スレURL:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412493457/


前スレ:ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【前編】

564: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:15:10.52 ID:KQkJtZqx0

――妖怪の山(山麓)――


文「ちょっと椛……今の山の状況は目も鼻も利く貴女ならよく理解できていたハズでしょう?」

文「なぜ、何もせずに傍観に徹して? 考えて行動ってものができないんですか?」


椛「いえ、大天狗様に指示を仰いだところ、今は事態を静観せよとのお達しでしたので」


文「だから私達が外敵と交戦していてもスルーしたと? 臨機応変の対応ってものがあるでしょう?」


椛「文様がたが、もっと穏便にことを済ませていれば、そもそもかつての支配者(おに)に介入されることもなかったはずでは?」


文「ぐ……」

はたて「ごめんなさいね……それは文のせいじゃなくて私の責任なのよ」

はたて「ともかく、今は言い争っている場合じゃないわ」

はたて「玄武の沢の河童や山童たち、八百万の神々にも状況を知らせて――山の妖怪皆での防衛作戦を展開しましょう」


椛「判りました、はたて様。もともと、白狼天狗側としてもそのつもりで臨戦態勢を整えています」

椛「――では」


タッ




565: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:19:59.82 ID:KQkJtZqx0
文「……まったく、どうして椛は私に対してだけつっけんどんな態度をとるのよ?」

はたて「うーん、文に対する苦手意識があったりするんじゃない? それかツンデレとか」

文「むしろこっちが苦手意識を持っちゃうわよ」

はたて「それにしてもあの岩天狗、山の神の使いだとか言ってたんでしょ。ってことはもしかしたら山の神も――」

文「いいこと、はたて。そういうのは口に出さない方がいいわ」

文(流石に、万一外界で健在な神が降臨したりすれば……タダゴトでは済まされない)

文(特にその神が……邪神だったりしたら尚更ね)


タッ


文「あら、椛?」

はたて「状況を伝えに行ったんじゃ?」

椛「いえ、その前に」

椛「おふたりとも服が濡れっていらっしゃるので――」





はたて「わざわざ拭くものを持ってきてくれたのね」

文「……。……ありがとね、椛」


椛「ではまた――逐次報告に参ります」


シュタッ

566: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:23:33.14 ID:KQkJtZqx0

――博麗神社――


ブーン ブーン


霊夢「qあwせdrftgyふじこlp;@:」

霊夢「あzsxdcfvgbhんjmk、l。;・:¥」


針妙丸(……霊夢さん、何やら呪文みたいなのを唱えながら御祓い棒を振り回してる)

針妙丸(でも大丈夫なのかな……)


天子「ねえ、ちょっと喉渇いたんだけどー?」

天子「何かないの?」

霊夢「うっさい! 詠唱のジャマをしないでよ」

貧乏神「おらも腹減っただなあ」

霊夢「お黙り! どうせ焼き味噌を出してもあんたは出て行くつもりないでしょ」

貧乏神「フェフェフェ」

567: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:29:31.83 ID:KQkJtZqx0
天子「誰と話しているのー。私には見えないよー(棒)」

針妙丸「もしかして、早くも神のお告げが?」

霊夢「いや、別に……ひとりごとよ」


霊夢(神格が低いからか、今のところ私以外には貧乏神が認識されていないのよね)

霊夢(いや、判ってるやつは判ってると思うけれど)

霊夢(まったく……ある意味最弱ながら最強なんじゃないの……コイツ)

霊夢(おまけにあの厄神が溜め込んでいた災厄を引き受けて増長しているときた)

霊夢(あの厄神、溜めた厄を神々に渡しているって前に言ってたけれど)

霊夢(実際のところ、本当にこれまでどっかの神にどれだけ厄を提供していたのかは判らない)

霊夢(一体全体どれほどの厄が、今うちの神社に溜め込まれているのか……考えたらゾッとするわね)


霊夢「――とにかく、これ以上はジャマしないでよ。私は真剣に」


天子「……」

針妙丸「……」


霊夢「ん、二人ともどうし――はっ!」




ピシピシピシピシピシピシピシピシ




霊夢(神社の境内の一角……空中に裂け目が)

霊夢(方角的には……艮……って鬼門じゃないの!)

568: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:38:46.36 ID:KQkJtZqx0
バキィ!!!!!!!!


絶鬼「フフ……ありがとう、感謝するよ」

絶鬼「君達が、このぼくを地獄の底から救い出してくれたんだね?」

絶鬼「ここが人間界なのか、はたまた別の異界なのかは知らないけれど。どうせ滅ぼしてしまうんだから同じことか」


絶鬼(入り込んでみて、改めて確信した――覇鬼兄さんは確かにここにいる)

絶鬼(しかも、そう遠くはない場所にいるとみて間違いないな)

絶鬼(ならば、まずはここで暴れ回って――兄さんに呼応してもらうとするか)




絶鬼「それじゃあ早速、殺戮の前奏曲(プレリュード)といこうかな――」








ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ








霊夢「あ、あんたは……」

針妙丸「す、す、すごく……おおきいよ……」


ガクガク




天子「あれ? 小人ちゃん震えているの?」

天子「確かに大きいけれど、図体だけの木偶の坊かも知れないよ?」

569: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:42:48.60 ID:KQkJtZqx0
絶鬼「おや? 鬼を目の前にして、恐れを抱かない人間がいるとは」

絶鬼「いや、人間……なのか? 人間のようでもあるし、かけ離れているようでもあるね」




天子「細かいことは気にしないの。私は貴方のようなつわものが来るのをずっと待っていたんだから」

針妙丸「……え」


天子「わざわざ貧乏神を神社に祀るという愚行に出た博麗の巫女の所業に便乗し、見事に大結界に風穴を開けることに成功した!」

天子「――計画通りよ」


針妙丸「ちょっと……霊夢さん、まさかこの異変の黒幕は……」

霊夢「あんたが今思った通りでしょうね」


霊夢(やっぱコイツだったのね――文たちは兎も角、流石にあのタイミングでこいつまで降ってくるのは不自然だと思ったもの)

霊夢(それにしても……地獄って……まあ当然うちのじゃないわよね)

霊夢(外界にある地獄から這い出てきた……ホンモノの鬼……)

570: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:47:54.24 ID:KQkJtZqx0
絶鬼「ようするに、そこの君のお陰で再び日の目を見ることが出来たというわけか」

絶鬼「――今は月が見えるだけだが」

絶鬼「感謝するよ――感謝の気持ちを示して、君を第一の犠牲者にしてあげよう」


天子「その前に、そのおどろおどろしい格好をどうにかしなさいな」


絶鬼「……何だって?」


天子「私達のような“か弱い少女達”を相手に、そんな図体で全力を出していいのかってこと」

天子「一閃で殲滅しちゃったら、断末魔も聞けないよ? それってつまらなくないの?」

天子「死よりも恐ろしい恐怖を与え戦慄させ、最後に圧倒的な力をもってゴミのように踏みにじる」

天子「そういうやり方の方が、面白いとは思わない? 貴方が血も涙もない鬼ならば」


絶鬼「……」

572: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:51:55.01 ID:KQkJtZqx0
シュォォォォォォォォォォォォォォォォォ


霊夢・針妙丸「「!」」



絶鬼「確かにね。一捻りで潰すだけじゃあ殺し(アート)として美しくはない」

絶鬼「もっとも、人化を使ったところで――きみ達との実力差は変わらないだろうけれど」


天子「あらら、私結構な実力者よ? オーラで判らないの?」


絶鬼「オーラ? まったくと言っていいほど感じないね」


天子「そぉ? 心外ね」


絶鬼「予告しよう、指一本だ――ぼくのシャープな鬼の指で、きみのフラットな胸(しんぞう)を貫くとしよう」

絶鬼「いい断末魔をあげてくれよ」


天子「無駄無駄、私の胸は鉄壁だ――貫けるものなら貫いてみなさいよ」

天子「小鬼の、ぼく」

573: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/25(月) 23:59:05.85 ID:KQkJtZqx0

――人間の里(中心部)――


ジリジリ……


怪人A「ハァ……ハァ……」


魔理沙「追い込んだぜ。袋小路にな――そして上空には私がいる。さっきみたいにはいかないぜ」


怪人A「ッ!」


ギュン!!


聖白蓮「魔理沙(あなた)に目掛けてカマを放り投げてきましたよ。その至近距離ならすでに首が飛んでいたでしょう――が」


ギュワアアア


怪人A「!?」


パシィッ!!


魔理沙「ふっ、返してもらったぜ――小町(しにがみ)のカマをな。ほいよ」

小町「放られたカマとあんたの距離を少し遠ざけることで、受け止められるくらいの猶予を与えたのさ」

小町「ほら、三途の川を渡るときにかかる時間は人それぞれっていうだろう?」

小町「その川の長さを操る力を応用したってこと!」

574: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:03:03.78 ID:7WGsLKr50
怪人A「……!」


グギィッ!!


怪人A「!? ぎゃああッ!!」

聖白蓮「一瞬、呆気に取られましたね――その隙が貴方の命取りとなるでしょう」


バッ!!


聖白蓮「これが、人間を辞めた者の身体能力ですわ」

怪人A「~~~!!?」


ミシミシミシミシ


聖白蓮「今のままでは、貴方の心の奥底に溜まった澱を掬い取ることはできない。ならば」

聖白蓮「いっぺん死になさい――そして、貴方が本当の救いを享受したいと望むならば」

聖白蓮「その哀しい仮面を打ち捨てて――罪人たる己の姿を顧みなさい」

聖白蓮「貴方のような罪深い人間でさえ、幻想郷は受け皿となってくれるのです」

怪人A「……」


ミシミシミシミシ

575: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:06:15.19 ID:7WGsLKr50

――


一輪「さすがは聖の姐様! 私達には真似できないような力技(説法)をやってのけている!」

雲山「……」

マミゾウ「さて、あの怪人Xは坊主が背後から羽交い絞めにしており動けぬのう」

マミゾウ「誰が、トドメを刺すのじゃ?」

小町「あたいは大事なカマを取り返すことに成功したから、これ以上干渉するつもりはないよ」

小町「さ、引導を渡してやりな――あんたが自機(しゅじんこう)だ」


チラリ


魔理沙「……」

576: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:09:30.38 ID:7WGsLKr50
ヒュォォォォォォ


聖白蓮「私に構わず打ちなさい。なんて、言う必要はないわね」


ガッチリ


怪人A「……」




魔理沙「――ああ」

魔理沙「お前にとっちゃこの程度の攻撃は屁でもないって、私はよーく知っている!」




魔理沙「食らえッ! ――魔砲『ファイナルマスタースパーク』」




ギラッ




ヒュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル


ど~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん




577: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:13:26.85 ID:7WGsLKr50

――人間の里(上空・雲上の宝船)――


まこと「うわぁー! 空の上に、綺麗な花火が上がって!」

村紗「いえ、あまり綺麗な花火でもなさそうですよ……。ふう、余波を受け流せてよかった」

小傘「あとで、聖水でお清めしたほうがよさそうだわ」

慧音「ふー、心配していたけれど……ようやく終わったみたい」

克也「つまり、敵は皆倒されたってことか!」

響子「 こ れ で 異 変 も 解 決 ね ー 」








――


マミゾウ「まったく、山彦ときたら……真夜中にあんまり大声を出しては近所迷惑よのう、若造よ」

雲山「……」

一輪「でも、ちゃんと危難が去ったことを里人たちに伝えるのも大事なことよ。って雲山が」

578: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:16:00.39 ID:7WGsLKr50
魔理沙「ヤツは……一体何者だったんだ?」

聖白蓮「少なくとも……人間を辞めていたのでしょう。私達と同じように」

魔理沙「いや、私はまだ人間やめてないぜ」


小町「まあ、いいじゃないかい。これでお仕事もあがりってことで、さ」

聖白蓮「まだ、予断を許さないとは思いますが……ちょっとイヤな予感が」

小町「でも、一段落はついたはずだよ。なあ、普通な方の魔法使いさんよ?」

魔理沙「ああ」


魔理沙「――勝ったぜ! 第3話完ッ!!」

579: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:20:35.10 ID:7WGsLKr50

――紅魔館(図書館)――


パラ……


パチェ「……」

赤い怪少女「……」


パラ……


パチェ「……」

赤い怪少女「……」


パタン……スタッ


パチェ「……あら、その本、もう読み終わったの」

赤い怪少女「……」


コクッ


パチェ「ここ紅魔館の大図書館にはね、古今東西に書かれたありとあらゆる書物が収蔵されているの」

パチェ「だから貴女が今後、探しているのに見つからなくて困っている本があったら、ここに来るといいわ」

パチェ「貴女も私と同じで、本を読むことが大好きなようだからね」


ニコリ


赤い怪少女「さよなら」


スゥ――――――――――

580: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:24:03.66 ID:7WGsLKr50
パチェ(さてと、次はこの本に目を通しましょう――何度か読んでいるけれど、興味深い内容なのよね)

小悪魔「パチュリー様! あの浮遊霊、やっと帰ってくれました?」

パチェ「ええ。でも、あの子は本好きなだけ、そんなに邪険にしなくても……」

小悪魔「だって……ず~っと俯いたまま本を読みっぱなしで根暗っぽいですし」

小悪魔「司書(わたし)から館内の配置を聞いていたときも、床を滑るように高速で移動してきて」

小悪魔「とにかく薄気味悪かったんですッ!!」

パチェ「……」

パチェ「うん、そう……」

パチェ「とりあえず、あの子は帰ってしまったから、こぁは本棚の整理をしていて頂戴」

小悪魔「はい、承知しました」


タタッ


パチェ(……小悪魔はよく頑張って仕事に勤しんでくれているけれど)

パチェ(もう少し、静かにして欲しいわ)


??「ちょっと、パチュリーさん」

581: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/26(火) 00:28:28.19 ID:7WGsLKr50
パチェ「あら、ベベ。何か用?」

ベベルブブ「いやぁー、その……文通友達に送る手紙を書いたんだが……その」

ベベルブブ「こういう文章でいいかどうか……添削してもらえたら……」


パッ


小悪魔「え~、何て書いたの? なになに……『僕を召喚してくれて本当にあーだこーだ」

ベベルブブ「わー!? イヤ、ダメ、読むなああっ」

小悪魔「回りくどいことをしないで、もう契りを交わしちゃえばいいんじゃない?」

ベベルブブ「お、俺はその……じ、順序ってものを大事にするんだ……」


パチェ(騒々しい……)

パチェ(騒々しいと言えば、今日は魔理沙、いつものように本を永久に借りに来なかった)


パラリ


パチェ(まあ、その方が読書の邪魔をされないで済むからいいのだけれど)

パチェ(――『謎のフィラデルフィア実験』)


               (第3話:片腕の仙人と鬼の手を持つ男の巻<後編>・終)

589: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/27(水) 23:44:41.85 ID:r21KEIQx0

――紅魔館(レミリアの寝室)――


パラパラ


レミリア「……」

咲夜「あら、何を読んでいらっしゃるんですか。お嬢様」

レミリア「美鈴から借りた漫画よ。普段は難しい魔道書ばかり読んでるパチェもね、目を通したんだって」

咲夜「へえ、あのパチュリー様も漫画を……」

レミリア「ほら、前にあの黒いのがスペカを研究して纏めた本があるでしょ?」


パラパラ


レミリア「あれの執筆に際して参考にした文献らしいのよ」

咲夜「……それで、面白いんですか?」

レミリア「結末が気に入らないわ」


ポイッ


咲夜「投げ捨てるだなんて、本を粗末にしてはパチュリー様に怒られますよ」

レミリア「捨ててはいない、軽く放っただけ。はぁー、退屈よねぇ……今日この頃」

レミリア「ちょっと異変でも起こそうかしら」

咲夜「またまた、心にもないことを」

590: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/27(水) 23:50:01.09 ID:r21KEIQx0
咲夜「もうそろそろお休みになったらどう? 私も少しは休みたいので」

レミリア「何を言っているの? 闇夜こそが我々吸血鬼の本領を発揮する時間帯――」

咲夜「私は人間ですよ、一応は」

レミリア「うー、何かやりたーい!」

咲夜「では、外を徘徊でも? お供しますよ」

レミリア「――いいわ、面倒くさい。そういえば今日は美鈴(もんばん)、ちゃんと働いてた?」

レミリア「夕刻、日傘を差して門のあたりをふらついたときには見当たらなかったようだけれど」

咲夜「美鈴なら花畑の手入れをしてくるといってましたが、帰ってくるのが遅いですね。もう日付も変わったというのに」

咲夜「どこかで油でも売っているのかも」

レミリア「そうね、私もそう思うわ。でもこう平和だといてもいてもいなくても差し支えないわね」

レミリア「いっそ解雇しようかしら」

咲夜「解雇するならむしろ先に妖精メイド達でしょ? あんまり役に立たない上に、むしろ私の仕事が増えるんだから」

レミリア「いいじゃないの。そのぶん咲夜が先読みをして動けばいいだけのこと、時間を有効に使いなさい」

咲夜「はあ……。まあ、言われなくとも使ってはいますが」

レミリア「ともかく秩序だった日常に埋没してはいけない。たまには、こうスパッと寝首でもかかれてみたいものだわ」

咲夜「寝首をかかれたくらいでは、お嬢様は死なないじゃないですか」

レミリア「物のたとえよ。死を経験するくらいの未知の体験をしてみたいってこと」

591: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/27(水) 23:54:11.31 ID:r21KEIQx0
レミリア「――ねえ咲夜、本気で次の異変を起こそうとは思わない?」

レミリア「パチェも交えて計画を練り上げましょう。最近の異変はあまりにも低次元な余興に失し過ぎだわ」

咲夜「――すでに具体的な構想が?」

レミリア「例えば、裏で糸を引いて妖怪大戦争が勃発させるとか。このまま妖怪全体の無気力化が広がってしまえば、強い外敵(月人とかね)と戦う力を失ってしまうわ」

レミリア「これはゆゆしき事態じゃないの?」

咲夜「確かにそれは歴史が証明しているのかもしれませんが……今になってどうこう言ってもしようがないのでは」

咲夜「それに起こすのならば、今度は妹様のことも最初から頭数に……」

レミリア「……いいのよ、フランのことは。今まで通りのほうが、あの子にとっては……」

咲夜「……」


咲夜「少し喉が渇きませんか?」

レミリア「……そうね。じゃ、紅茶でも入れて頂戴――珍しくないものでいいから」

咲夜「はい、ただいま――トリカブトの根をそのまま摩り下ろして隠し味にしておきますね」


ガチャリ


レミリア「根でも種を暴いたら、隠し味ですらないじゃないの。まったく」

592: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/27(水) 23:58:35.81 ID:r21KEIQx0

――(図書館)――


パラパラパラ


パチェ(――『フィラデルフィア計画』)

パチェ(その内容は、アメリカ海軍のステルス実験――正式名称は『レインボープロジェクト』)

パチェ(いわゆる都市伝説のひとつである――)

パチェ(一九四三年一〇月二八日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアの海上にて、駆逐艦に船員を乗せて実行された当該実験――)

パチェ(当初の目的は、テスラコイルを使い船体をレーダーに対して不可視化する軍事利用目的であったが)


パチェ「その実験の結果――」


パチェ(おかしいわ……)

パチェ(……ここから先の頁が欠落しているのよね。破られた、燃やされた、いや……抉り取られた?)


ジー


パチェ(抉られてから……そう時間は経っていない。ほんの数刻前……いや、ほんの一瞬だけ……前に?)

パチェ(一体いつの間に……他の本を読むのに没頭していたとしても、目の前の本棚に並んでいたのよ)

パチェ(両隣を別の本に挟まれ、天地(上側と下側)と小口(背の裏側)は棚板に接する状態)

パチェ(この状態で一部のページだけを、音もなく手品もなく抉り取る方法となると……)

593: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:10:02.82 ID:Zj6GXCga0
タッ


小悪魔「パチュリー様、これ、見てください!」

パチェ「あら、どうしたの?」

小悪魔「外のゴミ置き場に不用品を運んで行った帰りに……」

小悪魔「拾ったものなんですが……」


スッ


パチェ「!」

小悪魔「誰が……こんなイタズラをしたんでしょう?」

パチェ「これって……」

パチェ(今私の手元にある本の抉り取られた部分が……レミィのお気に入りのティーカップと融合している?)

594: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:14:58.67 ID:Zj6GXCga0

――(レミリアの寝室)――


コンコン


レミリア「あら、咲夜。わざわざノック?」

レミリア「入っていいわよー。どうぞー」


シ――――――ン


レミリア「? どうしたの、早く入りなさいよ」


ズズズズズ……


レミリア(後ろに気配が?)

レミリア「何してるの、いないないばあ? ノックしておいてわざわざ能力なんて使わ――」


クルッ


ォオオオオオオオオオオオ


レミリア「な」


ズズズズズ……


レミリア「――ち、ちょっ――とあん――ただ――――――――れ」


……ズズズズズ

595: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:16:41.74 ID:Zj6GXCga0
シ―――――――――――――――――――ン




ガラッ


咲夜「申し訳ありません、お嬢様。いつも使っていらっしゃるカップが見当たらないので今回は別のものを――」

咲夜「……あら。お嬢様、どちらに?」

咲夜(ああ、本当に夜のお散歩にでも行かれたのかしら)

咲夜(だったら、一言声を掛けてくれれば――あ、わざわざ付き添わなくてもいいっていう心遣いなのね)


トサッ


咲夜(ふう、今日もよく働いた。少しの間、ベッドの上で休ませてもらうわ)


スヤァ……

596: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:20:24.89 ID:Zj6GXCga0

――(図書館)――


\コォォォォォォォォォォォォォォォォ/


ベベルブブ「おお! トイレから戻ってきたら、パチュリーさんが何やら本のページを壁に映してる!」

ベベルブブ「まるで魔法のようだ!」

パチェ「魔法使いだもの」

小悪魔「これはさっき見つけた、ティーカップとくっついちゃってる続きの頁にあたる部分ですか?」

パチェ「そうよ。無秩序に裁断・混同されたページを復元するよりも、こうやって投影した方が判りやすいでしょう?」

ベベルブブ「んーと、何なに?」

パチェ「要約すると、こうなるわ」




パチェ「――その実験の結果」

パチェ「駆逐艦はレーダーから消失するに飽き足らず」

パチェ「完全に『実体そのもの』を消失、数千キロメートルも離れているノーフォークに瞬間移動してしまった」

パチェ「それから数分後、奇妙な発光体に包まれた駆逐艦は再び元の場所へと瞬間移動していた」

パチェ「実験は無事に終了した。乗船した者のうち死者は十六名、そのうち半数は精神に異常を来した」

パチェ「実験の継続は断念され、『フィラデルフィア実験』の全内容は軍事機密として封印されることとなった――」




小悪魔「こぁー、瞬間移動……ですか」

ベベルブブ「こんな超常現象が起きるなんて……信じられんな」

パチェ「……」

597: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:26:41.81 ID:Zj6GXCga0
パチェ「ねぇ、こぁ。この本にイタズラをした者は、一体どんな意図があったんだと思う?」

小悪魔「意図ですか……うーん、イタズラ目的ですかね?」

パチェ「う、うん、そうね。それはそうかも知れないわ」

小悪魔「さきほど消えた、あの本好きな幽霊の仕業では?」

ベベルブブ「幽霊ってのは……さっきまでいたあの赤いのか。話したことはないが」

パチェ「本好きな子なら本にこんなイタズラをしないでしょう?」

小悪魔「あ、まあ確かに」

小悪魔「ではまた、あの泥棒さんの仕業でしょうか?」

ベベルブブ「泥棒?」

パチェ「それは違うと思う」


パチェ(魔理沙(ドロボウねずみ)なら……こんな陰気臭い嫌がらせなんてしないわ。堂々と正面から不法侵入して本を持ち去るだけ)

パチェ(わざわざ、回りくどく手の込んだことをするなんて……)


パチェ「あ。そういえば、――このティーカップと本の融合体、外で拾ったと言ってたけれど」

パチェ「正確にはどこで見つけたの?」

小悪魔「えっと、何故か門の手前に……無造作に置かれていたというか」

小悪魔「ちなみに、門番さんはいらっしゃいませんでした」

ベベルブブ「門番?」

パチェ「この際それは気にしないことにしましょう」


小悪魔「って、ああ。そういえばベベさんは少し前にパチュリー様が戯れで描いた魔法陣から出現したのよね」

ベベルブブ「ああ、まあ……」

パチェ「だから詳しい内情は知らなくて当然ね。馴染んでたから気にせずに話を進めていたわ」

ベベルブブ「いやーお構いなく」

小悪魔「ベベさんも、何か気付いたことがあったら何でも言ってよ」

598: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:33:04.08 ID:Zj6GXCga0
ベベルブブ「何でも――あっ、そういえばコレ」

小悪魔「コレ……ってその手に持っているのは?」

パチェ「見せて頂戴」


スッ


パチェ(これは、レミィの靴だわ。 ……あれ?)

パチェ「これ、裏返っている」

ベベルブブ「……?」

小悪魔「裏返って? え、それはどういう意味で?」

パチェ「よく見て。靴の内側と外側が――」

小悪魔「ああ! 確かに“裏返って”います……まるで、初めからそうであったかのように」

ベベルブブ「ほ、本当だ!」

小悪魔「こんなイタズラをするなんて、お館様はさぞお怒りになって……!」


小悪魔「何でこんなことをしたの!?」

ベベルブブ「お、俺!? 違う! ただ拾っただけだ、本当に!」


パチェ「レミィに、美鈴。まさか……ね」

小悪魔「……パチュリー様?」

パチェ「それで、ベベは何処でこの靴を見つけたの?」

ベベルブブ「えーと、トイレの場所が判らなくて迷って……そこの『地下牢行き』っていう階段の途中で……」

パチェ(――地下牢(最深部)へ続く階段への入り口は、同じく地下にある大図書館の内部にある)

パチェ(だから、レミィが地下牢に行ったとしたら、私か小悪魔、あるいはあの浮遊霊の子やベベの誰かひとりくらいは気づいたはずよ)

パチェ(いくらここが広いと言えども、彼女が現れたらあの気質で気がつくわ)

パチェ(それ以前に、レミィがあえて地下牢に足を運ぶなら……私に声を掛けるに違いない)


小悪魔「それで、一番奥の牢屋(へや)にいる妹様には会えたの?」

ベベルブブ「妹様? ……いや、階段があまりに長いし……何だか怖くなって引き返してきたんだが」

599: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:38:35.87 ID:Zj6GXCga0
パチェ「ふたりとも、咲夜を呼んで来てくれない?」

パチェ「私は大図書館(ここ)で待っているから……なるべく急いでね」

小悪魔「わ、判りました!」

ベベルブブ「ラジャ! ……誰のことだろ」


タッ


パチェ(門の前で見つかったティーカップと本の頁との融合体、地下牢へ続く階段の中途で見つかったレミィの靴)

パチェ(咲夜なら、能力を使って出来ないことはないだろうけれど……そんなことをする理由が見当たらないわ)


パチェ(もしや)

パチェ(靴の内側と外側がひっくり返されたという現象――これが内側と外側の“境界”を操った所為だとすれば)


パチェ「……」


パチェ(けれども、あの大妖怪がこんな低次元なイタズラをするとは思えない)

パチェ(あ、でも第二次月面戦争での一件もあるし……全くないとは、言い切れないかな)


パチェ「少なくとも今、この紅魔館で――何らかの変調が生じていることは確か……よね?」




ズズズズズ……

600: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:47:26.49 ID:Zj6GXCga0

――(レミリアの寝室)――


ギィィ


小悪魔「この時間帯なら、メイド長様はおそらくこの部屋にいるはず」

ベベルブブ「えーと、ここって……お館様とかいうのの部屋なんじゃあ?」

小悪魔「深く考えないで、お守のようなものなの。あら? どうしたの、早くベベさんも入ったら」

ベベルブブ「いや……だ、だって……女性の寝室に……勝手に」


グイ


小悪魔「いいから」

ベベルブブ「お、邪魔しますっ」


小悪魔「……ああっ!」

ベベルブブ「!?」


バァァァァァァン!!


小悪魔「壁の掛け時計にナイフが突き刺さっているわ!」

ベベルブブ「時計が壊れている! 止まっている時計の針が刺す時間は……ほんのついさっきだ」

ベベルブブ「! その掛け時計の下には……割れて中身の零れたカップがあるようだが」


チラリ


小悪魔「見て。このベッド……触れてみるとまだ温もりが残ってる」

ベベルブブ「え? だから?」

小悪魔「ついさっきまでここでメイド長様が横になっていたってこと」

ベベルブブ「おお! だが、でも、ここはもともとその人の部屋じゃないのになんで断言――」

小悪魔「ベッドのへこみ具合で分かるわよ!」

601: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:50:28.91 ID:Zj6GXCga0
小悪魔(メイド長はいったいどこに? あのお方はおおよそ完璧瀟洒なお方)

小悪魔(無意味にこんなことをするはずはないよね……?)

小悪魔(でも、それでいてちょっぴり天然で抜けているところもあったり!)


ベベルブブ「カップは何かの拍子にテーブルから落ちたとして、あの壊された時計にはどーいう意味が」

小悪魔「メイド長様には時間を操る程度の能力があるの」

小悪魔「そのメイド長様が、敢えて自分で時計を破壊した? そしていなくなった……?」

ベベルブブ「時間を操る? そんなことできるのか!?」

小悪魔「ええ、まあ」

ベベルブブ「……」

ベベルブブ「……もしかして、そのひと。時間を操ったのにどうにもならずどこかに瞬間移動しちゃったとか?」

小悪魔「え?」

ベベルブブ「さっきの本の内容みたいに……で、あの壊れた掛け時計はダイイングメッセージみたいな……ってそんなことはないか! ははは」




\持ってかないでー!!!/




ベベルブブ「! 今の声は」

小悪魔「パチュリー様の……あ、しまった!」

小悪魔「パチュリー様は、魔力は膨大だけれど身体は人間よりも弱いのよ!」

小悪魔「貧血のせいで詠唱もままならないときもあるわ……もし、いきなり身に危険が及ぶようなことがあったら」


シュタッ!!

602: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 00:55:25.51 ID:Zj6GXCga0

――(図書館)――


タッ


小悪魔「パチュリー様!」




シ―――――――――ン




ベベルブブ「! ここに……この帽子は」

小悪魔「……パチュリー様の……もの」

ベベルブブ「どこかに……行った? いや、持ってかれてしまったってこと? どこかにさらわれた?」


小悪魔(……ちゃんと考えて動けばよかった。よく分からないことが起きているってのに、パチュリー様をひとり残して)


小悪魔(えっと……最初に姿が見えなくなったのは……たぶん靴を裏返されたお館様?)

小悪魔(次に消えてしまったのは……メイド長様?)

小悪魔(そしてたった今……パチュリー様まで)


ベベルブブ「と、とにかくまだ近くにいるかも知れん! 探すんだ!」


クルッ タッ




小悪魔(また、誰かがいなくなってしまう? 妹様は? 門番さんは?)

小悪魔(もしかして……残っているのはもう……私とベベさんだけ!?)


ズズズズズ……

603: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:01:52.46 ID:Zj6GXCga0
小悪魔「!? ひゃああ!」


ォオオオオオオオオ


小悪魔(空間に亀裂が!? 攻撃――ダメ間にあわない!)

小悪魔(引きずり込まれる!)


バッ


ベベルブブ「ふんぬぅ!!!!」


グォォォォォ!!


小悪魔「! ベベさん」


ベベルブブ「おおおお開けぇ!!」


グニィィィィィィ!!




魔物「ォオオオ!?」




小悪魔「わぁぁ何かが中に!!?」


グイ! ――ドサリッ


ベベルブブ「――痛つつ、大丈夫か」

小悪魔「どうも……」




魔物「――」


ズズズズズ……


小悪魔「――あ、裂け目が! 裂け目が閉じちゃうよ!」

ベベルブブ「ま、待ちやが――」




ヒュン! ――ガシッ


魔物「ォオオオ!?」

美鈴「あんたが、不法侵入者ね!!」

605: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:09:11.93 ID:Zj6GXCga0
小悪魔・ベベルブブ「「!!」」


美鈴「招かれざる客は、速やかにお帰りください――ただし、お嬢様達を返してもらってから」


ドシューン!!

魔物「ァ”ア” ア” ア” ア”!!」




ギュォォオオオオオオオオォォォォォォン!!!!




――ドサッ! ――ドサッ!



ベベルブブ「ふがっ!?」

咲夜「あら、早くも無事に帰還できたようですね。お嬢様」

レミリア「えー!? もうちょっとあの異次元空間に漂ってた無数の者たちと意見交換したかったっていうのに」

咲夜「しかし、短い間でもよかったでしょ、お嬢様。いい余興になったじゃありませんか」

レミリア「そうね、多少はね――って誰あんた? 私の下で伸びてんじゃないわよ」

ベベルブブ「すみません……」

小悪魔「メイド長様! お館様!」

小悪魔「あれ、……パチュリー様は……?」


パチェ「こっちよ」

赤い怪少女「……」




ズズズ……シ―――――――――――――――――――――ン

606: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:15:58.87 ID:Zj6GXCga0
パチェ(異空間への扉が閉じた。これで無事撃退できたのかは……判断のしようがないけれど)




小悪魔「え? あれ? パチュリー様もあの化物に引きずり込まれたんじゃ?」

パチェ「ええ、引きずり込まれそうになったわ。本まで持っていかれそうになったからつい大声で叫んじゃった」

ベベルブブ「あー、そっちの意味で『持っていかないで』だったのか……」


ヒョイ


パチェ「ほら、脱げちゃった帽子だって裏返ってはないでしょう?」

小悪魔「あ、そういえば……」




レミリア「ちょっと咲夜、何か悪魔の着ぐるみみたいなのがいるわよ?」

咲夜「悪魔ならお嬢様もおおよそ該当しますよ」




パチェ「でも、取り込まれそうになる一歩手前のところでね――この子が助けてくれたの」

パチェ「この子自身が作り出した本の中の異空間に私を招き入れるって形で」

赤い怪少女「……」

小悪魔「この浮遊霊さんが、パチュリー様を助けてくれたので?」

美鈴「そして、その本の中の異空間に私も呼びこまれたんですよ――廃洋館前の野外コンサート会場から、唐突に」

美鈴「で、その後再びお嬢様の寝室に放置された本の中から出してもらって――図書館(ここ)に駆け付けたってわけなんです」

ベベルブブ「何でそんなに都合よく事が運んで……? ってお前が門番とやらか!」


レミリア「咲夜ー、話についていけないわ」

咲夜「仕方ないでしょう、私たちは異空間にいたのだから」

607: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:20:30.12 ID:Zj6GXCga0
スッ


レミリア「えっ」

赤い怪少女「これ」

咲夜「あら、これは」

レミリア「……私が寝室(へや)に放りだしていた」


パチェ「この子はどうもね、ある特定の本を読んだことがある人に限って、その本の中の異空間に取り込めるらしいの」

美鈴「だから、その本を読んだことのあったパチュリー様と、私が続けざまに取り込まれて、本の中で館の状況を確認し」

ベベルブブ「さっき言った通り再び中から出してもらい、あの化物を潰したってことか!」




赤い怪少女「……」


ヒョイ


レミリア「ふふ、変な所で繋がってしまうものなのね。本はちゃんと大事に扱うわ――たとえ漫画であってもね」

608: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:29:48.48 ID:Zj6GXCga0
小悪魔「浮遊霊さん、……どうも、ご苦労さまです」


ペコリ


赤い怪少女「……」

パチェ「今度こそ、またね」


赤い怪少女「――」




ス――――――――




パチェ(『フィラデルフィア実験』の数項が、あの裂け目によって欠損してしまったことに怒って、また舞い戻って来てくれたのか)

パチェ(それとも……?)

パチェ(あ、そもそも最初の融合体は、犯人があの裂け目だとは断定できないわね。レミィや咲夜の場合と違って)




パチェ(結局のところ――あれは一体何だったのか。スキマ妖怪は唯一無二の存在だというのに……他の何者か……)

パチェ(同じような種族が……この世界のどこかに潜んでいたということ?)




小悪魔「メイド長様のダイイングメッセージ――ちょっぴりですが読み取ることができましたよ!」

咲夜「メッセージ? そんなもの残したっけ? ……転寝をして醒めたらもう異空間にいたから。それと死んでないわよ」

小悪魔「え、じゃあ……あの寝室の掛け時計に刺さったナイフは何処から飛んで……」

咲夜「掛け時計に……寝ぼけて投げちゃったのかな、後で片付けないと」

609: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:35:01.07 ID:Zj6GXCga0
ベベルブブ「まあ、あれだ。みんな無事で良かったな」

美鈴「そうですねぇ、見知らぬデーモンさん。いえ、リアルバイキンマンさんですかね?」


パチェ「それにしてもね、本当によかったわ」

レミリア「何が?」

パチェ「美鈴があの化物にダメージを与えたところで……無事に貴女たちが還って来れるなんて確証はなかったというのに」


レミリア「これが運命ってものよ。紅魔館(わたしたち)はね――見えない糸で結ばれているの」

パチェ「……」


レミリア「その糸を手繰っていけば、自ずと貴女(パチェ)たちのもとに還れると思っていた」

レミリア「その糸の名前は――運命の紅い糸。私たちはそんな見えない絆(つながり)によって結ばれているってことなのよ。ね?」

パチェ「――ええ、そういうことなのかもね」

610: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:40:31.14 ID:Zj6GXCga0

――(地下牢)――




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




フラン「もうこの遊び道具も飽きちゃった。いらない」


\BOMB/ 


フラン「……」

フラン「また聞こえるわ」

フラン「レミリアお姉様達の、楽しそうな笑い声」

フラン「でも、私はそこに加えてもらえないのよね。いつだって私は仲間外れ」


フラン「……」


フラン「霊夢さん……魔理沙さん……あのふたりと弾幕ごっこをした時」

フラン「あの時が、生れてこの方……一番楽しかったひとときかもしれない」

フラン「また、お姉様たち(あいつら)が異変を起こしてくれたら――」

フラン「ううん、それじゃ前と同じだわ。だったら、私が自分で異変を起こしたら――」

フラン「今度こそ、外に出られるかもしれない。空を自由に飛べるのかもしれない。ジュース以外の人間を、他にも見られるかも知れないの」

フラン「でも、でられない。あいつがだしてくれないからよ。あいつの本の虫(ともだち)がジャマをするからよ」

フラン「私はこれからも永遠に籠の鳥なのかしら?」


フラン「……誰か」

フラン「この牢獄(こうまかん)を壊して、私の知らない世界を見せて欲しい」


フラン「そして――いつまでも私と一緒に遊んでくれる、壊れない玩具(なかま)が欲しいな」

611: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:45:20.10 ID:Zj6GXCga0

――霧の湖(廃洋館側)――


雷鼓「それっ!」


ドンドコドンドン ドンドコドンドン


ルナサ・メルラン・リリカ「「「――♪」」」




速魚&わかさぎ姫「「 あのね Q太郎はね~♪ 頭に毛が三本しかないんだよ~♪ 」」




大妖精「あれ、さっき誰か消えなかった?」

チルノ「ん? あんた誰だっけ」

八橋「わーお、やってるねぇ」

弁々「この程度の手ぬるい音楽じゃだめだ。私も混ぜてー」


グツグツグツ


ミスティア(門番はとうとう連れ戻されちゃったか、あの人間離れした人間(メイド)に)

ミスティア「ほらほらー、屋根はないけどおでん屋の開店だよー」


ルーミア「大将ー、人肉団子ひとつー」

影狼「公魚と人魚のつみれをくださいな」

リグル「あれほど落ち込んでいたのに……現金なものね」


ミスティア「店も道具も形あるものはいつかは壊れるものよ――でも、壊れたらまた直せばいいの」


ドンドコドンドン ドンドコドンドン

612: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:51:00.38 ID:Zj6GXCga0

――妖怪の山(山麓・間欠泉地下センターの温泉)――




カポーン ビュゥ~~




つらら「岩天狗が触(や)られたと聞いてやってきたけど、……長閑な山の神もいたものだわ」

諏訪子「まあ、こっちもあんまり面倒な争いごとを起こしたくはないもの」

ぬえ「念のために聞いておくけど、お前はぬらりひょんの孫の知り合い?」

つらら「? 私はゆきめの幼馴染さ。まさか、ゆきめもこの山に来てたなんて……不思議な縁」

諏訪子「あの雪女に会いたいならこの先の地底にいるよ。エレベーターで下まで降りられるから」

つらら「――いいや、もう会わないよ。会わない方がいいんだ」

諏訪子「どうしてだよ。山の掟を破った裏切り者だから? おたくの山の神様は随分と頭がお固いのか」

つらら「……」

諏訪子「まあ、口には出せないだろうけど。外界を諦めた神(わたし)が口を挟むようなことでもないね」


コトリ


ぬえ「目で見たものを氷の彫刻で模写する程度の能力といったところか。よくできた氷の盥だわ」

つらら「あはは、そりゃどーも」

613: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/28(木) 01:53:46.26 ID:Zj6GXCga0
……ザバァァ


つらら「……じゃ、私は帰るね。それで神様は蛙ね」

諏訪子「あーうん」


コォォォォォォォ


諏訪氷「ゲコゲコ」

つらら「置き土産に氷の彫刻(フィギュア)を差し上げる――偶像崇拝にでも使って頂戴」

諏訪子「ちょっと馬鹿にされた気がするけどまあ許す。貴女まだいとけない子どものようだし」

つらら「ゆきめに一言伝えておいて。自分の運命は自分で切り開けって」


つつら「そして――せいぜい幸せになりなよ。ってね」


ぬえ「……」

諏訪子「判ったよ。ちゃんと、伝えておくわ」




ヒュォォォォォォォォォォォ ――スゥ  




      (第3.5話:そして誰もいなくなるか?――七曜の魔女VS異次元の魔物の巻・終)

626: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:16:25.52 ID:Lug88hJQ0
□□―主要な登場人物などの現在の居場所―□ □




<幻想郷における時間帯:未明(午前1時前後)>




【地底】


○旧都(妖怪の山側の縦穴に近いほう)
→玉藻・ゆきめ・早苗、勇儀・パルスィ




○地霊殿周辺(博麗神社の裏山にある、間欠泉噴出で沸いた穴側のほうへ移動中)
→ぬ~べ~&華扇(茨華仙)
→お燐
→広・郷子・美樹・ヤマメ・こいし・お空




○地霊殿
→さとり

627: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:19:08.54 ID:Lug88hJQ0
【地上】


●博麗神社 (東縁の神社)
→霊夢・貧乏神・針妙丸、天子&絶鬼




●妖怪の山 (山と言えばだいたいこの山のこと)
→守矢神社…神奈子、ケサランパサラン
→(全域警戒中)…文ら天狗たち
→山麓の温泉…諏訪子・ぬえ
→玄武の沢…にとり、弥々子河童




●紅魔館(妖怪の山の麓、霧の湖の湖畔にある洋館)
→パチュリー・ベベルブブ、フランドールら




●廃洋館(霧の湖の湖畔、紅魔館からは離れた方角)
→早魚・わかさぎ姫・楽器の付喪神ら




●魔法の森(森と言えばだいたいこの森)
→アリス




●人間の里 (警戒継続中)
→魔理沙、小町、慧音・克也&まこと、聖ら命蓮寺組




●命蓮寺(待機中)
→星・ナズーリン




●迷いの竹林(どこかに永遠亭あり)
→紅妹・輝夜




【幻想郷のどこか】
→萃香
→藍・橙
→正邪

628: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:22:30.72 ID:Lug88hJQ0
>>627 すいません変換ミスです。早魚→速魚

―――――――――

【童守町】
→リツコ先生他

―――――――――

<時間軸:??>



【人間界?のどこか】
→蓮子・メリー
→めぐみ(メリーさん)




【所在不明】
→異次元の魔物

629: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:25:43.69 ID:Lug88hJQ0

――地底(某所)――


ソワソワ


龍「……っ」

くだ狐「クゥ……」


オロオロ


ドクンドクンドクン


ぬ~べ~「い、今抜き取りますから……!」

華扇「ま、待って! 今は、無理に動かさない方がいい……と思うわ」


ぬ~べ~(まずいぞ……俺の左腕とこのひとの無形の右腕が完全に繋がってしまった)

ぬ~べ~(お互い腕を共有している状態……)

ぬ~べ~(俺の意図しない鬼の手の暴走――その引き金はやはりこのひとが同じ……だからか)

ぬ~べ~(いや、それだけではないな。さっき勇儀さんと手合わせしたときの感覚に近いぞ)

ぬ~べ~(そうか)

ぬ~べ~(このひとの強い妖気を吸収して更に力を蓄え――俺と美奈子先生による二重封印から逃れようとしているのか)


華扇「もう一度確認しますよ――これは、人間(あなた)の意思によるものでは無いんですよね?」

630: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:32:46.60 ID:Lug88hJQ0
ぬ~べ~「! それは勿論」

ぬ~べ~「口で言わなくとも、あなたにはもう分かったはず」

ぬ~べ~「あなたの……かつてもがれたであろう右腕の断面と鬼の手が接続しているんだ」


華扇「……!」


ぬ~べ~「その断面こそ、あなたにとっては急所であり、また最も気に掛けている……即ち敏感な部位であるはずだ」

ぬ~べ~「なぜなら、あなたの右腕は……伝承通りなら源頼光に仕えた“頼光四天王”の筆頭・渡辺綱(わたなべのつな)に」


華扇「言わないで」


ぬ~べ~「……」


華扇「私は茨華仙という号を名乗っています――説教臭いだなんて言われちゃう仙人です」


ぬ~べ~「仙人……」


華扇「誰しも知られたくないことのひとつやふたつ、あるものでしょう?」

華扇「つまり、隠(おん)にしておきたいことがね。もっとも、貴方には……腕を共有することになって筒抜けになってしまったのかしら?」


ぬ~べ~「……」


華扇「逆に……貴方が周りの人達にあまり知られたくないこともね」


ぬ~べ~「……そうですか」


華扇「でも、それだけではないみたい。貴方には、素養もあるようで。粗暴なことをしなくても……腰を据えて話をするべきだった」


ぬ~べ~「それは、まあいいでしょう。こうなってしまったからには仕方ない」

ぬ~べ~「素養って言われると聞こえはいいが……まあ心霊現象オタクみたいなもので」


華扇「民俗学を学んでおられたり?」


ぬ~べ~「……同じことを、土蜘蛛の少女からも言われましたよ。黒谷ヤマメって子からね」

631: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:35:16.32 ID:Lug88hJQ0
華扇「土蜘蛛……」


ぬ~べ~「幻想郷に来て、最初に遇った“話の通じる妖怪”です。土蜘蛛というとあなたにも縁がありますね」


華扇「……さあね。私のことはとりあえず置いておいて、これからどうするか考えましょう」

華扇「貴方、お名前は?」


ぬ~べ~「鵺野鳴介――童守小学校5年3組の担任で、ごく普通の霊能力教師」

ぬ~べ~「あだ名は、ぬ~べ~だ!」


華扇「ぬ~べ~、ですか。変なあだ名」


ぬ~べ~「えー、そんなに変ですか? あ、もう一度言いますけどぬ~ぼ~ではないですよ」


華扇「ぬ~ぼ~?」


ぬ~べ~「あ、いえ……深くはつっこまないでください。あははは……」


華扇「はあ……」


ぬ~べ~「いやー、それにしても、幻想郷には美人で魅力的な方々が大勢いらっしゃっていいですね~」

ぬ~べ~「僕いっそ、このまま移住しちゃおうかなーなんて!」


華扇「……ふふ。ご冗談を、そんな気持ち更々ないんでしょう?」

632: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:42:44.51 ID:Lug88hJQ0
ぬ~べ~「……まあ、残念ながら実際冗談になってしまう」

ぬ~べ~「だからこそ、僕になら隠しておきたいことでも何でも話してくれていいんですよ?」

ぬ~べ~「外界に帰ったら、再び幻想郷に来ることはないだろうから」

ぬ~べ~「あなたの秘密がこの世界で暴露されることはない。それならば、あなたが困ることはないはずだ」


華扇「……もしかして口説いてるんですか?」


ぬ~べ~「え? いやいやそんなつもりはないですよ! もし、誰にも秘密を話せなくて心にしこりがあるのならーなんて」

ぬ~べ~「すいません、とんだお節介を……」


華扇「――そうね、お節介だけれど」

華扇「もし時間が許すならば、後で盃を交わしながら古い昔話でも……しましょうか」


ぬ~べ~「……そうですか」


華扇(貴方が幻想郷を脅かすような存在ではないということは、腕を通して、そして貴方の人柄に接してよく分かりました)

華扇(『鬼神に横道なき物を』――この一節、ご存じでしょうね)


華扇(ちょっと私の主観が入り込んでいますが。貴方は信用してもいい人間……なのかも知れない)

ぬ~べ~(そうですか。それはありがたい。俺は、生徒たちや――)

ぬ~べ~(――これまでにお世話になった幻想郷の住人たちの安全を守ることにしか)

ぬ~べ~(この鬼の手を使わない。だからこそ)

華扇(これ以上、暴走したりしないように歯止めをかけないといけない……ということね?)

633: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:46:09.01 ID:Lug88hJQ0
ドクンドクンドクンドクン


ぬ~べ~「……あ、あの、そのためにまずは、とりあえずこの態勢を何とかしないと」

華扇「あ、そうよね! もし誰かに見られたら……あらぬ勘違いをされて――」




ジ――――――――――――


お燐「……」




ぬ~べ~「お、お燐くん!? いつからそこにいたんだ」

華扇「貴女は地霊殿の……ってそれより、何よその目! 貴女何かを勘違いして――」




お燐「あらあら、お兄さん。急にペットを放して来た道を戻っていくからどうしたのかと思ったら」

お燐「逢い引きだったのか。まったく、これだから人間は節操がないねぇ……猫でさえ発情期は一定期間に限られるってのに」




ぬ~べ~「って違うぞ!!」

華扇「絵にかいたような勘違いをしないでくれないかしら!」




ザザザザッ!!


こいし「あー! せんせー見っけー!」

お燐「あら、こいし様。それにお空も……ん、他にもゾロゾロと……?」

美樹「きゃー! ヤダー!? ぬ~べ~が見知らぬ女を押し倒して馬乗りになってるわよ!!」

634: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:51:07.74 ID:Lug88hJQ0
ぬ~べ~「お、お前ら……どうしてここに!? ってだから違う、勘違いをするんじゃない!」

華扇「私たちは今、安易に動きづらい事情があって……!」




お空「あのふたり、フュージョン(結合)しているみたいだわ(左腕と右腕が)」

龍「……ゴクリ」

くだ狐「……ゴクリ」

広「ま、マジで!? ちょっとどいてくれ~よく見えなゴフッ!?」

郷子「見るなぁー!!」

郷子「もうぬ~べ~サイッテイ! こんなところで! しかも初対面のひとなんでしょ!?」

ヤマメ「ヤるときゃヤると聞いてたけど……本当に手が早いんだねぇ」


美樹「いや、意外と女のほうが先に誘惑したのかも! ピンク系統の髪は淫乱って法則があるし!」

お燐「ああ確かに。普段人格者ぶっている輩ほど、実のところは欲求不満だったりとか」

こいし「大丈夫よふたりとも、私たちのことは気にせず続きをやっていていいわ。終わるまで待っているから」

635: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:54:37.46 ID:Lug88hJQ0
ぬ~べ~「ああもういい……。誤解は後でとくから君たちは邪魔をせず――」


メキメキメキメキメキ!!!!


ぬ~べ~「!?」

華扇「ッ……いやぁぁ! ダメっ……やめて……!!」

ぬ~べ~「う、ぐおおお!!?」




ブチィィィィィ!! ドッ!!




お燐「にゃっ!?」

ぬ~べ~「く……ぅ……」


広「!? 先生が急にふっ飛ばされて――」

美樹「今度はたぶん火車っぽいネコミミ女に覆いかぶさって! もうハレンチにもほどが」

郷子「違うわ美樹! み、見て……ぬ~べ~の手首から先が……!!」

ヤマメ「無くなっている!? ちょっと待って、じゃ、あの鬼の手は一体どうなって!?」

636: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 19:58:13.77 ID:Lug88hJQ0
グィィィィィィィィ!!


華扇「う、あああああっ!!!」




こいし「見て。あの鬼仙……両手とも左手になっているよ」

お空「そして右腕側の左手が膨張している? どういうことなの?」

広「ま、まずいぞアレ!! ぬ~べ~の鬼の手があっちの女の人のほうにくっついちまってる!!」

郷子「え、これって……何が起きて……」

ヤマメ「おそらく左手に封じ込められていた鬼が、何らかのきっかけによって先生の施した封印を弾き返して片腕仙人の右腕に取り憑き――」


ぬ~べ~「そう……更に茨華仙さんの妖力を貪って力を得、完全体としての姿に戻ろうとしているんだ……」

ぬ~べ~「このままだと大変なことに……!!」


ムニュ


お燐「お兄さん……どさくさに紛れて右手で私のどこをまさぐって?」

ぬ~べ~「ん、どうかしたか!? とにかく今は鬼(ヤツ)を」


ゴォォォォォ


ぬ~べ~「アチチチチーッ!?」

美樹「意識的なのか無意識的なのか判ったもんじゃないわね」

美樹「とか言ってる間にぃ~! もう完全体ってのが現れちゃったわよー!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


637: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 20:00:55.14 ID:Lug88hJQ0
覇鬼「・・・・・・・・・・・・」


ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ




ドサッ


華扇「……はぁ……はぁ」

ヤマメ「……大丈夫かい?」

華扇(こ、これが……彼の左手に封ぜられていたという……鬼……)

ヤマメ(とうとう解き放たれてしまったのか……)

美樹(このピンクの人の頭のお団子……無性に気になるわね。どさくさに紛れてはぐっちゃおうか)




龍・くだ狐「「!!」」


ザッ


華扇「ま、待ちなさい! あなた達の力じゃ……!!」

638: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 20:04:35.58 ID:Lug88hJQ0
覇鬼「・・・・・・」




バシッ   パァァァァァァン!!




ドサッ……ガクリ


龍・くだ狐「「――」」



広「ぬ~べ~のくだ狐と、さっきの見た龍じゃねぇかこっちは!」

郷子「二匹とも叩き落とされちゃった……あの鬼の腕一振りで……それほどの力を……」


こいし「あの鬼もせんせーのペットなの?」

美樹「ペットとかそんな生易しいもんじゃ……!」

ヤマメ「もうこの凄まじいオーラで分かるよ。この鬼……とてつもなく強い力を秘めている」

ぬ~べ~「あ、ああ……その通りだ……ヤマメくん」


ぬ~べ~(あいつの中には……まだ美奈子先生の魂が……、必死で力を抑えようとしているはずだ)

ぬ~べ~(まだだ! まだあいつは全開ではないはずだ!)

ぬ~べ~(早く……もう一度……俺の力を加えて……封印を……!)

639: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/31(日) 20:06:04.06 ID:Lug88hJQ0
覇鬼「・・・・・・」

覇鬼「ここはどこだうが?」




ズコ――――――――――――――――――――――――




こいし「? 皆どうしてひっくり返って……何かの遊び?」


ぬ~べ~「お、お前なぁー!」

華扇「ここが幻想郷だってことくらいは話の流れで理解できるでしょ普通はー!」

お燐「もしかしてこのおっきな鬼のお兄さん……」


お空「ちょっと――おバカさんなのね」


                                     
                                      (つづく)

654: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 00:40:07.80 ID:xlVR2cqH0
覇鬼「お前たち・・・・・・人間?」

覇鬼「人間・・・・・・皆殺しだ」




こいし「安心して、私たちは妖怪よ。人間はそっちのせんせーと子ども3人だけだわ」

広「っておい!? それ答えるなよー!」

美樹「ちょっとぉ! あんた本当に私らの味方なんでしょうね!?」

お燐「まずいよ、こいつ思考力はともかく見た目通り凶暴だ! 早く何とかしなきゃ!」




お空「まかせてお燐――私がペタフレアで」


コォォォオオオオオオオオオオォォォオオオオオオオォォォォォォオオオオオオオォォォォ……




ぬ~べ~「む! 何だこの娘の纏う膨大なエネルギーは――ただの妖怪にしては」

ヤマメ「ただの妖怪ではないんだよね。こちらさん、いろいろあって八咫烏の神霊を心身に宿しているんだ」

ぬ~べ~「何だって!? 日本書記によればあの天照大神の神使とされる――」

華扇「暢気にそういう話をしている場合じゃ――」

郷子(あれ、このままだと……私たちまで巻き添えになってしまうんじゃ……)

655: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 00:43:59.78 ID:xlVR2cqH0
覇鬼「ん?」

覇鬼「あの向こうに大きな建物(おもちゃ)がー」


ソワソワ




こいし「……」

こいし「お空、攻撃待った」




お空「――……え、こいし様……?」


シュゥゥゥー




こいし「……」


タッ


郷子「あ……こいしちゃん! ダメよ近づいたら……危ないわ!」

656: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 00:46:18.82 ID:xlVR2cqH0
こいし「ねぇねぇ、鬼さん。あの地霊殿(たてもの)はね。私のおうちなのよ」

覇鬼「・・・・・・」

こいし「ちょっと、寄っていかない? ――特別に招待するわ」

こいし「うふふ。もう一度、私と一緒に遊びましょ! きっと楽しいわ」

覇鬼「遊・・・・・・ぶ・・・・・・」




ぬ~べ~「よせ、離れろ!!」

華扇「殺されるわよ!」




ぴょーん! ぴょーん!! ばきー!!! ぐしゃー!!!!




覇鬼「うがうが、遊ぶうが!」

こいし「こっちこっちー!」




お燐「……ああ、旧都の建物群が……玩具みたいに壊されて」

ぬ~べ~「あいつ子どもか……。ッ……強引に飛びだされて……しまったな……」

657: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 00:56:36.84 ID:xlVR2cqH0
華扇「大丈夫? 左腕を差し出して、私の包帯で応急処置をしますから」


ヒュルンッ


ぬ~べ~「すみません……でも俺は本来の左手はもう失っていて。それより、あなたの方こそ……大丈夫ですか?」

華扇「ご心配なく、私だって伊達にオ……仙人していませんよ」


グッ


華扇(むしろ、私自身の力であの鬼を抑えつけられていたら……こんな事態には……!)

ぬ~べ~(はは……何て気持ちのこもった手当なんだ。気持ちがこもり過ぎて締め付けがきついぞっ……)


美樹「な、何はともあれ……向こうに行っちゃったし。ひと呼吸はおけるわね」

ヤマメ「もしかすると……あの子、貴方たちを危険な鬼から引き離すために」

広「! あのちょっと抜けてる鬼を誘い出してくれたってのか!」

郷子「え、でも。こいしちゃんっていつも無意識なんでしょ? 心の中は……」


お空「空っぽかもしれないわ。けれどきっとね、貴方たちのことを守りたかったのよ――無意識のうちに」


ヤマメ「さあさ、今のうちに作戦を練るんだ。あの鬼が地底にいるうちに何とかしないと……」

ぬ~べ~「ああ! 地上(うえ)に上がったりしたら……ますます大変なことになるだろうからな!」

お燐(うーん、その前に地霊殿が大変なことになるんじゃ……。さとり様、どうかご無事で)

658: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:01:07.86 ID:xlVR2cqH0

――地底(旧都の酒場)――


勇儀「悪い悪い! 素で忘れてたよ、パルスィを呼ぶの」

勇儀「次からは気を付けるから。だから、もう愚痴るなって」

パルスィ「ええ。お酒の席のことはもう愚痴らないから」

パルスィ「聞いてよ、そこの無骨な連中のことを! 酷いんだよ、私を寄ってたかって」

勇儀「ああ、まあ後でゆっくりとね」


ゆきめ「感じるわ……この強烈な妖気は……」

玉藻「念のためために聞きますが、あなたが発している妖気では……ないですよね」

勇儀「当然。力があってもそれは制御しないとね。こんなにあからさまに力を振りかざそうとしているヤツは」

早苗「幻想郷の者の仕業じゃない……ってことなのね?」


ゆきめ「まさかっ……」

玉藻「そのまさか……かも知れないな」

早苗「……まさかっ!(ええっと、鵺野先生って人が叛乱を起こしたってことですよね?)」

パルスィ「……」

勇儀「地底でも異変発生……か。こりゃあ、大変なことになったもんだ」


勇儀(『まだその時ではない』とは言ったが、もうその時が来てしまったってのかい?)

勇儀(一寸先は闇とはよくいったものだよ。――でも、もう一寸先には、案外光があるかもしれないね)

659: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:05:39.08 ID:xlVR2cqH0

――地霊殿――


さとり(……何かしら。外が妙に騒がしいわね)

さとり(不穏な気配を感じるわ……地上からも地底からも)




\ガシャーン!!/




さとり(……。侵入者? まさかあの巫女あたりが……お燐の責任を追及しに来たというの?)




\ズシーン……ズシーン……/




さとり(エントランスの方から。随分足音が響くわね……侵入者は肥満体形かしら)

さとり「まったく――」


ガラッ ――タッ

660: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:07:34.06 ID:xlVR2cqH0

――


さとり「誰、こんな時間に何の用……、……で……」




こいし「見て見てー、鬼さんが遊びに来たよ!」

覇鬼「ウガアアアアアアッ!!」




さとり「……」

さとり「い、いらっしゃい……そう、ふたりで……『遊びに来た』の……」

さとり「でも……貴方達にはここは狭いと思うから……」

さとり「ね、だからね……外で……遊んできたら?」

661: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:13:00.75 ID:xlVR2cqH0
覇鬼「おー床が光ってる!」

こいし「床がステンドグラスになっているの、綺麗でしょ」

覇鬼「何だが熱いうが!」

こいし「床暖房になっているのよ。この季節じゃちょっと暑苦しいけど」

こいし「芋虫ゴロゴロしましょ!」

覇鬼「ゴロゴロ」

こいし「こうやってー」


コロコロコロコロ


覇鬼「こうかー」


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ パリーンパリーンパリーン




さとり「……」




こいし「あはは!」


コロコロコロコロ


覇鬼「うがははは!」


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ ドガッバキッグシャズガーン




こいし「向こうに中庭があるのよ。そこにおっきい穴があるの、見に行きましょ?」

覇鬼「行く行くっ!」




ぴょーんぴょーん! がしゃーん! ど~~~ん!




さとり「やめて……」

662: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:15:48.66 ID:xlVR2cqH0
こいし「?」

覇鬼「?」




さとり「……もうやめてよ……壊れちゃう……」

さとり「私の砦が……私の最後の隠れ家が……」

さとり「私の……唯一の……拠り所が……っ……」


ピタリ


こいし「……。お姉ちゃん、泣いてるの?」

覇鬼「? おねえちゃん。お前、妹……うが?」

こいし「うん。そっちがさとりお姉ちゃん――私のたったひとりの、大切なお姉ちゃん」

覇鬼「……」


ピクッ


覇鬼「呼んでる」

覇鬼「弟(ゼッキ)が……呼んでる」

663: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:20:20.01 ID:xlVR2cqH0
こいし「ごめんね。私、お姉ちゃんが悲しい顔をしてるとこ……見たくない」

さとり「……こいし」


こいし「だから。遊びの続きはまた今度にしましょ?」

覇鬼「わかった」




ビューン!!     ドゴーッ!! 




こいし「ばいばーい」

こいし「またね」


スゥ――――


さとり「……」

さとり(玄関やら、屋根やら、床やら何やら、いろいろと修繕しなきゃいけなさそうね)


さとり(こいし、貴女がそんなことを口にするなんて……思ってもみなかった)

さとり(また気が向いたら)

さとり(いつでも……うちに寄りなさいよね?)




シ―――――――――――――――――――――ン




さとり「……ごくり」


さとり(こいしが連れてきた……あの巨大な鬼の心の中には)

さとり(破壊の化身となり得る凶暴性と……無邪気な幼児性が常に同居している)

さとり(どちらにも転がり得るあの不安定さ……)

さとり(誰かがちゃんと制御しなければ、何もかもが無に帰してしまうわ)

664: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:35:53.11 ID:xlVR2cqH0

――紅魔館(応接室)――


レミリア「なるほど、こいつ外界から召喚されてきたわけね」

ベベルブブ「ええ、まあ」

咲夜「悪魔の仮契約を交わしたものの本契約には躊躇して文通……」

小悪魔「もー、まどろっこしいですよね。男なら男らしくしないと」

ベベルブブ「だ、だって……今まで800年間の女性に契約を断られ続けて来て……それで……」

咲夜「あら。つまり貴方はド――」

ベベルブブ「う、うううっ……!」

美鈴「そう落ち込まないでいいじゃないですか。もう相手ができたのならそれで」


パチェ「それで、どうするのレミィ」

レミリア「ん、何を?」

パチェ「ベベのような無害な悪魔や、本が好きなだけの無害な浮遊霊がやってくるならまだしも」

レミリア「さっきのような得体の知れないのが現れたらどうするか……ってことね。いい案があるわ」

レミリア「この紅魔館を魔術工房と化してあらゆる侵入者を歓待してあげるのよ――まずは無数のホフゴブリンをその辺に配置して」

パチェ(……本当に大丈夫かしら)



                                          (つづく)

675: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 22:57:16.93 ID:hy0m+nz/0

――地底(旧都)――


お空「あら、そういえば……私は何のためにここまで来たのだったかしら」

ヤマメ「忘れるのが早いよ。子どもらを守りつつ地霊殿を目指して、場合によっちゃ地上に出て緊急事態(いへん)対応に手を貸そうかってことよ」

お空「え、ちょっと待って……もう一度言ってくれない?」

お燐「ともかく、あたいたちは先に地霊殿に! さとり様やこいし様のことが心配だ」

ヤマメ「私も行くよ。子どもらのことは、貴方たち2人なら……」


ぬ~べ~「ああ、任せてくれ――もともと俺の生徒たちなんだ。ここまで守ってきてくれて助かったよ」


ヤマメ「たいした手間じゃないさ。じゃあね、また後で、落ち合おう」


ザッ!


郷子「茨華仙さんは……お身体のほう大丈夫ですか?」

華扇「ええ、大丈夫よ。百薬枡(おくすり)をいつも携行してるから、怪我も次期に治癒するわ」

広「薬なのか? 酒を注いで呑んだだけに見えたけど」

華扇「この一升枡自体が特殊な力を持っていてね。それにお酒そのものだって良薬なのよ」

美樹「これって、ぬ~べ~が呑んでも効くの?」

ぬ~べ~「いや、そこまでの心配はいらないぞ。俺は車に轢かれようが炎で焼かれようが氷漬けにされようが簡単には死なん!」

676: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:04:28.33 ID:hy0m+nz/0
ぬ~べ~「裂傷した左腕にも茨華仙さんの治癒力を少し分けてもらったから……自分の霊力と合わせて、とりあえずは使いものになる」


郷子「お燐さんがどこからか取って来た誰かの手の骨をヤマメちゃんの糸で包んで丈夫にして――」

美樹「――腕に巻いた包帯を伸ばしてくるんで手首に固定、で義手化。んでもってそれを霊力で動かす……と」

広「鬼の手がなくても、やっぱ半分以上妖怪みたいなもんだな」


ぬ~べ~(だが、力を蓄えたあいつを再度封印するには、あの時以上に骨が折れそうだ)

ぬ~べ~(幻想郷の妖怪達(みな)の力を……貸してもらわざるを得ないかも知れない……)

華扇「半分妖怪……ね。この百薬枡は人間でも効果を発揮する。怪我の回復に加え、怪力を発揮できるほどの力が漲ってくるわ」


広「! それ本当? だったらぬ~べ~先生も呑めば」


華扇「ただし、副作用があるのよね。呑んだ者は一時的にガサツで乱暴な鬼の如き性格となり……肉体は鬼のそれに近づいていく……」

ぬ~べ~「鬼の魂魄に……」


美樹「いいじゃん、もともと鬼の手持ってたんだし」

広「そうだよ先生、ここいらでワンランクパワーアップしないとこの先きつそうだぞ」


ぬ~べ~「簡単に言ってくれるなあ……お前たちは」


郷子「あれ、ということはその枡でお酒を呑んでる茨華仙さんは……」


華扇「はいはい、それ以上詮索されると流石に困るからやめてね(でもまあ、部分的な記憶消去くらいなら……)」




ザッザッザッ!!!



「やっっっと見つけたわー!!!」

677: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:15:54.51 ID:hy0m+nz/0
広「え? ってああ!」

郷子「ゆきめさん! それに玉藻先生も!」

美樹「ついでに緑色の……今度は何妖怪のコスプレ? 脇とかヘソ出しで風俗嬢っぽいわー」




ゆきめ「鵺野先生ーッ!!! ほかのみんなも! ――って何あの逆タラシっぽいピンクな女は!?」

玉藻「鵺野先生の左腕に包帯が。手首から先はカモフラージュしているが――それは義手ですね?」

玉藻「――やはり、あの鬼の封印が解かれてしまったのか」

玉藻「それにしてもあの女、まるで鬼のような強い妖気を発している! もしや……奴が鬼の手解放の引き金に?」

早苗「なるほど! 仙人さん、異変の兆候だなんてうそぶきながら、本当は自分が異変を起こすつもりで――」

玉藻「何だと? あの女が今回の異変とやらに一枚咬んでいたというのか……!」

早苗「そして、地底に向かう意向を私に伝えて……尚且つ霊夢さんにもその旨を知らせろと」

早苗「あっなるほど。私たちにちゃーんと解決役を演じて欲しかったんですね」

早苗「では、ご真意に沿って弾幕ごっこといきましょう!」

ゆきめ「よくわかんないけど、あの女が鵺野先生にたらしこんで悪事を企んでるってことでいいの!?」



華扇「ちょっとちょっと! 貴方たち……大いに勘違いをしているわよ! それと約2名は何者?」

ぬ~べ~「ゆ、ゆきめくん!? それと見知らぬ緑のお嬢さん! それから玉藻までこっちに来たのか!?」

ぬ~べ~「3人とも待て……とにかく待つんだ!! 今は遊んでいる場合じゃ――!!」

華扇「話せば判るわ! 冷静になって――!」

678: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:21:08.98 ID:hy0m+nz/0
「氷嵐『アイスブリザード』――!」

「狐火『空海上人』――!」

「危ない茨華仙さん! 俺が攻撃を受け止めるから後ろにッ! ぐわあああああッ!!」

「何でその女を庇うんですかーッ!!?」

「血迷ったか! 私は知り合いを異変に関わらせないという約束をしているのでな。少し頭を冷やしてもらいますよ」

「さあ皆さん、私にチカラを分けてくださーい。妖怪退治『妖力スポイラー』――!!」

「ちょっと!? これ以上私の力を吸い取らないでぇ―――!!」

「お前ら本気でやってるだろー!?」




ビュォォォォォォォォォゴオオオオオオオオオギュワワワワワワワワワワちゅど~~~ん




美樹「うわー……いい大人たちが楽しそうに遊んでるわよ、こんなときに。まったく状況判断ってものがなってないわ」

郷子「……普段は冷たいくらい冷静な玉藻先生まで熱くなってるわね」

美樹「それはアレよ、恋は盲目ってやつ」

679: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:26:05.43 ID:hy0m+nz/0
広「鯉はもーろく?」

郷子「美樹、ちょっと何ヘンなこと言ってんの?」

美樹「うーん、まぁ広い意味でそーゆーことじゃない? 恋というよりむしろ愛か」




/キ――――――――――――――――――――――――――――――ン\




広「……何かが飛んでくな。あの地霊殿(たてもの)の屋根あたりから……」

郷子「……上の方に向かっていったけど……まさか」

美樹「まさかというか、間違いないんじゃない? これどうやってオチを付けるつもりなのよ?」

680: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:29:03.79 ID:hy0m+nz/0

――博麗神社・裏山の大木――


シュ――――――――――――


絶鬼「いやあ、驚いた」

絶鬼「本当に鉄壁のような体だ。というよりも絶壁かな」

絶鬼「ただの強がりかと思いきや、それ相応の実力も兼ね備えているじゃないか。あれは人間じゃないな」

絶鬼「圧倒的な鏖(みなごろし)もいいが、こうやって邪魔されるのもまあ悪くはない」

絶鬼「ゆっくり(アダージョに)侵略していくとしよう」


ニヤリ


絶鬼「最終的には、同じ未来が待っているわけだからね」




――

ルナ(ヤバそうなのがうちの木の下で寝転がってるよ? どーする?)

スター(まあ、取り敢えず戦ってみる?)

サニー(自然に溶け込むのよ。これには関わらない方がいいと思う)

681: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:32:47.40 ID:hy0m+nz/0

――博麗神社――


ヒュォォォォォォ


天子「愚か者め――我を甘く見た報いよ」


針妙丸「凄いわ……あの鬼の攻撃を受け止めた上に、力技で向こうの大木に叩きつけちゃった」


霊夢「でもね。相手も、本気を出しているわけじゃないのよ?」

霊夢(どうする?)

霊夢(暫く、天子があの鬼と交戦するのを観察するか。あるいはすぐさま介入するか)

霊夢「はぁー」


少妙丸「霊夢さん?」


霊夢「今日は結構アタマ使ってる気がするわ。いつもと勝手が違うわねー」

霊夢(あの小鬼の持っているチカラがどれほどのものなのか)

霊夢(こいつとの戦いぶりを見て見極め――)




グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ

682: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:36:15.95 ID:hy0m+nz/0
天子「おぉー」

霊夢「な!?」

針妙丸「地震!?」




グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ




針妙丸「ちょっと天人さん! まさか貴女が要石を引き摺りだそうと――」

天子「え、まだだよ? まあ、あの小鬼が本気を出してきたら使おうと思ってたけど」


霊夢(来る! 今度は下から――地底から這い上がって!)




バキィィィィィィィィィィィィ!!




覇鬼「ウガァ―――――――――――ッ!!!」




ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ


針妙丸「お、鬼が出たー!! 今度は赤い鬼が地下から!!」

針妙丸「今ので足場まで崩れて……! 下に堕ちちゃうよっ!!」


ガシッ


霊夢「何言ってんのよ。あんたも飛ぶことくらいできるでしょ?」

針妙丸「あ、あはは……突然で焦っちゃって」

683: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:43:00.76 ID:hy0m+nz/0
霊夢(ピンポイントでの襲撃……今度は赤鬼、さっきのは鬼の姿だと青鬼)

霊夢(鬼としての外見は……色を除けば結構似ているわね)

針妙丸「――あ、あれ。さっきの赤鬼はどこ!?」

霊夢「頭上よ。といっても結構高く宙に舞っている」

霊夢「おまけに……今の鬼の登場で私が一瞬ひるんだスキをついて」

針妙丸「あああっ! あの宙に浮いている注連縄の張られた大きな岩はっ!!」

霊夢「ほら、針妙丸は降りて神社跡を見張ってて。あの薔薇の鬼が裏山から戻ってきたらすぐに伝えてね」




――博麗神社・上空――


ゴロゴロゴロゴロ……ゴロゴロゴロゴロ……


天子(曇天かぁ。激しい雷雨にもなり得るし、雲が晴れて陽が差す場合もあり得る、という感じかな)


覇鬼「絶鬼……どこにいる?」

684: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:48:38.75 ID:hy0m+nz/0
覇鬼「ん、何だか周りの天気が悪いうが」


ヒューン!


天子「――うふふ。素晴らしいアシストだったわ」

天子「おかげで期せずして地下に挿しこまれた要石はこうして私の手に戻った」

天子「いよいよ緋想の剣と合わせて、私の真価を再び発揮する時が来たのよ」

天子(さーて、大地に溜め込まれていたエネルギーを活用すれば、局地的な災害どころか一気呵成に破砕することもできる。けど)

天子(それでもまあ、ジワジワいくよ。潰し甲斐のあるところから、少しずつ削っていこう)


覇鬼「誰……だ?」

天子「はい、手を出して」

覇鬼「?」


ぱんっ


覇鬼「何故……手を」

天子「合わせたって? それはハイタッチだから。――我曰く、正しくはハイ・ファイブ」

天子「貴方は私の目的達成に助力してくれたのだから、仲間に加えてあげてもいいかなーって」

覇鬼「ナカマ?」


覇鬼「俺のナカマは絶鬼と眠鬼だけうが。兄妹はどこにいる? 絶鬼は近くにいる!」


天子(ゼッキとミンキ)

天子(近くにいるはずの……鬼……見るからに凶暴で強そうな鬼……その、きょうだい)

天子「ああー。あいつのことなのね」

覇鬼「?」

685: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:53:16.89 ID:hy0m+nz/0
天子「絶鬼(そいつ)のことなら、私知っているわよ――何処にいるのか教えてあげるわ」

覇鬼「本当か! 早く教えるうが」

天子「ええ、教えてあげるから。だから、私についてくるのよ」


天子(この赤鬼は使えそうだ。いや、こいつだけではない――)

天子(こいつをエサにすれば、あの小鬼を上手く服従させることもそう難儀ではないな)


天子(凶暴な異界の鬼どもを率いれば、本格的で鬼気迫る異変を巻き起こせそう。その方がもっと面白そう)

天子「『銭あらば鬼をも使ふべし』――今回の場合は、貴方自身が銭に使えそうね」


覇鬼「?」




天子(……やっぱり私には、幻想郷(なにか)を“守る”よりも“壊す”ほうが向いているみたい)

686: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:57:03.39 ID:hy0m+nz/0
キョロキョロ


覇鬼「んー?」

覇鬼「向こうに大きな花畑があるうが! 見にいくうが!」


ザッ!!


天子「あ、ちょっとぉ!」

天子(まったく、まるで子どもね。好奇心旺盛で、落ち着きがない――)


ヒュンッ!!


霊夢「待ちなさい、不良天人」

天子「あら、博麗の巫女。何か用? 境内まで崩れちゃって大変ねぇ、ご愁傷様」

霊夢「惚けるんじゃないわ。要石を引き抜いた挙げ句、あの赤鬼どもを利用して悪事を働くって魂胆なんでしょ?」

天子「悪事? 違うわよ――強いて言うなら異変かな。もう二次異変の段階に入るかなー」

霊夢「あんた1人が暴れるだけならまだしも――あいつらを使役しようなんて考えてる時点で」

霊夢「もう遊びの域を超えている」

687: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:07:46.72 ID:xQ1WoxxA0


――グサリッ


霊夢「ッ……あっ!?」

霊夢(背後から――刺された。刀剣……?)

霊夢(緋想の剣じゃない! 鋭利なヤイバが……まさかこれ……アイツが)


――ギューン!!




天子「薔薇の鬼もようやく再起動ね。こっちの様子を覗っていたのかな」

天子「で、巫女に突き立てたのは……あの手刀を先鋭化した妖剣のようなものか」

天子「伸縮自在な上に伸びても尖頭の威力は変わらず。巫女ったら真っ逆さまに地べたへ引き摺り下ろされちゃって」

天子「やれやれ。スペルカードシステムの弊害か、ちょっと体がなまってるんじゃないの?」

天子「決闘というより乱闘なのだから、油断は一切許されないのに。奇襲もあれば騙し討ちもあり、圧倒的な力で押し切るもあり」


天子「――簡単に死なないでよ?」

688: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:10:47.44 ID:xQ1WoxxA0
天子(でも、あの巫女には不思議な力が宿っているし、運も天賦の才もあれば類まれなる洞察力もある)


ニコッ


天子「それに、強大な黒幕と闘う自機(しゅじんこう)なら」

天子「いっぺん痛い目を見てから修行(パワーアップ)して再戦するってのが王道よねー」


天子「次に会う時が楽しみよ、博麗霊夢――時間無制限という真の死闘における貴女の強さ」


天子「とくと堪能させてもらうからね」

689: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:15:56.72 ID:xQ1WoxxA0

――博麗神社・裏山――


ブォンブォンブォンブォンブォンブォン ――グシャッ!!


霊夢「ッ!!!」



シュルシュルシュル……


絶鬼「どうだった? ぼく流のメトロノーム、これで気絶しないとはね。きみも人間じゃないの?」

絶鬼「――いいや。きみは紛れもなく人間だ、ニオイで分かる。だが、ただの人間ではないんだろ?」


ジュゥゥゥ……


絶鬼「大木に叩きつけて、鬼(ぼく)の手刀をきみのカラダから抜き取るが早いか――即効で御札を使った反撃」

絶鬼「なかなか強力だね、これ。両の腕がただれてしまいそうだ」




ムクリ ジワ……


霊夢「……あーもう、やってくれたわね。痛いじゃないの」

690: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:23:40.33 ID:xQ1WoxxA0
霊夢「まあ、見事に“被弾”しちゃったこっちにも落ち度があるか。天子以外に見られてないでしょうね、こんな恥ずかしい一場面」

霊夢「サラシを始めドロワーズやら振り袖やら、血飛沫で白いとこまでちょっと紅くなったじゃない」

霊夢「後でクリーニング代を弁償しなさいよ?」


絶鬼「……意外だ。痛みでもっと泣き叫ぶかと思ったら……気丈なのか暢気なのか」

絶鬼「もしかして、初撃はあえて急所を外してあげたから余裕があるの?」

絶鬼「きみも掴みどころがないな。ますます面白い、嬲り甲斐があるってものだ」


霊夢「誰が誰を嬲るって? 私、もうプッツンしちゃうわ」

霊夢「あんたは容赦しない。遊びでもなんでもない。あんたは私が退治する」


絶鬼「望むところ――と言いたいけれど」

絶鬼「今はあの目障りな桃帽子を追いかけるつもりだから、きみのことは後回しだ」

絶鬼「どういう経緯か定かではないけど、晴れて解放された覇鬼兄さんと早く再会したいんだもの」

691: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:27:25.84 ID:xQ1WoxxA0
霊夢「バキ兄さん……ということはさっきの赤鬼――」


パシュゥゥ!!


絶鬼「ふうー。ようやく御札の呪力を弾き返すことが出来た。思った以上に時間を食ったな」


霊夢「ッ!!」


ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン


絶鬼「次は霊光弾? この弾の模様は太極図のようだ――今度は直接触れないで片付けよう」

絶鬼「破壊光弾(ようりょくは)!!」




パァ――――――――――――――ン!!!!




霊夢「……へぇ、威力あるじゃない。美しさの欠片もない毒々しい“弾幕”だわ」



絶鬼「きみは見た感じ、神社の巫女ってやつだね? 巫女も広義には霊能力者の範疇に入るだろう?」

絶鬼「兄さんのように、封印でもされないように気を付けないと。じゃ、また後で、追ってくるならくればいい」


バサァッ!!!!


霊夢「待ちなさいッ!」

692: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:31:37.38 ID:xQ1WoxxA0
絶鬼「ぼくの名前は絶鬼。鬼の三兄妹の次兄にあたる」

絶鬼「……おっと、この無様な虫けらは返してあげるか」


ポイッ!


霊夢「あっ……!!?」


ストンッ


針妙丸「……う、……霊夢……さん」

霊夢「針妙丸……あんた、こんなボロボロになって」

針妙丸「ごめんね……私じゃ……あの天人さんみたいに……対抗できなかった」

針妙丸「私には……無理なんだ……鬼退治なんて……分かってたけど……私はやっぱり無力だった」

針妙丸「役に立たなくて……悪かったわ」

霊夢「バカじゃないの、あんたは。絶鬼(あいつ)が来たら知らせてって言っただけなのに、なんで」

693: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:35:33.73 ID:xQ1WoxxA0
ヒュォォォォォォ


絶鬼「あはははは! 一寸法師なのか何なのか知らないが」

絶鬼「安易に飲み込んで腹の中をいじくられるほど――ぼくはバカじゃないからね」

絶鬼「どうだい。据わっている肝の方から、少しは頭に血が上った?」

絶鬼「きみも人間だったら、こういう風にナカマを虐げられたら怒るんだろう?」

絶鬼「怒って莫大な力を発揮できたるするんじゃないの?」

絶鬼「いや、そもそもナカマですらなかったか? こんな役立たず、捨て石にも使えやしないもんね」




霊夢「許さないわよ

――絶対に許さないわよ、あんただけは」




絶鬼「……」

絶鬼「これは怖い。きみの瞳には鬼が宿っているんじゃないかってくらい怖いよ」

絶鬼「ただし、正真正銘の鬼のおぞましさには到底及びはしない」

絶鬼「きみは、やっぱり人間だ」

絶鬼「ケガを治して再挑戦するチャンスを与えよう――来たらいつでも応じてあげるよ」

絶鬼「ただし、リフレインは一回だけだからね?」


ビュン――!!

694: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:40:59.21 ID:xQ1WoxxA0
霊夢「――ギリ」


針妙丸(……霊夢さん、貴女……変わったわね)

針妙丸(博麗の巫女と言えば……無慈悲で誰に対しても平等であるがゆえに、誰のことも仲間だなんて思っていない)

針妙丸(故に誰もその心のスキマを埋められない――そんな冷たい人間だって言われてたのに)


霊夢(――いいこと。本当の実力っていうのは、のっけから開けっぴろげにするもんじゃないの)

霊夢(だって、最初から全力で行って――もしそれで太刀打ちできなかったら、おしまいだもの)

霊夢(だから今回は使わなかった。私の究極奥義ってやつも、巫女らしい神通力も。けれども、次は――)


針妙丸「ねぇ、霊夢さん。貴女は……私を味方だって認――」


霊夢「安心なさい、針妙丸。あんたが受けた仕打ち――八百万倍返しで凶鬼(ヤツ)にお見舞いしてやるわ」

霊夢「私の使命(おしごと)の一環とし……て……ね」


フラリ





(第4話:震える天空砕ける大地――有頂天の天人くずれと地獄から来た最凶の鬼の巻<前編>・終)

713: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:11:09.32 ID:jJNa9ChN0

――境界にある屋敷――


藍(――やっぱり、あのお方の姿形も痕跡も見当たらないわ)

藍(愛用の枕も布団も持って行かれたまま還ってきていない。まさか、外界で冬眠……いえ、仮眠に入っているとか)

藍(流石にそんな筈はないわよね……。あのお方に限って……身に何か起こったとも考えられないし)


藍(何故だ……何故、紫様はお戻りにならないんだ)

藍(現在の論理結界の脆弱性は私が想定していた数値を遥かに上回っている)

藍(これでは私に出来ることなど……)

藍(霊夢の意図によるものでもないな……これは。大結界を恣意的に弱められるにしても限度がある)

藍(霊夢が外来人(まよいびと)を外へ送り返す際の結界の操作とは、ケタが違うわ)


タッ!


橙「藍様」

714: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:14:44.22 ID:jJNa9ChN0
藍「ああ、橙。どうだった、紫様の所在につながるような手掛かりは?」

橙「はい、あのご友人にも……心当たりはないそうです」

藍「そう」


藍(……他にも各地に式神を飛ばしているが音沙汰なし)


藍「やはり、まだ幻想郷にも戻られていないのか」

橙「幻想郷にも?」

藍「ほら、定期的に物資の調達等で外界(ちかくてとおいところ)にお出でになっておられるでしょ」

藍「自由に“外遊”ができるのは基本的に紫様のみ――幻想郷を孤立社会(ビオトープ)として維持する上で大事なことだものね」

橙「そうでしたっけ? やはり紫様は凄いですね!」


藍(……橙は精神面も妖術も未熟なのよね。物で釣らないと言うこと聞いてくれないときもあるし)

藍(そう考えると、私もまだまだだな。あのタマモという妖狐の前では格好つけたが)

715: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:17:19.02 ID:jJNa9ChN0
橙「これからどうします、藍様? 幻想郷のあちらこちらで異変が起きているようですよ」

橙「外来妖怪(よそもの)を退けるために私たちも出向いた方がいいんじゃ?」

藍「うーん、今回の問題は局地的じゃなく幻想郷全土に渡るもの」

藍「大局的な見地に立って動かないと……細部に気を取られて下手に動きまわればかえって歯止めがかからなくなってしまう」

藍「――私はここに残るわ。紫様ももうじき還られるに違いない。そうしたら、すぐに手伝えるように待機しておく」

藍「橙は博麗神社に行って、霊夢に紫様(こちら)の情報を伝えてくれる? まあ、とっくに異変には気付いて動いているとは思うけどね」

橙「……」

藍「あとでもっと上質なマタタビあげるから」

橙「はーい、判りました!」


タッ

716: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:19:20.77 ID:jJNa9ChN0
藍「……」

藍(待機か……。裏を返せば狡猾ともとれるな、この非常時に現場で動かないことは)

藍(従者としての立場に慣れ過ぎてしまったのかな。指示があれば頭の回転も働くが……)

藍(こういう局面をどう乗り切ればいいのか……自分ひとりで考えてもなかなか得策が浮かばない)


藍「式神(コンピュータ)に成りきり過ぎるのも問題だな」

藍「データベースだけでは解決策を見いだせない――ということか?」


藍(……あの妖狐や、もしかしたらその仲間も、否応なく異変に巻き込まれているやもしれん)

藍(仲間に火の粉がふりかかったとき、あの妖狐はどう動くだろうか)

717: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:24:40.28 ID:jJNa9ChN0

――天界――


衣玖「えっ……自信ですか」

衣玖「空気を読むことには自信がありますね」

神子「いえ、違います。地震の方です」

衣玖「えっ……自身の自信ですか? つまり貴女自身の?」

神子「私が地震ですと?」

衣玖「だって、私自身の自信については最初に答えましたよ」

神子「最初に答えられたのは自信のほうで地震ではないでしょう?」

衣玖「えっ……自信には二通りあると言うのですか?」

神子「地震に二通りですか。自然発生型と人為発生型……ということかしら」

衣玖「貴女はどちらの自信家ですか?」

神子「どちらでもありません。というより私は震源にはなりません」

衣玖「武田信玄には転生しないと?」

神子「えっ」

衣玖「えっ」

719: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:30:01.08 ID:jJNa9ChN0
神子「咬み合いませんね。いや、敢えて咬み合わせていませんね?」

神子「地震動のことですよ。地震(なゐふる)のことです。日本書紀にも記述がありますよ」

衣玖「地震動ですね、ええそうですねぇ。でも、貴女は道教ですよね」

神子「ええ、それはそうよ」

衣玖「では教えられません――私の自信道の教えはね」


神子「……はぁ。私は話を聞く側に徹したほうが都合がいいのですがね」

衣玖「私は相手の話を受け流し、神経を逆なでせぬ様に取り繕うことには定評がありますので」


神子「『取り繕う』という言葉には、失言をその場限り何とかやり過ごす、という意味もあります」

神子「『地震動ですね、ええそうですねぇ。』という失言を覆い隠したいがために、受け流そうとしていますね」

衣玖「……」

神子「地震はどの程度の規模で発生しそうですか? 既に、一部の地域で発生しているのかもしれませんが」

衣玖「……はあ、貴女には参ります」

衣玖「少し……基準値をオーバーしていますね。ですがまだ誤差の範囲内」

神子「具体的にどの程度の数値になると誤差の範囲で済まされなくなるのかしら?」

衣玖「前回の異変のことを念頭に置けば、基準値の百倍程度になったら速やかに地上のみんなにお知らせをする予定ですね」

神子「……」

720: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:36:32.30 ID:jJNa9ChN0
衣玖「ああ、勿論、総領娘様――あるいは比那名居様のどなたか――に事前に報告をしてから」

衣玖「各地を逐一周って地震の予兆を伝えます」

神子「なるほど、訓練された無能ですか。事が起きてから災害の警告をしても、それに意味を見出せますか?」

衣玖「意味を考えることは、私の仕事の範疇にはありません」

衣玖「私はあくまで伝達者(メッセンジャー)――」

神子「――でも、出来る限り止めたいと思っているんでしょう?」

神子「貴女は緋想の剣、ひいてはそれを操る者のお目付け役だと聞いている」

衣玖「だから?」


神子「貴女とて、止めたい。地震が引き起こされるのを」

神子「だからこそ、私に伝えたのですね――早い段階で、大規模な地震が起こり得るという予兆を」


衣玖「……」


神子「早めに報告に行きなさい――取り返しのつかないことになる前に」

神子「この幻想郷にとっても、貴女の総領娘様にとっても――という意味で」


衣玖「……」

721: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:38:48.36 ID:jJNa9ChN0
コトッ


衣玖「この(方位)磁針が妙な振れ方をしたら忠告(ほうこく)に向かいます。もし予測が空振りに終わったら」

神子「……」

衣玖「私の自信がなくなります。地震もなくなります。なゐだけに」

神子「空振りに終わらなかったら地震はなくなりませんよ」

神子「このままでは――たぶん、地震はありますよ」


神子「なゐのにある――まず“名”ありて無(天地の始まり)という名と有(万物の母)という名があり」

神子「“名”以前には名もなき概念しか存在しない――それが道(タオ)というものだ」


衣玖「……ですから、何でしょう?」


神子「道(タオ)の教えに従った私が、貴女に代わって“名”を為す者に忠告をするべきかな」

神子「と思いましてね。こじつけではありますが」

722: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:41:12.23 ID:jJNa9ChN0

――人間の里(路上)――


村紗「先程、地鳴りがしましたね」


雲山「……」

一輪「方角的には東側――とすると博麗神社の方からかしらね?」


マミゾウ「何やら、またも良からぬことが起きているんじゃないかのう」

聖白蓮「姿かたちに性質まで凶悪な儘の魑魅魍魎が人里を跋扈するという今回の事変」

聖白蓮「――根本的な原因はやはり結界の管理状態にありそうね」


小傘「結界が?」

響子「 結 界 が ー ! 」

723: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:44:15.91 ID:jJNa9ChN0

――(物陰)――


コソ


正邪(結界が? ……何かあったのか)

正邪(まあ、何があろうと私の知ったことじゃない。スキマや巫女の気紛れなのだろう?)

正邪(それにしてもだ。あの鵺と外来狐を振り切ってからここまで来る間、妙にものものしい雰囲気が漂っていたな)

正邪(現に今も……あの新興寺の門徒どもが人里を見回っている)


正邪(――どうやら、私の包囲網が狭まってきているんだな)

正邪(今度は連中全員に殺人弾幕を浴びせられるのか……)


ジャリ


正邪「私は、どこに向かえばいいんだろう」

正邪「いや違う、行くあてなんてどこにもない。だのにどうして東に向かって進んでいるんだ」

正邪「……あの神社に行く用事も必要も縁もなんにもないというのに」


                                      (つづく)

728: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:23:19.02 ID:jJNa9ChN0

――人間の里(寺子屋)――


\\\ かんぱーい ///


魔理沙「ひと汗かいた後の酒は身にしみるぜ――ほら、ついでやるよ」

克也「あ、どもース」

慧音「コラコラー。十歳やそこらでお酒を呑んじゃダメなんでしょ、向こうでは」

克也「えー、でもオレ……不良だしよ。ちょっとくらいはまぁ」

小町「らりほー、わりぃごはいねがぁー!」

克也「ヒイイイイイッ!?」

魔理沙「おお、サボリ魔がまるで死神にみえるぜ」

克也「冗談よしてくれよー……まだ死にたくねーからマジで」

魔理沙「しっかし、はたもんば……だっけか。あいつの刃の切れ味にはビビった」

克也「まさかあいつまでこっちの世界に来てたとはな」

克也「以前オレも襲われて……先生や広達がいなかったらとっくの昔にあの世逝きだった……」

魔理沙「土産話に冥界(あのよ)にも行ってみるか? あいつを倒した妖夢っていう危ない通り魔がいるんだぜ(どうやったかは知らないけどな)」

克也「あいつを倒したって……どんな通り魔だ……。つーか、死んでもないのにあの世なんて行けるかよっての」

小町「それが行けちゃうんだよねぇ。最近は」

729: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:30:21.85 ID:jJNa9ChN0
まこと「ふぁ~あ……眠いのだー」

慧音「そうよね、貴方たちまだ子どもなんだもの――ほら、向こうの部屋にお布団敷いておいたから早く休みなさい」


まこと「……うん、お休みなのらー……おかあさん」

まこと「明日ちゃんと帰るからー……皆で帰るからー。今日は……ごめんなさいなのら」


フラフラ トテトテ……   ゴロリ


慧音「……」

魔理沙「あれ、寺子屋の隠し子だったのか?」

小町「さあ、どうだろうかねぇ。人と獣が交わった割には普通の子どもっぽいけど」

慧音「もう、寝ぼけているだけだわ。純粋で優しい子なんだよ、あの子は」

克也(純粋か……。確かにそうだな……まことのやつは)

730: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:33:11.94 ID:jJNa9ChN0
トンッ


克也「!」

小町「何しょげているんだい? 坊やも母親が恋しくなったり?」

克也「い、いやそういうのじゃ……なくてさ」

慧音「何か引けを感じてるのかい?」

克也「いや、引けっつーか……その」


ドンッ


克也「痛ッ!?」

魔理沙「人は人、お前はお前なんだぜ」

魔理沙「お前にも、あっちの子どもにはない良いとこだってあるだろ?」

魔理沙「別に私はさっき会ったばかりで、お前らのことなんてさっぱりだけど」

魔理沙「学校のキョーシや友達のことが心配で、外からこっちに入って来たそうじゃないか」

克也「……いや、それは」

慧音「自分の危険も省みず、誰かを助けたいがために、敢えて虎穴に入ろうとする君の心意気」

慧音「そういう気持ちを持っていることは、君の長所なんじゃないの? きっと」

克也「……へへ。どうかな……自分じゃよくわからねーけどさ。オレはオレだもんな」

731: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:35:29.39 ID:jJNa9ChN0
魔理沙「さて、ちとお固い話はこんなもんでいいだろ」

小町「坊やは坊やで自分らしく自然体で振る舞ってりゃいいんだ。でも、あんまりワルサばっかしてちゃ賽の河原の石拾いが待ってるよ」

魔理沙「そう脅かすなって。酒の席は無礼講――もっと自分を曝け出しちゃっていいんだぜ」

克也「――ああ。やっぱ悶々としてても……仕方ねぇよな」


ギュッ


小町「なんだい急に抱きついて。あたいは坊やのおかあさんじゃ無いよー?」

克也(あー幸せ……美樹より更にデカイぜ!)


慧音「……」

魔理沙「……ナイーブかと思いきや、ただのスケベな餓鬼だったのか」

慧音「まあ、それでも子どもだからね」


ガラッ


阿求「夜分遅く失礼します。賑やかなようで」

小町「おっ、おつまみの宅配かなー! ほらどいて」


ゲシッ


克也「あがっ」

732: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:37:56.29 ID:jJNa9ChN0
魔理沙「何だこんな時間に、丑の刻参りの帰りか? 今日は真剣に辞めておいた方がよさそうだぞ」

阿求「ええ、危険だって御触れだから外に出るつもりなんてなかったんだけれど……」

阿求「さっき小鈴が家を訪ねて来てね。赤いちゃんこ鍋がどうこうって言いながら混乱してて」

阿求「一旦落ち着かせてうちの布団に寝かせて置いたけど。ちょっと心配で」


スクッ


小町「たぶん新手だね――ちゃんこ鍋の付喪神でも出現したんだろうよ」

魔理沙「鍋は鍋でもちゃんこ限定? 赤ってのはトウガラシ? 相撲取りみたいな姿してそうだな」 

魔理沙(一難去って、いやもう二難去ったから三難目か。夜間警備もラクじゃねーな)

魔理沙「もし、はたもんばのようにヤバイやつだったら無視できないからな。――いくぜ」


タッ


克也「うおー……2人とものろけてるときと真剣(ガチ)な時とで面構えが違うな」

慧音「さて、きみもそろそろ横になりなよ。まだ予断を許さない状況だから、今のうちに少しでも休みをとっておくほうがいい」

克也「いや、オレ元気っすから!」

克也「……あ、というよりその……けーね先生。オレ、夜の授業とか受けてみたいなー。ナンツッテ」

733: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:40:46.07 ID:jJNa9ChN0

――


阿求「はい、幻想郷縁起の第○○頁を開いて。この妖怪の紹介文を音読しなさい」

克也「えーと、ワ、ワーハ……クタクとは中国の伝説上の妖怪で……ふああぁ……何ちゃらかんちゃら」

阿求「こら、丁寧に読みなさい。ちゃんとふりがなを振ってあるでしょう?」

慧音「やっぱり貴女より私の方が、教えるのは一枚も二枚もうわてのようだ」

阿求「そんなことはないわ。私は歴史を改竄したりしないもの。私の説明の方が筋が通っていて判りやすいはずだわ」

克也「ZZZZZZ」

慧音「やんちゃな子どもを寝かすのはやはりこれが一番ねぇ」

阿求「……まったくもう」


阿求「――さて、あとどれくらいで事態は収束しそうなの? 早く枕を高くして寝入りたいものですね」

慧音「私にはどうとも言えないわ――ともかく、協力してくれている皆と連携をとりつつ凌ぐしかないだろう」

阿求「妖怪は人間を襲い、人間は妖怪に怯える」

慧音「幻想郷のあるべきとされる有り様が、露骨に体現されているわけだ」

734: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:43:15.03 ID:jJNa9ChN0

――太陽の畑――


ブチィ! ブチィ!


覇鬼「うがーうがー」


天子「……」

天子(一面の花畑で、向日葵を掘り返し抜き取りしで遊んでいる。子どものイタズラレベルじゃないの)

天子(この図体だから、被害はバカにならないだろうけれどねー)


天子「ねぇ、そんな稚気な遊びじゃなくて――もうちょっと大胆な破壊行為をやってみてよ」

天子「例えば、向こうにひっそりとそびえ立つ山の麓にある吸血鬼(おおきなこども)の館とか」

天子「貴方の実力は火を見るよりも明らかだけど――どうせならはっきり火を見てみたいもの」




グーキュルルル


覇鬼「……腹減ったうが」


ガシィ!


覇鬼「あ~~~ん」

天子「あらら、私を食べるの? 言葉通りの意味で?」

736: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:49:37.55 ID:jJNa9ChN0
要石「――ガッ」


覇鬼「ん!? んーむぐぐ!? ペッ!」


タッ


天子「どうかしら。要石のお味は? 私を食べようだなんて千年早いわ」

天子(本当に心の赴くがままに行動しているわねぇ。関心の対象がコロコロと変わっていく)

天子(そうだ、天界の桃でも食べさせてあげよ。これ天人なら食べ放題だけど、下々の者には物珍しいでしょうね)




ビューン!!


絶鬼「見つけたよ! 覇鬼兄さーん!!」




天子「あ、さっきの小鬼くん。どうだった、あの巫女? もしかしてもう貴方のおなかの中?」

絶鬼「ん? ああ、あの女なら――って、きみには関係のない話だ」

737: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:56:11.75 ID:jJNa9ChN0
天子「見て見て、私の飛び道具(かなめいし)――畏れ多くて私にかしずきたくならない?」


要石「ゴゴゴゴゴ……」


絶鬼(何だ、この岩は――?)

絶鬼「……そんなことよりも、ぼくに逆らったうえに今度は覇鬼兄さんをかどわかそうとしているのか?」

天子「ええそうよ、だから何?」

絶鬼「愚かだ。嘲笑に値するよ、いったいどれほどの苦痛を与えられて死にたいんだい?」

天子「死なないわよ、自分で望まない限り。死神のお迎えだっていつもあっさり蹴散らしてるもの」

絶鬼「ふん、もうお喋りはしまいだ。さあ、兄さん、まずは一緒にこの女の息の根を止めて殺戮ショーの開演と行こうじゃ――」




シ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ン




絶鬼「あれ……兄さん? 何処に」

天子「私たちがお喋りしている間に、今度は向こうの丘を踏み荒らしながら、竹林方面に向かって言ったわ」

絶鬼「……はあ。何なんだよ兄さん……ようやく、今度こそ、ちゃんとした再会ができたってのに」

絶鬼「ぼくに目もくれず勝手に行っちゃうなんて……」

天子「貴方苦労してるのねー。子どもみたいで扱い易そうに見えて……あまりに力があるから持て余しちゃうわ」

739: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:00:46.99 ID:H23gpj5t0
絶鬼「――ふん、きみは後で始末するよ。今のうちにせいぜい逃げ惑っているといい」




ビュン!




絶鬼「――……。……何でついて来る?」

天子「――え、だって興をそそられるから。迷いの竹林には一筋縄でいかない連中(はぐれものたち)が細々と隠れ住んでいる」

天子「鬼兄弟(あなたたち)の実力をしかとこの目で測るには良い機会だわ。うふふ」

絶鬼「きみは……精神疾患(パラノイア)か? いろいろと倒錯している」

絶鬼「その不可解な頭の中身を、後で覗かせてもらおうかな」

天子「物理的な意味で? ――それとも抽象的な意味でかしら」

天子「でもムダなことよ。所詮は鬼でしかない分際に天人くずれ(このわたし)のことなど理解できやしない」

天子「逆に、貴方や覇鬼お兄さんとやらの本質的なトコロは、もう見抜いちゃったわよ?」


天子「貴方たちの弱点も含めてね」




ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ピシャ――――――――――ン!!!




絶鬼「――……ハッタリかい……?」

天子「ま、いいわ。後でゆっくりお話ししましょう」


ビュ―――――――――――――――――ン!!

740: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:07:04.33 ID:H23gpj5t0

――無名の丘――




ビュォォォォォォォォォォォォォォォォォォ




メディ「……うう、鈴蘭(スーさん)の畑が……こんなことになるなんて」

メディ「あの巨大な赤鬼……低い山を越えて来て……土を荒らしまわっていった」

メディ「こんな荒れ果てた光景……目に毒だよ。こんな毒は……満喫したくないよぉ」

メディ「スーさん……来年も元気に毒を吐いてくれなきゃ……私……」

メディ「もしかしたら……太陽の畑も荒らされたり?」

メディ「向日葵は気持ち悪いから別にいいけど」




幽香「ふ……うふふふ……うふふふふふふ」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


741: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:19:08.91 ID:H23gpj5t0

――博麗神社――





フェフェフェフェ……


ビュォォォォォォォォォ




橙「な……」

橙「な……」

橙「いったい何があったの……!? 博麗神社が……跡形も……」


スー


スター「ちょっと、そこの猫さん」

橙「! 誰? ……妖精か」

スター「巫女と小人の介抱――手伝ってくれないかしら?」


橙「何か……一大事が、あったのね?」

742: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:24:34.13 ID:H23gpj5t0

――迷いの竹林――


ザッ


天子「っと、ここが迷いの竹林よ。お兄さん、何処にいるかなー」


シュタッ


絶鬼「霧は濃いが。なぜ地に降りるんだ? ――飛べばいいじゃないか」

天子「だって、折角だから迷わないと勿体ないでしょう?」

絶鬼「……」

天子「第一、私に倣って降りてくる必要なんてないでしょうに」

絶鬼「……さっき、弱点がどうとかいったね」

天子「緋想の剣は、対象の気質を見極め、それを緋色の霧に変え天候という形で観測可能にすることが出来る」

絶鬼「天候……。まさか、さっき急に集まって来た雷雲は」

天子「貴方の気質――そしてこの剣は気質(ゼッキ)の弱点たる性質を纏う」

天子「だから、私はこの剣を振りかざすことで必ず相手の弱点を突くことができる――それが弱点を見極めたという言葉の真意」

絶鬼「ふーん、なるほど。それは手強いな――だが」

743: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:29:31.43 ID:H23gpj5t0
ヒョイ


絶鬼「!?」

天子「これを奪ってしまえばこっちのものだ、なんて思ったか? これは天人でないと扱えないよ。ただ持つだけならできるが」

絶鬼「……」


ヴン!


絶鬼「……本当だ。“斬れない”な」

天子「第一、その剣に頼らなくとも私はお前ごときに倒せる相手ではない。倒した後で取り返すからね」


パシッ


絶鬼「返しておく、そんなハンデはいらないよ。ぼくはこれっぽっちも本来の力を発揮していない」

絶鬼「弱点を突かれると言うなら、弱点を隠せばいいのさ。鬼っていうのは、もとは隠(おん)という音から来ているんだよ?」

天子「食えない相手ねぇ、貴方は」

絶鬼「そっちこそ」


天子「やあやあ、我こそは天人なり! ――名を比那名居天子という。そっちは?」

絶鬼「ぼくは――絶鬼だ」


天子「知ってた。さっきお兄さんが言っていたもの」

絶鬼「ッ……心底きみは」

天子「あ! 向こうから『うがー』って声が聞こえた気がするよー」

絶鬼「おい待て!」


タッ!

744: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:38:14.83 ID:H23gpj5t0

――地底(某所)――


ウネウネウネウネ……


広「なんでいつかの寄生虫団子がこんなとこに落ちてんだよ!?」

郷子「でもって何でまた拾って食べようとするのよバッカじゃないのー! いい加減凝りなさいよ!!」


美樹「こんにゃろ! こんにゃろ!! こんにゃろ!!!」

広「くたばりやがれッ!!」

郷子「死ねえええっ!!」


グシャグシャグシャグシャグシャグシャ


美樹「ふー、何とか全部踏みつぶせたわね……言ってもまだミミズくらいの大きさだったし」

こいし「あら、皆こんなところで何してるの? 害虫退治?」

745: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:41:03.57 ID:H23gpj5t0
広「本当に神出鬼没だなー。ま、ピンピンしてるし大丈夫だったんだろ」

美樹「便利なキャラね。ねーさぁ、サクッと手軽に上に出られる近道とか知らない?」


こいし「近道? 地上に出たいの?」


広「そうさ! 先生や玉藻たちは遊んでて頼りにならないからな、先に進んでたんだよ」

郷子(普通に地霊殿を目指していたはずなのに……いつの間にか迷っちゃって。でも、こいしちゃんが来てくれて良かった)

美樹「私たちが力を合わせてあの鬼が悪さをしないよう足止めしようと思ってね!」


こいし「あの鬼。あー、あの赤鬼さんね」


広「あいつバカっぽいし、上手に煽てりゃなんとかなりそうだもんな!」

美樹「広にバカって言われちゃ可哀想ねぇ。でも実際何とかなりそうよねー」


こいし「ここの真上に小さな抜け穴があるのよ。あんまり知られてないけど、迷いの竹林に繋がってるの」


広「本当か! 上に出られるんだな」

746: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:44:58.70 ID:H23gpj5t0
美樹「……竹林ねぇ。幻想郷(ココ)って何でもアリっぽいから、光る竹とか普通にありそうね」

郷子「童守小も結構なんでもありだと思うけどね。ひょっとしてかぐや姫とかに会えたりしてー」

こいし「さ、皆私にしっかりつかまって」


シュルシュルシュルシュル


広「おお……そのヒモみたいなの伸びるんだ」

美樹「つかまって、というより私らが捕まったように見えるわね、傍からは」

郷子「……ハァ」


美樹(ごめんなさい先生たち……またまた心配掛けて……でも、広や郷子が勝手に行っちゃうから……もう本当に仕方なくて)


こいし「いっくよー」


ビュ―――――――――――――ン

747: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:55:46.58 ID:H23gpj5t0

――迷いの竹林――


覇鬼「旨そうな人間捕まえたー」

覇鬼「どっちから食べるうが?」


ギリギリギリギリ


輝夜「ありのまま今起こっていることを語った方がいいかしら?」

妹紅「私は、七人ミサキを片付けて貴女と殺り合いつつ……そろそろ帰路につこうかなと思い始めていたら」

妹紅「気がついたら捕まっていたのよね」

輝夜「ちょっと熱が入り過ぎたかな。高速で移動して降りてきたみたいね。上空から」

輝夜「幻想郷にはこんな鬼もいたのね」

妹紅「幻想郷に定着した鬼ではないと思うわ」


妹紅「この巨大な鬼の邪悪なオーラ……死の恐怖どころではない。本物の恐怖というものを垣間見ている気分だわ」

輝夜「死の恐怖だなんて、それは言葉の綾でしかないじゃないの」


覇鬼「むー、向こうから旨そうなウサギのニオイがー!」


そわそわ


覇鬼「あっちからは人間のニオイが、それもいっぱいいるようだ」

覇鬼「どっちに行こうかうがー?」


妹紅「……」

輝夜「……」

妹紅「どちらにも、行かせるわけにはいかないわよ?」

輝夜「今宵は夜通し遊びかな。私からの美しき難題を受け取りなさい――貴方に幾つ解けるかしら?」


覇鬼「?????」




                                    (つづく)

767: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:43:36.14 ID:B7lETbi00

――迷いの竹林――


ざわざわ……


広「竹林つっても……せいぜい竹藪ぐらいのもんだと思ってたが」

美樹「とてつもなく……広いみたいね。夜霧も出ているし……一面同じ風景で方向感覚狂うわ」

郷子「あのさ、こいしちゃんって……ここの道とか判るんだよね?」




シ――――――――――――ン




広「っていねええ!? またどっか行っちまったのかよー!」

郷子「こ、こいしちゃーん! どこなのー!?」

美樹「あー……これダメだわ。迷子になっちゃったわね」

郷子「どーすんのよ広! 責任取りなさいよ!?」

広「何だよ! お前だってやる気満々でここまでついて来たんだろーが」

郷子「そ……そんなことない! 私はあんたを止めようとして……」

広「止めようとしてって結局ついて来たじゃねーかよ」

768: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:49:02.58 ID:B7lETbi00
美樹「違うわよー広。郷子は別のイミで責任取れって言ってんじゃない?」

広「別のって?」

美樹「フフフ、誰も見てやしないわ。こんな時間帯だし。私は後ろを向いててあげるから……一線越えちゃったら?」

広「はぁ? 何の話だよ」

美樹「ねー、そういうことでしょ? 郷子ったら――」


ぷるぷる


郷子「……っ!」

郷子「美樹のバカ! 広の大バカー!」

広「な、何だよ今度は急に!」

郷子「最初の井戸の時もそうよ! 何度も何度も勝手なことして先生や皆に迷惑かけちゃって!」

郷子「ちょっとは先生が私たちを心配する気持ち……考えなきゃ……」

郷子「ダメじゃないのよ! バカバカバカー!!」


ダッ

広「おい!? 何処行くんだよ郷子!」

美樹「待ちなさいよー! これ以上集団行動を乱すなこのペチャパーイ!」


\ペチャパーイ/

\ペチャパーイ/




――


天子「今度は確かに声が聞こえたわ。割と近そうね」

絶鬼「兄さんの声ではないが」

絶鬼(臭うな。これは人間のニオイだ)

769: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:54:03.23 ID:B7lETbi00

――


てくてくてくてく


広「ったく、郷子のやつどこ行って……」

広「ホント一面竹しかねぇな……出口はどっちだ?」

美樹「広と2人っきりになるなんてねぇ」

広「……」

美樹「あら、何? 一瞬ヤラシイこと考えた?」

広「はあ!? そんなわけねーだろ」

美樹「とか言って~! まあ、美少女爆乳美樹ちゃんと誰もいない夜の竹林で2人っきり――男なら欲情して当然よね、ホホホ」

広「バ、バカいってんじゃねーよ。ほら、さっさと郷子探すぞ!」

美樹「――ほんと、郷子(まないた)のことが好きなのねー。広って」

広「うっせーやい! もうオレも勝手に行くぞ」

美樹「あーん! 待ってよー広! 私、か弱いんだから妖怪とかが出たらちゃんと守ってくれなきゃ困るわー」

広「だーれがか弱――」




ジャリ……




広・美樹「「!?」」




天子「あ、人間発見」

絶鬼「……」

770: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:58:51.34 ID:B7lETbi00
絶鬼「おやぁ、きみたちは――もしかして」




広「み、美樹ィ!」

美樹「広ィ!」


ヒソヒソ


広「誰だあいつら」

美樹「さあ」

広「あれ、片方はどっかで見たことあるような……けど全然思い出せねーな。たぶん気のせいだ」

美樹「アベックでしょ。たぶん野外プレイを楽しむためにこんなとこにいるんだわ」

広「やっぱ何かの妖怪なんかな?」

美樹「バラとモモがモチーフっぽいけど。植物系かしら」

美樹「にしてもあの女の人のほう……郷子より胸無いわね。ていうか皆無!」

美樹「あまりに平坦過ぎて戦慄を覚えたわ」



天子「知り合い?」

絶鬼「――。ふん、人間なんて……全部虫けらだ……」

絶鬼「ただの肉塊になったら、みんな同じだ」




――ザッ


広「!?」

美樹「え、今度は誰」

神子「動かないように。縮地のマントを使うとしよう」


――バサッ

771: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:09:00.04 ID:B7lETbi00
シ――――――――――――――――――ン


絶鬼「! 消えた?」

天子「おおー、聖人さんが出てくるとはね。あ、セイジンって成人でも星人でもなくて聖人だからね」

絶鬼「聖なる人間、だろう? 発音で判るよ」

絶鬼(聖人というと、確か徳を積んだ人間という意味だっけ? この――)

天子「この世界における聖人とは、果たしてどういう存在なのか。気になった?」

絶鬼「……」

天子「聖人だけではない。この幻想郷には神もいれば仙人もいるし、不死身の者もいれば閻魔もいる。選り取りみどりよ」

天子「――勿論、鬼もね」

絶鬼「――その鬼って、ぼくのように血も涙もない感じ?」

天子「いいえ。貴方たちの行く手を、彼奴らは必ず邪魔立てしてくるわ」

天子「連中を上手くあしらおうと思うのなら、こっちの世界の住人を先導役にしてもいいと思わない?」

絶鬼「きみの目的は何なの? 世界征服?」

天子「貴方たちの元気凛凛で派手なお遊びに、付き合ってあげてもいいかなーってことよ!」


絶鬼(ぼくらが遊びがてらでやっているとでも思っているのか? それとも口先だけの言葉なのか?)

絶鬼(――まあ、いいか)

絶鬼(これは、お手頃な使い捨ての駒にできそうだな)


絶鬼「いいよ。特別に、ぼくたちの遊び仲間に加えてあげるとしよう」

772: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:13:11.23 ID:B7lETbi00

――異空間の道場――


神子(やり過ごせた)

神子(これは安易に忠告できるような状況ではないようで)

神子「そこの君たち、怪我はありませんか」


美樹「えーホントに!?」

広「あの人がショートクタイシだって!?」

布都「そうじゃそうじゃ」

広「で、誰だそれ?」

布都「おっとっと……なんじゃ、太子様を知らんのか。外界ではそこまで忘れ去られてしまったというのか……嘆かわしい」

美樹「ああ、ちょっと前に壱万円札だった人でしょ。知ってるわよ。ていうか大好き! 拝ませてもらうわ」

布都「おお、存じている者もおったのか! しかも信者だったとは、感心感心」

美樹「私って博学だし」

広「金が好きなだけじゃないのかー?」

布都「じゃあ我のことは誰だか判るかな? 太子様に縁の深い人物だぞ!」

広「んーと……わからん」

美樹「そりゃ、聖徳太子の相方ってことは妹子に決まってるでしょ」

美樹「きっとあっちの太子さんは結構抜けてて『私えらいもん!』とか言ったりして、妹子さんはしっかり者なんでしょ?」

広「へー、美樹詳しいな」

布都「いやはや、そう褒められると照れるではないかー」


神子「……誰が阿呆だ誰が」

773: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:18:41.22 ID:B7lETbi00
広「そんで、ここはどこなんだ?」

布都「知らないで招待されておったのか?」

美樹「いきなり拉致されたのよ」

神子「これこれ、そうではない」


ゴソゴソ


美樹「ほほー、何か見たこともない物がいろいろ飾ってあるわね。一つか二つくらい持ち帰っちゃおうかな」

神子「欲がダダ漏れである」

広「ここって、さっきの竹林の中にあんの? それとも他の場所にワープしてきたとか?」

布都「ここは仙界と言ってだな。一言で言うなら幻想郷ではないぞ」

布都「太子様はこの空間を作ってどこからでも出たり入ったり、ようは瞬間移動ができるのじゃ」

美樹「へぇ~。アホ太子、意外と凄いのね」

神子「君、いい加減にしないか……?」


神子(このふたりはひとまず人里に送るとして)

神子(あの天人は甘やかされた人格者。自ら望み修練を積んで天人となった者とは隔世の感がある)

神子(どの程度の天変地異を起こそうとしているのかは計り兼ねるが)

神子(――なにせ、連れ添っている者がこれまた危うい)

774: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:22:29.00 ID:B7lETbi00

――迷いの竹林――


郷子「……バカ」

郷子「ううん、本当のバカは私だわ」

郷子「ふたりを止めなきゃっ……って、思ってたのに」

郷子「心の中の半分くらいは……私も好奇心っていうか」

郷子「結局流されちゃってた……」

郷子「それなのに……自分のことは棚に置いて広と美樹にだけ当たって……」

郷子「おまけに……右も左も判らない竹林の中に駆けだしちゃった」

郷子「はぐれちゃった……」


フラリ


郷子(……また、さっきと同じ景色)

郷子(だんだん……目が回って来た。真っ暗闇の中、明かりなんて月の光だけ)

郷子「怖い」

郷子(もしかして私、このまま誰にも見つからずに……)

うる……


郷子「誰か……助けに来てくれないの?」

郷子「誰か……」

郷子(……広)




\UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA/




郷子「!? こ、この声は」

775: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:28:34.01 ID:B7lETbi00
ズ……ン


覇鬼「思い出したうがー!」

覇鬼「俺はあの人間達に封じられていた。まだ中にもうひとりがいて邪魔だうがー!!」


郷子(ひっ!? あの鬼だ!! 凄くいらついてる)


コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


郷子「光線を!? ――きゃあああああッ」




ド―――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!!!


覇鬼「――」


ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……


ズン……ズン……








タッ


妹紅「今度は竹林が炎上して……あのパパラッチに確実に記事にされそうねぇ」

妹紅(ヤツの中にもうひとりとは……? 誰かが中にいるというのか?)

妹紅(それは魂(精神)なのかあるいは魄(肉体)なのか)

妹紅「試しにあの鬼に喰われて――内側を覗いてみましょうか?」


ユラリ


絶鬼「――」

777: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:32:36.27 ID:B7lETbi00

――


郷子「……ッ……」


パチッ


郷子「あ、あれ……?」




\があああああー!!!/




郷子「鬼から離れた場所に――?」

輝夜「須臾とは即ち隙間であり、認識できない一瞬である」

郷子「えっ……あなたは……いったい」

輝夜「当然、貴女にもあの鬼にも認識できるはずがない。平たく言うなら、時間を操る能力ってところね」

郷子(綺麗なひと……)

郷子(この世の人とは思えない……それくらい透明感のある美人さん……)

郷子「えーっと、……とりあえず、助けてくれたんですね。ありがとうございます」


ニュルン!


【おい郷子! こっちだ!】


郷子「広……って手だけ!? ……ってどこから出て来ているの!? 空間の割れ目ッ!!?」

778: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:37:09.20 ID:B7lETbi00
【こっちは安全な異空間なんだ!! 美樹もいるし味方になってくれる人達がいる!!】

【いいから掴まれ!!】


輝夜(……この隙間は)

郷子「そんなこと言っても……本当に大丈夫なの!?」


【当ったりめーだろ――オレを信じろ!!】


郷子「……」

郷子「うん。広のこと、信じるよ」

輝夜(ふふ。貴公子のお迎えなのね)




――ガシッ


郷子「助けてくれて、本当にありがとうございました。さよう――」


――ギュン!!




カッ!!  ちゅど~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!


覇鬼「――」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


輝夜「――っと。あの少女、瀬戸際のところで難を逃れたようだ」

輝夜(まったくもう。この鬼ときたら、せっかく難題を出したところで問題の趣旨自体を理解してくれないんだから)

輝夜(もう少し、頭の開店が働くモノノケならば相手のし甲斐があるというのに)


覇鬼「……! 絶鬼ーッ!! そこにいたのか」


ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ


輝夜「?」

779: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:40:33.01 ID:B7lETbi00
ジャリ


妹紅『ニヤリ』

輝夜(ちょっと、私の足止めをしている場合ではないんじゃないの)

輝夜「――と、言おうかと思ったのだけれど。貴様、藤原妹紅ではないようね、中身が」

妹紅『だって、きみたちは不死人なんだろう? さっき人伝に聞いたよ』

妹紅『肉体を潰しても意味がないのなら――取り憑いて精神そのものを乗っ取ろうかと思ってね』

妹紅『この人間がぼくの兄さんに気を取られていた、ほんの僅かなスキを突いたんだ』

輝夜「あらら、魂の方を試食されちゃったのね。それで、言の通りならば貴方も鬼の仲間ってことかしら」


ビューン!!


輝夜「今度は上から? せわしないわねぇ」




天子「いやっほーい! ブッ壊れろーッ!!!」


グシャァァァァァァァァ!!!

781: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:47:36.02 ID:B7lETbi00
シュ――――――――――――――――――――――


妹紅『流石に死んだんじゃないの?』

天子「ううん、安心して――この程度で死ぬことはないわ」

妹紅『安心?』


ガシィィィ!!!


覇鬼「絶鬼~~~! 会いたかったぞ~~~~!!!」

妹紅『!? ちょっと兄さん、さっきもニアミスしたよ!』

妹紅『それと再会は嬉しいけれど……力入れ過ぎだよ!!』

妹紅『力弱め――あがががっ!!?』


ギュゥゥゥゥ!! メキメキメキ!! バキボキ!!


天子「……」

覇鬼「ん? 絶鬼、どうした?」


ヒョイーーブンブン


絶鬼「……ぁ……ぁ――ガクッ」


チ―ン


天子「微笑ましい兄弟愛だこと。気絶しちゃった拍子に憑依も解けちゃったわねえ」

覇鬼「おーい、絶鬼ー、起きるうが」

絶鬼「……ぅ……」


輝夜「面白いわね。今日は普段以上にいい運動をしているわ」

天子「流石に復帰の早いことで、おみそれしましたわ。――姫様がお姫様だっこ? 普通逆じゃないのかしら?」

妹紅「……ぅ……」

輝夜「そんなに重くないもの」

783: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:54:13.04 ID:B7lETbi00
輝夜「さてと、そろそろ向こうの盛大なボヤを鎮火しておかないと。原因は火の鳥の不始末って永遠亭の皆には伝えておく」

天子「えー、別に私のせいだって伝えてもいいのですけれど。我々はこれから地上を制圧するつもりだもの」

輝夜「そうなの? じゃあ、本格的に地上が制圧されそうになったら永琳と一緒に相手をしてあげる」


輝夜「もしその時が来たら、本気出すからね?」

天子「――ええ、愉しみに待っているわ」


輝夜「ほら、貴方も見てごらんなさい」

覇鬼「?」

輝夜「今宵の月はまだ欠けている。だが、たとえ満ち足りていようとも、地上から見えないときであっても」

輝夜「月は永遠にそこに存在している」

天子「……」

輝夜「地上から見上げる月は永遠に不変――あたかも時間が止まっているよう――に見えて、実のところその裏側では着々と時間が進んでいる」

輝夜「いったい誰が観測者になるかによって、時間の見え方は変わってしまうの」

輝夜「不思議に思うでしょう?」

覇鬼「うが?」

天子「鹿を指して馬となす――例え筋は通っていようとも、判らない者には一生判らないことがある」

覇鬼「うが?」

輝夜「それ、故事の本来の意味とは無関係に、ただこの鬼は馬鹿だといいたいだけじゃないの」

天子「別にいいの、私は不良天人だもの。教訓染みたことをそれらしく取り上げて語るだけで十分なのですわ」

784: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:03:14.08 ID:B7lETbi00
輝夜「――さて」

輝夜「そろそろ迷いの竹林からはお暇願いましょうか。地上制圧、せいぜい頑張ってね」


輝夜「新難題『エイジャの赤石』――!」


バァーン!


輝夜「覇ッ」




ヒュルルルルルルルルルルルルルル  ド~~~~~~~~ン




天子「たーまやー! 綺麗ね、もっと間近で見ましょう」

覇鬼「絶鬼、赤い玉が輝いているうがー! aあれ取りに行くうが!」

絶鬼「ぅ、ぅ~ん……」


ザァッ!




妹紅「うーん……あれ、節々に軽い痛みが。私は確か――って!?」

妹紅「何なの輝夜! 放しなさいよ!」


ガスンッ


輝夜「はい、放したわ」

妹紅「殺し合いの続き!? あっ! そんなことよりさっきの赤鬼は――!」

輝夜「先に竹林火災の後始末をしましょ。人里に飛び火したら面倒だもの」

785: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:14:21.33 ID:B7lETbi00

――太陽の畑――


/ん……赤い玉が消えた。どこいった?\

/ほら見てごらんなさい。赤い玉は弾けて消えたけれど、向こうに紅い建物があるでしょう?\

/あれをブチ壊したらまた綺麗な花火が乱れ飛ぶに違いないわ\

/ハァ……まったく兄さん、もう少し力加減というものを理解して欲しいよ\

/あれか。早速壊しに行くうがー\

/そういえば、さっきの竹林の連中は結局どうなった?\

/一か所にこだわり過ぎるのはよくない。先に他所の連中にも我々の圧倒的な力を見せつけるのよ\

/……。あ、忘れてた。そういや兄さんの中にはまだあの鬱陶しい魂がいるんでしょ? 封印の力を抑えつけるから\


ビューン!!




幽香「……」

メディ「あれがさっきの赤鬼……間違いないと思う。おまけに他にも仲間がいるみたい」

幽香「あの天人風情が、どこからかあの者共を引っ張り出して来たのかしらねぇ」

幽香「さてと、向日葵の代わりにシクラメンを拵えてお見舞いにでもいきましょうか」

幽香「それとも、公衆の面前でお花でも摘ませしょうか」

幽香「ううん、その程度じゃ足りないわね。鉄槌を下してあげなきゃ」

メディ「……」

幽香「摘まれてしまった花たちが受けた苦しみに対する償い――ちゃあんと報いは受けてもらうわよ?」

787: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:32:45.03 ID:B7lETbi00

――人間の里――




ギュ―――――――――――――――ン




一輪「聖様。今、空を駆け抜けて行ったものは――」

聖白蓮「……」

雲山「……」

一輪「ちなみに私たちは化け狸たちと別れてそれぞれ里の見回りにあたっている」

一輪「――と雲山が説明を加え」


ギュゥゥンッ ドサドサドサッ!!!


広「痛たた……落っこちたぞ」

郷子「ふう……本当に怖かった。ありがとうね、広」

広「へへ。でもまあオレよりも、太子さんたちのお陰だよ」

一輪「どいてくれないかなー? もしかして私が下敷きになっていることに気付いてないのかな……」

美樹「ここが人里ー? 人っ子一人見え……なぁぁ!? スイカがふたつ! デカいスイカがぁー!!」

聖白蓮「……この子達は?」

神子「外来人ですが何か?」


雲山「……」

神子「ああ、妖怪の山方面に飛んで行ったのか。人里に降りてこなかったのは不幸中の幸い」

聖白蓮「詳しい事情を話してくださいよ?」

神子「私も全容は掴んではいませんがね。この度は、手を取り合わざるを得ないか」

788: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:38:34.69 ID:B7lETbi00

――紅魔館――


咲夜「……」


レミリア「ふふふ、準備は整った――さあ、侵入者よ。命が惜しくないと言うならば我が館に参るがいいわ」

レミリア「……あら、咲夜?」

レミリア「どうしたの? 窓際で」

レミリア「月でも見ているの? まだ十六夜の月じゃないでしょ」


咲夜「……」


レミリア「ねぇ、どうし――」




咲夜(ナイフ投擲で対抗する? 時間を止めて抑え込む? 否、間に合わない――)

咲夜(迷わば即ち訪れるは死――!)

789: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:42:48.54 ID:B7lETbi00
天子「直下型地震――!」


グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ!!


覇鬼「ウガハハハ!」


バキグシャドゴメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ――ズドン!!


天子「要石(ロードローラー)だ――!!」

覇鬼「ウガハハハハ!!!」


ギューン!! ――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴグシャッ!!!


天子「コンボ技も決めよう!」

絶鬼「じゃ、いくよ――」




「「妖力混合極光波ッ――――――――!!!」」




カッ! ちゅど――――――――――――――――――――――――――――ん!!!!




――紅魔館の庭――

美鈴「・・・・・・」

美鈴「えっと」

美鈴「私の責任じゃないですよね?」


美鈴「天空からの侵入者は……門番の守衛の範囲外ですよね?」

美鈴「あ、はは、はは……」



(第4話:震える天空砕ける大地――有頂天の天人くずれと地獄から来た最凶の鬼の巻<中編>・終)

797: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:14:09.48 ID:itH2tAH30

――紅魔館跡――


シュ―――――――――――――――


美鈴「咲夜さーん! お嬢様! パチュリー様ー! その他数名の方々ー!」

美鈴「生きてますか~?」


バサッバサッバサッバサッバサッ


美鈴「あ、流石はレミリアお嬢様。無数の蝙蝠に分身して難を逃れられましたか」

レミリア「あんた、門番としての役目を果たせなかったってことで解雇ね」

美鈴「えー、そんなあ。今回はちゃんと起きてたんですよ~」

レミリア「ああ、それもそうね。じゃあ、再建費を賄うために里で水商売でもやってもらうから」

美鈴「いやいや、私妖怪ですからそもそも里人たちは怖がって近寄りませんって」

レミリア「ぶっちゃけあんたって妖怪っぽさが殆どなくなってない? 人間と妖怪の境界線ってどの辺りに引けるのかしらね」

美鈴「うーん、私には何とも言えません」

レミリア「ま、雑談は後にして。やられたわねー木っ端微塵に」

レミリア「“餓鬼”の夜遊びか? 鬼以外のも混ざってた気がするけれど。この借りはキッチリ返さないとね」

美鈴「ですねぇ」

レミリア「先刻異界の扉を開いて現れた静なる侵入者に対して、今度は猛烈なパワーと破壊力を以て突撃して来た動なる侵入者」

美鈴「侵入される前に建物が崩れちゃったといいますか。あ、咲夜さん達は大丈夫でしょうか!?」

レミリア「大丈夫。咲夜なら、咄嗟の判断で病弱なパチェの安全を確保しに行ったことでしょう。他のはどうなったか知らないけれど」




ドシュッ!! ギュ――――――――――ン!




美鈴「あ、あれって!!」

レミリア「!?」

美鈴「今、瓦礫の山から飛び出していった、おどろおどろしい波動を放つ少女はもしや」

レミリア「もしや? もう判りきっているでしょ」

レミリア(……あの子じゃないの)

798: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:18:21.16 ID:itH2tAH30

―― (地下・大図書館)――


咲夜(今のは妹様の後姿。光弾で地下まで削られた拍子に牢から抜けだしてしまったのね)

咲夜(どうなさるおつもりかしら? さっきの鬼どもをおひとりで退治に――?)


咲夜「ふうー、ご無事ですか……パチュリー様」

パチェ「私の……私の……図書館がぁ……ゼィ……ハァ」


フラリ


小悪魔「パチュリー様、お気を確かに。無事だった領域もありますから……」

咲夜「……最後のエネルギー弾で、地下の最深部まで貫かれてしまったものねえ」

ベベルブブ「何てことをしやがるんだ……! 人間のやることじゃないッ!」

咲夜「人間では無かったし。ちなみに貴方も一応人間ではないのよね?」

パチェ「――」

小悪魔「パチュリー様、大丈夫ですか!」

咲夜「ショックで気を失われたようで。ともかく、今は安静にしておきましょう」

ベベルブブ「よし! 俺はさっきの悪魔のような連中を叩き潰してくる!」

小悪魔「無理よそんなこと! ベベさんってぶっちゃけ実力はたいしたことなさそうだから!」

ベベルブブ「う……そんなハッキリ言わなくても」

小悪魔「それに、大事な人が人間界にいるんでしょ? こんなところで命を粗末にしちゃダメ」

ベベルブブ「……」

咲夜「そうよ、これはあくまでも幻想郷内部の問題なんだから。何とかしなければならないのは住人達(わたしたち)」

咲夜「でも、片付けくらいは手伝ってもらうわよ。人手が足りないから」

799: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:19:40.27 ID:itH2tAH30

――霧の湖(廃洋館)――


わかさぎ姫「見ました?」

速魚「見えましたー」

影狼「吸血鬼の城が見事に落城したわね。凄い音を立てて」

リリカ「騒々しいわね~」

雷鼓「小細工なしの純粋な弾幕パワーか」

八橋「あはは。とんだ対岸の火事だねー姉さん」

弁々「天空に浮かんでいるのは逆さ城? それとも天空の城?」


ルナサ「はい撤収撤収。空爆が……ありそうだ」

メルラン「上の方で、誰かが指揮棒(タクト)を振るっているわね」




カッ……ド―――――――――ン!! 

800: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:30:42.48 ID:itH2tAH30
ざっぱ~~~~~~~~~~~んっ!


チルノ「やら……れた……ガクッ」

大妖精「チルノちゃん! チルノちゃん……しっかりして……!」

リグル「大丈夫でしょ、そっちは妖精だし」


リグル「にしても、今の攻撃で湖水が波のように押し寄せて……」

ルーミア「あーあ、……おでんの具がぐっしょり」

ルーミア「対岸(あっち)は火事、此岸(こっち)は洪水だわ」

ミスティア「……くそぅ! こうなったら憂さ晴らしに鳥目にしてやるわよ? ……その辺の人間を」


チルノ「これはあたいのハウスに対する宣戦布告に違いない!」

チルノ「あたいたち4人で痛い目にあわせてやるっきゃないね!」

リグル「……たち?」

ルーミア「なぜ4人なのか」

ミスティア「……いやでも、さっきの奴らヤバそうだし」


大妖精(あれ……なぜか私は、頭数に入っいてない?)

801: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:33:52.43 ID:itH2tAH30

――人間の里(寺子屋)――


克也「おおー広ッ!!」

広「克也ー!!」

克也「お前らみんな無事だったんだな……何つーかよ、その」

広「へっ、心配して来たってか? 余計なお世話だ」

克也「んだとコイツ! 心配とかじゃなくてよ、ちょい気になっただけだっての」


まこと「ZZZ」

美樹「まったく、克也もまことも勝手に来るなんて。玉藻先生たちも心労絶えないわねー」

慧音「貴方たちも人のことは言えないんだろう?」

郷子「はい、言えないです……」

阿求「怖い物見たさなのかしらね?」

郷子「ええ、まあ……何ていうか。私たち結構そういうのに慣れっこで、まあ今回も大丈夫かなーて気持ちがどこかにあって」

慧音「そういう気持ちの緩みが、命取りになったりするのよ――皆、少しは反省しなさい」

郷子「はい」


克也「オレさー、あっちのけーね先生たちに夜の授業受けちゃったんだぜ」

広「ええー何だよそれって!? 詳しく聞かせろ!」

美樹「どーせ悪さしてお説教されたってオチなんでしょー?」


阿求(彼らは本当に反省しているのかしら)

まこと「ZZZ」

802: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:40:48.75 ID:itH2tAH30

――人間の里(路上)――


魔理沙「どこがちゃんこ鍋の付喪神だよ」

小鈴「私ちゃんこ鍋だなんて言ってないわ」

小町「口伝えだと、こうやって聞き間違いが往々に生じるものさ」

魔理沙「で、あの『赤いちゃんちゃんこ着せてやるぜ!』っていうのは悪霊の類なのかな」

小鈴「死神さんなら――」

小町「あー、あたいはあくまで船頭だし。素直についてきてくれないタイプはちょっと」

小鈴「……うっ、幻覚が……」

魔理沙「おい大丈夫か」

小鈴「きゃ! 魔理沙さんが全身血塗れになって顔が半分抉れてるー!!?」

魔理沙「おいやめてくれ」

小町「まあ、地道にいこう。もうじき異変のおおもとも収まると思うし、何とかなるって」

803: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:45:08.01 ID:itH2tAH30

――幻想郷(上空)――




要石「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」




天子「あの東端にあるのが博麗神社(跡)。絶鬼が幻想郷入りした際、鬼門が開いた場所ね」

天子「私たちはあそこから太陽の畑と無名の丘に飛んで、その先の迷いの竹林を蹂躙」

天子「そこから再び飛んで人間の里を通過後、紅魔館と霧の湖を襲撃した、と」

絶鬼「いちいち説明はいらない。上から眺めるとよく判るね」

覇鬼「……狭いうが」

絶鬼「別に僕らは勝手に飛べるんだから要石(これ)に腰掛ける必要などないんだけど」

天子「えー? だってこの方が絵になるでしょ? ラスボス達が悪魔城で待ち構えている感じで」

絶鬼(この天人とやら、やっぱり本気で遊んでいるのか?)


ビューン!!


フラン「こんばんは。貴方たちなのね? 私を鳥籠から解放してくれたのは」

天子「――これはこれは、見ない顔ねぇ」

絶鬼「誰だい?」

804: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:58:09.85 ID:itH2tAH30
天子「鬼よ」

天子「鬼と言っても吸血鬼だけれどね。先程砕け散った館の、奥の奥に封じられていた問題児」

天子「聞くところによると……誕生以来、五百年くらい館から外に出してもらえなかったとか」

絶鬼「……ほう」


覇鬼「うがー? お前、吸血鬼?」

フラン「はじめまして。私の名前はフランドール――館の主(おねえさま)の操り人形」

覇鬼「おねーさま? じゃあ妹うが?」

フラン「いつもひとりで遊んでばかりだったから。それだけじゃ、つまらなかったから」

覇鬼「……」

フラン「一緒におままごとでもしない? 紅い鬼の――お兄様?」

覇鬼「俺がおにーさま、うが?」

フラン「見渡す限りの玩具の山。これを全部、おままごとのセットにしよう」

フラン「ね、いいでしょ? 私も混ぜて欲しいの」


フラン「貴方たちの楽しげな破壊活動(おあそび)は、まだまだコンティニューするのよね?」

天子「いかにも。ゲームオーバーになるまで――それまでは永遠にコンティニューよ」

覇鬼「よし! やるうが! 皆で遊ぶうが~」

絶鬼「……やれやれ」

805: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:03:42.74 ID:itH2tAH30
天子「ということで異存はないか?」

絶鬼「特に無いよ」

絶鬼(この吸血鬼の娘も使えそうだ。清冽な子どもっぽさはあるが、覇鬼兄さんとはまた違った怖さを内に秘めている)

絶鬼(それに西洋の鬼のチカラってものを、試しに見てみたいしね)


天子「よし決まり! 人数的にも4人って割り切れていい具合だわ」

絶鬼「ふふ、忌数という意味でもいい数字だ」

天子「さらに決めた、我々はこれを機に四天王と名乗ろう。これは絶対事項だ、異論は認めない」

フラン「四天王って、あの朱雀や玄武のようなやつら? お部屋に積まれた本に載っているのを見たわ」

覇鬼「してんのー!」


絶鬼「……これは異論ではなく、提案なんだけれど」

絶鬼「四天王と書いてカルテットって読むことにしない? ――その方が、聞こえがいいと思うんだ」

806: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:23:05.24 ID:itH2tAH30

――妖怪の山(山麓)――


諏訪子「どうなの、紅魔館(むこう)の様子は」

椛「完全に崩れ堕ちたようですね。敵機は現在、上空から霧の湖周辺に閃光弾を放っています」

にとり「でも、それほど威力のある攻撃ではないね。挑発行為かな」

弥々子「いったい何が起きているんだっぺ? おらにはさっぱりだ」

にとり「こっちだって知りたいよ詳細を。まあ、敵機の数は椛の千里眼もあってはっきりしているけれど」

諏訪子「目視でもあの要石を見ればひとりは確定として、問題は残る二頭だよね」

ぬえ「……」

諏訪子「あの巨大な鬼ってのはもしかして」

ぬえ「……確かめてくる。もともと私はここの者でもないし、これ以上留まる理由もないからね」

諏訪子「はいはい、どうぞ。帰依したくなったらおいで」

諏訪子「あの鬼、うちの山に侵入(い)れないようにしてよ」

ぬえ「……」


ビュンッ!


椛「ところで諏訪子様はなぜあの正体不明とともに?」

諏訪子「いやー別に。それより、山の警戒態勢はどうなってんの?」

807: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:26:55.18 ID:itH2tAH30
にとり「とりあえず、玄武の沢から河童人員を集めて河川一帯は抑えています」

にとり「山童は山麓から中腹域までを見回り中、それより高い域および上空は天狗様方が抑えているわけよね?」

椛「ええ」

諏訪子(神社には神奈子がいるし、大丈夫だね)

諏訪子(でも活きのいい鬼が本気で暴れ回るとなると、ゆっくり傍観しているわけにもいかないか)


弥々子「うー。難しい話だ」

にとり「ま、秩序だった社会が形成されているとね。有事にはその地域社会を維持するために色々動くことになるの」

弥々子「それって何だか窮屈。ようは自由がないってことだっぺ?」

にとり「ま、言われてみればそうかもしれないけれど」

にとり「お陰でうちの山の住人達は連帯意識が強いんだ。いい意味でも悪い意味でもね」

808: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:33:43.42 ID:itH2tAH30

――妖怪の山(中腹)――


バサッ


はたて「文! 見た、さっきの閃光弾?」

文「ええ、勿論見たわよ。鳥目じゃないもの」

はたて「どう思う? さっきの連中……約一名ははっきりしているけれど」

文「あの赤鬼、たぶん幻想郷の鬼じゃないわね」

はたて「そうなの? 鬼の四天王の一角とかじゃなくて?」

文「たぶん違うと思うわ。あと、紅魔館を狙い撃ちしたのはあくまで序章ってことでしょうね」

文「あそこは何だかんだで、おぞましい吸血鬼の巣食う恐怖の館ってことになっているし」

文「紅魔館が呆気なく崩れ落ちたということになれば、連中のチカラが本物であることを幻想郷中に示すことになる」

はたて「でも、ただチカラを誇示したいだけなら、あんな乱暴なことはしないでしょ」

はたて「あの天人くずれが一枚絡んでいるということは……」


文(博麗神社の焼失という緊急事態の発生は、天子さんが仕組んでいたこと?)

文(あの赤鬼を外から召喚し、また異変――前回よりの更に幻想郷が危ない?――を発生させるに至った)

文(だったら、それに当然気付いたであろう霊夢さんが――博麗神社に残っていた天子さんを野放しにするはずがない)


文「!! 霊夢さんは今どうなって!?」

はたて「文ッ! 攻撃が来るわー!!」

はたて「山の頂上――丁度、守矢神社の辺りに!」




――カッ!!

809: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:38:18.09 ID:itH2tAH30

――妖怪の山(守矢神社)――


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子(ケサランパサランを囲っていることは隠密にしなければな、効果に影響があるようだ)

神奈子(各々が窒息しないように風通しにも気を付けないと)

神奈子(つい最近巷で話題になっていたなと思っていたが、70年代だったか)


パラパラ


神奈子(『和漢三才図会』の鮓荅(へいさらばさら)との関連性は……参考になるかな)


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子(――む)




/ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ\




神奈子「天(うえ)からだね」

神奈子「風雨の守り神であり五穀豊穣の神であり、軍神でもある――」

神奈子「我の鎮座する守矢神社に、喧嘩を売るつもりか?」


                                  
                                     (つづく)

827: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:45:59.82 ID:krwokibr0

――命蓮寺――


こいし「かくかくしかじかでね」

こいし「とっても楽しかったのよ」

ナズーリン「な、なるほど。それは盛りだくさんな経験をしてよかったね、君」

こいし「ほら見て。道中でこんな物を拾ったの。どっちが欲しい?」

星「ああ! 片方は私の探していた宝塔!!」

こいし「こっちが欲しいのね。はい、あげる」

星「拾ったものをきちんと届け出る邪心なき門徒よ――実に有難い」

ナズーリン(本当に拾ったのか、あるいは無意識に捕っていってまた返しに来ただけなのか)

ナズーリン「ちなみにもう片方の物は何だ?」

こいし「知らないわ。見てみる?」

ナズーリン「ふむ、では失敬。――これは銭入れだな。ヌエノという者の名刺が入っている」

星「鵺の?」


ガラッ


ぬえ「呼んだ?」

828: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:49:21.09 ID:krwokibr0

――


ぬえ「なるほど……そんなことがあったのか」

こいし「あの赤鬼さんはお兄ちゃんなのよ。ゼッキっていう名前の弟と一緒に遊んでいるわ」

ナズーリン「先程から夜空に閃光が走っていたのは、その鬼兄弟らの仕業だったというのか」

こいし「あら、せんせーの財布の中に宝石が? 最初は石ころしか入って無かったのに」

星「いいから、それはそのまま本人のもとへ返しておやりなさい」

ぬえ「……私が預かるよ。後であの人間に返しておくから」

ナズーリン「その方がまだいいだろう」

ナズーリン「しかし、君たちが同時にこの場に居合わせ、こうやって私やご主人様と会話を交わしているとは珍妙な光景だ」

星「確かに、常識では考えられないわ」

ぬえ「べ、別にそんなことはどうだっていい! それよりも、鬼退治の方が先だ!」

こいし「わー面白そうね。でも、相手は鬼だけじゃないわよ」

ナズーリン「確かに、話を聞く限りではなかなかの非常事態ではあるな」

星「聖たちと合流するわよ! 情報を共有して早めに事に対処しないと――」


ガラッ


神奈子「その情報とやらを我々に提供してもらえるか」

829: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:54:19.53 ID:krwokibr0
ぬえ「!」

星「なっ!? 守矢の二柱……どうしてここに」

ナズーリン「……貴女がたの目的は?」

神奈子「別に命蓮寺が最近勢力を伸ばしていて気に喰わないから潰しに来た、などというつもりはない」

諏訪子「うちの神社に喧嘩を売って来た敵機の首謀者に軽く神罰を与えようと思ってね」

ぬえ「……山にも侵攻してきたのね」

諏訪子「侵攻ってほどでもないけどね。信仰心の篤い山の妖怪たちはてんやわんやよ」

神奈子「それで、どれくらいの情報が入ってきている?」

星「まだこちらは承諾もしていないというのに。――彼女が一部始終、見聞してきたことでほぼすべてですよ」

こいし「……」

神奈子「――まずは端的に言ってくれるか。上空ではしゃいでいる連中の内で、主犯格は誰なんだ?」

こいし「んーとねぇ」


こいし「たぶん、ゼッキっていうやつよ――私の友達を本気で殺そうとしてたのは、ゼッキだけだもの」

830: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:56:53.15 ID:krwokibr0

――地底(地霊殿)――


ぬ~べ~「……」

さとり「『広達、てっきり先に地霊殿に向かったものだと思っていたのに。頭痛が痛い』」

玉藻「……」

さとり「『鵺野先生、文法が間違ってますよ』」

ゆきめ「……」

さとり「『もー、鵺野先生があんな頭の中身もピンク色っぽい女とベタベタしてるからこんなことに』」

華扇「……」

さとり「『頭の中が桃色……って、それはどういう意味なのかしら?』」


さとり「次に貴女はこう言うでしょう。とりあえず挨拶がてら私(この妖怪)に勝負を吹っ掛けようかな、と」

早苗「……。……ハッ!」

さとり「帰れ」

831: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:02:15.58 ID:tSREwYPH0
早苗「ごめんなさい、冗談です。私がちょっぴりはっちゃけちゃったせいで」

ゆきめ「ちょっぴり? ……でも私も勘違いしちゃって悪かったわ」

華扇「いいえ、私だって最初にぬ~べ~さんに会ったときに勘違いをしたし……ひとのことを言えない」

玉藻「私も冷静になるべきだった。後悔しても時既に遅し――ですがね」

ぬ~べ~「今日は妙に素直だな。何かあったのか――さっき、誰かと約束をしたとかどうとか言ってたが」

玉藻「聴きとっていたんですか。あれはただの独りごとだ。特段の意味はありませんよ」

ぬ~べ~「そうかい」


さとり「あの赤鬼は『弟(ゼッキ)が呼んでいる!いかなくちゃ!』などと心術して地上へ向かったんですが、ゼッキという弟に心当たりなどは?」

ぬ~べ~「! 絶鬼だと……!! まさか……ヤツも幻想郷に紛れこんでいるというのか!?」

早苗「ええ!? あのイタリア人ピアニスト兼指揮者のカルロ・ゼッキさんも幻想入りしていたと!」

ゆきめ「誰よそれー?」

玉藻「絶鬼は地獄の中でも最下層の無間地獄に落ちたはずだが。あ、勿論こちらの地獄ではないはずです」

華扇「あの単細胞な赤鬼がすぐさま呼応した点を考えるに、何らかの理由でそのゼッキとやらも幻想郷(ちじょう)に現れたことは確かでしょうね」

早苗「その原因は、大結界の歪みにある――ということなんですね? ゆきめさん、玉藻さん」

ゆきめ「たぶんね、というかそれしか考えられないんでしょ?」

832: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:07:01.28 ID:tSREwYPH0
華扇「通常、外界でもなお健在な幽鬼人妖が安易に幻の世界には入れないような仕組みになっているのだから」

玉藻「そもそも私たちが入って来れたこと自体が異常。あの井戸以外にも結界に亀裂が至る所に発生していると考えれば」

早苗「ゼッキさんがたまたま入り込んじゃったとしてもおかしくはないということですか」


玉藻(例の結界を管理しているのは、あの九尾を式として操る“管理人”と博麗の巫女なる存在だというが)

早苗(きっと八雲紫(あのひと)が陰で糸を引いているに違いない!)

華扇(あの赤鬼だけではなく、さらにその弟分までいるなんて。霊夢は……もう彼らと対峙しているのかしら)

ゆきめ(鬼兄弟のこともだけれど、いなくなっちゃった広君たちのことも)

ぬ~べ~「……」


さとり「……」

さとり「そろそろ、お引き取り下さいね。やるべきことははっきりしているでしょう」

さとり「考えるよりも先に、動くべき時もあります」

ぬ~べ~「……そうだな」

833: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:17:03.51 ID:tSREwYPH0
ザッザッザッ


さとり「お燐、彼らが地上に向かうサポートをしてあげて」

お燐「了解です、さとり様」


さとり「土蜘蛛は子ども3人を探してはくれないかしら。子どもの足じゃ、移動できる距離はたかが知れている」

さとり「地底のどこかを彷徨っているに違いないわ。橋姫と旧都の勇儀(おに)が残っているなら危険な妖怪の山側に出る恐れもないだろうし」

ヤマメ「わかったよ。それと、行き掛けの駄賃に血の池地獄の状態を姐さんに確かめてくるね――先生」


タッ


ぬ~べ~(旧地獄に……血の池地獄?)


さとり「お空は私と一緒に、地霊殿に残って」

お空「え?」

さとり「こういった混乱極まる状況下で貴女が地上に出たら……かえって大事故につながりそうだからね」

さとり「地上で太陽がふたつ輝く必要はないわ。お空が輝くべき場所は、うちの中庭の奥よ」

さとり「私が許す。軽く暴走していいわ」

お空「はーい、わかりました! 私とフュージョンしたい方は誰でもお越しくださいね」


タッ


ゆきめ「暴走って……?」

玉藻「さあてね……」

早苗「つまりはエネルギー革命の一環ですよ」

華扇(自発的に暴走させるなんて……大丈夫なの?)

さとり「念のためです。忘れ去られた灼熱地獄を再度地獄の釜として機能させておきますので」

さとり「神の力を宿した地獄鴉の核融合炉と、舟幽霊でも溺れる底知れない血の池地獄」

ぬ~べ~「……」

さとり「最悪の場合、これらの施設を利用してもらって結構です。何らかの形でね」

さとり「地底には、ならず者や嫌われ者を受け入れる下地が整っていますから」

835: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:22:54.92 ID:tSREwYPH0
さとり「というわけで、よろしいですね?」

玉藻「善後策としては問題ないでしょう」

ゆきめ「3人は地底の妖怪達に任せれば大丈夫そうね。だったら」

華扇「まずは、あの赤鬼を封印することが最優先。それから、弟さんも――話が通じる相手でない場合には」

さとり「言葉は通じるけど通じ合えないそうよ」

早苗「案外、霊夢さんがもうやっつけちゃったりしているかも知れませんけどねー」

お燐「さあさ、行くよ!」


タッ!


さとり「……」

さとり「どうしたんです。早くお引き取り下さい」

ぬ~べ~「すまなかった。俺がしっかりしていないばっかりに……」

さとり「……」

ぬ~べ~「君だけじゃない。地底の妖怪たちには随分と」

さとり「言わなくても判りますから。確かにとんだ傍迷惑ではあったけれどね」

さとり「ほんの少しだけ、……あの鬼が来てくれたおかげで良かったこともあったので」

ぬ~べ~「……、そうか。それは良かったな」

さとり「子どもたちが見つかったら、一通り事が収まるまでは安全な場所でお預かりしましょう」

さとり「そして異変が片付いたら、誰かに地上まで送ってもらいますから」

ぬ~べ~「ああ、頼む! 君たちの親切さには、本当に頭が上がらない」

ぬ~べ~「それじゃあな、さとり君」

さとり「この異変が終結した暁には、二度と私の平穏な日常に一石を投じないでくださいね」

さとり「私は、心から静かに暮らしたいと思っているので」

ぬ~べ~(ありがとう。――妹さんと元気でな)


ダッ

836: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:29:34.08 ID:tSREwYPH0

――幻想郷(上空)――


天子「どこにしようかなてんしさまのいうとおりー、ここだ!」

天子「次は命蓮寺を焼き打ちにしよう!」

フラン「あそこ?」

絶鬼「人里に近い寺院だね。破壊活動によって人間共の懼れの感情を増幅させるにはいい立地だ」

覇鬼「ぶっこわすうがー!」

天子「ゆくぞ――……、……」


天子「……あれ?」

絶鬼「どうしたの?」

天子(天候が……私の意図に反して穏やかに。誰かが私の能力に干渉している?)

フラン「あ、見て! こっちに向かって何か……弾幕かな?」

覇鬼「何か飛んでくる?」


ギュォォォォォォォォォォォォォォ


絶鬼「なんだいアレは? 丸太がミサイルのようにこちらへ向かっているけど」

天子「……あれは御柱だ! 山の神様が喧嘩を買ってくれたみたいね」

覇鬼「こっちに向かってくるうが」

フラン「ひーふーみー……何十本もあるわね。全部壊しちゃいましょ」

フラン「触れることなくね」


どっか~~~~~~~~~~ん!!!!

837: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:35:49.43 ID:tSREwYPH0
フラン「はい、おーしまい」

覇鬼「うがははは」

絶鬼「……なんだ、他愛無い。山の神とやらのチカラはこんなものなのか?」

天子「そんなはずはないよ。全盛期を過ぎたヨボヨボの老婆とはいえ神様なんだから、これからもっと本気で分祀でもして――」




ビューン!!




フラン「あら、今度は空から何か……。あれってもしかして流れ星かしら? 綺麗ね」

絶鬼「流れ星? ぼくには円盤に見えるけれど。宇宙人もいるのかい?」

天子「あれは大きなドーナツじゃないの?」

覇鬼「輪っかだうがー」

天子(他にも何かが周りから飛んで――……何か?)

天子(同じものを見ているはずなのに、皆それぞろ異なるものとして認識している)

天子(そして、そう認識することが恰も自然であるかのように――)

天子「! これは罠だ! 自分の認識を過信するな!」


ドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーン


神奈子「小手調べの神祭『エクスパンデッド・オンバシラ』に引き続くは」

神奈子「神秘『ヤマトトーラス』と御柱『メテオリックオンバシラ』(今年は祭の年ではないけれどね)」

ぬえ「これらの弾幕そのものが正体を無くせば、敵は対抗しづらいだろう――正体不明『赤マント青マント』」


神奈子「更にひけらかすは『神の御威光』」

ぬえ「それをくらますはアンノウン『原理不明の妖怪玉』」


ボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッ
ボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッ

838: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:41:30.38 ID:tSREwYPH0
ぬえ「気がつけば連中を取り囲む正体不明の某かは――神霊の放つ神のチカラ」

神奈子「それだけではないよ。私と諏訪子が天と地の変動に干渉することで、不良天人の悪ふざけに歯止めを掛けている」

ぬえ「意外とこのまま倒せそうじゃない?」

神奈子「倒すのは我々の仕事ではない。差し当たっての目的は統制を乱すこと」


ぬえ「――ところで、山のてっぺんが削られたってことは……守矢神社の方は」

神奈子「ああ、手っ取り早くまるごと一時避難させた。幸福を呼ぶ綿毛の力を少し使った上でだけど」

ぬえ(綿毛? 手っ取り早く……か。簡単に言ってくれるな)

神奈子「さて、休まず攻撃を加えるかな。まったく活きのいい異変首謀者どもだ」

神奈子(触らぬ神は祟ったりしないが、神経に触られた神は――)

ぬえ「烏合の衆といっても、あんな4人組が協力して暴れられると流石に面倒だもの」

神奈子「貴女はあっちのふたりを惹きつけてここから遠ざけてくれるか?」

ぬえ「わかったわ。あの幼児達(ふたり)ね」

神奈子「早苗も他所に行っているらしいし、紅白の巫女もまだ動かない。が、漸次出揃うだろう」

神奈子「それまでの間は、我々が彼奴らの遊びに付き合う。異変解決のお膳立てをしてあげるのさ」

ぬえ(あの赤鬼はやはりあの男の左手から――。どういう事情があったにせよ、足止めをしなければ)

ぬえ「妖怪退治の専門家による異変解決のために、神や妖怪たちがこぞって協力するなんて変な話だが」

ぬえ「今回に限って言えば、皆が手を貸すにふさわしい理由があるわ。かく言う私もね」

ぬえ「だって、幻想郷が壊されたりしては元も子もないんだもの。別に居心地はよくないけどさ!」

ぬえ「だから守る、私の居場所を! 相手がどんなに手強かろうと!」

神奈子「……居場所か。確かに居場所だ」

神奈子(たいして長居しているわけでもないのにね。ここにも随分愛着が沸いてしまったものだよ)



神奈子「御柱『ライジングオンバシラ』――!」

ぬえ「『遊星(PS)よりの弾幕X』――!」


BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!

839: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:46:48.09 ID:tSREwYPH0

――


天子「あららー、正体不明の弾幕があちこちで破裂して視界が狭い。皆どこいったー?」

天子(3人とも、術中にハマったのか? 私たちを惑わして分断するのが目的だったようね)

天子(弾幕自体はあの坂好きな神様の物に違いない。が、それに細工を加えているのは鵺だな)

天子(私は天空から眼下をずっと眺めていたから、たいていの者の放つ弾幕を正しく認識できる)

天子(けれど、あの鬼兄弟や狂血鬼は他人の弾幕をほとんど見ていない。見る機会などなかった)

天子(彼らの認識では弾幕の持つ形や音が欠落し、その行動(被弾して炸裂するという結果)だけが残されてゆく)

天子「各々の認識が一致せず混乱を来してしまう上に、相手が繰り出す攻撃を受ける際の危険性の判断が困難になっている」

天子「だって相手の攻撃が“ジャブ”なのか“フックやストレート”なのか、受けた後でないと判断できないんですもの」

天子「いや、私以外はそもそも攻撃(だんまく)で有ること自体を認識し難いからより厄介なもので」

天子(それでもみんな体は丈夫だし、そうそうやられたりはしないと思うけれど)


天子「よく作戦を練ったわね、聖人さん」

神子「彼らとは直接打ち合わせをしたわけではありません。たまたま同じタイミングで反撃するに至ったまでのこと」

天子「あっそう」

神子「眼光『十七条のレーザー』」


ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!


天子「おっとっと、私だけを狙い撃ち?」

神子「――和を以て貴しと為し、忤(さか)ふることなきを宗とせよ」

神子「あなたの胸のうちにはこの宗を収納する料簡はありますか?」

天子「当然。しかれども桃李門に満つる――有能な者共を従えることが出来たのだから、ちょっとくらい諍いを起こしてもいいじゃない!」

神子「はあ……。貴方たちの所業は到底ちょっとという言葉では言いくるめられない」

神子「やはり少し、お説教が必要だ」

天子「天人を目指している方が天人にご高説?」

天子「でも歓迎! どうぞ、物理的な手段でお願いしますわ」


要石「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

840: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:52:53.59 ID:tSREwYPH0

――


ボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッ


絶鬼「ッ!」


ビュン!


絶鬼「見えない敵に囲まれて……いるのか?」

絶鬼「攻撃されているはずがないのに気が付いたら攻撃を受けてしまっている」

絶鬼「『認識を過信するな』だと。どういう意味なんだ?」


ザッ!


諏訪子「要するにね――貴方がただの空気だと思って吸っていたものが実は有毒ガスだった、そして死んだ――ということ」

絶鬼「! 誰だ」

諏訪子「貴方を狙う弾幕はそこかしこに漂っているのに、貴方はそれがただの月やら星やら木々やら虫けらやら何やら……自分とって無害な物としてしか認識できていないのよ」

諏訪子「だって貴方は今までに神奈子の弾幕を目にしたことがないんだから――枯れ尾花が幽霊にしか見えないに決まってる」

絶鬼「……」

絶鬼「疑心暗鬼に陥っていたと言うのか……ぼくは」

諏訪子「そ。鬼のクセに情けない。やっぱり神様の攻撃と聞いて内心は怖さも感じていたのね」

絶鬼「黙れ。正体がわかってしまえば何て事はない。――これは、ぼくたち4人を分断してソロにしようって作戦?」

諏訪子「そうなのよね~。見事に嵌まったね。むしろこういうのは貴方のように多少頭の回転が効く者の方が効果的」

諏訪子「直球バカだったら、ストレートに自分の周りを一切合財吹っ飛ばしてしまうだろうし」

絶鬼(覇鬼兄さん、それと他のふたりはどこに――いや、そう遠くにはいっていないはずだ)


ユラリ


絶鬼「!」

聖白蓮「なるほど確かに、あの道士の推測通り――貴方が一番危うそうね」

841: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:56:24.57 ID:tSREwYPH0
絶鬼「おっと、また新手? ――今度は何者かな?」

聖白蓮「そうですわねぇ。魔法使いとでもお答えしておきましょうか」

絶鬼「ふぅん、魔法使いか。手品でも見せてくれるかい? で、そっちは何者なんだっけ?」

諏訪子「そうだねー。カエルの妖怪ってことにしておくよ」

聖白蓮「またまた、とんだ御冗談を」

絶鬼「まあ、かかってきなよ。兄さんたち――いいや、兄さんとはまたいつでも落合えるんだから」


ニュルニュルニュルニュル!


絶鬼「……! ぼくの持つバラが勝手に……伸びて?」


ギチィィィ!!


ユラァリ……


幽香「四季のフラワーマスターという二つ名はダテじゃあないのよ?」

幽香「自分の妖気がこもったバラを操られ、逆に自分を拘束する枷とされた気分はどう?」

絶鬼「またまた新手か。……少しは、骨のある相手のようだな」

諏訪子「唐傘お化け……じゃない方の傘持ちの怪物じゃないの」

聖白蓮「貴女は聞くところによると最強クラスの妖怪とお見受けしますが、人里を守るために私たちに手を貸して下さるので?」

幽香「人里? そうねぇ、あのお花屋さんが閉店したら困りますわね。ただ、主に私怨でこちらに出向いているだけよ」

諏訪子「でもまあ、支援ってことでいいんだね。私も人里というより山を降りかかる火の粉から守るために来たんだけどね」

諏訪子「――神具『守矢の鉄の輪』」


ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!


絶鬼「むっ!?」

842: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 01:01:03.81 ID:tSREwYPH0
幽香「四肢も拘束されちゃったわねぇ、貴方大丈夫?」


絶鬼「大丈夫? 嗤えるね――キサマらごときに、ぼくの行く手の邪魔はさせない」


幽香「私の弔い合戦の邪魔も、させようとは思わないわ」

聖白蓮「改心する気はございませんか?」

諏訪子「ちなみに神様と殺り合った経験とかある?」




絶鬼「邪魔をするな虫ケラどもがァ――――ッ!!!」


メキメキメキメキメキメキメキメキメキ




幽香「あら変身? 何令幼虫だったのかしらねぇ」

聖白蓮「超人『聖白蓮』」

諏訪子「祟符『ミシャグジさま』」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

843: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 01:03:01.36 ID:tSREwYPH0

――妖怪の山(山頂)――


文「……」

はたて「……」

文「まるでカルデラみたいな形状になったわね」

はたて「でも、湖はないわね」

文「……」

はたて「……」

文「守矢神社の残骸どころか、風神の湖まで忽然と消えているわ」

はたて「さっきの天空からのエネルギー弾から逃れるために……何処かに持って行っちゃったのかな?」

文「いくらなんでもあの一瞬でそんなことが――……いや、できるかも知れないけれど」

文「何しろある日突然、まるごと幻想入りして来たわけだし」

はたて「じゃあ、どこに持って行っちゃったんだろう?」

文「そりゃあ、どこか安全な場所じゃない?」

はたて「もしかして……一旦外界に逆戻りしてるとか? 特ダネになりそうね!」

文「まさかそれはないでしょ」

844: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 01:06:41.11 ID:tSREwYPH0

――中有の道の上空――


ビューン!


ぬえ(本当に子どもだな。特にあの赤鬼……発している気からしてあの鬼の手の正体には違いないけど)

ぬえ(そろそろ、迎え撃たなきゃね! 暴れ出したりする前に――)

ぬえ(ん、向こうからこちらに向かっているあの小さいのは)


覇鬼「あれは猿だ!」

フラン「いいえ、あれはきっと蛇よ」

覇鬼「……そーいやここ、どこだ」

フラン「私も知らないわ。初めて見る景色だもの」

フラン「絶鬼お兄様と天子さんはどこに行ったのかしら?」

覇鬼「どこにいるうがー!」


ヒュゥ


フラン「……あら、お呼びじゃないヤツが来た」

覇鬼「?」


レミリア「へぇ――それが、久しゅう会ったいない姉に対する態度?」

レミリア「あんたを紅魔館(うち)に連れ戻すために、わざわざ迎えに来てあげたというのにね」

レミリア「そこの木偶の坊、さっさとフランを放しなさい」

レミリア「さもないと――鮮烈なる恐怖を味わうことになるわよ?」


 
                                   (つづく)

854: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:34:55.96 ID:wc9nMu9w0

――地底(血の池地獄)――




ゴポッ・・・ゴポゴポ・・・・・・ゴポポッ・・・・・・・・・




勇儀「ほう、鬼の手に封印されていた鬼だけでなくその弟もいるのか」

ヤマメ「そうらしいんだ。もしかしたら、兄弟はもう地上で合流しているかもしれない」

勇儀「く~! これは悔しいな」

勇儀「是非、手合わせしたいというのに……地上にいちゃあね。私が旧都を離れるわけにはいかないし」

ヤマメ「でも、伝えた通り場合によっては――」

勇儀「ここに突き落として封印しようってんだろう?」

勇儀「まだ使えないことはないけど、言っても使い古されて打ち捨てられた地獄の跡だ。猛々しい鬼共を完全に封じ込められるかな」

ヤマメ「そうだよねぇ。どうすれば」

勇儀「簡単なことだ。私がそいつらを子分にする」

ヤマメ「ええー!?」

勇儀「気風が違えども鬼同士だ。何とかなるだろう!」

ヤマメ「そんな……相手が言葉も通じないような凶悪な奴なのに……」

勇儀「別に1年2年での話じゃないよ。10年かかろうが100年かかろうが問題はないんだから」

勇儀「時が経てば人も変わるし鬼も変わる――長い時間を掛けて手懐けるさ」

ヤマメ「何ていうか、姐さんらしい発想だねぇ」

855: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:44:06.66 ID:wc9nMu9w0

――彼岸――


映姫(やれやれ、小町のサボリ癖にも参ったものよ)


映姫「ほら、そこの新入りの方――集中力を切らさず仕事に励むように」

眠鬼「なーんで私がこんな机仕事しなきゃなんないのよぉー!!?」


だーん!!


眠鬼「だいたいここどこ!? 私の知ってる地獄じゃない!」

映姫「それはむしろ、こちらが聞きたいわよ」

映姫「見知らぬ鬼娘が紛れ込んでいるので引き取るよう要請が来たからには仕方ない」

映姫(なぜ私のもとに送還されることになったのかは定かでないが)

映姫「貴女はどこの地域担当だったの? 直属の鬼神長の名は? あるいは獄卒鬼としての等級は?」

眠鬼「知らないわよんなこと、意味わかんなーい!」

856: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:46:55.74 ID:wc9nMu9w0
パシーン!


眠鬼「い、痛いじゃない! 何すんの」

映姫「仮にも使用者・被使用者関係にあるのよ。言葉遣いには気をつけなさい」

眠鬼「鬼を舐めてかかると痛い目に会うんだからっ」

映姫「反抗的な態度を継続するようなら貴女の下着は返しません」

眠鬼「返せ。いや返して!」

映姫「『返して下さい』でしょう?」

眠鬼「……」


むすー


映姫「どうなの? はっきりしなさい」

眠鬼「か、返して……く……ださい」

映姫「わかりました――返しません」

眠鬼「なんでよぉー!?」

映姫「アメとムチは基本中の基本。きちんと仕事をこなしたら、返してあげないこともない」


映姫(しかし、下着がないと人間並みの力しか発揮できない鬼など初めて聞いたわ)

映姫(変わり種の鬼の子どもね)

857: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:54:30.34 ID:wc9nMu9w0
眠鬼「えっと、これ片付けたら返してくれるってこと?」

映姫「返すことも考慮に入れる、と言っているの」

眠鬼「……」

映姫「ほら、するならする。しないならしない。何事もけじめを付けることが肝要です」

映姫「ただし、しない場合には下着は返却しませんので」

眠鬼「あーもうわかったわよ! やるわよ、やってやるわよ! 見てなさい!」

映姫「生憎見ている暇はありません。私は多忙なので、判らないことがあったら周りの事務員(しにがみ)に聞くようにね」

映姫「ちゃんと、貴女の様子を気に掛けておくようにと、みなに伝えているから」

眠鬼「ちょっと……ひとにここまであーだこーだ言っといてあとは放置なの?」

映姫「私の言ったことを理解できましたか? まだ理解できませんか? もう一度最初から説明した方がよろしいですか?」

眠鬼「……う」

858: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:59:43.96 ID:wc9nMu9w0
眠鬼「……わ、わかったから。ちゃんと仕事する……しますから」

眠鬼「だから、後でパンツ返してくださいー」

映姫「よろしい。後でちゃんと返すわ――だから仕事に励みなさい」

眠鬼「はいはい」

映姫「『はい』は」

眠鬼「一回でって言うんでしょ! は――――――い!!!」




――三途の川(彼岸側)――


映姫「やれやれ、世話が焼けるわ」


スゥー


死神「鬼と言えども、子どもは世話が焼けて大変ですね――こちらの閻魔様」

映姫「ああ、貴女は日雇いの死神の。どう、三途の川の水先案内は?」

死神「順調ですよ。滞りなく幽霊達を捌いています――予定時間よりも早く本日のぶんは終わりそうですね」

映姫「貴女は時間厳守な上に仕事が早くて助かるわ。一層のこと小町の代わりにうちで正規雇用してもいいわよ」

死神「いえいえ、私の一存では決められないことなので」

映姫「ええ、それもそうよね。今のは忘れて頂戴」

映姫「ところで、これはきちんと確認させてもらいたいことなのだけれど」

映姫「ある時点を境に、急に川に流れる死魂の量が増えたみたいなのよね」

映姫「それと、貴女がここに現れたことに関連性はあるのかしら?」

死神「勿論関係がないことはないです」

859: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:02:49.69 ID:wc9nMu9w0
死神「私の担当する人間界とこちらとの境界線が急に緩んでしまったために」

死神「人間界で無事成仏できなかった死霊が多々、こちらに流れ着くようになっているようです」

映姫「ああ、やっぱりね。そんなことだろうと思ったわ」

映姫「貴女もたまたま流れ着いて、あるいは、気まぐれで幻想郷にいらしたの?」

死神「いえ。近い将来人間界でお亡くなりになる予定の人間がこちらに紛れこんでしまっているので」

死神「きちんと人間界に戻るまで見届ける為に、ここから監視をしているんです」

死神「人間界の神が決めたご臨終にて、きちんとお亡くなりいただかないと困りますので」

映姫「確かにね。その人がこちらで野垂れ死ぬようなことがあれば、外界側の摂理に反するものね」

死神「そういうことです」




\どっか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっ!!/




映姫(……あれは中有の道の辺りか。激しい戦闘が発生しているようね)

映姫(何故かくも無益な争いを起こして小さな箱庭を脅かそうとするのか)

映姫(教えを説きに行きたいところだけれど、もう仕事に戻らなくちゃいけないのが口惜しい)


死神「それでは私は監視を続けるかたわら、川の交通整理を続けますので」

映姫「ええ、お願いするわ」

860: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:07:14.69 ID:wc9nMu9w0

――地霊殿(中庭・灼熱地獄跡)――




CAUTION!CAUTION!CAUTION!CAUTION!CAUTION!




さとり「考えることは同じでしたか」

神奈子「絶鬼を封印するならこれが一番手っ取り早いと思ってね」

神奈子(間欠泉地下センターは山の麓から地底にかけての立地だから――)

さとり「『ここを閉鎖しても我々にはデメリットはない。フハハハハ』」

神奈子(最後の間抜けな発声は訂正せよ)


神奈子「だから私自ら出向いてきた――早苗達があれを叩き落としてきたら仕上げを手伝うとするよ」

さとり「おたくの現人神さんって……」

神奈子「ああ、純粋かつ素直で責任感が強くていい娘だろう。最近は妖怪退治にも熱心に取り組んでいるし」

さとり「……。それとですが」

神奈子「何だい? 鳥頭(あの子)に神力を与えた時のことなら――」

861: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:13:59.00 ID:wc9nMu9w0
さとり「そのことはもう根に持ってなどいません。ただ、ここは中庭とはいえ私の住処の地下部分ですからね」

神奈子「判っている。枕を高くして眠れるようにしっかりと――」

さとり「ええ、それもあります。それと、絶鬼というのはあの赤鬼の弟の方でしょう?」

さとり「覇鬼(あに)のように、誰かしらが監督することで制御できる余地は……なさそうなんですか?」

神奈子「そうだね、私の見立てではその見込みは薄い。あれは根っからの悪鬼のようだ」

神奈子「あの弟が側にいる限り、兄を穏便に制御するのは困難だろう。だからこその兄弟分断作戦なんだが」

さとり「『そこに天人と紅魔館の悪魔の妹が絡んでいるから七面倒くさい』と」

さとり(やはり、あの天人が一枚咬んでいたということなのね)

神奈子「そういうこと」

さとり「あの天人はどこまで本気で破壊活動に勤しんでいるとお見受けしますか?」

神奈子「どうだか。自分で心を読みに行ったらいいじゃないか?」

さとり「……」

862: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:17:22.76 ID:wc9nMu9w0
ザッ!


お空「さとり様ー、順調に危険度が上がっていってますよー」

さとり「いいわ、そのまま続けて」


お空「うにゅ? そちらの方はどなたですか?」

神奈子「誰がお前にその火力を与えたと思っている」


お空「さとり様です!」


神奈子「主ならちゃんとペットに採点減の教養を与えたらどうなんだ」

さとり「頭の記憶領域をいじらない限り、直らないものは直らない。それは性格も同じかもしれませんね」


お空「?」


神奈子「――絶鬼とやらは、二度と太陽を拝めないように最終処分をするということで一致だね」

さとり「ええ、已むを得ない。……と思うわ」
 

                                   
                                      (つづく)

オススメ!!
【R-18】サキュバス「お仕事始めました」
【画像あり】「IS」のOVAが完全にエ□アニメでヤバ過ぎる件wwwww:先週のクリックトップ10
【ラブライブ!】穂乃果「どんどんエ●チなアイドルになっちゃうよぉ♥」ことりのHなファン交流会に巻き込まれてチ●ポ大好きになっちゃう穂乃果!【エ□漫画同人誌】
ハルヒ「キョンっ、どうしよう、おま●こ気持ちいいよぉっ」お●ぱい大きいチアコスハルヒにロ...