOJ3f0

――地底(旧都)――


くだ狐「スリスリ」


竜「~!!?」


ザッ!!


くだ狐「クーン(はぁと)」




ぬ~べ~「おいおい、驚いて逃げちゃったじゃないか……まだ子どもの竜のようだったな」

ヤマメ「うーん、そのペットよりもむしろ鬼の手を見て驚いていたような」

広「出逢っていきなりナンパするあたり、性格が飼い主にそっくりだよなー」

郷子「ほんとよねー」

ぬ~べ~「おいおい……俺は初対面の女性相手にそんなことは……」

美樹「でも、こんなところに竜なんていたのね。捕まえたら高く売れそうだったのに……惜しかったわー」

ぬ~べ~「お前なぁ! 神聖な生き物に対してそういう賤しいことを考えるな……罰が当たるぞ」

ヤマメ(竜なんて地底にいたかな?) 

ヤマメ(まあ、地底は広いし何がいても不思議じゃないからねぇ)

284: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:43:10.55 ID:4wDqOJ3f0

――

勇儀「くー! やっぱり酒はいいねぇ」

正邪「さあさあどうぞ、お注ぎいたします」

勇儀「おう、頼むよ」

ぬえ「……」

正邪「さ、さあ……そちらも」

ぬえ「ねえ、何でこんな小物妖怪がこの場にいるの?」

正邪(居たくているわけねーだろ。誰が好き好んでこんな連中に酌なんかするか!)

勇儀「何でって、そこらへんをほっつき歩いてたから捕まえたんだよ」

ぬえ「あらそう? つまり、地上を追われて地下へ逃げて来たってわけ」

正邪(違う! 逃げたんじゃない、あえて地底を逃げ道に選んだんだ!!)


ぬえ「確かこいつ、弾幕ごっこの域を超えてもいいから殺害しろって御触書が出てたよね」

ぬえ「あれ、まだ有効なのかしら?」

正邪「……」


勇儀「そんなことは別にいいだろう。ここは地底だ――ならず者だろうが天邪鬼だろうがとりあえずは受け入れてやる」

勇儀「もともと忌み嫌われて地上を追われた者達の最後の砦だったんだから、来る者は拒まない」

勇儀「――最近は、去る者を追わないことの方が多かったけれど」

勇儀「今日は無礼講よ。何にも気にせず、ほらお前も呑め」

正邪「……い、いえ私はがぼっ!?」

285: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:47:01.25 ID:4wDqOJ3f0
ぬえ「ほら呑め呑め。瓶を逆さに一気に呑み干せばいいのよ。酒はいくらでもあるから気にしなくていい」


正邪「んっ……んぐぐっ……っ……」


勇儀「ところで貴女は何しに地底に舞い戻ったんだい?」

勇儀「あのお寺、破門になっちゃったのかな?」

ぬえ「違うわ、私はその……在家信者だから。どこでどういう修行をするかは自分で考えているの」

勇儀「ふーん、でも酒を呑むのは飲酒戒(おんじゅかい)ってやつでダメじゃなかった?」

ぬえ「う、……確かに聖はお酒を完全に断っているわ。でも妖怪僧達はほとんど戒律を守ってないし」

ぬえ「だからちょっとした気晴らし……気分転換というか」


正邪「……むぐ! んーんー!」


勇儀「そうだねぇ。ま、妖怪に戒律を守れって縛りつけること自体そもそも無理があるんだ」

ぬえ「! それでも、聖の行いは間違っては――」

勇儀「ああ、ひとえに間違ってるとは思わないよ。この話はあんまり深入りするもんじゃないね」

勇儀「で、さっきの話に戻ろう――ここに何しに来たんだ?」

ぬえ「それは……その……、たまには自分が封じられた忌々しい場所を再び訪ることで、えーと」

勇儀「ああ、未だに他の門徒(やつら)と打ち解けられないのか。だから寂しくて昔馴染みな地底に――」

ぬえ「ち、違う!!」


正邪「……げぽっ、げほ」

286: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:53:05.80 ID:4wDqOJ3f0
ぬえ「打ち解けられないんじゃないのよ! 向こうが私を仲間外れにしてるんだ!!」


シュポンッ


ぬえ「ほらもっと呑め」


正邪「がぼっ!? んぐっ……んっ……!」


勇儀「そういや地上(うえ)と通じてて情報通な輩が言っていたけれど、なんでも貴女、外から古狸を寺に連れ込んだらしいね」

勇儀「老獪な妖怪に間を取り持ってもらえば、連中とも仲良くできるんじゃないの?」

ぬえ「……だって。私達は一足遅れて入門したのよ。それだけでも居心地悪いのに」

勇儀「でもほら、見越入道や舟幽霊とかは一緒に地底に封印されていた仲だろう?」

ぬえ「でも、別に仲良くなんかなかったわ。誰も私に話しかけてくれないのよ?」

正邪「う……げっぷ……」


カラーン


ぬえ「あの存在感が希薄な坊主なんざ……私をつっけんどんに“鵺さん”呼ばわりしてたんだぞ!」

ぬえ「どいつもこいつも……私をのけものにするな! ほらもっともっと呑め!」


正邪「う……うぐっ!!」


ぬえ(……あいつらは決してイヤな奴らではない。むしろ良い奴だと思ってる……だから尚更私は……)

勇儀「で、寂しいから地底の知己と久々に酒酌み交わそうってわけで来たのか?」

ぬえ「いいえ、別にそういうつもりじゃないわ」

勇儀「確かに、今残ってる面子でも……取り立てて貴女と仲いい輩はいないね」

ぬえ「どいつもこいつも……ほら、次の酒だ」


正邪「うぐー……うぅ……うぇっく……」

287: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:55:46.07 ID:4wDqOJ3f0
勇儀「そうだなー。あ、それじゃあいつ、土蜘蛛のやつを探して来ようか」

勇儀「あれは割に顔が広いものね、貴女も話しかけられたことくらいあるんじゃないの?」

ぬえ「……うん。でも知らんぷりしてたら話かけられなくなった」

勇儀「あらら。誰かに話しかけて欲しかったんじゃなかったの?」

ぬえ「だって……だって」


カラーン


正邪「ぷはっ……」


勇儀(生まれつきのアマノジャクはともかくとしても、こっちも結構に天邪鬼だねぇ)

ぬえ「ほら、また次の酒だよ――お前もどうせひとりぼっちなんだろ」

ぬえ「……、一緒に……」


正邪(うるさい! ほざけ! まっぴらごめんだ!! お前のような強い妖怪と一緒にするな!)


勇儀「よしよし、お前もいい感じに酒が回ってきたから」

勇儀「そんじゃ、ここいらでちょいと一発芸でも見せてくれよ」


正邪「え……」

288: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:58:25.52 ID:4wDqOJ3f0
ぬえ「……そうだな、何か見せてみて。お前、天邪鬼なんだからさ」

ぬえ「私達が吃驚して笑い転げるようなことをやってくれそうだ」


正邪「え……」


ぬえ「言っておくが、もしつまらなかったらお前はこの場で終わりだがな――覚悟しておけ」


正邪「……」


勇儀「はははは、お前さん顔が真っ青だよ! 全体的には赤いってのに」

勇儀「何でもいいから堂々とやってみなよ――別にちゃぶ台返しとか逆立ちとか、なーんでもいいから」


正邪(何でもいい? 嘘つけぇ!! つまらなかったら八つ裂きにするつもりだろ!!)


ぬえ「どうした、早く何かやってよ、興が覚めるじゃない」


正邪(くそぅ……この際、下剋上だなんて大きいことはいわない……!)

正邪(だから! この状況に、変化が欲しい!)

正邪(私が今望むもの……それはこの追い詰められた状況をひっくり返すほど程度の変化だ!) 

正邪(生まれ変わるほどじゃなくていいから……何か……!!)

289: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:03:44.71 ID:4wDqOJ3f0
――


ガラッ……


勇儀「おおー、何だい何だい。今日は風変わりな連中が続々現れるじゃないか」

ぬえ(……何だ、こいつらは。人間か?)

ぬえ(……いや、2人は人間のようだが、残り2人は……妖怪?)


邪正「!!」

邪正(やった! 誰だか知らんが客人だ――流れが変わったぞ!!)


広「真っ黒いパン……グハッ!?」

郷子「何ガン見してんのよバカァ!!」


美樹(少女……? 何なのよあのオーバーFカップはっ!?)

美樹(ま、まあまだ慌てることはないわ。私のナイスバディは発展途上……これからよこれから!)


ヤマメ「おやおや勇儀の姐さん、今日は随分とレアな面子と酒盛りしているねぇ」

ヤマメ「で、そこの天邪鬼はひっくり返したちゃぶ台の上で逆立ちして何してんの? 露出プレイ?」


ぬ~べ~「おおッ!!」

290: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:06:31.77 ID:4wDqOJ3f0
ぬ~べ~「何とお美しい!! こんなところであなたのような素敵な女性に巡り合えるなんて!!」

ぬ~べ~「どうです? これから僕と一緒に舟幽霊が炊いた怪火の見える海岸沿いのレストランでお食事でも!」

勇儀「ほう。鬼を相手にいきなりナンパかい? 舟幽霊のくだりは船の難破とかけているのかな?」


ヤマメ「舟幽霊はいるけど海岸沿いのレストランなんて存在しないよ――幻想郷に海はないからね」


広「良かった、これでようやくいつものぬ~べ~だな」

郷子「もー。リツコ先生やゆきめさんがいるのに、……まったく男ってこれだから……」

美樹「あー、疲れたわ……何かデッカイモノみちゃって余計にショックで疲れたわ」


美樹「にしてもここ滅茶苦茶お酒臭いわねー……何とかならないの?」

正邪「私のせいじゃない。ろくろ首も幻想入りしてたんだな。調子に乗って退治されたザコい飛頭蛮なら知っているが」

美樹「おなかペコペコなんだけど、そこの珍味っぽいのじゃなくてもっと普通の料理用意してくれない?」

ぬえ「お前……誰に向かってそんな軽口叩いてると思ってるのよ? 私のことが怖くない?」

美樹「ぜーんぜん」

ぬえ「……」

291: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:22:27.26 ID:4wDqOJ3f0

――人間の里――


ザワザワ……


里人甲「危険な妖怪が出るかもしれないって言うから、人里の見回りをしているが」

里人乙「ああ、これといった変化もないし……さっきの飛んでいたハゲ頭もどっかいっちまったもんな」

里人甲「ま、妖怪といってもせいぜいあの唐傘お化けが出てくるくらいだろ」

里人乙「宵闇の妖怪とかも、そんなに積極的に襲ってくるわけじゃないしな」

里人甲「あの毒を撒くヤツはやばいよな……」

里人乙「一応対抗策はある――ま、いずれにしろそんな大したことはないだろうよ」

里人甲「案外、人里全体で肝試し大会でもするってことじゃないか? 妖怪達のお遊びに付き合うって感じで」

里人乙「ああ、あるかもな意外と。あはははっ……はは……」

里人甲「? どうした」

里人乙「う、後ろ……!!」


ミサキABCDE「「「「「は~ぐ~れ~」」」」」

292: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:37:11.96 ID:4wDqOJ3f0
里人甲乙「「うわぁぁぁぁああああああああああああっ!!!!」」

ミサキA「迎えに参ったッ!!」


バッ

妹紅「させるか!!」


ブォォン!


ミサキA「ッ!」


ドサッ


ミサキBCDE「「「「  !!  」」」」


妹紅「どうやら、先程の忠告は間違いではなかったようだ」

妹紅(今は妖術を使って相手を足止めし、里人2人が逃げる隙を与えたけれど――)


ミサキA「はぐれはおらんかー!!」


妹紅(気休め程度か――こいつら、なかなかに厄介そうね)

妹紅(相手は5人、すべて……亡霊か?)

妹紅(もう里まで侵入を許してしまった以上――早急に叩くしかないけれど)

妹紅(周りには人家をはじめ多くの建物、そしてまだ状況を把握しておらず里を歩く人間達もいる)

妹紅(派手な戦い方は……やりづらい環境だわ)


                                    (つづく)

316: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:34:10.59 ID:guCPHHKY0

――旧都(酒場)――


勇儀「それじゃ、準備はいいかい?」

ぬ~べ~「ああ、準備オーケーさ」

ぬ~べ~(星熊勇儀――名前から察するに、元はあの星熊童子か)

ぬ~べ~(ということは、この幻想郷には他にも複数の鬼が存在するとみて相違ない……な)


ヤマメ「それでは――始めっ」


グギギギギギギ!!


勇儀「!」

ぬ~べ~「……ッ!」


ヒソヒソ


美樹「ねぇ、なんでぬ~べ~と鬼のヒトが腕相撲やってるの? ――あむっ、この得体の知れない料理結構イケるわ」

広「“腕試し”って言ってたな――要するに鬼の手の強さを肌で感じたいってことだろ」

郷子「でも勇儀さん、自分は右手に抱えた盃のお酒が零れた場合も負けでいいって条件付けたよね」

広「んな条件付けなくても、ぬ~べ~なら勝てるだろ。……ただの腕相撲なんだから」


ぬえ「それはどうかな。今のままだったら、たぶん勝てないよ」


美樹「ちょっと! ぬ~べ~の力を甘く見ちゃだめよ、ぬ~え~」


ぬえ「そのヘンな呼び方は止めろ――喰い殺すぞ」


美樹「ひぃ!」

広「う……やっぱこう、その……姿はこんな感じでも、妖怪らしい凄みって奴はちょくちょく見えるなー」


ぬえ「……」


郷子「ちょっと……あんたさっきからぬえちゃんに微妙に見とれてない?」

広「んだよ。いちいちうるせえなー、別にそーいうのじゃねぇよ! 郷子にゃ関係ねーだろ」

郷子「ええー! 関係ないですよーだ! 広がどんだけ鼻の下伸ばそうが私の知ったことじゃありませーん!」


ぬえ「はぁー……この私を“ちゃん”づけか……」

正邪「そう気を落とさずとも」

正邪「我々のような弱小妖怪は、鬼に逆らうことなど儘なりません。人を喰いたいという衝動は抑えがたいものでしょうが」

正邪「ここは星熊様の謂いの通りに大人しく――」

ぬえ「別に本気じゃないわよ。そもそも私は弱小じゃないし――こういう場だからね」

317: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:40:05.61 ID:guCPHHKY0
ググググググ


勇儀(ほう? ――この程度かい、鬼(あなた)の力は)

ぬ~べ~(! ――まずい、コイツまさか!)


グォォォォォォォ!!


勇儀「おぉ!」

ぬ~べ~「ぐぬぅ!!」


メキメキメキメキメキ!!


ヤマメ(これは!?)


広「や、やばいぞ!!」

郷子「ぬ~べ~の腕!!」

美樹「ちょっと、これ以上はダメっ!! 止めて……ぬ~べ~が!!」


正邪(鬼の手とやらが、暴走しつつある? 今は封印していると言っていたから――)

正邪(それを自力で解いて這い出ようと言うのか?)


ぬえ(ここから見ているだけでも感じる――かなりの強者だな、封じられた鬼は)

ぬえ(そのパワー、破壊力と言った面では幻想郷に陣取る鬼の力に勝るとも劣らないだろう)

ぬえ(それをこの人間が1人で封じ込めた? そんなことが、外界の人間に容易くできるものなのか?)

ぬえ(まあ、何にせよ――この場でそいつを解放するのは賢明な策とはいえないな)

ぬえ(たとえ、ここが地底と言えども――最低限のルールを守ってくれるような輩じゃなかったら)

ぬえ(地上をも巻き込んだ一大事件になってしまうぞ)

ぬえ(そこのところは、怪力乱神も心得ているとは思うけれどね)




\ピチューン/




ぬ~べ~「!!」

勇儀「――今回のところは、そちらに軍配が上がったな。盃から一滴垂れてしまったんでね」

318: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:49:13.16 ID:guCPHHKY0
シュ―――――


ぬ~べ~(――よ、よし完全に封印が解ける前に、寸止めしてもらえたか)

ぬ~べ~(鬼の手が落ち着きを取り戻してゆく……心配をかけて済みません、美奈子先生)


勇儀(触れた掌(てのひら)から、私の力を吸収して、それを糧に封印を解こうとしたのか?)

勇儀(完全体に戻ったら、一体どれほどの力を発揮してくれるのか――是非見てみたいし、闘ったら愉しめそうだ)

勇儀(――が)


ぬ~べ~「……」

ぬ~べ~「勇儀の姐さんよ――実は、こいつに関して」


勇儀「耳、貸しな」


ヒソヒソ


勇儀「大方、貴方の言いたいことは分かる」

ぬ~べ~「それならば、話は早い! 俺は――」

勇儀「だが、待て――今は酒宴の真っ最中だ。それに、そこで不安そうな目をしている子らの前で」

勇儀「あんまり重い話はしたくないんじゃないかねぇ?」

ぬ~べ~「……」

勇儀「だから、その話は後だ――今はゆっくり盃を交わすとしようじゃないか」

勇儀「鬼は嘘はつかない――後でちゃんと、お悩み相談に乗ってやるよ」

ぬ~べ~「……。ええ、そうですね」

319: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:54:05.97 ID:guCPHHKY0
広「おーいぬ~べ~! 何2人でヒソヒソ話してんだよ?」


ぬ~べ~「いやいや! 今度何処でデートしようかって内緒話をしていただけだ!!」


美樹「またそんなこと言って。鬼の手の方は……もう大丈夫なの? あーもう……ホント心配したんだから……」


ぬ~べ~「大丈夫、全然ヘーキだ! もう何の問題もない!」


美樹「……ならいいのよ。はーまったく、腕相撲ひとつでここまで大騒ぎさせちゃって……もー」



ヤマメ「ほら、貴方達でも口に入れられそうなものを持ってきたよ」

美樹「あ、どもー」

ヤマメ「私はちょくちょく地上(うえ)に行って、いろんなモノを手に入れてるからね」

美樹「手に入れるって、盗むってこと? それとも単に買い物? お金とかはどうしてんの?」

ヤマメ「んーそうだね。例えば病気になった人(原因は私だけどね)に施しをして、その礼に……とかかな」

美樹「ふーん。薬とか、そういうのに詳しいの?」

ヤマメ「まあ、私の特性上ね。詳しくなっても損はないから」


ヤマメ(だからこそ、いつでも貴方達に毒牙を向けることもできたんだよ?)

ヤマメ(だが、貴方達は幸運だ――それはひとえに、あの先生がついていたからさ)


ぬ~べ~「さ、お前達も一緒に飲もう! まさかここで本物の天邪鬼や鵺にまで会えるとは思ってなかったぞ!」

ぬえ「私もこんなところで半人半鬼に遭遇するとは思わなかった。しかも外界から来たとはね」

正邪「ふん。その手の力は測り知れんが、お前ニンゲンとしては軽薄でバカそうだな」

ぬ~べ~「お、何だ天邪鬼くん! そんなに俺のことを褒めてくれるのか? いやぁー先生嬉しいぞ!」


ナデナデ


正邪「キサマ気安く触れるな! 撫でるな! 馬鹿にするなぁ!!」



ヤマメ「ほら、貴方達も呑むかい?」

広「……そうだなー」

美樹「ま、一杯くらいは減るもんじゃないしね」

ぬ~べ~「コラコラコラ! 未成年はお酒はいけませーん!!」

郷子「えーと、ジュースとかは……ないですよね」

勇儀「そうだねー、御冷やで我慢してくれるかな?」

320: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:58:18.14 ID:guCPHHKY0

――守矢神社(参道)――


コツコツ


早苗「はあ、つまり異変の兆候ですか?」

華扇「うん、まだ憶測の段階なんだけれど――」


ビュゥゥゥ!!


竜「~~~~!」


華扇「! 無事に戻ってきたのね!」

早苗「あ、その子は以前に――」


華扇(何かに怯えている様子――そう、怖かったのね。早速、貴方が体験したことを私に聞かせて頂戴)


スッ


華扇「……」

竜「……」


早苗「……」


華扇「“鬼の手”を持っている人間!?」

華扇「ペットとしておぞましい怪物を使役し、土蜘蛛とろくろ首を仲間にして地底を闊歩?」

華扇「そして旧都で、反逆者(アマノジャク)と落合おうとしていたようなの?」

竜「――コクリ」


早苗「え? え? え?」



華扇(――こうしてはいられないわ、異変でも起こりそうな要素が揃いに揃っているじゃない)

華扇(それから、これは私がずっと探しているモノの手掛かりが得られるかもしれない!)


早苗「あのー、華扇さん。今の話っていったい」


華扇「――私は地底に向かうわ」

竜「コクッ!」

華扇「貴方達も気をつけて! ――霊夢達にも状況についての説明をお願い」


ヒュンッ!!!

321: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:05:26.80 ID:Rqku3eO70
早苗「はい、分かりましたよー……ってもう影も形もありませんね」

早苗「やっぱり華扇さん、テレポーターなんじゃ?」

早苗「あ、それよりもさっきの話」

早苗「“鬼の手”がどうのこうの……っていうのに、強く反応していたような」

早苗「うーん、“鬼の手”ですか――どこかで聞いたようなことがあるような、ないような」

早苗「それと華扇さんとの関係――」

早苗「あ、なるほど――やっぱりあの人の正体は仙人じゃなくて鬼だったってことで」

早苗「それで、以前から探していたという失くした腕こそ……その“鬼の手”のことだったんですね!」

早苗「納得しました」




ビュォォォォォォォォォォ




ゆきめ「なるほどね――“鬼の手”を奪うために、鵺野先生を異世界に引っ張り込んだってわけなのね!」




早苗「はい? どちら様ですか? 鵺って……あのUFOのことで?」

早苗「それにしても急に冷え込んで……もう日没も近いからかしら。って、もしかして貴女の仕業です?」

322: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:08:11.24 ID:Rqku3eO70
ゆきめ「教えて! 鵺野先生は今どこにいるの?」




早苗「どこって……たぶん命蓮寺にいるんじゃないんですかね?」




ゆきめ「えーと、そこって……何処にあるの?」




早苗「よければご案内いたしましょうか?」




ゆきめ「えーホントですかー! 助かります!」




早苗「でも、その前に――貴女、この山に棲んでいるひとじゃないっぽいですね」

早苗「というわけで、侵入者ってことですよね?」

早苗「侵入者に対しては、それ相応の対応をしなければ――妖怪退治も私の仕事のひとつなんですから」



ゆきめ「え……」



早苗「さあ、挨拶代わりに始めましょうか」

早苗「――弾幕勝負を!」


カッ!!

323: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:11:19.81 ID:Rqku3eO70

――旧都(酒場)――


広「zzz」

郷子「zzz」

美樹「zzz」


ヤマメ(おやまあ、皆疲れてもう眠ってしまったか。ここまで結構な道のりだったろうしね、人間の子どもにとっては)

ヤマメ(もう宵の口だもんねぇ――地上(うえ)では本物の月が穢れない姿を晒している頃合いか)



広「……ぐっ……父ちゃん……、悪い……」

郷子「……心配……かけてごめんなさい……いつもいつ……も」

美樹「うぎぎぎぎ……それは私が見つけた……か、え、して、……」


ヤマメ「……よく聞こえる寝言だねぇ」

ヤマメ(――今晩はここでゆっくり休みな、明日にはちゃんと、地上まで送ってやるよ)

324: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:16:33.90 ID:Rqku3eO70
ぬ~べ~「――というわけでだな、その天邪鬼な俺の生徒は」

ぬ~べ~「自分から積極的に輪の中に入って行ったんだ。今ではクラスの生徒達と仲良くやっている」


ぬえ「……」

正邪「霊能力がどうとか言いつつ、ただの人形で餓鬼をおちょくっただけだろうが」

正邪「しかもアマノジャクを利用して騙すとは、お前はとんだ反面教師だね」


ぬ~べ~「そうかそうか、そんなに俺を褒めてくれるのか。お前本当に可愛い奴だな~」


正邪「うるさい! 本物のアマノジャクを舐めやがって! 雑魚のクセに!!」

勇儀「何だって? 鬼の手持ちの人間がザコっていうなら、鬼の私もザコだといいたいのか?」

正邪「そんなことは言っていない……ません」


ぬ~べ~「その通りだそうですよ、勇儀姐さん」


勇儀「こりゃちょっと、ヤキ入れる必要があるねぇ」

正邪「違うから! ううん違わないから!」

勇儀「そういや、お前さんだって曲がりなりにも“鬼”だったか」

ぬ~べ~「いいか正邪、いくら自分に自信がないからと言って……そんなに卑屈にならなくてもいいんだぞ」


正邪「くぅ……馬鹿にしやがっ……ごふっ!?」


勇儀「苛々している時はやっぱり酒が一番だ!」

勇儀「お前が好きそうな“逆さ富士”だよ、ほら一息にグッといけ!」

正邪「んぐっ……んん!」

ぬ~べ~「ぬえの方はどうなんだ?」


ぬえ「……何のこと?」


ぬ~べ~「君は色々あって封じられていた地底を出、恩を仇で売るに近い行為をしながらも」

ぬ~べ~「快く自分を受け入れてくれた“人間”につき従い、地上の妖怪寺に入門した」

ぬ~べ~「――だが、今でもなかなか寺の妖怪たちと打ち解けられないでいる」

ぬ~べ~「と、ヤマメくんや姐さんがこっそり教えてくれたぞ……さっき」


ぬえ「余計な御世話だ」

325: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:26:00.43 ID:Rqku3eO70
ぬえ「第一、お前にどうこう言われる筋合いはない」

ぬえ「私は正体不明の妖怪なのに、どうしてお前は恐れない?」


ぬ~べ~「……」


ぬえ「いや、お前だけとは言わない……外界の人間の子どもにすら怖がられないなんて」

ぬえ「私は正体不明がウリなのに、正体(かお)が売れてしまったら……誰にも怖がってもらえない」

ぬえ「だから私は封じられてしまった。そして居場所を失ってしまった……それだけのこと」


ぬ~べ~「なるほど。お前はやはり単純な天邪鬼じゃなくよく考えている天邪鬼だな」

ぬ~べ~「――さすがはいにしえより恐れられし鵺だ」


ぬえ「……」


ぬ~べ~「お前のような由緒ある妖怪に対して、まるで生徒に対するように馴れ馴れしくして済まなかった」

ぬ~べ~「お前はさっき、俺が怖がっていないと言ったが……決してそんなことはない」

ぬ~べ~「もしお前が仮に子ども達に襲いかかってきたとしたら、俺は命を賭けてでも彼らを守るために闘うだろう」

ぬ~べ~「その時は、俺はお前を畏怖していたにだろう――鵺を相手に自信を持って勝てるとは言い切れない」

ぬ~べ~「たとえ、今は丸くなったとはいえ――正体不明という、枯尾花を幽霊と思わせるような力は健在なんだろう?」


ぬえ「……」


ぬ~べ~「鬼の手にできることにも限界がある。ましてや、これを扱おうとする俺自身は結局のところ生身の人間だ」


ぬえ「ならば、もし怖気づいたら逃げる?」


ぬ~べ~「逃げないさ、それでも闘う」

ぬ~べ~「子ども達を守るために、どんな時も決して逃げない。必ず守り切る」

ぬ~べ~「なぜなら俺は、あの子達の保護者(せんせい)だから――彼らの前でくらいは、最強じゃないとな」

ぬ~べ~「もっとも、逆に子ども達に助けられることだって……結構あるんだよなあー」


ぬえ「……お前は信念だけは強いらしい」

ぬえ「それはお前のエゴではあるが、エゴでも貫き通せば救われる者もいるだろう」

ぬえ「守りたいなら守れ――だが妖怪は弱い者ほど狙いやすいから容赦なく襲いかかる」

ぬえ「それは妖怪の持って生まれた性質――宿命のようなもの」

ぬえ「妖怪は決して力を失ってはいけないんだ――その存在意義を確保するためにもな」

ぬえ「お前はせいぜい、他人を救おうとして自分の足元を掬われることがないよう……気をつけるがいいよ」


ぬ~べ~「――ああ、気をつけよう」


ヤマメ(この先生さん、不思議なほどに妖怪を惹きつけるものを持ってるねぇ)

ヤマメ(それを言ったら――幻想郷にも、やたら妖怪を惹きつけてやまない人間はいるけれど)

326: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:29:31.41 ID:Rqku3eO70

――

ぬ~べ~「うっぷ……う、オエエエエエっ……」


勇儀「おいおい大丈夫か? こんなもんで潰れてちゃ、幻想郷で生きていけないよ」

ぬえ「別にこいつ、これから幻想郷で生きるわけじゃないだろう?」


ぬ~べ~「……ぐふっ……それは当然……俺には向こうにも……大切な……人達がたくさ」

ぬ~べ~「うおおおおぇぇ……」


正邪「ふふ……愚か者め……、我を侮辱した……罰が当たったのだ……うっ」

ぬえ「お前も無理をするな。潔く全部出せ、反吐を出すように逆流させるのよ」

ぬえ「そしてもう一度出したモノを呑みこめば、吐き気は治まる」

正邪「喋りかけ……ないで……うぅ……」

ヤマメ「出したモノを再び呑むといいのは船酔いの時じゃないの?」

ぬえ「あ、そうだったかも。船長が前に言ってたのを聞いたから」


――

勇儀「もう大丈夫なのかい? もう一杯水を飲む?」


ぬ~べ~「……ふぅ、いやー、だいぶ落ち着きました」


ヤマメ「さて、今日はそろそろお開きってことにするか」


ぬ~べ~「あ、そう言えば……3人は!? そこに転がってた筈だが……何処に」


ヤマメ「そこの休憩所で寝かせてある。心配しないでも、ちゃんと生きてるよ」

ヤマメ「姐さんの手前、手出しなんざできないさ」


ぬ~べ~「はは、そうか……良かった」


勇儀「子煩悩な先生だねぇ、本当に」


正邪「クソッ……こんな屈辱を受けたのは初めてだ! いや……初めてでもないかも」

正邪「でももう二度と地底になんか来るもんか!」

正邪「地上の馬鹿どもに追い回される方がマシだ! あばよ!!」

ぬえ「……そっちに行くよりこっちに行った方が近道になるよ?」

正邪「そっちに行くつもりなんかなかった! こっちに行くつもりだったからそっちに足先向けたんだ!」

ぬえ「じゃ、またね――私がこの小物を地上まで送って行くわ」

正邪「余計な御世話!」


タッ


勇儀「ひとりで寂しくなったらまた来なよ」

ヤマメ「地底はどんな厄介者でも来るモノ拒まず、去るモノ追わずだからね」

ぬ~べ~「……」

327: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:31:18.68 ID:Rqku3eO70

――

ぬ~べ~「ヤマメくんはこの地底のどの辺りに住んでいるんでしょう?」

勇儀「さぁね――土蜘蛛なんて何処にでも巣を張れるし、何処に住んでいてもおかしくはない」

勇儀「あの子らが起きる頃にまた来ると言っていた。そしたら地上へ上がる道を教えてもらいな」

ぬ~べ~「――ええ、本当に助かりましたよ。良い妖怪(ひと)達に遭えて」

勇儀「さて、ようやくふたりきりになれたところで、肝心の話をするとしようか?」

ぬ~べ~「そうですね」


ぬ~べ~「いやー、照れるなあ!」

ぬ~べ~「やっぱり最高のデートコースは怨霊の飛び交う無縁仏の埋もれた原っぱで、楽器の付喪神達が奏でる妖艶な旋律に耳を傾けながら」


バシャーン


勇儀「おいおいおい、まだ酔いが覚めてなかったか? 水掛けたから、そろそろ正気に戻りな」

ぬ~べ~「あ、あれー……」


勇儀「その左手に封じられた鬼について、だ」

ぬ~べ~「……!!」

勇儀「分かる範囲で、私の意見ってものを語ってやろう――勿論鬼に二言はないから安心しな」

328: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:36:55.50 ID:Rqku3eO70
勇儀「まず、そいつはこの幻想郷にいる鬼とは――無関係。もとから貴方のいた世界のどこかしらに潜んでいたらしい」

ぬ~べ~「……そうですか」

勇儀「今すぐ引っ張り出して手合わせ願いたいぐらいだね――なかなかの強者と見た」

ぬ~べ~「こいつを引っ張り出すことによって――封印を解くことによって」

勇儀「だが、引っ張り出すわけにはいかないね」

ぬ~べ~「……それはどうして」

勇儀「今はまだその時ではないということ――いずれ決着のつく時が来るさ」

勇儀「いつその時が来るかと言えば……私には分からん! 先のことを聞かれても、鬼は笑うしかないからね」

勇儀「そして貴方がその鬼を封じることによって抱えてしまった呪縛も……いずれ解ける」

勇儀「まだ今は、耐える時だ」

ぬ~べ~(……、驚いた。ここまで見抜けるものなのか。やはり鬼というものは……底が計り知れない)


勇儀「それに、無理矢理にでもそいつを引っ張り出してしまうと――たぶん本当の異変(めんどうごと)になっちまうね」

ぬ~べ~「……確かに、コイツは怖ろしい奴だった」

勇儀「手の平を重ねた時――そいつの声が幽かに聞こえたよ」

ぬ~べ~「!! コイツは一体、何て!?」


勇儀「『うがー』って言ってた。それだけ」

ぬ~べ~「……は、はあ。それだけ、ですか……」

329: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:43:48.55 ID:Rqku3eO70
勇儀「ま、とにもかくにも、これ以上刺激しない方がいい。仮にそいつが幻想郷にのさばることになると」

勇儀「――そうなると貴方はおろか、向こうで寝てる子らにも更なる危険が降りかかるだろう」

勇儀「そこまでして、自分の目的を達成しようとするほど――エゴな人間じゃないんだろう?」

勇儀「貴方はね」

ぬ~べ~「……」

勇儀「期待には添えなかったかも知れないけれど。こんなもんで、いいかなー?」

ぬ~べ~「……ええ、どうも。勇儀姐さん」


ぬ~べ~(幻想郷――最初はどうなることやらと思ったが)

ぬ~べ~(ここに暮らす妖怪達と人間との関係性の維持は、ここを一種の理想郷として成り立たせているんだな)

ぬ~べ~(もちろん、この箱庭を保ち続けるために――見えない所で犠牲が生じていることは間違いないだろうが)

330: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:46:35.34 ID:Rqku3eO70

――妖怪の山(上空)――


ビューン!!


文(厄介なことになってしまったわねぇ)

文(――博麗神社の炎上、大結界の弱化、……その一翼をまさか私が担ってしまうとは)

文(もっとも、他の約3名の方が明らかに過失割合が大きいけれどね)

文(博麗神社の方は霊夢さん達なら滞りなく修繕アンド水際での危機回避ができるでしょ)


文「――だったら、今の私の役割は妖怪の山に異変の余波が押し寄せていないかを確認すること」

文「そして、有事の際には外敵の侵略行為を鎮圧――」


??「クックックッ」

331: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:54:12.39 ID:Rqku3eO70
文「って言った端から余所者登場――何者ですか、貴方は」

文「いえ、その風貌を見るに大方察しはつきましたがね」


岩天狗「山の神さま最強の使い手――岩天狗」

岩天狗「よもや、このような異界に闖入することになるとは驚いたぞ」


文「山の神……おそらく、私が知っているそれとはてんで別物のようですね」

文「それから本当の猛者ならば、自分が強いなどと豪語しません――能ある鷹は爪を隠すもの」


岩天狗「……フン」


文「貴方も天狗なんだったら、山のタテ社会ってものを理解できるでしょう? 外界はそうでもないんです?」


岩天狗「大差はなかろう――山の掟は厳しいものだ」

岩天狗「いずれは山の神さまに命じられ、あの雪女と人間を始末するときも来るだろう」


文「その雪女の件はさっぱりですが、どうやら対話は可能なようで安心しました」

文「私は清く正しく美しいパパラッチ――鴉天狗の射命丸文」

文「この山は私をはじめ上司たる大天狗様、ひいては天魔様の管轄下にあります」

文「余所者の立ち入りは固く禁じているんです――事情を斟酌のうえ、速やかにお帰りいただけたらありがたいのですが」

332: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:04:48.56 ID:Rqku3eO70
岩天狗「ここは我らが山の神さまの統括とは異なる場――早々に立ち去ろう」

岩天狗「だが、その前に――同じ天狗を名乗る同士、一度手合わせしてやってもいい」

岩天狗「もっとも、鴉のか細い嘴が岩を打ち砕けるとは思えんが! ひーひひひっ!」

文「私は暇ではないのですが――そこまで挑発されると乗らなきゃ損な気がしますね」

文「貴方のその高慢ちきな長鼻を――へし折って差し上げますよ」


文「風神『天狗颪』」




ギュォォオオオオオオォォォォオオオ




岩天狗「不幸の風!」




バサッ――




文「おやおや、この程度の風撃、カマイタチの方が断然マシですね」

文「やるならやるでもう少し頑張ってもらわないと、私も手加減の匙加減に困りますから――」


文(ん、これは)

文(あやややや……何でしょう? 少し視界が……ぼやけて来たような)

333: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:08:38.50 ID:Rqku3eO70

――地底(地霊殿)――


ピョンっ


お燐「さとり様!」


さとり「……、あら、お燐――久しぶり」

さとり「どうしたの? 何か用?」


お燐「い、いやー……その……」


さとり「……、……、……、……そう」

さとり「でもそれ、わざわざ私に報告するほどのことなの?」

お燐「えー、そりゃだってさとり様……事は地上で起こっているとはいえ、地底も余波を食らってしまったら……」

お燐「万一、妖怪退治の請負人や賢者が下手を打った場合……幻想郷そのものが」

さとり「『最悪の場合、壊れてしまうかも知れない?』――大袈裟ねぇ」

さとり「それに、別に私は構わない」

さとり「私の居場所なんて幻想郷(ここ)に有って無きがごとし――幻想郷(ゆりかご)が失われたところで、何も変わらない」

お燐「あらら……そうですか。それじゃ、あたいはとりあえず行ってきますね」

334: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:12:29.34 ID:Rqku3eO70
さとり「『念のため、旧都の鬼達にも状況を伝えに行く』って? 別に、私は止めたりはしないわ」

さとり「お燐にも責任の一端があるのなら、後始末には参加してくれないと――」

お燐「さとり様にまで火の粉がかかってきたら、あたいはペットとして立つ瀬がありませんもの」

お燐「――それでは」


ニャー……タッ!


さとり(――度重なる不幸が重なって、博麗神社が炎上)

さとり(その事態に意図せずとも加担する結果となってしまったのがお燐を含む4名……ねぇ)

さとり(お燐のように、博麗神社に半分棲みついているような者を除くと、残るは……)

さとり(案外――その人物がその事態を引き起こした黒幕かもしれない)


パラッ


さとり「さてと――読みかけになっていた小説の続きでも読みましょうか」

335: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:18:28.63 ID:Rqku3eO70

――??――




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




??「――光だ


見えるはずのない天から光が見える


ヘェ、この暗澹たる地獄に一筋の光が差すなんて


出られるのか……ここから


何が待っている、あの光の先に




……


感じる


感じる……かすかに




覇鬼兄さんなんだね?

いるんだね……その光の向こう側に




待っていて――今、会いに行くよ

そして共に奏でようじゃないか――破壊と殺戮に彩られた、すてきな鎮魂歌(レクイエム)をね」




                          (第2話:旧都に佇む怪力乱神の巻・終)

355: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 00:58:11.96 ID:p6smnOcF0

――人間の里――


カァー……   カァー……  




ミサキABCDE「「「「「・・・・・・・」」」」」


ジリ


妹紅(黄昏時か――昔から逢魔時(おうまがとき)と言われ、昼と夜が移り変わり、魑魅魍魎に出会いやすい時間帯とされる)

妹紅(いわんや夜になれば、いよいよ妖怪が本領を発揮するわ)

妹紅(亡霊は幽霊と違って、その目的を成就するか、自分の肉体が供養されない限り成仏しないという)

妹紅(できれば、彼らの遺志を探って、供養してあげたいところだけれど)

妹紅(話が通じる連中ではないようだし――ここは退治するしかない!)



妹紅「まずは炎で五体の動きを封じる! 不死鳥フェニ――」


ザッ!!


屠自古「……イタゾ!」

布都「さっきの2人は雷を落としたら成仏しおった! 屠自古、もう一度じゃ!!」

小傘「ちょっと!? こんなところでぶっぱなったら――」




屠自古「ライシ『ガゴウジトルネード』」

356: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:05:58.72 ID:p6smnOcF0
バリバリバリバリバリバリッ!!!


妹紅「ちょっと!?」


ゴォォォォォオオオオォォォォ!!




「キャァァァァァ!!」

「おい、火事だぞ!!」

「やばい、木造家屋が多いので、火の回りが早くなっているゥ!!」




布都「……あー、囲い込むように放たれた炎に屠自古の弾幕が飛んできて」

布都「火の玉状になって軌道が拡散、里のあちこちに飛び火してしまったか。これは大変じゃな」

屠自古「……アーア」

小傘「あのヤバそうな5人組、今の混乱に乗じて里の中へ散って行ったけど」

小傘「これって……マズいんじゃ」


妹紅「何邪魔してくれたんだキサマらはァ!!」


布都「こうなったら、私の力で鎮火して見せようぞ!」

妹紅「やめて! この流れだと火に油を注ぐ未来しかみえないから!」

布都「むむ……そうか? よし、皆落ち着け! 誰にだって失敗はあるものよ!」

布都「今は、あの連中を追うのが先決じゃ! 人間に襲いかかる気満々だったからの!」

屠自古「……ソウダナ」

妹紅「……そうね。今は言い争っている場合じゃない」

妹紅「そこの唐傘お化けの貴女!」

小傘「は、はい! って私!?」

妹紅「今すぐ近隣の命蓮寺に行って、応援を頼んで頂戴! 人里が緊急事態だからって」

妹紅「私達だけでは火災の鎮火まで手が回らない。あの5人組、分かれて人里を闊歩したら――」

小傘「えー!? でも私もともと関係ないのに! しかもお寺の近くからここまで無理矢理」

妹紅「いいから早く行くのよ!!」


クワッ


小傘「ひぃ!! 分かりました、今すぐ行きます!!」


タッ!

357: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:08:42.64 ID:p6smnOcF0

――移動屋台――


ギャーギャー ワーワー


ミスティア「おやぁ……何だか、辺りが騒がしくなってきたね」

小町「喧嘩でもやってんのかな」

美鈴「それより小町さん、早くカマを探さないと、まずいんじゃないですか?」

小町「ふふ、まあ、果報は寝て待てっていうじゃない」

小町「慌てて探すよりも、ゆっくり待っていたら意外と身近なところから出てきたりするものさ」


バキグシャッ!!! 


怪人A「――」


ダダダダッ


魔理沙「もう逃がさねぇぜ!! ――彗星『ブレイジングスター』」


ちゅど~~~~~~~~~~~ん!!

358: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:11:19.01 ID:p6smnOcF0
シュ――――――――――


ミスティア「……」

小町「……」

美鈴「……」


魔理沙「クソッ! また避けやがったか!!」

魔理沙(自慢じゃないが、空を飛ぶ早さにゃ結構自信あんのによ! 狭い小路を上手く走り抜けて、あと一歩のところで被弾を回避)

魔理沙(あいつ、無駄に身体能力が高いぞ。おまけにどっかで見たようなカマを振り回して来る!)

魔理沙(追いかけっこをしてるうちに、人里のど真ん中まで来ちまった!)

魔理沙(これ以上、好き勝手させるわけにはいかねぇ!!)


ミスティア「ちょっとアンタ!! うちの店が全壊したんだけどどう責任取ってくれんだよ!!」


魔理沙「ん? 悪い! 今それどころじゃなくてよ――後にしてくれ!!」


ヒュン!!


ミスティア「く……くぅ……ッ……」

359: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:14:30.04 ID:p6smnOcF0
美鈴「不幸な出来事がまた起きてしまいましたね……」

小町「って、こりゃ尋常じゃないね――あたいらも様子を見に行こう」

美鈴「そういえば、さっきの仮面の妖しいひと。手に持ってたのは」

小町「ああ、間違いなくあたいのカマだ」

美鈴「そもそもアレって、ただの飾りじゃなかったんですか? その、死神的なアイテムってことで」

小町「そんなわけないだろう。あれは半人半霊の(楼観)剣や、不良天人の緋想の剣に負けずとも劣らない威力を持ってるんだ」

美鈴「ということは、もし悪い輩に悪用されたら……」

小町「ああ、ヤバイね。そんなことになったら、今度はあたいの首が本当に飛んじまうよ……」


ミスティア「グダグタ言ってないでとっとと行っちまいな!! 私は今ひとりで静かに鳴きたい気分なのよ……」


キィィィ……

360: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:17:59.04 ID:p6smnOcF0

――妖怪の山――


ザザザザザッ


玉藻「フフ、まさか九尾の狐様があの結界の生成に関与していたとはな!」


藍「様呼ばわりされる筋合いはない。私は貴方のことなどまったく知らないからね」


玉藻「確かに、私もあなたを知らない――だから、もう様付けはしないことにしよう」

玉藻「鵺野先生や生徒達の居場所について、早く教えてもらえませんかね?」


藍「知らないっていってるでしょう! 私は今とても忙しいのよ、邪魔しないでくれない?」


玉藻「いいえ、聞き出させてもらいます。この場で逃したら、もうあなたは二度と捉まらないと思うんでね!」


藍「狐のカンっていう意味かしら? その通り、この場を凌いだら敢えてこちらから出向くことはないでしょうね!」


藍「式神『四面楚歌チャーミング』」


ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン!!


玉藻(む! ――無数の弾丸か? いや、式神の類を変化(へんげ)させたものだ)

玉藻「はッ!!」


シュキラーン!!

361: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:23:24.11 ID:p6smnOcF0
藍「弾幕を強引に斬り裂くか。ここの住人ではないな――境界のゆらぎに乗じて迷い込んだはぐれ狐ということか?」


玉藻「私は迷いこんだわけではない。ちゃんと目的を持ってここに来た」

玉藻「そして、首刺又(これ)は武器としても使えますが、本来こう使うものなんですよ」


グニャ~……スゥ


藍「! 頭部から人間の骸骨が抜き出て――ということは、それを使って人間に化けていたのだな」

藍「そして、お前の真の姿が――それか!」


玉藻「ご名答! あなたは間違いなく強力な妖怪だ――私は人間としての姿ではなく、本来の妖狐として闘わせてもらおう!」


藍「ふふふ。ならば、私も今は“式神”としてではなく、ひとりの“九尾の狐”として闘わせてもらおうか」

藍「もっとも、気持ちとしての問題だけれどね」


玉藻「あなた自身が……式神だと? あなたのような伝説クラスの妖狐が何者かの手下に甘んじていると言うのか」

玉藻「解せない」


藍「甘んじているというわけではない、ひとりの妖狐であるよりも紫様(あのお方)につくほうがいい」

藍「それくらいに、私はあのお方に魅せられ、敬意を払っているというということよ」


玉藻「敬意、……だと」

362: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:27:15.29 ID:p6smnOcF0
藍「親愛――と言い換えても差し支えないかも知れないわね」

藍「貴方だって、そういう気持ちは分かるでしょう? ――詳しい事情は分からないけれど」

藍「貴方はヌエノとかいう者のことをとても気に掛けている。だから、ここまでして私に付き纏うわけだ」


玉藻「気に掛けていることと、親愛という言葉は、全く別物でしょう? 私はそういうつもりであなたに突っかかっているわけではない!」


藍「だったら、どういうつもりよ。私があなたと近い種族だから? ……ハッ、そうか!!」




藍「油揚げ(これ)を奪うのが目的なのね!!」

藍「確かに気持ちは分かる! ――私とて、これを前にしては周りが見えなくなってしまうことがあるからな!」




玉藻「……。ふふ、あなたは、たいそう挑発が御得意なようだ!!」


ダッ


玉藻「火輪尾の術・役小角!!」

藍「! 超人『飛翔・役小角』」


ドシュ――――――――ン!!

363: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:31:42.19 ID:p6smnOcF0
玉藻「むぉぉッ!!」


藍「そちらの力負けだ。妖狐の力を前面に押し出したところで、まだまだ青二才なのが見てとれる」


玉藻「……この程度で全力だと思ってもらっては困る。ここから本番ですよ」


藍「いいだろう。少しばかりおままごとに付き合ってもいい! ――私の油揚げ、奪えるものなら奪ってみよ!」


玉藻「生憎だが、私は油揚げそのものよりも――稲荷寿司の方を重宝しているのでね」


藍「む、そうか。米も一緒がいいのか」

藍「だったら後で、酒の選り好みに長けた巫女を紹介してもいいわよ!」

藍「旨い酒あるところに美味い米あり、いい寿司が味わえるぞ?」

玉藻「……、考えておきましょう」


カッ!!!

364: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:34:49.70 ID:p6smnOcF0

――妖怪の山(大蝦蟇の池・上空)――


ヒュォォォォォ!


ゆきめ(! すっかり暗くなった山の中腹あたりから火の手が!)

ゆきめ(ということは、もしかして鵺野先生が見つかったという知らせ!?)


ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン!!


ゆきめ「わわわ……!」


早苗「ちょっとちょっと! 逃げてばかりじゃなくて貴女も弾幕を使ってくださいよ」

早苗「いかに美しく弾の華を咲かせることができるか。そこが弾幕ごっこの醍醐味でしょ?」


ゆきめ「私知りませんよ、そんなの!」


早苗「まあ、仕方がないですね。そんなにやる気がないのなら、そろそろ打ち止めとしますか」

早苗「すっかり辺りは闇の中――あんまり夕食が遅くなっては私としても困りますんで」

早苗「これで、トドメにしましょう!(勿論、殺すとまでは言ってません)」


ゆきめ「くっ……!!」

ゆきめ(このままだと、鵺野先生と再会する前に、私は)

ゆきめ「そんなのイヤよ!! 私は鵺野先生と結ばれるまで――」

ゆきめ「こんなところで、斃れるわけにはいかない!!」




コォォォォォォォォォォォォ!!




早苗「!! 池の水面を一瞬で氷漬けにっ!?」

365: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:37:33.36 ID:p6smnOcF0
ゆきめ「弾幕ってやつ、よくわからないけど――こういう感じでいいんですか?」




パキパキパキパキパキパキ……ズドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!




早苗「水面の氷をつらら状に砕いてこちらに発射! 氷ミサイルですか!?」




ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ




早苗(危ない危ない……下手を打ったら貫かれるところでした!)

早苗「あれ、あの雪女(ひと)は、何処に――」

ゆきめ「おりゃあああッ!!」


ガキーンっ!!


早苗「ッ! 尖った氷を腕に纏わりつかせ、剣のように振りかざすとは!」

ゆきめ「たかが氷と思ってたんでしょうけど、いろんな使い方があるんだから!」

早苗「ていうか、今の闇討ち……ちょっと危ないじゃないですか。御祓い棒で受け止めなかったら私ケガしてましたよ」

ゆきめ「そっちが最初に仕掛けて来たんでしょ!!!」


シュルルルルルルッ!!


ゆきめ「わっ!?」

早苗「ひゃっ!?」

366: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:45:21.04 ID:p6smnOcF0
大蝦蟇「ジトー」


ゆきめ「何この大きなカエルは!? 捕まっちゃいましたよ!」

早苗「あ。そういえば、この池の水は神事に使われていて……池を冒涜した者は」

早苗「大蝦蟇(池の主)に懲らしめられて――」

早苗「え……どうして私まで?」


大蝦蟇「ペロペロペロ」


ゆきめ「いやぁ! 唾液で全身ベトベトにぃ!!」

早苗「これってやっぱアレですね!? 何故か服だけが溶けてしまうっていうアレなんですね~!!」




キャアアー!!




――妖怪の山(上空)――




ヒュォォォォォ




文(あ……霊夢さん、……死んじゃったんですか?)

文(仕方がありませんね……新しい博麗の巫女を早急に用意しないと)

文(巫女の代わりなんて……いくらでもいるんですから)

文(……いくらでもいる?)

文(それは……私の本心なのでしょうか?)

文(そういえば、霊夢さんが博麗の巫女になって以来……随分とあの神社に取材に行く機会が増えましたね)

文(私が今まで過ごしてきた時間に比べれば、……ほんの刹那に過ぎないここ数年なのに)

文(……霊夢さんの代わりになる人なんて……今後……果たして……)


岩天狗「この俺様の実力、見くびり過ぎたようだな」

367: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:49:52.81 ID:p6smnOcF0
岩天狗「いったいどんな幻覚に惑わされているのか、わしには分からんが」

岩天狗「こやつが抱いている何らかの不安な考え、それに取りつかれているな!」

岩天狗「“不安の風”と言いたいところを、“不幸の風”と言い間違えちゃったけど……まあいい」


文「――」


岩天狗「だが、幻術にかかりながらも宙に浮いたままでいられるとは……なかなか」

岩天狗「ま、待てよ……今なら、この女天狗に、その……触れたりとかできる……な」

岩天狗「生れてこの方800年、女にはとんと縁がなく……手さえ握ったことなどないこの岩天狗だが」

岩天狗「今なら……いけるぞ! よくよく見ればこいつ……まあまあ顔もいいし……」

岩天狗「手ぐらい……触っても……。い、いや……いっそ、他のところも――」


ヒューン!!


??「はたてちゃんキ―――ック!!!」


ドゴッ!!


岩天狗「グボォォッ!!?」

368: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:51:39.76 ID:p6smnOcF0
――妖怪の山(麓)――


ジー


にとり「……」

弥々子「何が見えるっぺ?」

にとり「何なんだろ……とりあえずあっちこっちで楽しそうに遊んでるっぽい光景かな?」

弥々子「見せて見せて!」

にとり「いいけど……この高性能望遠鏡、私が手塩にかけて作ったんだから傷とかつけないでよ?」

弥々子「分かってるっぺ!」


バキッ!


弥々子「ごめん、おら、力加減とか上手くなくてー」

にとり「わ、私の……自信作がぁ……!」

369: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:56:38.35 ID:p6smnOcF0

――人間の里――


ワーワー!! ギャーギャー!!


克也「やべーよ……何か周りのフンイキがやばいぜ」


克也「ごめん! 玉藻先生、ゆきめさん!!」

克也「やっぱオレ達……どうしても気になって……放課後、北区に行ったんだ」

克也「そしたら……森の中にスゲーヤバそうな井戸があってよ!」

克也「そこに近づいたら……オレ達……突然、中に吸い込まれちまったんだ!!」

克也「なあ、まこと――この田舎町は一体、どこなんだと思うか!?」


シ―――――――ン


克也「お、おい……まこと!! どこ行った!?」

370: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:58:24.04 ID:p6smnOcF0
まこと「ま、迷ってしまったのだ……」

まこと「克也くんは……どこに……」

まこと「それに……ここは一体……どこかの村のようだけれど」

まこと「何だか……」


ザッ


ミサキA「はぐれはおらぬか?」


まこと「ひ!!?」


バッ!!


??「危ない!」

371: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 02:03:00.17 ID:p6smnOcF0
ミサキA「!」


一輪「雲山、後方支援は任せて! ――拳符『天網サンドバッグ』」


グググググ……!


雲山「――」


オラオラオラオラオラオラオラオラ!! オラァーッ!!


ミサキA「~~~ッ!?」


ドガバキグシャ――――――ン!!




まこと「あ……ぁ……」

一輪「大丈夫かい、坊や」

まこと「あ、ありがとうなのだ……知らないお姉さん」


克也「まこと! そこにいたのか!!」

克也「って、お前……何自分だけキレーなお姉さんに抱き上げられてんだよーコノヤロー!」

ミサキA「――ムクリ」

克也「ん? うわああああッ!?」


まこと「か、克也くん……危ないのだ!」

一輪(思ったより復帰が早いわね)


チラリ


雲山「……」

一輪「ええ、そうよね。今夜は長い夜になりそうだ――やれやれ」
                                    (つづく)

395: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:04:56.25 ID:1FYVToaA0

●ここまでに登場した主な人物の現在の居場所は以下の通り


<時間帯:夜>


【地底】

○旧都
→ぬ~べ~・広・郷子・美樹、勇儀、ヤマメ他

○旧都へ向け移動中
→華扇




【地上】

○妖怪の山
→上空…文、はたて、岩天狗
→守矢神社…神奈子、ケサランパサラン
→中腹…藍、玉藻
→大蝦蟇の池…早苗、ゆきめ


○人間の里
→中心部…魔理沙、怪人A
    …七人ミサキ(5人)、妹紅&慧音、布都&屠自古、一輪&雲山、克也&まこと
    …小町、美鈴


○博麗神社
→霊夢、貧乏神、その他



【幻想郷のどこか】
→萃香

397: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:14:31.47 ID:1FYVToaA0

――??――


芳香「……」




バサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッ




青娥「あらあら、また地獄からの使者なのかしら? 大勢でおこしのようで」


??「いつまで!」

??「いつまで!!」

??「いつまで!!!」


ギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャー

398: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:16:15.85 ID:1FYVToaA0
青娥「ふふ、血気盛んねぇ。芳香、お相手してあげたら?」


芳香「……」

芳香「いーつーまーでー?」


青娥「……」




以津真天「いつまで!!!!」




青娥「いつまで、……を…………………って?」

青娥「お門違いもはなはだしいわ。こんなに可愛がってあげているというのに」




以津真天「いつまで、いつまで、いつまで!!!!!」




芳香「……」


青娥「うふふふふふふ」

青娥「強いて言うならば――いつまでも、よ」


ギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャー

399: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:21:37.29 ID:1FYVToaA0

――冥界――


幽々子「よしよし、ちゃんと仲直りできたわね」


ペコペコペコ


舞首X「……済まぬ」

舞首Y「……否、我が悪かった」

舞首Z「……否、我の方が」


赤蛮奇「まさか、最初の一匹以外は飛頭蛮じゃなくて、別の妖怪だったとは思わなかったよ」


幽々子「舞首っていうのはね、昔お祭りの日の夜にお酒に酔って喧嘩をし出した3人の武士がとうとう刀で斬り合って」

幽々子「すったもんだした挙げ句、斬り落ちた3人の首同士が海に落ちて怨霊となり永遠に争い続けたんですって」


赤蛮奇「ふーん。でも、幻想郷には海はないでしょう? どうして冥界に向かったのかしら」


幽々子「そりゃあ、決まっているじゃない。怨霊って、元を正せば三途の川を渡り損ねた幽霊なんだから」

幽々子「心の片隅では、何とかして彼岸に辿り着いて輪廻転生というレールの上に還りたかったのよ」

400: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:24:59.64 ID:1FYVToaA0
幽々子「でも、無理なことなのよね。怨霊は未来永劫幽霊のままの存在として宿命づけられている」

幽々子「だから――ここに連れて来てあげたの。妖夢をわざわざ人里まで迎えに行ったついでにね」


妖夢「zzz」

半霊「zzz」


赤蛮奇「……まだ寝てる。訳があったといえども道端で寝そべっちまうような従者じゃ、貴女も心配のタネがつきないでしょうね」

幽々子「妖夢の心配? 違うわよ、私の夕ご飯が遅くなるのが心配だったのよー」

赤蛮奇「あ、あらそう……」


\ユユコサマー、ゴハンオヨウイ、デキマシター/


幽々子「さて、そろそろうちの幽霊給仕たちが準備してくれたみたいね」

幽々子「貴女も上がっていきなさいな。妖夢が落とした買い物袋、拾ってきてくれたんだし。いいお酒もあるわ」

赤蛮奇「別にいいわ。私は首連中の様子が気になって、ついてきちゃっただけ」


舞首X「酒ッ!」

舞首Y「800年ぶりの酒じゃァ!」

舞首Z「呑まずにはおれんッ!」


赤蛮奇「こいつら……」

幽々子「ね、まだ気になるでしょ?」

401: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:28:31.40 ID:1FYVToaA0
幽々子「それにね――貴女がちゃんと見張っていてくれたおかげで、彼らが人間に取り憑くことなくここまで連れてこれた」

幽々子「怨霊の厄介なところは、人間達に取りついて、人間同士で怨み合い争い合い……そして殺し合いをさせること」

幽々子「それは、幻想郷が存続する上で……一番困ることなのよね」

赤蛮奇「……それくらい、私にも分かるよ」

幽々子「ま、そういうことで――折角だからゆっくりしていきなさいな」

幽々子「冥界に来ることなんて、そうそうないでしょう?」

赤蛮奇「……、……そうね。そこの三つ巴がまたいがみ合わないよう、今のところは監視するってことでね」




妖夢「……ふあああ、……ん? ここは――」


舞首「「「酒じゃー!」」」


妖夢「ひぃ、幽霊!! 幽霊は斬るッ!!」

403: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/09(土) 19:31:16.85 ID:1FYVToaA0
赤蛮奇「そいつらは怨霊よ。そういやあんた、その剣で大量生産してるのよね?」

妖夢「ってここは、うちじゃないの! ……あれ、私は確か人里に行って……それで……」

赤蛮奇「まぁ、いろいろあって一件落着ってことよ」

妖夢「そうなの? って、貴女……誰だっけ?」

幽々子「妖夢ー、話は後でいいから、奥に行っていいお酒を運んで来てちょうだい」

妖夢「え、あ……はい! 承知しました!」


タッ


幽々子(あの一件以来、顕界と冥界を隔てる結界は薄くなり、行き来が容易になった)

幽々子(それは、ひとえに紫が結界を張り直そうとしないからだけれど)

幽々子(さすがに外界と幻想郷を隔てる結界をザルにしちゃったら、ちょっと危ないわよ?)

幽々子(――ねぇ、紫)



シ――――――――――――ン

                                 

                                   (没ネタ・以上)

414: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 00:43:47.73 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(上空・雲上の宝船)――


星「これはひどいね……人里のあちらこちらに火の手が上がっている」

ナズーリン「だがご主人様。考えようによっては、夜半でよかっただろう」

星「確かに火柱がはっきり目視できるから、ピンポイントで消火できそう。そこは不幸中の幸いだわ」

ナズーリン「さて、わざわざ宝船を出してもらったんです」

ナズーリン「雨乞いでもして、恵みの雨でも降らしてくれるかい――唐傘お化けの君」

小傘「え……いや……私、そういうのは」

ナズーリン「大丈夫、もともと君にはあまり期待していないから」

小傘「うう……」

ナズーリン(天候を容易に操れる者がいれば尚更良かったが、この場はいなくとも片を付けられるだろう)




スッ


村紗「溺符『シンカブルヴォーテックス』」




……サアアアアアアアアア




「おおー、恵みの雨! 皆の衆、もう一息よ、鎮火させるのじゃ!」

「あれは……宝船……?」

「もしや毘沙門天様が救いの手を……!」




パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!

415: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 00:47:04.93 ID:Q2CPhraC0
小傘「この調子で行けば、火事の方はすんなり片付けられそうよね」

ナズーリン「確かに。だが、問題は人里に紛れて猛威をふるっているという凶悪妖怪なのだろう?」

星「ええ。鎮火が終わったら私達も加勢を――」

ナズーリン「それは止めた方がいい、ご主人様は例のごとく宝塔を失くしておられる」

星「う……そんなまるで私がいつも宝塔を失くしているような表現は……」

ナズーリン「そしていつものように私が探している中途でこの騒動だ」

ナズーリン「体術が苦手なご主人様が無理に動くのは賢明ではないでしょう?」

星「確かに……」

小傘「そうね。それにお寺の方だって心配よ。山彦が留守番をしてるって言っても、別のヤバい妖怪でも来たら……」

ナズーリン「君、案外お寺のことを気に掛けているんだね。ただ周りをふらついているだけかと思っていたが」

小傘「ま、まあ……」

星「よし――とにかくまずは消火が第一! 私達もここにある柄杓を使って」

ナズーリン「船長の手助けをするとしよう」

小傘「お、おー!」


村紗「ええっと、そちらの柄杓は……全部底が抜けているのですが」

416: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 00:50:45.83 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(路上)――


ザザザザッ


ミサキA「はぐれはおらぬか……!!」


克也「七人ミサキだってぇ!?」

一輪「そうよ。知らない?」

雲山「……」


克也「いや、うーん、どうだろ。元の世界(あっち)でも色んな妖怪に遭ってきたけどさ」

まこと「お姉さん! どうしてさっきのように攻撃しないのだ? このまま逃げてばかりじゃ――」


一輪「あいつが今貴方たち2人に狙いを定めているからよ」

一輪「このまま引きつけておいて、少しでも里の中心から離れようって算段」


克也「な、なるほど、それは名案! ってオレとまことがターゲット!?」


一輪「どうも、生身の人間――それも普通の人間しか狙ってこないみたいなのよね、この連中」

一輪「もともと亡霊だったり、妖怪だったり、人間でも不死身だったりする相手は都合が悪いらしいの」

一輪「確実に自分の仲間に加えられるという保証がないから、なのかも」


まこと「え? 仲間にって……。あ、あれ? それじゃ、もしかして、お姉さんって……」


一輪「私は妖怪よ、今となっては。こっちの雲山は入道ね」


まこと「!」

克也「マ、マジで!?」


雲山「……」

417: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 00:55:32.40 ID:Q2CPhraC0
クワッ!


ミサキA「お迎えよッ!」

克也「うおっ!!」


スカッ


ミサキA「ッ!」



雲山「……」


ヒョイッ


克也「た、助かったぜ入道さん! 腕が伸びたり縮んだりいろいろ変形するんだな、雲みたいに! って雲なのか」

一輪「さーて、この辺りまで来たら、それほど周囲を気にせずに叩けるかな」

まこと「でも、どうやったらあいつを倒せるのだ……。こんなときにぬ~べ~先生がいたら……」

一輪「ちょっとちょっと~、私じゃ役不足ってことなの? その先生ってのに比べたら」

まこと「そ、そういうわけじゃ! お姉さんはぼくを助けてくれた強い妖怪(ひと)なのだ!」

まこと「ぼくらにも手伝えることがあったら何でも言って欲しいのだ!」

一輪「うん、ありがとうね。その気持ちだけで十分よ」


一輪「こっちは、おとりにでも使おうかな」

克也「え、何なんだこの扱いの差は……」


一輪(でも、あいつに決定打を与えるのは……なかなか難しそうなのよね)

418: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 00:59:10.26 ID:Q2CPhraC0

――


布都「聖童女『大物忌正餐』」


ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ

ミサキB「!!」

ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ

ミサキB「ッ!!」

ドシューン!


布都「ふふ、流石にこの弾幕に囲まれては、容易に身動きはとれまい」

布都「そして、遁れようとしてもがけばもがくほど、被弾してダメージを蓄積してゆくぞ!」

屠自古「……ダガ」


小町「決定打は与えられていないようだね。考えようによっては、七人ミサキは“不死身”だからさ」


布都「そこを何とかするために足止めしとるんじゃろうが。お主、勝手に私の船に乗らんでくれるかのー?」


小町「いやー、やっぱり職業柄、小舟に乗ってると仕事モードになって士気が上がるからね」


屠自古「……ダッタラ」


小町「死神なんだから何とかしろと? ――幽霊相手ならもっと容易いんだがねぇ」

小町「おたくの聖人さんも手に負えなくて困るって地獄の皆が愚痴ってるよ」

小町「おまけにあたいのカマが盗まれちまって……今は自分で戦いづらいんだ。船賃は出すから相乗りさせてくれ」

屠自古「……ッタク」

布都「それ! ――聖童女『太陽神の贄』」


ズゥオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ミサキB「ッ!!?」

ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン

420: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:04:29.91 ID:Q2CPhraC0

――


美鈴「はァ!」


ガスッ!


ミサキC「ッ!」


ズザザザッ!


美鈴「――私は武術の心得がありますから、こういう本格的な闘り合いには向いているのかも知れませんね」

美鈴「貴方のからだから発せられる気を読めば、だいたいの動きは予測できますよ」

ミサキC「他所へ参らんッ!」


タッ


ミサキ?「こっちじゃ!」

ミサキC「!」



ミサキ?「ほう? 儂が仲間だといつから錯覚しておったのじゃ?」

ミサキC「?」


バッ


マミゾウ「お前さんもまだまだ若いのう~。変化『百鬼夜行の門』」


ォオオオオオオオオオオオオ!!

ミサキC「はぐっ!!?」

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ

421: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:07:53.57 ID:Q2CPhraC0
美鈴「うわあ……本格的な百鬼夜行ですね。ていうか、こんなとこに鳥居まで建てて大丈夫なんです?」

マミゾウ「なぁに。これも所詮は化かしよ。それよりもお前さんは……確か吸血鬼の館の門番だったと心得ているが」

美鈴「あーいや、成り行きで……。それにしてもあのミサキって亡霊ですが」

美鈴「圧倒的に強いってわけでもないんですけど、なかなかしぶといですね」

マミゾウ「あれは、七人組であっても7人だけというわけではないからのう」

美鈴「? それはどういう意味で」

マミゾウ「津々浦々あらゆる場にて、一定の数で括られて死んだ者達の亡霊の集団――」

マミゾウ「そやつらの集合体の一部が表象として幻想入りしているとみるのが妥当じゃろうな」

マミゾウ「ただし、自然な幻想入りではないな。儂も、ひとのこと言えんかも知れんが」

美鈴「うーん。要するに一筋縄ではいかない連中なんですね」


マミゾウ(――奴ら5人を一旦落ち着かせるには、里人か、なるべくなら外来人(よそもの)か、生贄を出すのがもっとも簡単じゃろうが)

マミゾウ(――坊主の手前、それは避けるほかあるまいて。あの寺子屋も有効な対処法を練っている最中というし)


バシィ!!


マミ達「ギブ……」


ミサキC「はぐれはおらぬか?」


美鈴「化けの皮がはがされちゃったみたいで……」

マミゾウ「手下たちで時間稼ぎも限界か。さてさて、足止めの続きじゃ」

422: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:11:19.81 ID:Q2CPhraC0

――


妹紅「……ふうー」


ミサキD「……はぐれー」

ミサキE「……むかえー」


ムクリ


妹紅「まだ闘るか? 別に私は構わないよ――いくら闘おうとも、私は何も失わないからね」

妹紅「勿論、里人たちの命は、失うわけにはいかないけれど」


妹紅(――慧音は今、七人ミサキの詳しい実態と対応策について資料を収集中)

妹紅(里に散った残りの3人も、道士や命蓮寺の妖怪僧たちがていよく抑えているみたいね)

妹紅(夜が深まったうえに騒ぎが広がって、かえって外を出歩く人間はほとんどいなくなった)

妹紅(火事もことなきを得たようだし。さっきちらと目に入った、あの魔法使いと怪人物の動向は気になるところだけれど――)

423: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:16:46.06 ID:Q2CPhraC0

――稗田家――


パラパラッ


慧音「ふむ……」

阿求「七人ミサキの跳梁跋扈とは、なかなか興味深い事態ですね。話が分かる相手だったら取材してみたいかも」

慧音「話の分かる相手だったら、苦労はしないわ。貴女も今、人里(きけんちたい)にいるのだから気をつけた方がいいよ」

阿求「気をつけろって言われても……私にはどうしようも。もし今うちに来たら、貴女が追い返してくれますよね?」

慧音「出来る限りはね。でも、今のところは妹紅達が食い止めているから大丈夫だと思うけれど」

阿求「さて、こちらが七人ミサキに関する詳しい記述になります」

阿求「幻想郷が外界から隔離される以前に編纂された部分にあたるから、妖怪の弱点や対処法といった点に重きが置かれているわ」




<七人ミサキとは――

土佐を始め山陽・南海道に伝わる集団亡霊で、風貌に応じて川ミサキ、山ミサキなどと呼称多数

災害や事故、特に海で溺死した人間の幽霊で、主に海や川などの水辺に現れるとされる

七人ミサキに運悪く出くわした人間は高熱に見舞われ、死んでしまうらしい

一人を取り殺すと七人ミサキ内の一人が成仏し、替わって取り殺された者が七人ミサキの一人となる

そのために七人ミサキの人数は常に七人組で、増減することはないといわれている

縦に列を成して移動するのが特徴で、先頭ほど年配者、後ろになるほど新参者のようだ


(中略)


対策は――

○日が暮れた後は外出しないこと。特に女・子どもは狙われやすいので注意

○外出したときは手の親指を隠すように拳を握っていると回避できるとかできないとか

○最悪の場合は、人柱を出して他所へ行ってしまうまでやり過ごそう。犠牲はつきものなのだ……


出典:ういきぺじあ

参考文献:『老圃奇談』『神威怪異奇談』『七人ミサキも●をする』等>




慧音「……ねぇ、これ本当に古い記述なの?」

阿求「細かいことは気にしないで」

424: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:25:14.76 ID:Q2CPhraC0
阿求「対策ですが、7人のうち2人が雷にうたれて成仏した結果、残りの5人がはぐれ者を迎える為に動き出したんですよね」

慧音「複数の証言を総合したところ、そうらしいわ」

阿求「やはりここは、人柱を捧げて」

慧音「そうね。仕方がないから、貴女と鈴奈庵の娘にでも生贄になってもらいましょうか」

阿求「いやいや……まだ私、転生の準備はできていませんし」

阿求「それに“はぐれ者”っていうのは、ある集落共同体からはぐれた外部の者という意味にも取れます」

阿求「最悪の場合は、人里の外の人間、広義には幻想郷の外の人間――外来人――を」

慧音「……冗談に決まってるでしょ、私は人間を安易に犠牲にしようとは思わない。たとえ、余所者といってもね」


<この手の亡霊は自分が死んだという事実を受け入れることができず、いつまでも現世を彷徨い続けることが往々にしてある

自らの死にざまを再度経験することによって、ようやく現実を受け入れて自主的に成仏を遂げるのだろうか>



慧音(幻想郷における亡霊の認識に従えば、死体の供養や幽霊返りを経ずに彼らが成仏するとは考えられないのだけど)

慧音(現に2人はあっさり成仏したらしいし、他の5人についても執着を断ちきれば)

慧音(――要はいろんな死に方を試してみれば、無事成仏できるはず、か)

慧音(でも、こちらは手勢が多いことだし……姑息だけど今は人里の外に追いやる方が得策かな……?)

慧音(いずれにせよ、里人に被害が出る前に収拾しないとね)


慧音「ありがとう、参考になったわ――私は妹紅達と合流するから、貴女は兎も角、外出しないようにね」

阿求「どういたしまして。気をつけるわ、親指を隠してね」

425: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:30:30.15 ID:Q2CPhraC0

――霧雨店(屋根の上)――


ガキィン!!!


怪人A「……!」


ギリギリギリ


魔理沙「……何の因果で、実家(ここ)の上で争わないといけねぇんだか、な」

魔理沙(やっぱり、この赤マントが持ってるカマはあのサボタージュ死神のものじゃねーか)

魔理沙(ってことは、こいつも死神の仲間? 何かそれっぽく見えないこともないが……違うな)

魔理沙(死神がこんなに死神っぽいオーラを出してちゃ、幻想郷には馴染めねーよ!)


ボキィッ!!


魔理沙「くっ!」


シュタッ


魔理沙「使い手が変わっても死神のカマだな、箒で受け止めるには無理があったか。折れちまったぜ……(もともとは普通の箒だったしな)」

魔理沙(箒なしでも飛べないことはないが……いつも使ってるから、どうも勝手が違うな)

魔理沙(――! あいつがいない!? 見失った? でもほんのさっきまで屋根の上に)

426: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:41:19.47 ID:Q2CPhraC0
ヒュンッ


怪人A「……」

魔理沙(な、真上から!? ジャンプして一瞬私の視界から消え――)


ガスッ!!     ――カラーン


魔理沙「ごっ!!?」


ギギギギ……


怪人A「……」

魔理沙(土手っ腹に……風穴だぜ。穴は開いてないけど……結構……効くな)

魔理沙(殴られた拍子に八卦炉下に落としちまったし。キノコ爆弾投げるにせよ、他の魔法を使うにせよ)


メキィィ……


魔理沙(こう……首を絞めつけられてちゃ……身動きが……息が。片手でこの腕力っておかしいだろ……普通)

魔理沙(あーもう、こんなことなら……もうちょい体術とか護身術とかも身につけておけばよかった……)

魔理沙(今日の私……完全にやられ役じゃねーか……こんの野郎ッ)




怪人A「赤が好き――赤が好きと言った子は」


スッ


魔理沙(……ああ、赤って……そういうことか)

魔理沙(また血を見ることになるなあ……そのカマを振り下ろされたら)

魔理沙(いや……もう見てる余裕は……ないかも……知れない)

魔理沙(職業は魔法使いっって言っても――やっぱり私は人間なんだ)

魔理沙(実家の屋根の上で……か? まったく……)




怪人A「ニヤリ」




魔理沙(今、笑いやがった――仮面の下の表情(カオ)は変わんないけど、確かに歪んだ笑い声が聞こえてきた)

魔理沙(コイツ、心底人殺しを楽しんでる? ……殺人鬼かよ)

427: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:44:07.46 ID:Q2CPhraC0
怪人A「――」


ブォン!!!


魔理沙(――南無三)




ドゴォォォ―――――!!!


怪人A「グァ!?」


ズザザザザザガシャーン!!




魔理沙「かはっ! ゲホゲホっ……」

魔理沙(何が起きた? あいつが……ぶっ飛ばされて)


ヒュゥゥゥゥ


魔理沙「! ……お前は」


??「やはり、力も方便となるべきときはあります」

428: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:48:56.30 ID:Q2CPhraC0
小町「ほら! お前さんの八卦炉(おとしもの)だよ」


ヒュンッ パシッ!


魔理沙「!」

小町「やれやれ、随分手こずってるようじゃないか。まあ、こちとら大事なカマの盗人に今追いついところだけれど」


魔理沙「……お前なら、距離操って何とかできないのか?」


小町「うーん、ま、それは置いといて。相手は遊びじゃなくて本気で殺しにかかってる」

小町「負けず嫌いなあんたには不満かもしれないけれど、ここは助太刀させてもらうよ?」


魔理沙「1人で闘うより大勢でやるほうがいいに決まってる。こんなところで意地を張るほど私は馬鹿じゃない」

魔理沙「自分の血が流れるのも、他人の血が流れるのもまっぴらごめんだ」

魔理沙「こいつは得体が知れない怖さがあるけれど、野放しにはできない」

魔理沙「殺るしかない――ってことだろ、妖怪寺の住職さん」




聖白蓮「私は人妖平等を説いていますが――それはあくまで、弱く虐げられた妖怪が保護し、人間達に一定の譲歩を求めるもの」

聖白蓮「貴方のような、人にも妖怪にも害なす“化物”を相手にするに至っては、ガンガンいかせてもらいますよ」


ゴキィ、ゴキィ


聖白蓮「残念ながら、殲滅することでしか――貴方の仮面の下に隠された心は救済することができそうにないからね」


ユラリ


怪人A「……」

429: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 01:53:47.43 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(上空・雲上の宝船)――




響子「  以  上  で  ー  す  !  !  」





響子「  里  人  の  皆  さ  ん  、 気  を  つ  け  て ー  !  !  」





響子「  防  衛  隊  の  皆  さ  ん  は  、  健  闘  を  祈  り  ま  ー  す  !  !  」




慧音「……、これでさしあたっての対策について周知はできたわね」

小傘「2人が寺に戻った代わりに山彦が応援に来て役に立ったわね、良かったじゃない」

慧音「でもこの船、舵取りがいなくなっても大丈夫なの?」

響子「自動操行なのよ」

430: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 02:02:29.72 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(路上)――


まこと「こ、こ、こっちなのだー! こっちにまっすぐ来るのだー!」


ミサキA「ォォオオオ!!」


バッ!


一輪「今よ、伏せて」

まこと「はい!」


ミサキA「!」


スカッ


一輪&雲山「「オラアアア―――ッ!!」」


ドゴ――ッ!!


ミサキ「……ッ」

克也「へいへーい! こっちだぜ!!」

克也「迎えるってんなら迎えてみろよ!! 俺はこっちだ! 井戸のへりに突っ立ってんぞ!!」

ミサキ「……!」


クワッ


克也「来たーッ! 助けて、舟幽霊さん!!」


ゴポゴポゴポゴポ……バシャッ!!


ミサキA「!?」


ガシィ!


村紗「幻想卿には海もありませんし、私はもう悪戯はしても人を遭難させることはやめました」

村紗「ですが、もしもそれが逆に、貴方を救うことになるのかも知れないのならば――敢えて」




ドッポーン!!!    ……シ――――ン




まこと「……ごくり」

克也「ど、どうなんだろ。井戸の奥に引っ張り込まれて溺れた?……けど……成仏したんかな」

雲山「……」

一輪「どうだろうね。あれの外見は山ミサキってやつのようだったし、これが効いたかどうかは」

一輪「って雲山が言ってる」

一輪(でも、ミサキってのは“岬”と通じる。海に関連する伝承が多いし、『川ミサキが山に入ったら山ミサキになる』って説もあるという)

一輪(これが当たりだったら)

431: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 02:06:55.05 ID:Q2CPhraC0
ヒョコリ


村紗「どうやら、無事に成仏されたみたいですよ。あの方は」


まこと「!!」

克也「マジでか!」


村紗「ようやく、長い呪縛から逃れられたようで」

一輪「……そう」


まこと「よかったのだ……怖かったけど、無事に成仏できて」

克也「つまり他の奴らも同じように引きずりこんだらいいってことなんじゃ?」


村紗「それは……どうでしょうかね。私には判りかねますが」

雲山「……」

一輪「いずれにせよ、こっちは片付いたから他の手助けに向かいましょ」

一輪(で、正直この子たちは足手まといなわけだけど)


克也「オレらだって、ちっとは役に立てたんだ! 広達に会えたら自慢しねーとな」

まこと「え、えーと……ぼくたちはおとりになっただけだし」

克也「ってなわけでお姉さま方! 先生を見つけるまではお供させてもらいますッ!!」


一輪「はぁー。あ、うん、分かったから」

村紗「まあ、宝船にご乗船いただくという手もありますから」

432: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 02:08:46.56 ID:Q2CPhraC0
――人間の里(郊外)――




ミサキBCDE「「「「ゼー……ゼー……」」」」




屠自古「……フゥ」

布都「少々時間はかかったが、無事犠牲者を出すことなく、里のはずれまで追い返すことができたか」

妹紅「貴女達が最初に手を出さなかったら、もっと穏便に事を済ませられたでしょうけど、ね」

美鈴「確か5人が暴れ回ってたんですよね? 1人見当たらないようですが」

マミゾウ「坊主や僧侶も動いておるのじゃ。案外、上手く処理できたのやもしれんぞ」


マミゾウ「しっかし、あれだけ水際作戦を展開しておいて、最後はゴリ押しで押し出しとはのう」

布都「一刻も早く里人を危険から遠ざけるのが、我々の一番の目的」

布都「いろんな殺し方を試してみよ、とのお達しだが……やはりここは手っ取り早く」

美鈴「人里から追い出しちゃいましょう!」

屠自古「……サヨナラダ」


妹紅「――それも、姑(しばら)く里には出て来れないような、迷える場にね!」

433: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 02:11:09.81 ID:Q2CPhraC0
??「神宝『サラマンダーシールド』」


ギュルルルルルルルルルルル!!


ミサキBCDE「「「「ッ!!!?」」」」



妹紅「な……貴女まで邪魔しにきたの!? もういい加減にしてよ!!」

輝夜「何を言っているの? 違うわよ、さっき宵闇を斬り裂くような大音声を聞いてね。永遠亭(うち)まで届いたのよ、アレ」

妹紅「え……」

輝夜「こやつらが人里を荒らす無法者なのでしょ? 燃えない衣の盾で捕まえたから、念のためにあんたの炎で囲んで二重に拘束したら?」

妹紅「――そうね」


ゴォォォォォォォォォォォォォ


輝夜「そろそろ、また喧嘩を売りに来るころかなと待っていたんだけれど。丁度いいわ」

輝夜「今はこやつらとも殺り合いましょ? 私達には、いくらでも費やせる時間があるのだから」

妹紅「そうね。勿論、ここじゃなくて――迷いの竹林の中で、殺り合うとしようかしら」


ミサキBCDE「「「「~~~~!」」」」


……ユラユラユラユラ

434: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/15(金) 02:15:55.26 ID:Q2CPhraC0
屠自古「……」

布都「……まるで竹林の奥に吸い込まれるかのように、行ってしまった。否、永遠に迎えられてしまったとでもいうべきや?」

マミゾウ「何じゃ、あの2人は。夫婦なのかの?」

美鈴「いやー、たぶんいろんな過去があって仲は悪いと思うんですが。実のところはどうなんでしょう、私には判りませんね」

布都「何はともあれ、これでひとまずは安心ということじゃな」

屠自古「……ソウダネ」


美鈴「あの4人は永遠にミサキのまま、いつまでも動かない時間の中に封じ込められるのかも」

マミゾウ「ふーむ、永久に救われぬ、ということかの? じゃが、それも亡霊になった者の末路のひとつよ」

屠自古「……」

布都「救える者は救えても、救えぬ者は最期まで救えぬ……か。認めたくはなくとも、限界は厳然としてそこにある」


布都「さーて、これで仕舞いよ!」

美鈴「普段の弾幕ごっこと違って、たまにはこういう鬼気迫る感じの闘いがあってもいいかも知れませんね」

マミゾウ「それはなんともいえぬが……普段は各々勝手気ままにやってる連中が、今回に限っては種族・宗派を問わず結束しておる」

屠自古「……ウム」

マミゾウ(こういう時に限っておらぬとは、ぬえよ……お前さんは本当に間が悪いな)

美鈴「あれだこれだと異変を起こしていても、幻想郷が本当に一大事となったら――皆困っちゃいますもの」

マミゾウ「そういう意味では、後のちのためにいい教訓になるやも知れんぞ」




               (第2.5話:里人たちを守れ――妖怪大戦争勃発!の巻<中編>・終)

439: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 20:40:46.68 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(守矢神社)――


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子「守矢神社を人間界から幻想の存在とし、幻想郷で信仰を集める事――それが幻想入りを強行した私の最大の目的」

神奈子「外界の人間は神を捨て、科学崇拝に魂を捧げてしまった現代に至っては」

神奈子「神への信仰心は失われてゆき、やがて……我々の存在自体が露と消えてしまうもの思われた」

神奈子「だからこそ、幻想入りという大きな賭けに出て、そして今日に至る」


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子「エネルギーの技術革命……という手段も確かに長期的に見れば成算はあるが」

神奈子「やはり、河童の労働力を始め様々な者共を従え、上手く扱いながら進めるほかはない」

神奈子「妖怪の山に舞い降りて時も経ち、溶け込んだとはいえども。他の数多の勢力との兼ね合いもあり――なかなか大胆な動きはできない」


神奈子「だからこそ――このケサランパサラン達の力が生きてくるわけだ」


神奈子(我々の乾坤想像も早苗が生み出す奇跡にも、自ずと限界があるし――派手なことをやってしまうとまた異変を起こしたなと騒がれる)

神奈子(まったく、私達が(直接)異変を起こしたことなどないというのに――風評被害もいいところだが)

神奈子(兎にも角にも。我々が実現したいことを、誰からの干渉も受けることなく、恰も自然に達成させること)


神奈子「貴方たちになら、出来るであろう?」


ケサランパサラン達「……」


ポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッ

440: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 20:44:38.28 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(大蝦蟇の池)――


ドロドロ……


大蝦蟇「にやにや」




ゆきめ「こんのヘンタイガエルがー!」


コォォ


ゆきめ「舌先から尻尾の先っちょまで氷漬けにしてやる!」

早苗「ちょっと待って下さい! カエルにはもう尻尾はありませんよ」

ゆきめ「そんなことどーだっていいでしょ!?」

早苗「ええ、そうじゃなくてー! このガマガエルさんは言って見れば神の使いみたいなものなんです」

早苗「攻撃したら、一層バチがあたるというか~」

ゆきめ「だったらどーすりゃいいの! このままコイツに好き勝手にさせるの!?」

ゆきめ「絶対イヤよ私! ヴァージンは鵺野先生に捧げるまで守り通すんだからっ!」


ドロドロ……


早苗「あ、そうだ! いい手がありますよ」

441: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 20:48:04.40 ID:iKuAf9iX0
早苗「ほら、池のほとりに祠が見えるでしょう?」

早苗「あそこに何かお供え物でもしたら、大蝦蟇さんも許してくれるんじゃないでしょうか」

ゆきめ「そうなの? それじゃ、何か早くお供え物でもしてよ!」

早苗「えー、でもいきなりではお供えできるものが――」

早苗「あ、いい考えがあります」

早苗「私達がお供え物になればいいんじゃないでしょうか!」

ゆきめ「なるほどーいい考え! 私達が犠牲になってこいつの怒りを鎮めれば――」

早苗「……」

ゆきめ「……」


大蝦蟇「ペロペロペロペロ」


ゆきめ「ってそれじゃ結局このままヤられちゃうじゃないのー!!」

早苗「誰かー助けに来て下さーい」


ヒョコリ


諏訪子「助けに来たよー」

442: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 20:54:52.18 ID:iKuAf9iX0

――


大蝦蟇「ズルズルズル」

リグル「いやあああああああッ!!?」


ゴポゴポゴポゴポゴポ……




早苗「ふうー、助かりました。諏訪子様」

ゆきめ「あーもうまったく、一時はどうなることかと思ったわ……」

諏訪子「まったくもう、遊ぶのならこんな狭い池の上じゃなくて、せめてうちの湖の上でやっておきなさいよ」


早苗「でも、諏訪子様がちょうどお手頃な蟲(いけにえ)を連れていて良かったー」

早苗「カエルの好物はやはり蟲って相場で決まってますもんね」

ゆきめ「さっきのあれって、虫なの?」

諏訪子「蟲だよ。早苗の帰りが遅いし、神奈子はあの綿毛に夢中で奥に籠っちゃったしで」

諏訪子「夕涼みを兼ねて蛍狩をしてたわけ、もう真夜中だけどね」

443: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:04:47.03 ID:iKuAf9iX0
諏訪子「で、こっちの低体温症っぽいのは誰? この山の妖怪ではなさそうだけれど」

早苗「ああ、この妖怪さんはうちの神社に襲来した雪女みたいで――ぬえさんの居場所が知りたいんでしたっけ」

ゆきめ「今度こそちゃんと話を聞いてよね。鵺野先生は今どこに……って!」

ゆきめ「何なの、その“ぬえさん”って呼び方はー!?」

ゆきめ「あんた鵺野先生とどーいう関係なのよ!?」

早苗「どーいうって、まあ……退治する側とされる側の関係かしら?」


アーダコーダ


諏訪子「あーうー……いろいろと誤解が生じているようだから冷静に話し合おう。ね」




パシャッ  ……ドサッ


リグル「ゆ、許さないよ……一生恨んでやる……綿吐を仕込んでやるよ! ……ううぅ」

444: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:10:19.42 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(中腹)――


玉藻「参りました――とでも言っておきましょうか? 今はね」

藍「ふ、そんな涼しい表情で言われてもな――だが、賢明な判断だろう」

藍「これ以上闘り合ったところで、あまり有益にはならないことははっきりしたからね。お互いに」

玉藻「ええ。あなたのように分別を弁えた賢明な妖怪が慕う大妖怪(そんざい)によって、この幻想郷(はこにわ)は維持されている。ということでしたね?」

藍「そうよ。紫様(あのおかた)にとって、幻想郷は手塩を掛けて育てた大切な子のようなもの」


藍「幻想郷を守るため、ならば――」

玉藻「手段を選ばないということですか」


玉藻「ですが、それは勿論この異界(せかい)に害をなすような者に対して、なのでしょう?」

藍「そうね。幻想郷では様々な種族が様々な理由を以て“異変”を引き起こす」

藍「だがそれらは大抵の場合、『存在を誇示するために』『気まぐれに』『興味本位で』起こした、という規模の大きなの遊びの側面が強い」

藍「が、時には笑いごとでは済まされないような異変も起きることがある」

445: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:22:39.18 ID:iKuAf9iX0
藍「直近では、幻想郷におけるカーストをひっくり返し、下剋上を企てるという異変があったな」

玉藻「レジスタンス、ということです? それはなかなか、捨て置けない事態だったでしょうね」

藍「まあ、その一件は首謀者が小物だったこともあり――博麗の巫女(せんもんか)の妖怪退治であえなく幕を閉じたけれど」

玉藻(妖怪退治の専門家か。それが仮に人間だとしたら、この異界にも鵺野先生と同じ霊能力者が存在するのかも知れないな)


藍(紅霧の一件や春集めの一件も事態としては深刻だったが)

藍「最近特に一大事となったのは――天衣無縫な気紛れによって、幻想郷の博麗神社(かなめ)に要石(じらい)を埋め込まれたとき」

藍「あの時ばかりはあのお方も怒りを露わにし――異変の首謀者にこう言い放ったのよ」

藍「――『美しく残酷なこの大地から往(い)ね!』とね」

玉藻「……」


藍「その地雷は異変解決後、幻想郷の要になる地に刺され埋(うず)められた」

藍「もっとも、埋められているからこそ更なる災厄の発生が封じられているという側面もある」

玉藻「諸刃の剣ということです? 上手く扱うことができれば逆にこの世界を守る要にもなりうると」

藍「そう……も言いきれないかな」

藍(要石(あれ)を扱うことができる者が――他にもいたとしたら、話は別なのだが)

446: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:30:45.35 ID:iKuAf9iX0
玉藻「……。ふふ、少し話が脱線しているをお見受けしますね」

玉藻「本来この世界に無関係な私に対して、この世界が孕む数多の問題を説き明かしても、あなたにメリットはないはず」

藍「はは、確かにそうだな。本題に入るとしよう」


藍「異変を起こすリスクを抱えた存在か否か――そういうで観点からみれば、貴方が行方を追っているという外来人らは排除の対象にならないわね」

藍「貴方の言が正しいのならば、だけれど」

玉藻「保証しますよ――鵺野鳴介という人間には鬼の手という危険極まりないモノが備わっているが」

玉藻「それはひとえに守りたい存在を守るために使うというのが、あの人のポリシーらしい」

玉藻「たとえ妖怪であろうとも、話の分かる相手や大切な生徒達に危害を加えようとしない相手には」

玉藻「決して、その力を行使したりしない」


藍「そうかい。で、貴方はそんなヌエノとやらに魅力を感じているわけだな」


玉藻「……言ったでしょう、あくまで研究の対象なのだと」

玉藻「誰かを守りたいがために命懸けで戦い、普段のさまからは信じられないほどの力を発揮する――その力を引き出す何か」

玉藻「力の源と考えられるもの――人間の愛――を解き明かすこと。それが人間界に留まる道を選んだ私の目的なんですよ」


藍「目的といいつつも、もうそれを理解しつつあるんじゃないの?」

藍「貴方、初めて見たときから思っていたけれど……半分人間臭いわよ。数百年も妖狐として生きながら、その人間に出逢った刹那から、貴方は変わりつつある」

藍「近い将来、貴方の妖狐としての生き方は影を潜め、代わって人間としての生き方が主になってくるかも知れないね」


玉藻「私は今、仮の姿としての“玉藻京介”であり真の姿としての“荼吉権現天狐”だ」

玉藻「これは将来に渡って、不変の事実ですよ」

藍「私は今、式神としての“八雲藍”であり、妖狐としての名は……もう忘れてしまったな」


藍「ひとは変わるものだ。それはひとに限らず、妖怪でも、神でも、鬼でさえも同じだろう」

藍「将来のことなど――」

玉藻「――分かりやしない、ということですね」

447: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:38:13.43 ID:iKuAf9iX0
ヒュゥゥゥゥゥ


藍「さて、この幻想郷の各地には今まさに異変が生じている。勘のいい貴方ならば当然気がついているわね」

藍「私はこれ以上、のんびりしてはいられない――管理人(じょうし)が戻ってくるまでの間、出来る限りのことをしておかないと」

藍「そして、その中途で――貴方が探し求めている人物に巡り合うことは十分考えられる」


玉藻「だから自分のあとについてくればいいだろう、と? 生憎ですが、ここは遠慮しておきましょう」

藍「おや、断るの? 急いで探し出したいのなら――」

玉藻「ついて行った方がいいと仰せでしょうが、そこまで焦る必要はないと判断したからですよ」

玉藻「貴方の話を聞く限り、鵺野先生達が絶体絶命の危機、なんて状況に陥る可能性は低いと思われるのでね」

玉藻「それに、私は私のやり方で彼らの足取りを追尾することもできる」

玉藻「少々時間はかかるかも知れませんが。何せこの世界には、強い妖気を放つ者が多いようで」


藍「分かった。それでは、気をつけるようにね。くれぐれも、貴方や貴方の“仲間”が異変に首を突っ込んでしまわないように、という意味で」

玉藻「……。ええ、気をつけましょう。もっとも私は、対岸の火事にわざわざ干渉するような愚行はしない」

玉藻「むしろその混乱のお陰で、幻想郷を駆け巡りやすいかもしれないんでね」


藍「狡猾なやつよ――健闘を祈ろう。次に顔を合わせる頃には、異変も大方は片付いているだろうしね」

玉藻「あなたに狡猾と言われたくありませんが。事が済んだら、最東端の神社にて――でしたね」




「それでは」「アディオス」


シュタッ

448: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:45:55.66 ID:iKuAf9iX0

――人間の里(上空・雲上の宝船)――


ボゥ……    ボゥ……


克也「うひょー……凄え眺めだな。人里が一望できる」


村紗「本来ならば夜は真っ暗闇で――明かりなど月の光くらいしかありませんが」

村紗「今回は船に鬼火を焚いていますから、まだ見える方でしょう?」


まこと「でも、人里もその周りも……あたり一面真っ暗なのだ」


慧音「怖いかな?」


まこと「う、うん……こんなに全然明かりがないと……」


慧音「でもね、妖怪達にとってはこの闇こそが最良の棲みかになるのよ」

慧音「人間達は日が暮れたら家に帰り、明かりを消して、静かに眠りに入る」

慧音「一方で妖怪たちは黄昏と同時に姿を現し、宵闇の中を活動し」


克也「そんで、丑三つ時……って言うんだっけ。幽霊とかが一番出やすいのは」

まこと「それからだんだん朝が近づくと、幽霊も妖怪も消えてしまうのだ」


慧音「あらあら、十歳やそこらで詳しいのね」


克也「そりゃそうっスよ! ぬ~べ~先生のお陰っていうか、せいでっていうか。こっち方面じゃいろんな目に遭ったし」

まこと「けーね先生も凄く物知りなのだ。もっともっといろんな話を聞かせて欲しいのだー」


慧音「ふふふ、そう言ってくれると先生も嬉しいね」

449: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:50:49.15 ID:iKuAf9iX0
慧音「里が落ち着いたら、特別授業でもしてあげようか? ただし、宿題もちゃんと出してあげるよ?」


克也「えー!?」

まこと「宿題は勘弁なのだー!」


慧音「ダメダメ! 宿題をしない子には先生頭をごっつんこしちゃうぞ~!」


コツン


まこと「・・・・・・」

克也「!! 先生、オレもオレもー」


慧音「君はダーメ」


パシャン


村紗「水を掛けられる懲罰というのもありでしょう。あ、これは呪われた水ではありませんからご安心を」


克也「・・・・・・寒くはないんだ・・・けど、冷たさが身にしみるー」




小傘「まったく、人間は怖がらせるべきものなのに……」

響子「貴女は怖がらせようとしても、誰も怖がらないじゃない」

小傘「う……それはもういいでしょ。今の戦況を気にしなきゃ」

響子「あの七人ミサキ達は片が付いたらしいわね。って報告が来たわ」

響子「手伝ってくれた道士達は解散、他のお寺のメンバーは暫く人里に留まって警備に当たるって」

小傘「僧侶たちが見回ってるなら、また何か出てきても大丈夫そうね」

響子「それから、聖と他2名が謎の仮面とまだ闘ってる模様」

小傘「あの面霊気とは関係ないのよね? ……一体ナニモノなのよ」

450: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 21:55:50.87 ID:iKuAf9iX0
まこと「あそこなのだ! 何人かが凄い速さで動いているようだけれど……」

克也「全然見えねーな。暗いのもあるし……これがヤムチャ視点ってやつか……」

村紗「赤いマントに帽子と仮面……あれも妖怪の類なのでしょうか?」

慧音「……」


慧音「あれが“怪人赤マント”だとすれば……比較的新しい都市伝説がルーツになるかな」

まこと「かいじんあかまんとー? 名前からして悪そうなのだー!」

克也「……うる星やつら?」

村紗「?」


慧音「赤マント青マントの話、知っている?」

まこと「うーんと……」

村紗「赤マント青マント……あれ、それって誰かのスペカにあったような気がしますが」

克也「誰かって?」

慧音「文字通り、誰かよ――あの怪人もまさしく正体不明」


慧音(となるとあれは、博麗大結界が成立して後に、外界に蔓延った存在――当時の世相や疑心暗鬼といった様々な事象が遠因となって生れた怪異)

慧音(いにしえから存在する七人ミサキも厄介だったけれど……こっちも一癖二癖ある相手ね)

451: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:00:43.99 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(上空)――




ビュォォォォォォ




岩天狗「痛つつ……何者だ?」


はたて「痛つつ……岩天狗ねぇ、名前負けはしていないようで。滅法硬いじゃないの」


文(……私は割り切らなければ……ならない)

文(将来のこと……それは……今私が考えるべきことじゃない)

文(……私が今考えるべきことは)

文(――今健在な霊夢さんに万一のことが無いように、生温かく見守って差し上げると言ったところですか)

文(――勿論、取材という建前は崩しませんがね!)




文「逆風『人間禁制の道』」


フォォォォォォォォォォォォォォォォォ


岩天狗「むぉ!?」

はたて「文!」

453: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:07:13.63 ID:iKuAf9iX0
バサバサッ


文「やれやれ――ちょっとイヤな幻術(ゆめ)を見せられちゃいましたが」

文「かえって、自問自答する良い機会に恵まれた、と考えて感謝しておきましょう」

文「岩天狗さん」


岩天狗「お、おう……」


はたて「ちょっと文!」

文「おや、はたて? 貴方もいたんですか? 珍しいですね、外出だなんて」

はたて「何を暢気なことを言ってるのよ! そこの岩野郎、文にイタズラしようとしてたんだから!!」


岩天狗「な」


文「え、私に?」

はたて「そうよ!」


岩天狗「ち、ちがーう!!」

岩天狗「俺様は……ただ、そこの……女天狗の手を……握ってみたかっただけで」

岩天狗「どうせ元の山に帰ったら……もう……そんな機会はなかなか訪れないかも……って思ってだな……その」


文「……」

はたて「ウソおっしゃい。もっと変なことしようって気持ちが口から筒抜けだったわ!」

文「別にいいですよ? 手ぐらいなら握って差し上げましょう」


岩天狗「……!?」

454: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:12:41.11 ID:iKuAf9iX0
はたて「あ、文!?」

文「それで納得して幻想郷(ここ)からお帰りいただけるんなら、こちらとしてもありがたいので。握手券なしで握手してあげますよ」


文(何しろ、まだまだ厄介な外来妖怪が沸き出てくる可能性が十分ありますからね)

文(もう深更ですが、鳥目にも人里が慌ただしくなっているのははっきり判りますし)

文(この天狗さんは言っても妖怪の山を侵略するといったような敵意はないのだから)

文(このまま穏便な形で――)


岩天狗「そ、それは……あ、じゃあ……どーも」


文「ついでにうちの新聞もお渡ししておきますんで後で読んでみてくださいな」


キュキュ……カキカキ


文「更にサービスということで、私のサイン入り勧誘チラシもお付けしますねー、はい書けました」


スッ


文「では、どうぞ~(記者スマイル)」

岩天狗「・・・・・・ゴクリ」


はたて「ダメ――――――――――――――――――ッ!!」

455: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:19:12.92 ID:iKuAf9iX0
ドゴッ


岩天狗「ガハッ!!?」


文「ちょ、はたて!?」

はたて「ダメよ文! こんなヤツと握手するなんて、手が穢れるわよ」

はたて「だってコイツ、ドーテイなんだから」


岩天狗「ッ!!?」


はたて「800年も女の子の手さえ握ったコトがないなんて……キャハハハッ」

はたて「幸薄い人生じゃない? それも天狗だから長い長い時間だもんねー」




はたて「あんたなんか、大岩を削って女型の石像(ダッチワイフ)作って――ひとり寂しく自慰ってりゃいいのよ!」




岩天狗「ぁ……あ……ああああっ……!」

岩天狗「貴様らァ……許さんぞォ……!!」

456: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:22:27.90 ID:iKuAf9iX0
岩天狗「この岩天狗様をここまで愚弄したことを……後悔させてくれる……!!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


はたて「……な、何よ。コイツ……。散々おちょくっちゃったケド……」

はたて「意外と……強そうな雰囲気ね」

文「貴女が彼の苦悶に満ちた心に火を付けたんですよ――残念ながら、もう交渉の余地はありませんね」




岩天狗「食らえ―――ッ!」

岩天狗「天狗必殺奥義――『天神風(あまつかぜ)』!!!」




――カッ




はたて「――」

文「――な」




ギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルド―――――――――――――ン!!!




457: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:28:05.60 ID:iKuAf9iX0

――魔法の森(玄武の沢)――


にとり(今、山側の上空で爆発的な閃光弾のようなのが炸裂したみたいだけれど……新手の弾幕使いの仕業?)

弥々子「うーむ」

にとり「ん、何?」

弥々子「おめえ、本当にびっくりするほど胸がねぇなあ」

にとり「喧嘩でも売ってるの……?」

にとり「余所者とは言え河童のよしみってことで今日は泊めてあげようかと思ったけど、やっぱ出て――」

弥々子「そんなら、一緒に表へ出るっぺ! 相撲で勝負だっぺ!」


グイ


にとり「ってちょっと!?」

にとり「まったく、あんた外界から来たんでしょ? 相撲のような前時代的なスポーツに興じるよりさ」

にとり「もっと、面白い話とかしてくれない? 私にとってね」

弥々子「面白い話?」

458: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/16(土) 22:32:00.74 ID:iKuAf9iX0
にとり「例えば、外界の優れた技術とか……お金になりそうな商売の新手法とか……」

にとり「それか、何かいいモノ持って来たりしてないの?」

にとり「向こうでは価値がなくていらないものとかー(ぐへへ、価値の分からない好事家相手に高値で売り捌いてやる!)」

弥々子「……そんなら、これをあげるっぺ。おらに親切にしてくれた感謝の気持ちだっぺ!」


スッ


にとり「これって……」

弥々子「おらの、大好物だ」

にとり「……」

にとり「うん、ありがと。私も好きだよ――キュウリはね」




           (第2.5話:里人たちを守れ――妖怪大戦争勃発!の巻<後編>・終)

469: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:38:37.59 ID:jtWrv8ty0




――(予告編)――




○時系列的には《第4話》以降になりますが


前回提示した題名によって今後の展開が大体予想できると思いますので


ここで投下しておきます。




470: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:43:43.71 ID:jtWrv8ty0
【丑三つ時】


――幻想郷(上空)――




グラグラグラグラ――――ッ!

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!!

ビシャ―――――――――――――――――――――――ン!!!




??「緋想の剣よ、こやつらの気質を映し出せ。そして弾ける気力(エネルギー)となれ――天変地異を起こすのよ」

??「鬼に金棒だね――」

??「せーの、きゅっとしてー」








ドッカ――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!!!








フラン「あはは。山の上もあっさり吹っ飛んじゃったわね」

絶鬼「次はどこにケンカを売るつもりだい? そろそろ人里とやらを無に帰したい気分だ」

天子「ダメダメ。もしやるとしたらそこはラスト――簡単に幻想郷が崩れ落ちちゃったら、つまんない」

天子「――よっと」


ヒョイ


要石「――……プカプカ……」


絶鬼「確かにまだまだ序の口だよね。本当の愉しみは最後に取っておくとしよう」


タッ


フラン「気持ちが良い。あの狭くて狭くて退屈で遊び飽きた部屋の中より、外で遊ぶ方が断然いいわね」

471: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:45:53.47 ID:jtWrv8ty0
フラン「貴方たちが紅魔館(あのやかた)を粉砕してくれたおかげよ」

絶鬼「そうだね、断然気持ちいいよね――幻想郷(ここ)はぼくたちの遊び道具にぴったりだ」


天子「今度は解決する側に回ろうかと思ったけど。やっぱり黒幕(ヒール)役のほうが思う存分好き勝手やれていいわ」

天子「されど、地上はもうじき陥落する。早く、巫女たち倒しに来ないかなー?」

天子「こう待つのも退屈ね。来ないんなら――ホントにこのまま全て吹っ飛ばしちゃうよ?」


絶鬼「それで、この世界に終焉(フィナーレ)を与えたら、次はどうするの?」

絶鬼「今度は人間界を焦土に変えようか? きみたちの力をもってすれば、外に現界するのも容易いことだろう」

フラン「あーそれ面白そう! 外の世界も見てみたい」


天子「いやいや、外界はまだ早い。まずは――私を見下ろす目障りな月を陥落(お)とすとしよう」


絶鬼「月だって? あんなちっぽけなモノを潰したところで、暇潰しにもならないんじゃないかな?」

フラン「ううん、そんなことないわよ。月の民の連中って、地上の有象無象よりもっともっと強いんだって、本の虫から聞いたことがある」

絶鬼「ふぅん、そういうわけなら。案外面白そうだね」


天子「我ら天地人鬼の“四天王(カルテット)”の力――見せつけてくれようぞ」


絶鬼「ってことだよ。判った、兄さん?」


ゴソゴソ


??「……ん、何か言ったうが?」

472: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:48:43.65 ID:jtWrv8ty0
絶鬼「あーうん……とりあえず、破壊し尽くそうって話さ」


天子「あらら、まだ人化が上手くできないの?」


フラン「下が丸出しー! 不格好で無粋だわ」


天子「それでなくても流石に4人で要石(これ)に乗ったら狭いんだから、もっと小さくなってよ」


覇鬼「うー……んなら、こうすればいいうが」

フラン「え?」


ヒョイ


フラン「わー。高い高ーい」

覇鬼「がはは! これでひとり分広くなったー」

絶鬼「あまり変わってないよ。それに、ここは既に十分高度があるよね、雲が掴めるくらいに」


天子「まったく、ふたりとも幼稚ですわねぇ」


ボンッ


覇鬼「……ふ、これでいい、か?」

フラン「低い低~い」

絶鬼「うん、それでカンペキだ。ここの連中は人型ばかりだから、多少の譲歩はしてやってもいいってものさ」


天子「でも、いざとなったら本気出しちゃっていいよ?」


フラン「あの巫女、この界隈じゃ最強ってことになってるもの。お遊びでの話だけどねぇ」

473: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:50:41.73 ID:jtWrv8ty0
天子「――ここいらで、指令系統をはっきりさせておこうかな」


チラリ


絶鬼「――それもそうだ」


覇鬼・フラン「「??」」


天子「司令塔は私だ」

天子「この天下(せかい)のことは熟知しているし、何しろ“天地人”―全ては私の掌の中にある」

絶鬼「いいや、司令塔はぼくだ。世話の焼ける兄妹の間に挟まれたおかげで“子ども”の扱いには一日の長がある」

絶鬼「彼ら(ふたり)の能力を最大限に引き出せるかどうかは僕の腕にかかっているといってもいい」

天子「私だ」

絶鬼「ぼくだよ」

天子「何よ。薔薇なんかかざしてカッコつけてるだけの小鬼のクセに」

絶鬼「きみが帽子にくっつけているその桃、天界の桃だか何だか知らないけれど傍から見たら実に滑稽だ」


覇鬼「まーまー、落ち着くうが、絶鬼」

フラン「天子さんも、ケンカは良くないよ」


シャリ


フラン「でも、この桃なかなか美味しいわ」


パクパク


覇鬼「全身にチカラがあふれてくるような気がするうが」

475: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:54:31.35 ID:jtWrv8ty0
天子「何か勘違いしているんじゃないの? お前は所詮私によって利用されているだけなのよ?」

絶鬼「勘違いしているのはそっちだよ? きみの能力はつまるところぼくに利用されているだけだと気がつかないの?」

天子「ふんだ。まあいい、その点については爾後はっきりさせるとしよう」

絶鬼「そうだね。まずは地上を支配下においてから、上下関係というものを分からせてあげようじゃないか」


フラン「支配下ね――それをやってのけたらお姉様(アイツ)は一体どんな顔をするのかな」

覇鬼「良く分からんが腕が鳴る! 皆殺しだァ!!」




天子「さーて、小休止(ブレス)はこの辺で終わりにしようかしら」

絶鬼「交響曲第9番――境界の壁崩壊のシンフォニー――の始まりだ」

フラン「ウフフ・・・」

覇鬼「ウガウガ・・・」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




477: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/17(日) 22:56:37.37 ID:jtWrv8ty0
《EXTRA BOSSES》


< 細胸の不良天人 >

比那名居 天子――TENSHI HINANAWI――


○大地を操る程度の能力(←要石)

○気質を見極める程度の能力(←緋想の剣)

○高い身体能力(←天界の桃)




< 最凶の鬼 >

絶鬼――ZEKKI――


○悪魔の旋律(戦慄)を奏でる程度の能力(仮)




<最狂の吸血鬼 >

フランドール・スカーレット――FLANDRE SCARLET――


○ありとあらゆるものを破壊する程度の能力




< 最強の鬼 >

覇鬼――BAKI――


○ありとあらゆるものを破壊し尽くす程度の能力(仮)




                              (予告編・終)

496: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 12:48:07.75 ID:QzdDVvMi0
――博麗神社――


ヒュォォォォォォ


貧乏神「どうだあ? 全てを失った気分は」

霊夢「全て? 何言ってんのよ。たとえ、建物が焼失したところで、神社の肝心要は私自身なんだから」

霊夢「私が無事ならどうとだってやり直せるわよ」

貧乏神「……」


霊夢(と、言ってはみたものの――)



針妙丸「ふうー、焼け落ちた材木を片付けるだけでも一苦労だわ……」

天子「ねー、本当に私、篝火を持っているだけでいいの?」

天子「人出が足りないんでしょ? 私も建て直すのを手伝ってもいいわよ?」

針妙丸「そうよ霊夢さん。早く復興しないと大変なんでしょ? ここはいっそ手伝ってもらった方が……」


霊夢「絶対ダメよ、そこの不良には前科があるから」


霊夢(やっぱり、文が山に向かう時に河童連中にでも応援を頼むよう依頼を出しておくべきだった)

霊夢(あれから結構時間が経つけれど……文は戻って来ないし。山の方も異変の余波を受けているようね)

霊夢(一方で人里の方でも火事やら何やらで慌ただしくなっているみたいで……)

霊夢(地底の連中を呼んだりしたらかえって事態が混乱すると思って、黒猫にも地底に状況を伝えるだけでいいって言っちゃったし)

497: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 12:51:10.94 ID:QzdDVvMi0
霊夢(もう、いつもなら魔理沙とか萃香とか、いろんな連中が入れ替わり立ち替わり屯しているってのに)

霊夢(今日に限っては、妖怪も含めて閑散とした状況)

霊夢(私がひとっ飛びで暇そうで使えそうなのを掻き集めるって手もあるけれど……ちょっとでも留守にしたらあいつが何を仕出かすか知れたもんじゃないし)


針妙丸「ええっと、この辺りが神社の真ん中かな」

天子「そうよ、この奥に要石が埋まっているのよ」

針妙丸「あれって確か、天人である貴女にしか扱えないのでしたっけ?」

天子「天人であることが要諦ではないの。とりあえず基本的に私の一族にしか扱えないってこと」

天子「綺麗に焼け跡と化したお陰で、引っ張り出しやすくなったわ」

針妙丸「え、でも……もしこれが地下から引き抜かれたら……」


霊夢「これまでに蓄積されていた大地の歪み(エネルギー)が一気に噴出して大地震が発生するわ」

霊夢「もし引き抜こうってんなら、冗談抜きで血祭りに上げるわよ?」


天子「うふふ、冗談よー」

針妙丸「そうよね、冗談よね」


貧乏神「フェフェフェ……」

霊夢(まさか、閑散としてるのも貧乏神のチカラに依るものってわけじゃないでしょうね?)

霊夢(たかだか貧乏神だと思って……ちょっとなめてたわ)

霊夢(『うちの神社に祀ってあげる』だなんて安易なことを口にするんじゃなかった。言霊って怖いわね)

498: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 12:53:47.75 ID:QzdDVvMi0




(玉藻とゆきめが幻想入りした少し前の出来事。>>91以降の内容)




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――博麗神社――


霊夢(私の大切な壺預金が……ようやく一杯になるまで溜まったのにィっ!!)


穣子「ひ、ひどい……私達の服が……全部焼けちゃった」

静葉「神に向かってこんなことをするなんて……呪ってやる」

霊夢「八百万の神の一柱が呪うとか安易に口にするのもどうかと思うけれど」

霊夢「その辺の落ち葉でも纏って帰ったら? 蓑虫みたいに」

静葉「なるほど……その手があったわ」

霊夢(ってあんた葉っぱに色塗って物理的に落とすだけでしょうが)

穣子「え……私は落ち葉なんて操れない」

霊夢「じゃ、そのまま帰ってその辺の農民にでも食べられたら? 婉曲的な意味で」

穣子「この鬼! 悪魔! 貧乏巫女!!」

499: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 12:55:19.84 ID:QzdDVvMi0
霊夢「やれやれ」

霊夢「でも燃えたのが紙幣だけで、建物(神社)にまで燃え広がらなくてよかったわ」

霊夢「何しろこれまでにも地震(人災)とかで二度倒壊して……そのたびに再建」

霊夢(……でもその時は、そんなに私の懐は痛まなかったけど)

霊夢(もし本殿が焼損でもしたら、ちょっと話が違ってくるのよね)

霊夢(――結界)

貧乏神「ふぉふぉふぉ」

霊夢「あんた――いい加減にしないともう本気で怒るわよ?」


ゴトンゴトン


お燐「霊夢のお姉さーん」


霊夢「……」


霊夢「何しに来たの、用件を言いなさい」

霊夢「事と次第によっては、あんたもお色気担当になってもらうけど……?」

お燐「お、お姉さん。どうしてそんなに怖い顔してるんだい……」

500: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 12:58:38.00 ID:QzdDVvMi0
お燐「あたいは地底で熟成させた度数が高くて旨い地酒を運んできたのさ」

お燐「ついでに人里でウォッカや焼酎も買ってきたよ」

お燐「お姉さんにはよくお世話になってるからね。神饌にでも使ってくださいな」

霊夢「お世話って、あんたが勝手に地の底から上がってきてうちの周りでうろちょろしてるだけでしょ?」

霊夢「……でも折角だから頂いておくわ。たぶんすぐに宴会で使っちゃうだろうけれどね」

お燐「それじゃあ、倉庫の方にしまっておくよ」

霊夢「どーも、鍵は開いてるから」


霊夢「ほれ見なさいな。あんたが居ようが居まいが、うちにはいろいろと萃(あつ)まってくるのよ」

霊夢「だからお金が無くても生活には困っていない。本職はどちらかというと妖怪退治の方だしね」

貧乏神「……」


\ガシャーン パリーン ドボドボドボドボドボ/

501: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 13:00:38.50 ID:QzdDVvMi0

――

霊夢「ちょっと、今の不穏な音は……って」


お燐「はは……ごめんごめん、ちょっとつまずいちゃって」

針妙丸「ごめんね、ちょっとつまずかせちゃったよ」


霊夢「何やってんのよ! お酒が全部こぼれて倉庫が水浸しじゃない!」

霊夢「あと小人はおとなしく虫かごにでも入ってなさい!」


\ヒュルルルルルルルル ズボッ ドサッ/


お燐「ぎゃん!?」

天子「やっほー。いやー、相も変わらず天界は退屈だから地上まで降りて来たわよ」

天子「うふふ、また異変でも起こしちゃおうかな? やっぱり神社を乗っ取っちゃおうかな」


霊夢「屋根に開いた穴の修理代……」


針妙丸「あのう、貴女……化け猫を踏んづけちゃってますよ」

天子「あら、私の下で何寝そべっているの?」

天子「でも天界に住む私が地底の猫を地上で踏みつけているなんて……滑稽な光景ね」

お燐「……天人のお姉さん、そこまで挑発されるとあたいも黙ってないよ?」

天子「ほう闘りますか? 一瞬で決着がつくでしょうけど」


ガラッ


文「霊夢さーん、毎度お馴染みの射命丸です。倉庫(ここ)にいるんですか? 何だかやたら騒々しいようで……」




お燐「妖怪――『火焔の車輪』」

天子「天気――『緋想天促』」




ビュオオオオオオオオオオオオオオ

ド―――――――――――――ン

ゴオオオオオオオオオオオオオ

502: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 13:03:20.99 ID:QzdDVvMi0

――


お燐「あらら……もうじき神社が燃え尽きそうだね。隣にあった(守矢の)分社も含めて」

針妙丸「お酒が倉庫の一面にこぼれていたから、火の回りが早かったのかー……」

天子「――ふふふ、緋色の空は地異を起こす天の奇跡」

文「まだ状況は完全には飲み込めませんが……もしかして私の気質のせいとかにになるんです?」

文「なぜか風雨じゃなくて強風だけでしたけど……それに煽られて本殿が……。腑に落ちませんねぇ」

天子「え? 貴女が咄嗟に団扇で煽いで火を消そうとしたせいで、逆にかえって火の勢いが増したんでしょ?」

文「はい? 違いますよ、そもそもお燐さんがムダに火力出したりするから」

お燐「あたいが何だって? もともと境内中に落ち葉が敷き詰められていたから燃え広がりやすかったんだよ」

針妙丸「私が勝手に虫かごから出たばっかりに……でも、ふと気づいたら閉ざされた扉が開放されていたの!」

天子「だから出た? 今度からこの小人、ちゃんと首輪でも付けておいた方がいいんじゃないの」

針妙丸「ええっ!?」

文「確かに、ペットはちゃんとしつけないといけません」

針妙丸「私ペットじゃないよ!」

お燐「あれ、違ったの?」

文「それにしても――これは久々の特ダネ記事ですね」

文「タイトルは『博麗神社が焼失!全財産を失った巫女、涙ながらの心境告白』ってところで……少し捻りが足りないかな」


文「……でも霊夢さん。この状況、少々のっぴきならない事態なのでは――」


霊夢「ええ、ここまで来ると――ちょっと笑えないわね」

貧乏神「ニタニタ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

503: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 13:06:06.56 ID:QzdDVvMi0

――博麗神社――


霊夢(こうなってしまった以上は仕方がない。自力で何とかしないとね)

霊夢(結構ヤバい状況になっているってのに、珍しくあの子煩悩(ゆかり)は現れない)

霊夢(ここまで結界のあちらこちらに穴が開いてしまうと……私ひとりでは手に余る)

霊夢(侵入してきた妖怪どもをすべて相手にしていても手が回らないし)

霊夢(強引に外界へ転送するには、紫の力を借りないわけには……)


霊夢「――まあ、あいつがいようといまいと、私がやることははっきりとしている」

霊夢(この異変の引き金になった根本原因を断ちきること)

霊夢「博麗の巫女として、やるべきことをやるだけ――何しろ私にまで災禍が降りかかってるんだから、捨て置けないもの」


霊夢「そういうわけで、徹夜になりそうだけれど、しっかり働いてもらうわよ。あんたたちにも」


天子「任せなさいな。強そうな外来妖怪がここに現れたら私が相手をしてあげるわ!」

天子「異変を解決する側ってことでね。ちょっと物足りない気もするけれど、まあ手を打ってあげるとしましょう」

天子「その間に、そっちはそっちでやるべきことをやっておればよい」

504: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 13:07:19.11 ID:QzdDVvMi0
霊夢(バカと天人も使いよう――こいつは性格に問題大アリだけれど、実力は確かだもの)

霊夢(でも、こいつはこんな風に見えて頭は切れるほうだから――安易に信用できないわ)


霊夢(それに比べたら、針妙丸の方は騙されやすいってところはあるけれど)

霊夢(素直な上に、小人ながら私に立ち向かってくるほどの勇気を兼ね備えている)

霊夢(いざというときは、むしろこっちの方が頼りになるかもね)

針妙丸「ええ、私も出来る限り頑張るけれど……ふたりで修復を施すのにはやっぱり時間が」

霊夢「そうね――だから、ここは応急処置に出ようと思う」


針妙丸「応急処置?」


霊夢(形だけの一夜城では、亡羊補牢になってしまうかも知れない。だったら)


キッ


貧乏神「怖い顔をするのう。けんど、オラはここの神社に祀られとるがな」

霊夢(こいつがうちにのさばっている限り、何をやっても同じことの繰り返し、事態がさらに悪化してしまう可能性だってある)


霊夢(貧乏神は神の端くれといえども、今でも外界で力を発揮しているのは事実――ならば)

霊夢(それに対抗できるような神の力を借りる)

霊夢(――神おろしといきますか)

505: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 13:10:53.12 ID:QzdDVvMi0
針妙丸「ねぇ、一体どうするつもりなの……霊夢さん」


霊夢「そうね。本職らしい巫(かんなぎ)の仕事をやってのけるわ。今でいうならむしろ神主の仕事に属するものと言えるけれど」

霊夢「ま、修行はあんまり足りてないかも知れないけれどね。私はやればできるタイプだし」


霊夢(さて、本格的に異変解決に向けて動くとしますか)

霊夢(もともと誰の手を借りるつもりもないし、全部私だけで片付けるつもりではあるけれど)

霊夢(……今回ばかりは、猫の手でも何でも借りたい状況だわ。もうひと山もふた山もありそうだしね)


針妙丸「分かったわ。私も出来る限りのことをお手伝いするから!」


天子(むー、退屈……早く幻想郷の常識を覆すような型破りな輩が現れないかな)


ウズウズウズウズ


                                        (つづく)

509: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:05:38.88 ID:QzdDVvMi0

――妖怪の山(地獄谷・地底世界への入り口付近)――


玉藻「あまりあせらず時間をかけてでも探し出す。そう予定変更をした途端に有力な情報が得られるとは」

玉藻「急がば回れとはこのことだ」

ぬえ「今日は変わった外来種によく出くわすな。お前は……妖怪狐の類か?」

玉藻「いかにも――そして、今の状況を説明するとかくかくしかじか……ということになります」

ぬえ「私はぬえだ、正真正銘のな」

ぬえ「そして、お前が探している霊能力教師と子ども3人はここの穴から先に続く深道を進み」

ぬえ「更に旧地獄街道を越えた向こう側のまち――旧都(旧地獄)――にいるわ」

玉藻「今度は旧い地獄ときたか――それで、彼らの安否は?」

ぬえ「かくかくしかじか」

玉藻「フフ、そうですか。ならば安心だ」


正邪「あんな人間のどこにお前を惹きつける魅力があるんだ?」

正邪「あの鬼の手の力に胡坐をかいているだけの愚鈍な人間風情にな」

正邪「『魅せる』という字は『未』だに『鬼』にならぬ者というふうに分解できる」

正邪「完全には鬼になり切れていない、過渡期にある人間だからこそ、その後々の変容に興味を惹かれているのか?」


玉藻「そしてこれが天邪鬼だと? 典型的なへそ曲がりのようで」

ぬえ「そうよね。こういう小物のながらも、つい最近異変を起こしたのよ」

玉藻「つい最近、小物……ああ、下剋上がどうという話のことか。確かにこの小物ぶりでは、たいしたことはできなくて当然」

ぬえ「良く知っているわね。でも天邪鬼というだけあって、幻想郷の秩序を崩そうとした純然たる反逆者なのよ」

玉藻「根っからの天邪鬼、妥協したくても妥協できないということですね。――それにしても、ここの住人は皆言葉遊びが趣味なんです?」

ぬえ「趣味というか……煽り文句だね」

510: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:10:27.11 ID:QzdDVvMi0
正邪「ぐぬぬ……正面にいる私を無視するなよ」

正邪「好き勝手なことを言ってくれるな。私の辞書に妥協なんて言葉は存在しない!」

正邪「まだ、『打ち出の小槌』から得られた“鬼の魔力”にも残りがあるんだ!!」

正邪「もう一度異変を起こして、今度こそ……!!」


ぬえ「やめておきなさい」

ぬえ「残りわずかな魔力を振りかざしても、できることはタカが知れている」

ぬえ「だから“今”は、素直になって――博麗の巫女に許しを請うことだ」

ぬえ「本当に殺されてしまったら、もう二度と反逆する機会は失われてしまうのだから」

玉藻「……」


正邪「ぐ……五月蠅いな」

正邪「……今は? 次に異変を起こして事を成し遂げてしまえば――」


ぬえ「そうは問屋が卸さないわよ――幻想郷はひっくり返しても誰かさんの手の中にあるのだから」

ぬえ「また異変を起こすというのなら、その時は私も手伝ってあげてもいい――あくまでお遊びの範疇でね」

511: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:20:02.92 ID:QzdDVvMi0
正邪「私は遊びがやりたいんじゃない。根っからの本気なんだ! 私の手足として利用できないようなヤツと誰が組むものか!!」


アッカンベー! ダッ


ぬえ「……やれやれ」

玉藻「詳しい事情は判らないが――種々雑多な魑魅魍魎を内包しながらも、この世界は上手く運営されてきたわけだ」

ぬえ「……お前は、おおよその事情を把握できているような顔をしている」

ぬえ「あのスキマ妖怪と面識があるのか」

玉藻「いいえ。でも、その大妖怪のことをよく理解しておられる方とは、話をしてね」

ぬえ「そう」


ザッ


早苗「あっ、ぬえさん発見!」

ゆきめ「えー、あれが鵺なの? ちんちくりん過ぎじゃない?」

諏訪子「うん、でもあれが鵺の正体だよ」


ぬえ「……」

512: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:23:01.62 ID:QzdDVvMi0
早苗「良かったですね。ぬえさんなら、何か知っているかもしれない! 名前が被っているわけですし」

ゆきめ「そんな都合よくいくわけないでしょ」

玉藻「それが、案外都合よく事が運んでいる」

ゆきめ「って妖狐の! いつからそこにいたの?」

玉藻「さきほどからずっとね」


諏訪子「何、貴方も外来妖怪? 幻想郷にようこそ。うちの山の神社に参拝するなら案内してもいいよ?」

玉藻「いえ、それは又の機会ということで(山の神社というと、東縁の神社とは別のものなのか?)」

早苗「ということは、貴方も鵺野さんって人を探しに来たんですね」

玉藻「ええ、まあそういうことですよ――あなたがたとも、また後で話す機会があるかもしれませんね」

ぬえ「ともかくも――さっさとあの4人を迎えに行ってあげたらいいわ。行き違いになったら面倒でしょ?」


ゆきめ「!! まさか鵺野先生達の居場所が!?」


ぬえ「ええ、あっちに――」


ビューン!!!


諏訪子「早いね、元気な雪女だよ。早苗、一応案内してあげたら」

513: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:25:56.53 ID:QzdDVvMi0
早苗「判りました! では、そちらの方も行きましょうか? ――外の妖怪さんなら、ゆきめさんと同じで話が通じやすそうです」

玉藻「外……と言っても、私はそう長く人間界にいたわけでは」

早苗「守矢神社って聞いたことがありますかー? 私達一同は、少し前に外から幻想郷にお引っ越してきたんですよ」

玉藻「……。神社ごと引っ越しした……ということで? これはまた込み入った話のようだ」

早苗「道中で説明してさしあげようかしら。では、ゆきめさんを追いかけましょう!」


タッ


諏訪子「行ってしまったか。私は先に帰ろうかな?」

諏訪子「でも山の麓まで下りて来たんだから、(間欠泉)地下センターの温泉にでも浸かって行こっか」

諏訪子「一緒に行く?」

ぬえ「……どうしてわざわざ……私を誘うのよ」

諏訪子「貴女も折角、山に来たんだから。たまには山の神の恩恵に浴してみたらどう?」

514: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:34:07.94 ID:QzdDVvMi0

――地底(某所)――


ザッザッザッ


お燐「少し前に博麗神社の手前に沸き出した間欠泉――その穴には今でも怨霊がウヨウヨしているけれど」

お燐「あたいは怨霊の扱い関してはプロだからね、心配しないでいいよ」

お燐「もっとも、貴方ならば自力でも対処できるんじゃないかとは思うけれどね」


ぬ~べ~「ある程度はできるだろうが、ひとりひとりの心象を読み取って納得させた上で成仏させるとなると」


お燐「時間がかかるよね。だからこそ、私の働きがいがあるってものさ」

お燐「んまあ、そもそも外来人の先生さんが幻想郷(ここ)で起きている異変に干渉するのは……」


ぬ~べ~「筋違いだ――と言いたいだろうが、まったくの無縁というわけではないぞ」

ぬ~べ~「粗暴な外来妖怪が跳梁跋扈しているというのならば、俺の知識や経験が役に立つ場面もあるかも知れない」

ぬ~べ~「何より、子ども達の安全を守りつつ無事に元の世界に戻るには、この世界を維持する上で重要な結界を管理する――」

ぬ~べ~「――巫女さんとやらを守らないとな」


お燐「うーん、あのひとに限っては守られる必要なんてない気もするけれどね」

515: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:38:50.13 ID:QzdDVvMi0
お燐「けれども、貴方のような戦力になりそうなひとを確保できて良かったよ」

お燐(霊夢のお姉さんには援助無用って言われたけれどね)

お燐(何となく、猫の手を貸すべきときなんじゃないかと思う。おまけに鬼の手にも加わってもらえるとはね)


ぬ~べ~(広達のことは勇儀さんに任せてきたが、あの鬼(ひと)になら大丈夫だ)

ぬ~べ~(3人が大人しく眠っている間にごたごたが終わってしまえばいいんだが――)


ガタガタガタガタ


ぬ~べ~「む? どうした」


シュポッ!!


くだ狐「クゥゥゥゥン!」


お燐「わっ! 何だいこの大きな動物は……いや、妖怪かな」


ぬ~べ~「こいつはくだ狐と言って――っておい待て!」


ビュゥゥゥン!!


お燐「あらら、逃げて行くよ。懐いてないの?」


ぬ~べ~「いや、そんなはずはない」

ぬ~べ~(何かに引き寄せられているのか? あいつが俺の命令を無視して勝手に動くとは――)


ダッ!!


お燐「あっ……ちょっと待ちなよ鬼の手のお兄さん!」

516: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:47:34.49 ID:QzdDVvMi0

――


キョロキョロ


ぬ~べ~(お燐くんには悪いが、まずはあいつを連れ戻さなければ)

ぬ~べ~(しかし、何だこの妖気は? ――近くにいるはずだ。手強い……何者かが)




「クゥゥゥゥゥン(はあと)」




ぬ~べ~「! あっちか」


ダッ


ぬ~べ~「!」


ザッ


龍「……キッ」


ぬ~べ~(! あれはさっき見た龍の子供?)




華扇「この子はね、私の言うことは何でも聞いてくれるんです」

華扇「今回も危険を顧みずに、貴方の動きを偵察しにいってくれました」




ぬ~べ~「あなたは……」

517: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:51:12.33 ID:QzdDVvMi0
スッ


華扇「なるほどね」

くだ狐「クーン!」


ぬ~べ~(俺のくだ狐をいとも容易く懐かせ……そして、思考に触れている? 俺が鬼の手を使ってそうするように)


華扇「管狐は術者となった人間に富をもたらすよう働くけれども」

華扇「飼育には良質な餌が必要で、しかも絶え間なく繁殖して餌の量は日に日に増えていき」

華扇「最終的には術者の富と気力を全て食いつぶして去っていく性質を持つ妖怪」

華扇「その管狐を、己の霊力のみによって育てて、ここまで強力なモノノケに変化させながら」

華扇「なお、自らの意のままに使役できる。貴方は相当の霊能力を持っている人間と言って差し支えないわ」


ぬ~べ~「あ……ああ、それはどーも」

ぬ~べ~「まあ、富(サイフの中身)はいつも食いつぶされてますけどね。生徒に奢らされたりとかして……ははは」

518: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/23(土) 23:58:48.14 ID:QzdDVvMi0
華扇「――そして、この子の思考のみによっては読み取れなかったのだけれど」

華扇「貴方はその力を利用して、この幻想郷で一体何をしようとしているのかしらね」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




ぬ~べ~(うーむ、また美人さんに会えたんだからなるべく和やかムードでいけたらって思ったんだが)

ぬ~べ~(気難しいひとのようだ。いや、人では……ないな)

ぬ~べ~(彼女の放つ強い妖気、包帯に包まれた右腕、左腕に嵌められた鎖、牡丹の胸飾から伸びる花模様……あれはもしや)


ぬ~べ~「どうやら、穏便には済ませられないようで」


ぬ~べ~(幸いこの場には生徒達はいない。弾幕ごっこの場数も踏んでいるから、要領は得ている)


グッ


華扇「あまり粗暴なことはやりたくはないのだけれど。幻想郷の秩序を乱す恐れのあるモノを見過ごすわけにはいかないし」

華扇「――それだけでは、ないのよ」

華扇「貴方が本当に“鬼の手”を持っているとするならば」




ぬ~べ~「!」




華扇「そしてそれを、恰も自分の腕のごとく利用できるとするならば」

華扇「勝負するという形に持ち込めば――いち早く、拝見できるでしょうからね」

519: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:04:57.18 ID:YOzhpOy50
ぬ~べ~(鬼の手のことをよく理解している。いや、推定できている?)

ぬ~べ~(確かに龍やくだ狐の思考を読み取れるといえども……)

ぬ~べ~(これは、本格的に素通りさせてもらえそうな雰囲気では……ないな)


スッ


ぬ~べ~「南無大慈悲救苦救難広大霊感白衣観世音菩薩――」

ぬ~べ~「怛只他奄(とーじーとーおん)

伽羅伐多伽羅伐多(からはた からはた)

伽訶伐多羅伽伐多(かこはた らかはた)

羅伽伐多娑婆訶(らかはた そわか)

天羅神 地羅神(てんらじん ちらじん)

人離難 難離身(じんりなん なんりしん)

一切災殃化為塵(いっさいさいおうかいじん)

南無魔訶般若波羅蜜(なむまか はんにゃ はらみつ)」


ぬ~べ~「はッ!!」


ギュルルルルルルルッ!!!!!


華扇「今唱えたのは白衣観音経ね――経文の力で私の動きを封じ込めようという策のようだけど」

華扇「簡単にはいかないわ」

520: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:15:09.99 ID:YOzhpOy50
ビリバリバリ……バサァッ


ぬ~べ~「!?」

ぬ~べ~(経典が破れた――相手に触れるまでもなく?)

ぬ~べ~(そんなことはない。確かに触れられていた……彼女の右腕だけが瞬間移動することによって!)

ぬ~べ~(そもそも、あの右腕は“義手”か! ――それも実体を持っていない、普通の状態ではない)


ヒュン!


華扇「さて、次の手はもう考えておられますか?」


ぬ~べ~「!? 俺の手元にあった霊水晶が――」


ブワアアアアアッ!  ゴトッ! コロコロコロ……


華扇「――私の手元に渡ったあなたの霊水晶(こどうぐ)は、私の右腕に強い影響を与えました」

華扇「あの陰陽玉と同じくらい妖怪退治によく使われていたようね。迂闊には触らない方がよさそう」




ぬ~べ~「……確かにこの霊水晶は、様々な場面で使われ、俺がこれまで目の当たりにしてきた妖怪達の存在を記憶に留めるほどに至っている」

ぬ~べ~「あまり安易に触れることは推奨しない――だから俺の手元に戻そう」


ヒョイッ


ぬ~べ~(相手は既に消し飛んだ“義手”を再生している――しかも、妖気を包帯で包むといった形で、まるで霧のような変幻自在の右腕)

521: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:25:59.15 ID:YOzhpOy50
華扇「このまま霊能力を駆使してあらゆる術を講じようとも」

華扇「おそらく埒は開かないだろう。そう思い始めているでしょ?」

華扇「そろそろ見せてもらえませんか。貴方の“鬼の手”を」


ぬ~べ~(さっき経典を破ったときに使った“義手”の遠隔操作と)

ぬ~べ~(長い詠唱を以て威力を最大限に高めたにもかかわらず、あっさりと封印を破った右腕の力)

ぬ~べ~(霊水晶を奪う時に使った瞬間移動と思われる身体能力)

ぬ~べ~(そして、自己の体を損傷してもすぐさま再生する高い治癒力)


ぬ~べ~(これほど多彩な力を操る相手だ)

ぬ~べ~(欠損している片腕と、俺の鬼の手に執心してしまうその理由は)

ぬ~べ~(彼女の正体を暴く上で、大きな根拠になるな)


ぬ~べ~(そして、明らかに“弾幕ごっこ”の枠に入る戦いではない。――真剣な勝負)


ぬ~べ~「だったらお望み通り見せてやるしかないな」


スッ


ぬ~べ~「我が左手に封ぜられし鬼の力を!」

522: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:30:42.87 ID:YOzhpOy50
ダッ


華扇「!!」

華扇(あの手首から先の部分が、あの人の持つという鬼の手……!)

華扇(でも、あのグロテスクさを残した表皮……あれは私が失くしたそれとはちょっとかけ離れているかも)

華扇(第一、彼の鬼の手は――“左腕”に宿っているようだしね)




ガシィ!! グググググググ




ぬ~べ~「――何ッ!?」

華扇「ええっ!?」


グニュニュニュニュニュニュニュニュ


ぬ~べ~(お、俺の鬼の手(左腕)が……!!)

華扇(私の……義手(右腕)の中へ……!!)




((――……侵蝕していく……!!?))




ズォォォォォォォォォォォォォォォォォ




524: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:36:11.45 ID:YOzhpOy50

――地底(旧都の酒場)――


勇儀「――というわけでね。先生さんは地霊殿の飼い猫と一緒に地上に向かったよ」

勇儀「向かった方向? 地霊殿のある方面になるかな。間欠泉ができて穴が開いた原因は」

勇儀「あの建物の中庭の奥にある灼熱地獄跡で起きた異変がきっかけになったわけだし」

勇儀「でも、正確な穴の位置は良く分からないな。何せ私は地霊殿に出かけることなんてほとんどないのよね」

勇儀「少なくとも、穴の出口は博麗の巫女が棲む神社の近辺にあることは確かなんだが」


ヤマメ「丁寧な解説をしてくれて、ありがとうね姐さん」

ヤマメ「知らない間に地上で異変が起きつつあるとは……神社が焼け落ちたとなると、結構な一大事じゃないか」


広「話の内容はわかんねーけど……とにかく地霊殿っていう建物のある方に行けば」

美樹「ぬ~べ~がいるってわけね!」

郷子「――お願い、ヤマメさん、勇儀さん!」

広「ぬ~べ~先生の居る所まで案内してくれ!」

美樹「ぬ~べ~のことだもの! またその辺の女妖怪に手を出してトラブルを起こしてるかもしれないし心配だわ!」


ヤマメ「どうしてこの話を子どもらにまで伝えたんだい……」

勇儀「いやぁ、先生達が行ってしまってからそう間もなく起きて来てさ。先生が何処に行ったのか教えてくれって聞かれて」

ヤマメ「嘘はつけなかったってわけなのね」

勇儀「すまんすまん」

525: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:43:12.85 ID:YOzhpOy50
郷子「お願いします! その……ここの上のほうでは危ないことが起きているんでしょう?」

美樹「ぬ~べ~1人でそんなところに向かうなんて……。私達にだって、できることはあるんだから!」

広「そうだ! このまま安全なところで先生の帰りを待ってろだなんて……納得いかねえ!!」


ヤマメ「といってもねぇ……」

勇儀「仕方がないだろう、ヤマメ。お前さんが先導してやりな」

ヤマメ「ええ!?」


郷子「本当ですか!!」

広「っしゃあ! ありがとう勇儀姐さん!」

美樹「実は一緒に行った火車の猫娘ってのに誘惑されてないか気になってたのよ!」


ヤマメ「ちょっと……そんなことをしたら」


ヒソヒソ


勇儀「だって、地上の異変が地底にも波及してきたら、どこが危険も安全もないじゃない」

勇儀「案外、ここに残っている方がかえって危険かも知れないよ」

勇儀「妖怪の山側の風穴の方が、上から敵が攻めてきやすいだろう? 何せ通りやすいからね」

勇儀「逆に怨霊が残留している間欠泉の穴側は、敵としては侵入しづらいはずだ――妖怪にとっても怨霊は天敵だからね」

ヤマメ「……なるほど確かに言われてみれば」

勇儀「それに、場合によっては地霊殿の中に子どもらを避難させてもらえばいいじゃないか」

勇儀「火車も主には話を通していると言っていた。事情を説明すれば向こうも無碍には断らないだろう」

ヤマメ「それもそうだね。私は地霊殿にもちょくちょく顔を出しているし……何とかなりそうだ」


ヒソヒソ

526: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:46:59.01 ID:YOzhpOy50
郷子「あのー……」

広「何をヒソヒソ喋って……」

美樹「ん?」


ツンツン


こいし「ねぇねぇ、さっきのせんせーは何処に行ったの?」

美樹「って、あんたまだいたの!?」

こいし「今来たのよ? ほら、山の麓に核融合の研究施設(間欠泉地下センター)があるじゃない?」

美樹「かくゆーごー? ……って知ってるわけないでしょそんな場所」

こいし「そこからね、私のペットを連れてきたのよ――せんせーに見せてあげようと思って」

美樹「え……ペットって……まさかそこの?」




??「どうも、こいし様の専属ペットの者です。……あれ、私はさとり様のペットじゃなかったかしら」

527: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:53:53.49 ID:YOzhpOy50
郷子「だ、誰!?」

広「お、おい! 片腕がスゲー物騒だぞ!」


勇儀「おお、丁度いいじゃないか。そこのふたりがついて行ってくれたら尚更安全だろう」

ヤマメ「あー。うん、まあ……そうだね」

勇儀「私は旧都の市街に残って、パルスィと共に妖しい侵入者がないか見て回ることにしよう」

ヤマメ「お願いするよ」


美樹「んーと……要するにあんたたちもぬ~べ~探しに付き合ってくれるってこと?」

こいし「いいわよ。折角お空を連れて来たんだから見せて自慢しなきゃ」


お空「うにゅ? つまりこいし様、私はこの子達を」


こいし「んーと、そうね。守ってあげたらいいんだわ。みんな私の友達なんだもん」

郷子「……こいしちゃん」


お空「こいし様のお友達なのね。分かったわ、貴方達の安全は私が守るから」


広「あ、ああ。サンキュ――何だか……とても頼りになりそうだ」

528: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 00:57:36.03 ID:YOzhpOy50
スタスタ


ヤマメ「さあさあ、私に続いた続いた――地底旅行の旅も大詰め、忘れ去られた都の中央に屹立する地霊殿巡りに出発だよ!」

美樹「地霊殿って格がありそうな名前からして金銀財宝でも隠されていそうね! 何処にあるの?」

こいし「旧都の中心の方よ――おっきいからすぐに見えてくるわ」

郷子「ちょっと……美樹。私達はぬ~べ~を追うのよ? その建物に遊びに行くわけじゃないんだから」


広「その建物に、皆で住んでんの?」

お空「こいし様はいろんなところに行かれているし、私達もいつもいるわけじゃないわ」

お空「ほとんどの時間、さとり様――こいし様の姉様――がひとりで暮らしているのよ」

広「……ふーん」

529: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 01:02:10.44 ID:YOzhpOy50

――地底(旧地獄街道の手前)――


キスメ「ひいいい!」

キスメ「わ、悪かったよ! まさか4人も連れ込めるなんて思わなくて!」


ジリ……


ゆきめ「人数の問題じゃないわよ! この極悪釣瓶落とし!」

玉藻「井戸が異界に繋がる扉になっていたのもこれで合点がいきました――あなたは常習犯ということなんでしょう?」

玉藻「さて、どうしますか。こちらもこの妖怪のせいで随分と貴重な時間を割かれてしまったのでね」

早苗「ああ、構いませんよ。軽く制裁を加えちゃっても」


キスメ「ま、待ってよ……あんたは幻想郷の住人なんだから分かるでしょ?」

キスメ「人間は妖怪の食糧なんだよ? けれども、人里の人間は喰うことができない」

キスメ「共倒れになってしまうから。だから、迷い込んだ人間や、外から連れ込んだ人間を代用しているんじゃないの」




キスメ「そのことは――あのスキマ妖怪だって、認めていることじゃない!」




早苗「えっ、そうでしたっけ?」

玉藻「……」

530: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 01:06:58.01 ID:YOzhpOy50
ゆきめ「その気持ちは、少しはわかる。私だって、由緒正しい雪女(ようかい)なんだもの」

ゆきめ「けれどね――鵺野先生や、鵺野先生が大切に想う人達に手を出したっていうなら、話は別よ」

玉藻「そう。お前が私達の関知しないどこぞの見知らぬ人間を“神隠し”にしていたならば、こんなことにはなっていなかったに相違ない」

早苗「要するに、貴女は運が悪かったということ――これも運命ってことで諦めた方がいいですね」


キスメ「そ……、そんな……」


早苗「さてと、私も妖怪退治が仕事(シュミ)ですからここは加勢しちゃいましょ!」

ゆきめ「桶ごとカッチンコッチンにしてやるわ!」


キスメ「や、やめて……誰か……誰か助けてっ……」


玉藻「氷漬けにされた後で、私の焔(ほむら)で溶かして助けるから安心しなさい」

玉藻「――私は仮にも医者だからね」

531: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 01:14:42.94 ID:YOzhpOy50

――地底(旧都の手前・旧地獄街道の橋)――




ぎゃああああああああああああああああああああああああああッ




パルスィ「……、この声は確か」


パルスィ(また、新たな侵入者?)

パルスィ(最近は本当に往来が多いね)

パルスィ(今日なんてあの鵺に始まってお尋ね者の天邪鬼、ヤマメのやつが連れてきた得体の知れない外来人たち)

パルスィ(それから、姿は目視できなかったけれど、大きな生物に乗って奥に向かった何者か)

パルスィ(もしかしたら、ってあたりは付けられるけれど……余程慌ててたのか。何故?)


パルスィ「はー、まあいいわ。私は橋姫。地上と地下を結ぶ縦穴の守護者」

パルスィ「さっき鵺から聞いたところによると、今日は姐さん、私をお酒の席に誘ってくれなかったみたいじゃない……」

パルスィ「いつもはちゃんと誘ってくれるのに今日は……! 私より地上に行った鵺と呑むほうがいいってこと……?」


パルスィ「くぅぅ妬まし妬ましい……」


ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる


パルスィ「嫉妬心を糧とする封じられた恐怖の妖怪の力……次に橋を渡り来る者に思い知らせてやる!!」




                         (第3話:片腕の仙人と鬼の手を持つ男の巻<前編>・終)

538: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 23:49:33.84 ID:YOzhpOy50

――地底(旧地獄街道の橋)――




パルスィ「恨符『丑の刻参り』」


シュパパパパパパパパパパパパパパ




ゆきめ「氷符『スノーフェアリー』」


シュキラ―――――――――――――――ン


玉藻「狐火『弓削道鏡』」


ボォゥ ボォゥ ボォゥ ボォゥ ボォゥ


早苗「奇跡『ミラクルフルーツ』」


キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ

539: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 23:51:53.32 ID:YOzhpOy50

――


パルスィ「ぐ……やるじゃないの。でも3対1だなんて……」


早苗「おふたりとも、弾幕ごっこの真髄を会得するのが早いですね」

ゆきめ「だって、要は相手に避けられるような余裕を与えて、氷のつぶてを放てばいいんでしょ?」

玉藻「本来なら命を掛けて闘うところを、あえてゲーム化して擬似的に戦闘を再現する」

玉藻「よくできたシステムなんじゃないですか? この箱庭を維持するための方法としてね」

早苗「でしょう。ちなみに、弾幕ごっこは少女の遊びとして定着しているので、男性がやっているとちょっと……」

玉藻「ちょっと、何なんです?」

早苗「成人男性がおジャ魔女どれみのおんぷちゃんにうつつを抜かす程度にイタく見えますよ」

玉藻「意味不明だが……少々気恥かしくなってきた……」

540: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 23:56:27.79 ID:YOzhpOy50
パルスィ「うう……酒宴にも呼ばれなかった上に弾幕初心者に敗北を喫するなんて……」


早苗「妬ましい! けど感じちゃうんですね?」


パルスィ「あんたみたいな気軽な性格に生れなかった自分の生い立ちが妬ましい!」

パルスィ「ブツブツブツ……」


ゆきめ「うわー、嫉妬深い妖怪ねぇ。結婚してからもああいう悪霊にだけは取り憑かれないように鵺野先生を守らなきゃ」

玉藻「彼女は他人の嫉妬心を煽るよりも、自分の嫉妬心を増幅させて力に変えるのが得意のようですね」

早苗「どうしましょう? 次の宴会に誘っておきましょうか?」

ゆきめ「えー、こういうタイプってお酒飲んだら泣き上戸になっちゃうんじゃない? 第一、子どもなのにお酒なんて」

玉藻「この世界では、普通の人間のような見た目と年齢との相関はアテにならないようなのでね」

玉藻「年齢といえば、あなたがたは――」

早苗「そういう女性のプライバシーに関わる個人情報を安易に聞き出そうとしてはいけません!」

早苗「ね~、ゆきめさん」

ゆきめ「そうよそうよ。年寄りくさい古狐のくせに失礼しちゃうわ!」

玉藻「……」


玉藻「さて、不毛なお喋りは終わりだ」

玉藻「こちらが勝った場合の約束通り、この先の旧都――4人が滞在している場所――へ案内してくれますね?」

パルスィ「ブツブツ……わかっているわ」

542: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/24(日) 23:58:57.52 ID:YOzhpOy50

――妖怪の山(上空)――




シュ――――――――――――――――――――――――――――




岩天狗「うわーはっはっはっ!!!」

岩天狗「口ほどにもないヤワな女天狗共め!!」

岩天狗「姿形も見えなくなったな――木っ端微塵に砕け散ったか!」


岩天狗「さーて……この後どうする?」

岩天狗「まだまだ儂の怒り……留まるところを知らんぞ!!」


チラリ


岩天狗「眼下の山の頂上に見える湖と……その畔に立つは神社か?」

543: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:02:22.67 ID:KQkJtZqx0
岩天狗「そういえばあの女天狗、まるでこの山にも他の山神が存在するかのような口ぶりだったな」

岩天狗「あの程度の実力しかない天狗が守る山の神など、取るに足らず!」

岩天狗「いっそのこと……この山を手に入れて我らが山の神の統括下に組み込んではどうだろうか?」

岩天狗「よし、そうしよう!」


岩天狗「クク……まずはあの神社を破壊し、こちらの世界の山の神とやらに宣戦布告してくれるわ!」

岩天狗「すべては……儂の悲願の達成を阻んだ女天狗達(キサマラ)のせいよ! ――覚悟ッ」




サラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラ




ガシリ!!


岩天狗「……え」

萃香「ほら、手を握ってやったぞ」

545: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:06:26.43 ID:KQkJtZqx0
グニィ!!


岩天狗「……ぐあああッ!?(な、何だ……この腕力の強さはっ……!!)」

萃香「何だい。ようやく女の子に初めて手を握ってもらえたんだ。もっと喜びな」


ギロリ


岩天狗「ひっ……!(こいつは確かに……女の子……だが違う……)」

岩天狗(喜べない……手から冷や汗が……! 岩肌から流れる湧水のように……ぐああッ)

萃香「まあ、確かに天狗となら手ぐらい握ってやってもいいってものよ」


萃香「何せ、鬼と天狗は古来からの盟友だもんねぇ」

岩天狗「!!?」


岩天狗「お前は……ま……さか……」

萃香「去れ――今すぐこの山から立ち去れ」

萃香「さもなくば」




萃香「 な ぶ り こ ろ す ぞ 」

546: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:11:31.06 ID:KQkJtZqx0
岩天狗「――」


スゥ――――――――


萃香「あれ、これくらいの脅し文句だけでお帰りか」

萃香「まったく、天狗の逃げ足が速いのはこっちも向こうも同じってわけだ」


萃香(鴉天狗も私が来たのを察知したか、逃げたっきり戻って来ないし。天狗の組織としてのメンツはどうしたのよ?)

萃香(でもまあ、ここに長居するつもりは毛頭ないし)


萃香(もうじき大きな山場が来る――それも断崖絶壁だ)

萃香(これはもしかすると、異変解決のために手を貸すことになるかもねぇ)


萃香(もう夜更け、日付も変わる。後片付けも含めたら明日は日中忙しくなりそうだから)


萃香「次の酒宴は、明日の晩あたりだね――今度のうたげは、大勢萃まってさぞにぎやかになるだろう」

萃香「良いわねぇ。にぎやかなのは大好きだ」




サラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラ




548: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:16:08.95 ID:KQkJtZqx0

――妖怪の山(山麓・間欠泉地下センターの温泉)――




カポーン




ぬえ「……」

諏訪子「……」

ぬえ「……ゆで蛙になったら困るんじゃないの?」

諏訪子「洩矢神はミシャグジと同視されているの。ミシャグジはどちらかというと蛇神なのよね」

ぬえ「でも貴女は蛇に睨まれた蛙でしょう?」

諏訪子「毒のある蛙はいくら蛇でも容易く飲み下せないんだよ。だから」

ぬえ「行きつく先は共存……ね」

549: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:21:18.52 ID:KQkJtZqx0
バシャバシャ


文「まったく、私が葉団扇の扱いに長けていて、もともと風を操る能力を持っていたからこそ」

文「相手の攻撃による風圧を利用してジェット噴射のように後退し、致命傷を回避できたのよ?」


はたて「……」


文「着地地点は……まあ温泉にドボンということになっちゃたけれど」


はたて「うん、ごめんね文。――助けてくれて……その……ありがとう」


文「おや、今回はやけに素直ね?」


はたて「挑発も煽りも、お互いに限度ってものを認識しているならともかく」

はたて「ああいう、何を考えているか判らない相手を漫然と煽るのはリスクが大きかったってことね」


文「ええ。得体の知れない敵と対峙したときは、もっと真剣かつ的確に対応しなくてはいけない」


文(まあ、あの岩天狗さんは私達の盟友さんが押し返してくれたようですね)

文(本来あのかたに山に来られるのもよろしくないというのに……おまけに私達の侵入者(てき)を代わりに倒してもらったとなると)

文(職場放棄と言われても過言ではないなあ)


はたて「そうね。他にも外界の敵が現れるかも知れないし、夜通し警備を厳しくしましょう!」


文「ええ、そうね。今度はキッチリ職責を果たすわよ! 勿論、取材も兼ねてね!」


ザバッ!!    バサバサバサバサバサ

551: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:25:41.33 ID:KQkJtZqx0
ぬえ「着の身着のままで入って出て、まさにカラスの行水ってところかしら」


諏訪子「そうね。けれども、あの天狗達の話を聞く限り、幻想郷は外から襲撃を受けているみたい」

諏訪子「さっきの雪女と妖怪狐……懇切丁寧に対応しちゃったけど……」


ぬえ「……あの2人は、幻想郷を故意に荒らしたりはしないと思うわ」


諏訪子「根拠はあるの?」


ぬえ「あの半人半鬼の仲間なら――きっとそんなことはしないだろうと思っただけよ」


カポーン

553: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 00:46:30.07 ID:KQkJtZqx0

――霧の湖(廃洋館側)――




パチパチパチパチパチパチ





ルナサ「――♪」

メルラン「――♪」

リリカ「――♪」


わかさぎ姫&速魚「「 教えてよまだ知らないメロディ~♪ 」」

わかさぎ姫&速魚「「 ドキドキするような~♪ 」」




美鈴「さながら野外ライブって雰囲気ですね」

大妖精「そうですね」

チルノ「おや、どうしたんだい? そんなに浮かないツラをして」

ミスティア「……うちの店がぁ」

リグル「私の……大切な物……」


ルーミア「あんた、館での仕事は? ほら、門の前で寝る仕事しないでいいの?」

美鈴「いやいや、これはちょっとしたブレイクタイムですよ」

ルーミア「そーなのかー」

美鈴(人里の事件も大方静まりましたし……まさかうちが異変の余波を受けることなんてないでしょ!)


                                    (つづく)


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