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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:09:25.09 ID:trw4RIp2O
うっうー!高槻やよいです!

12月に入って、いつもの街が急に慌ただしく動き始めたように思います

オレンジ色に染まった西の空がとってもキレイで、何だか少しだけ切なくなったりします

だけど、今日の私は元気いっぱい!

なぜなら

ジャジャーン!

塩さんまが一尾20円だったんですぅ!





4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:11:21.59 ID:trw4RIp2O
えっ?

ちょっと安すぎないか、って?

うっうー!

ちゃんと火を通すから大丈夫ですぅ!

みんなお腹を空かせてると思うから、早足でお家に向かいます




5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:13:32.97 ID:trw4RIp2O
「ただいまー!すぐ晩ご飯作るね!」

…あれ?

何だかお家の中の空気が重いです

「お父さん?帰ってるの?」

「…やよいか?」

イヤな予感がします…




6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:15:58.20 ID:trw4RIp2O
「やよい、お父さんの会社な、潰れることになったんだ」

…うぅ

こういう予感って的中してしまうんですよね

「やよい、お父さんもう疲れたよ…」

「大丈夫だよお父さん!私もお仕事頑張るから!」




7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:18:38.48 ID:trw4RIp2O
「仕事?水着にでヤラシイかっこするのが仕事か?」

「え?」

「男に媚びた顔してへらへら笑ってるのがお前の仕事か!」

「お、お父さん…?」

お父さんが喋るたびに、お部屋の中にお酒の匂いが広がっていきます




8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:21:46.43 ID:trw4RIp2O
「こ、媚びてなんかないもん!楽しいから笑ってるんだもん!」

「お前の写真を観ながら男が何してるのかわかってるのか!」

「え…そ、それは…」

「クソっ!出かけてくる」

「あっ、お父さん!晩ご飯は?」

…お酒を飲みにいったみたいです

私の仕事…

うぅ…悔しいです…




9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:24:16.22 ID:trw4RIp2O
晩ご飯を食べている間も、お父さんに言われたことが頭から離れませんでした

お風呂で独りになると、我慢していた涙が一気に溢れてきて…

ホントはお仕事の予習をしなきゃダメなんですけど、泣き疲れて寝ちゃいました




10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:26:06.32 ID:trw4RIp2O
今日は日曜日

お父さんと顔を合わさないように、コッソリお家を出てきました

気分も足取りも重いなぁ…

今日はお仕事休みたいなぁ…

「あ!やよいー!」




11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:28:33.04 ID:trw4RIp2O
「え?あ、響さん。おはようございます」

「はいさーい!これから事務所に行くとこなんだ。やよいも?」

「あ、はい…」

「ん?どうしたんだ?元気ないぞ?」

「だ、大丈夫です!イェイ!」

「なら良いけど…」




12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:31:13.35 ID:trw4RIp2O
響さんと一緒に電車で移動

いつも元気で明るい響さんが大好きなんだけど、いまは独りになりたいかもです…

「やよい、やっぱり元気ないぞ?自分で良かったら話聞くさー」

「えっと…実は…」

響さんに話しました
昨日お父さんに言われたこと




13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:34:27.90 ID:trw4RIp2O
「そっか…父親はそんな風に思っちゃうものなんだなぁ」

「お、お父さんはズルいです!自分のお仕事が上手くいかないから、私に八つ当たりしたんです!」

「わかるけどさ…」

「ウソです!お父さんのいない響さんには…」

言い終わる前に後悔してました
ただの八つ当たり
お父さんと同じです…




14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:37:16.45 ID:trw4RIp2O
「…ゴメンねやよい。自分、わかったようなこと言っちゃって…」

「ち、違います!私がわる」

「駅に着いたぞ」

「あっ、響さん!」

ドアが開くと、響さんは一人で電車を降りてしまいました




15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:40:00.08 ID:trw4RIp2O
…その日のお仕事は散々でした

元気だけが取り柄のはずなのに、ちっとも笑顔になれなくて

プロデューサーは

「調子が悪かっただけさ」

って言ってくれたけど、私のいないところでテレビ局の人に怒られてたみたいです…

うぅ…ごめんなさいプロデューサー




16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:43:55.25 ID:trw4RIp2O
落ち込んだままトボトボとお家う帰り道

お父さん、またお酒飲んでるのかなぁ…

夕陽を受けてキラキラしている川面を横目に見ながら、重い気分と足取りで歩いていました

そんなとき

土手の茂みで何かが光っているのが見えました




17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:46:52.23 ID:trw4RIp2O
「ゴミ…じゃないみたいだけど…」

近づいて手に取ってみます

ランプ…?

魔法の…?

まさかぁ

と思いながら、ところどころ錆びて茶色くなったランプを撫でている私

こういうところは子供ですよね、やっぱり




18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:49:33.24 ID:trw4RIp2O
「ランプの精さん出ておいで~」

15分くらい撫で続けたんですけど、何も出てきません

「私…何やってるんだろ」

ふと我に帰ると、虚しさが込み上げてきました

うぅ…

現実逃避しちゃってました…




19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:51:57.85 ID:trw4RIp2O
「ここに置いとくのも良くないよね?」

仕方ないので持って帰ることにします

我が家にはとっても不釣り合いなんですけど…

「ちょっとアンタ!」

「は、はい?」




20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:55:22.53 ID:trw4RIp2O
声がした方へ振り返ってみると、そこにはキレイなお姉さんが立っていました

「わ、私ですかぁ?」

ひょっとしてランプの持ち主さん?

「ここには私とアンタしかいないでしょう?」

「そ、そうです…けど…」

「まったく!15分も撫で回してくれちゃって!出てくるタイミング取りづらいでしょ!2、3回でいいのよ!」




21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:57:38.03 ID:trw4RIp2O
「ご、ごめんなさい…」

叱られると謝ってしまうのは悪いクセです…

「あの…あなたは?」

「ランプの精よ!他に何があるっていうのよ!」

な、なんだか伊織ちゃんと話してるみたいです…




22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 03:59:33.10 ID:trw4RIp2O
「えっと…ランプの持ち主さんですかぁ?」

「は?いま私が言ったこと聞いてた?持ち主じゃなくて精よ!」

「ご、ごめんなさい…」

うぅ…このお姉さんは苦手ですぅ…




23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:02:37.38 ID:trw4RIp2O
「じゃあ本題に入るわよ?願いごとを一つ叶えてあげるわ。ただし条件があります」

ひ、一人で話を進めちゃってます
頭の回転がついていきません…

「何よその顔。願いだけ叶えて貰えると思った?甘いわよ!」

まだ何も言ってません…うぅ…




25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:05:14.88 ID:trw4RIp2O
「条件は一つ。このあとアンタが最初に話した人を幸せにしてきなさい。時間は24時間以内。いいわね?」

「し、幸せに…ですかぁ?」

「だからそう言ってるじゃない!」

な、何で怒るんですかぁ…




26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:08:23.59 ID:trw4RIp2O
「条件を満たしたら、その錆びたランプが金色に輝くわ。それを持ってもう一度ここに来ること。はい、これで説明は終わり、じゃあね」

「あ、ちょ、ちょっと!」

…消えてしまいました

まだ事態が飲み込めず、土手に立ち尽くす私…




27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:11:02.64 ID:trw4RIp2O
「幸せ…に」

このままお家に帰れば、最初に話すのは家族の中の誰かになります

「…」

頭の中に浮かんだお父さんの顔を振り払い、私はいま来た道を引き返しました

響さん、まだ事務所にいますよね?




28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:12:48.76 ID:trw4RIp2O
「あら、やよいちゃん、何か忘れも…あれ?」

呼び止めた小鳥さんを無視してしまいました…

うぅ…ごめんなさい

こんど穴場のスーパーを教えますからぁ…




29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:14:31.42 ID:trw4RIp2O
響さんは帰り支度をしているところでした

「あの…響さん」

「…やよい?自分に何か用?」

まだ怒ってるよね、やっぱり…

「響さん、お話があるんです」




30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:16:07.61 ID:trw4RIp2O
「話?自分に?」

「はい。お時間ありますか?」

「…うん、大丈夫だぞ」

一瞬間があったのがちょっと悲しいけど…

自業自得ですもんね




31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:18:43.33 ID:trw4RIp2O
近くの公園のベンチに2人で腰掛け、あったかい缶コーヒーを飲みました

…もちろん、響さんのおごりです

「話ってなんだ?やよい」

「あの…今朝はヒドいこと言って、ホントにごめんなさい」




32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:20:51.91 ID:trw4RIp2O
「…うん」

「私、響さんに八つ当たりしちゃいました。お父さんと同じように…」

「…もう気にしてないさー!」

響さん、優しいウソつきです




34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:28:48.18 ID:trw4RIp2O
「それであの…私、響さんを幸せにしたいんです!」

うぅ…響さんコーヒー吹き出しちゃいました
ゲホゲホ言ってますぅ

「それ、プ、プロポーズか?」

「ち、違います!」




35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:32:09.68 ID:trw4RIp2O
「いきなりどうしたんだ?自分、ちょっとときめいちゃったぞ」

「えっと…その…うぅ…」

「わっ!やよい、泣かないで!」

「わ、私、響さんにヒドいこと言ったから…お詫びに響さんを幸せに…うぅぅ…」

「泣いてるやよいは見たくないぞ。それに自分、気持ちだけで充分さー」




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:33:59.88 ID:trw4RIp2O
「でも…でも…」

「うーん、困ったぞ…幸せ…幸せ…」

響さん、頭からケムリ出てますよ

「あっ!そうだ!」

何か閃いたらみたいです!うっうー!




37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:36:19.78 ID:trw4RIp2O
「何でも言ってください!あ…お金は無いですけど…」

「アハハ、そんなことじゃないさー」

ちょっと不安になってきました

「えっと、自分さ、その…一人暮らしだからさ」

「?」

響さん、顔が赤いような




38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:38:52.27 ID:trw4RIp2O
「その…家族団欒ってやつが恋しくてさ…だから…」

「だから?」

「やよいの家で、一緒に晩ご飯食べたいさー!」

…真っ赤な顔の響さん、とっても可愛いです!

でも…




39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:41:02.66 ID:trw4RIp2O
「お父さん、またお酒飲んでるかも…」

「そんなの、なんくるないさー!」

「…わかりましたぁ!ご招待します!」

「やったぁ!」

うん、きっと大丈夫

なんくるないさー!イェイ!!




41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:43:53.16 ID:trw4RIp2O
2人でスーパーに立ち寄って、晩ご飯の材料を選びます

「今日は自分がおごるぞ!」

「ダメです!響さんはお客様なんですから!」

「宿泊代さー!」

…泊まるつもりなんですね、響さん




43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:51:16.81 ID:trw4RIp2O
カンパチとサーモンの冊に、すき焼きの材料一式
ゴーヤに高級豚バラ肉に卵にキュウリに人参に、それにお芋も
しかもなんとキタアカリですぅ!

「すき焼きには親鶏を小さく切って入れると味が出て美味しいぞ!」

「はい!割り下はお母さんが合わせてくれますから!それにキタアカリのポテトサラダも絶対美味しいと思いますぅ!」

「なんだか楽しくなってきたぞ!」

『お会計、1万6300円になります』

…い、いつも晩ご飯より1万6000円も多いですぅ!




45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:54:21.30 ID:trw4RIp2O
「2万300円でお願いしまーす」

「ひ、響さん、こんなにお金使っちゃって…」

「お金に困ったらイヌ美の餌食べるから、なんくるないさー!」

…食べちゃうんですね




46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 04:57:20.42 ID:trw4RIp2O
お母さんも交えて、3人で晩ご飯の準備

響さん、とっても料理上手ですぅ!

お父さん、最初は居心地悪かったみたいだけど、響さんの明るさのおかげで徐々に打ち解けていきました

響さんにお酌してもらって、まんざらでもなさそうです




49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:06:09.76 ID:trw4RIp2O
「チャンプルーっていうのは強火で短時間炒めた料理のことなんだぞ!長時間炒めるのはイリチーっていうんだ」

「すげー!沖縄すげー!」

すっかり長介と意気投合した響さん

浩太郎と浩治も交えて、プロレスごっこが始まっちゃいました

えっと…

私より年上…ですよね?




50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:09:47.31 ID:trw4RIp2O
「よし、自分に勝ったら代わりに宿題やってやるぞ!」

こんどはスリッパ卓球スタートです

えっと…

響さんに宿題を任せるのは、姉として拒否します

「うっうー!響さん頑張ってくださいー!」




51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:13:38.65 ID:trw4RIp2O
「さすがに疲れてきたぞ。いつもこんなに賑やかなのか?」

「今日はいつも以上です」

床が抜けないか心配ですぅ…

「2人とも、こっちに座りなさい」

…お父さんに呼ばれて、縁側に腰を下ろしました

夜空がとても高いです




52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:16:02.46 ID:trw4RIp2O
「我那覇さん」

「響でいいさー」

「そうか…響ちゃん」

「何ですか?」

お父さん、響さんに変なこと言わなきゃいいけど…

「なぜアイドルなんかになろうと思ったんだい?」




55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:24:08.42 ID:trw4RIp2O
「えっと…自分、小さいときに父親を亡くしちゃって…家計を助けたくて、その…」
「…悪いこと聞いてしまったね」

「ううん。父親に怒られるようなことはしてないつもり。水着になったりもするけど…」

響さん…

「恥ずかしいこともあるけど…えっと…何て言えばいいんだ?あれ?おかしいな…ハハ…」

泣いてる…

それに私も…




57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:29:57.07 ID:trw4RIp2O
「自分…自分…ダンスくらいしか取り柄が無いし…頭悪いし…」

響さんの顔、滲んで見えなくなってきたから…

だからそっと手を握りました

私の思いも一緒に伝えようとしてくれてるから…

そしたら響さんもギュッて握り返してくれました




58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:34:03.38 ID:trw4RIp2O
「でも一人じゃ…たぶん頑張れなくて…みんながいるから…その…みんながいて…」

私も同じです
みんなに頼ってばかりです

いまだって…

響さんに頼ってしまってます

いつの間にかお母さんが私の後ろに座っていて、頭を撫でてくれていました




59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:38:39.30 ID:trw4RIp2O
「ハハ…口下手だから上手く言えないや…でもきっと…こういうのが…その…恥ずかしいけど…青春、って言うんだと思います」

…そうだ

私たちは…

トップアイドルとかそんなのだけじゃなくて

同じ時間を過ごせてることが幸せなんだ




61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:42:43.63 ID:trw4RIp2O
いつかアイドルを諦める人も現れて、みんな別の道に進んでしまって

それでもふと振り返ったときに

「みんなでいた」

って思わせてくれるような、素敵な時間を過ごせてるんだ

それは私たちにとって、とっても大きな宝物なんだ




64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:47:09.94 ID:trw4RIp2O
「だから…だから…やよいから青春を奪わないであげてください!自分、もっともっとやよいと一緒に泣いたり笑ったりしたいさー!!」

それを言い終えた響さんの口からは、嗚咽が漏れはじめました…

お母さんが響さんの頭も優しく撫でてあげています

私、何も言わずに泣いてばかりです
ズルいですよね…




65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:51:02.46 ID:trw4RIp2O
「…青春というのは、暇で、ときに死ぬほど退屈で、しかもエネルギッシュで、困ったことにそのエネルギーを智恵が支配していない」

…お父さん?

「ある小説の一文だよ」

手の甲で涙を拭いながら、お父さんの次の言葉を待ちます




67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:54:10.54 ID:trw4RIp2O
「やよい、いま幸せか?」

「…うん」

「そうか…」

「お父さん…」

「お父さんも、お前の青春のために何かできるかな?」




69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 05:59:06.13 ID:trw4RIp2O
「…お酒、飲み過ぎないで」

「わかった」

「…お仕事大変だと思うけど…私も家事とかちゃんと手伝うから…だから頑張って」
「わかった」

「…私をみんなと一緒にいさせて…」

「あぁ、わかった」

響さんがいままでよりも強く、私の手を握ってくれました

やよい、良かったね

って、そう言ってくれてるみたいでした




70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:02:13.39 ID:trw4RIp2O
そのあと、涙でグシャグシャになった私の顔を見て、響さんは大笑いしました

うぅ…自分だって同じ顔してますぅ!

晩ご飯のあと片付けをしたあと、かすみと3人でお風呂に入りました

…響さん、いろいろズルいです!
不公平です!




72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:09:33.78 ID:trw4RIp2O
お風呂から出てあと、響さんと女の子トークです

初恋の話とかしちゃいました

これも青春ですぅ

…え?

響さん、デートしたこと…

あっ!

ここからは内緒ですよ!うっうー!




74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:17:44.25 ID:trw4RIp2O
もっとお話したかったけど、泣き疲れたせいで眠くなっちゃいました

それは響さんも同じみたいです

「おやすみなさい、響さん」

「おやすみ、やよいー」

私たちは子供みたいに、手を繋いで眠りにつきました




75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:22:01.96 ID:trw4RIp2O
「…」

次の日の朝、お腹に痛みを感じて目が覚めました

私のお腹の上に響さんの右足が乗っかっています

…素敵な目覚めをありがとうございます、響さん

まだ少し寝ぼけてるけど、今日のお仕事の予定を確認しておかなきゃ

べろんちょから手帳を…

あれ?




76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:24:36.64 ID:trw4RIp2O
ランプが…

光ってるよね、これ?

響さんの顔を見てみると

…確かに、幸せそうな寝顔です

でも、そういうことじゃないですよね? たぶん




78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:31:40.45 ID:trw4RIp2O
でもやっぱり金色に輝いてる…

響さん、幸せを感じてくれたのかなぁ?

どちらかというと、私の方が幸せにしてもらったような…

「…イヌ美…結婚しちゃうのか…」

…フフッ

2人とも、幸せになれたみたいです

それが長い人生のほんの1コマだったとしても、私たちにとっては大切な時間です




80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:34:52.88 ID:trw4RIp2O
「さぁ、いっぱいー たべよおーよ」

自分の曲を口ずさみながら朝ご飯を作っていると、寝ぼけ眼の響さんが起きてきました

ホントに子供みたいですぅ

「はいさーい…」

「おはようございます、響さん」




81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:37:34.05 ID:trw4RIp2O
「響さん、今日のお仕事は?」

「…石垣島」

「えっ!行くんですかぁ?」

「…石垣島は食べれ無いさぁ…」

顔洗ってきなさい!




83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:40:06.75 ID:trw4RIp2O
「サッパリしたぞ!」

「それで、今日のお仕事は?」

「今日はボーカルレッスンだけだぞ」

「私はダンスレッスンだけですぅ」

「自分もダンスがいい!」

それはプロデューサーに言ってください




84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:43:09.23 ID:trw4RIp2O
「じゃあ終わったあと、駅で待ち合わせませんか?」

「ん?別にいいけど」

金色のランプ

ホントになんでも叶うなら

願いごとはもう決めました!うっうー!




85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:46:22.20 ID:trw4RIp2O
今日はずっと笑顔で過ごせました!

レッスンの先生にも

「元気があってよろしい」

って誉められちゃいました!うっうー!

そして元気なままで駅に到着です

あっ

響さんもきましたよー!




86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:49:30.28 ID:trw4RIp2O
「おまたせー」

「私もいま来たところですぅ!では、行きましょう!」

「どこへ行くんだ?」

「内緒でーすぅ!」

西の空は少しずつオレンジ色に染まり始めていました




87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:52:31.66 ID:trw4RIp2O
「着きましたよ!」

「へ?土手?」

キョトン、とした響さんは置き去りにして、昨日と同じようにランプを撫でてみました

今日は3回だけです

「ランプの精さん出ておいでー」

「そのかけ声止めてくれない?」




88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:55:49.66 ID:trw4RIp2O
「ごめんなさい!ランプの精さん!」

「昨日とは別人みたいなテンションね…ホントの別人も連れてきてるし」

「や、やよい?この人は?」

「ランプの精さんです!」

「い、意味わからないぞ!」

「失礼ねぇ。自分の眼で見た物くらい信じなさい」




89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 06:59:16.57 ID:trw4RIp2O
「いやいやいや!ホントに意味わからないぞ!!」

「騒がしい子ねぇ。まぁいいわ。さっさと願いを言って頂戴」

「何でも叶うんですよね?」

「アンタの頭で想像できる範囲くらいは余裕よ。それで、何がお望み?やっぱりお金?」

「違いますぅ」




90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:04:23.22 ID:trw4RIp2O
「あらそう。他にアンタに足りなさそうなものといえば…才能とか?」

「それも違いますぅ。人を生き返らせることはできますか?」

「…無理ね。私は神さまじゃないから」

「…じゃあ…一瞬だけこっちに来てもらうことは?」

「それなら一時間くらいは可能よ」

うっうー!

上手くいきそうですよ!

「それで?誰にお越し頂くの?」

「響さんのお父さんです!」




91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:08:30.23 ID:trw4RIp2O
「えっ?自分の父親が…何だって?」

響さんにはたくさん幸せを貰いました

それを少しでもお返ししたいから…

「…アンタ、出世できないタイプね」

そんなの自分でわかってます!

それに…

そんなことより大切なものを、もう持ってますから!




93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:13:19.40 ID:trw4RIp2O
「まぁいいわ。二度とアンタに会うことはないけど、後悔しないようにね」

「うっうー!大丈夫です!」

「…それじゃ、私は消えるわ。じゃあね」

ありがとうございます、ランプの精さん
やっぱり伊織ちゃんに似てるかもです

素直になれないところとか




94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:17:01.65 ID:trw4RIp2O
「お、おい…やよい…」

「響さん、私も帰りますね!みんなお腹を空かせてると思うから」

響さんに背を向け、足早に歩き出しました

野暮…って言うんでしたっけ?

私、これでも少しは大人になったんですよ?

「おーい!やよ…」

響さんの声が背中で弾けました

「…タ、ターリー!!」

沖縄の言葉はわからないけど、響さんがいま何て言ったのかはわかりますよ?

お父さん

って

そう呼べたんですよね?




96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:23:55.34 ID:trw4RIp2O
オレンジ色に染まってゆく空を見つめながら、いま私は歩いています

川の流れる音と、街から流れてくる音が混ざって、とても賑やか

それはいつかの

そして

いつまでも続く、私たちの物語



お し ま い




99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:26:17.54 ID:RyDxQRnO0
よかったちゃんと終わって
久しぶりに実際と大きく乖離しないので読んでた意味があったわ




104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/06(火) 07:33:40.56 ID:3qQFjSRhi
やっぱりやよいが一番かわいいな